では、始まります!!
あれから数時間が経ち、時刻は夕方。福井駅前での蓮ノ空学院スクールアイドルクラブのライブが始まりました。
最初はスリーズブーケがライブを披露します。
花帆「今日はみんな、集まってくれてありがとー!!」
吟子「ご覧いただき、本当にありがとうございました」
スリーズブーケのライブに、会場は大層盛り上がる。そして次のユニットにバトンタッチ。
花帆「それじゃあ、次はみらくらぱーく!です!」
そして、瑠璃乃さんたちとバトンタッチした花帆さんたちは舞台裏に下がった。
ー 舞台裏 ー
花帆「いえーい、おつかれさまー!」
小鈴「いえーいです!」
花帆さんと小鈴さんがハイタッチする。
吟子「私…………花帆先輩とふたりで、うまくやれたでしょうか……」
不安げな顔でそう言う吟子さん。だが、
さやか「ここから見ている限りでは、とても魅力的なパフォーマンスでしたよ」
吟子「……なら、良かったです」
花帆「じゃあ、ふたりも頑張ってね!」
さやか・小鈴「「はい」」
瑠璃乃さんたちの次はいよいよ私と小鈴さんの番。小鈴さんは今日でやり方は見つけられただろうか……。
さやか「さて……どうでしょうか。今日1日で……伝え方については、皆さんのやり方は参考になりましたか?」
小鈴「はい、やっぱりこうするのが良いんだろうなっていうのは、決まりました!」
自信満々に答える小鈴さん。それなら、良かった……。
さやか「それなら……良かったです」
すると、ステージでライブしている瑠璃乃さんたちの声が聞こえてくる。
瑠璃乃「それじゃあー、DOLLCHESTRAに、バトンタッチしまーす!今日はほんとにありがとー!」
姫芽「ありがとうございました〜!!」
舞台裏に戻って来る瑠璃乃さんと姫芽さん。よし!!
さやか「それでは――これが最後の"特訓"です! 行きますよ小鈴さん!」
小鈴「やるぞー!」
闘志メラメラな小鈴さんと共に、私たちのライブが始まった。
◇
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◇
ライブが終わり、泊まるホテルの部屋にいた私は、夕食までの間、今日のライブを思い返していた。
さやか「やりきれた、かな。小鈴さんも最後までパフォーマンスをやり遂げられたことを、素直に喜んでいたし……うん、良かった」
ひとまず、一安心だろうか……
さやか「本当にわたしが誰かの指導をしていい人間なのか……不安でいっぱいだったけど。でも、きっと敦賀ライブフェスタでは、小鈴さんはご家族に向けて立派な姿が見せられるはず。…………って、ダメダメ」
私は思い直して首をふる。
さやか「何か改善できる点が残っているかもだし、小鈴さんの最高の舞台のためにも、最後まで気を抜かない」
そして、スマホで今日のライブの録画を再生する。動画が始まり、私と小鈴さんのライブ映像が映る。
さやか『それでは、このふたりで披露させていただきたいと思います』
さやか「……………」
さやか「……………」
ライブ映像を見る私。すると、
さやか「? ……!? …………これ、は?どうして……」
そこに写っていたのは、私にとって嫌な思い出として見覚えのある姿だった。
さやか「まさか……!!」
あの、去年の私の苦しみの時期……。
さやか「小鈴さん……踊れてるのに、踊れてるだけだ。見たことある、わたしはこれを、見たことがある………。誰かを追いかけることだけで、頭がいっぱい、の………………!」
そこにいたのは、去年の……自分らしい演技を思いだす前の、綴理先輩をただ追いかけてた
さやか「わたしは、小鈴さんになんてことを……」
今更、自分の失敗に気づくなんて……。
すると、部屋の扉が開き、小鈴さんが入って来た。
小鈴「さやか先輩、みんなが夕食行くタイミング合わせましょーって話を……さやか先輩?」
さやか「あ……………小鈴、さん」
私が、小鈴さんの方を見る。恐らく、ショックで虚ろな目になってしまっているんだろう。小鈴さんが慌てる。
小鈴「ど、どうしちゃったんですかさやか先輩!なにか変なものでも食べて――」
さやか「……ごめんなさい」
小鈴「え?」
謝るしかできない……小鈴さんは何のことか分かってなさそうですが……。
さやか「わたしは……小鈴さんへの指導を、誤りました」
小鈴「どうしたんですか、さやか先輩。突然そんなこと言われても……だって徒町、けっこううまくできて………」
私は、小鈴さんに今日のライブ映像を見せる。
小鈴「今日のライブ……ですか?」
さやか「小鈴さんは……踊れていました。間違えずに、しっかり。会場を見つつ、最後まできちんと踊り切る。それが、ちゃんと出来ていました」
小鈴「じゃあ」
さやか「でも――それだけです。そして、それだけじゃダメなんです」
小鈴「それは、えっと、伝えるもの………?」
さやか「小鈴さんには伝えたいものがあったはず。でも伝わってこない。それはひとえにっ……このパフォーマンスが、ただわたしを真似ることしかできていないからなんです……」
小鈴「…………」
小鈴さんは黙る。私は、小鈴さんに、私の真似事じゃない、小鈴さんだけが持つ特有の輝きを見つけてあげなければならなかったんだ……。
小鈴「それは、徒町がまだ未熟だからなんじゃ」
さやか「そんなことはありません!で、も………教えてください。今日のライブで……どんなことを、伝えようとしましたか?」
小鈴「えと……それ、は」
小鈴さんは口籠る。
小鈴「さ、さやか先輩みたいに立派なスクールアイドルになりたいって……思って……さやか先輩みたいに、真摯に向き合うのがかっこいいなって…………」
さやか「やっぱり……そう、でしたか。…………わたしの、やり方なんですね……?」
小鈴「だ、だってその。確かにみんなが色んな伝え方を教えてくれて、徒町もどんなのがいいかなって考えたけど……。でも、しょせん徒町の考えですし。やっぱり、さやか先輩のがいちばんかっこよくて、いいなって……。さやか先輩みたいになれたらって、徒町、ずっと」
さやか「……………小鈴さんが悪いわけではありません。間違っていたのは、わたしの指導。わたしは、小鈴さんの特訓をしているようでいて、小鈴さん自身のことを何も見てあげられていなかった……」
それが、私の間違い。
さやか「指導者はおろか…………わたしにあなたのきらめきを乗せた歌詞なんて書く資格もない」
さやか「わたしみたいになりたいと言ってくれているひとに、そのわたしがするような練習をさせるのが間違いでした。去年のことに味を占めて、綴理先輩みたいに自分も憧れてきた子を指導できると思ったのが間違いでした。あなたの熱意を踏みにじる結果にしてしまって、ごめんなさい」
小鈴「そんな……全部、間違いだなんて……そんなの」
さやか「小鈴さん。あなたには、あなたにしかない魅力があります。わたしみたいになろうとするのは間違いで、あなたらしいやり方というものが――」
小鈴「今そんなの聞きたくありません!」
さやか「つっ」
小鈴「さやか先輩はっ……さやか先輩は!そもそも徒町が、さやか先輩に憧れるのが間違いだっていうんですか!?」
さやか「それはっ………、そういうことかも、しれません………………」
小鈴「っ!! そんなっ、そんなのっ!徒町はっ………!!」
小鈴さんはそう叫ぶと、部屋を出て行ってしまった。
綴理先輩、淳平先輩……。私は、どう指導すればよかったんですか?
さやか「小鈴さんっ……!」
ベッドの上に座り、項垂れる私。
さやか「小鈴、さん………………分かってるはずなんです、あなたには、わたしは……あなただけの魅力があることを……なのにどうして、わたしは…………」
私は、私の原点である、お姉ちゃんがまだ現役のスケーターだった頃の、姉妹2人で練習していた頃のことを思いだす。
◇
◆
◇
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◇
さやか『やった、できた!はじめてできた!みてた?みてたー!?』
つかさ『うまくなったねーさやかー。もーわたしがおしえることはない!』
さやか『え、そんなのおかしいよ!だってぜんぜん、おねえちゃんみたいにできてないし!もっともっと、いっしょにやろーよ!あはは!』
つかさ『ふふっ……ん、そうだね。ねえ、さやか』
さやか『んー?』
つかさ『あのね――』
◇
◆
◇
◆
◇
さやか「どんなに楽しくたって…………。わたしは……間違ってたんですよ、小鈴さん……」
さやか「…………小鈴さんを、追わないと」
そして、私は小鈴さんを探しに、夜の街へと出ていった。
ー つづく ー
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