蓮ノ空スクールアイドル録   作:松兄

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第27話:さやとすず

小鈴さんを探しに夜の街に出た私。必死に探し回るが、中々見つからない。

 

さやか「ハァハァ…小鈴さん、どこに……」

 

見つからなくても探して走り続ける。すると、先程私たちがライブをしていたステージの辺りに人集りができていた。

 

さやか「あれは……人だかり?」

 

私は気になり、その人だかりに近付く。すると、

 

小鈴「……リベンジしに来ました!!!」

 

さやか「…………小鈴さん!?」

 

先程のライブ衣装に着替えた小鈴さんが、ステージに立っていた。

 

小鈴「か、徒町はっ………は、蓮ノ空学院の、スクールアイドルクラブで、えと。今からっ……ライブを、します!」

 

小鈴さん………

 

小鈴「伝え方なんて、まだ全然分からない。徒町ごときが、すぐ正解なんて出せると思ってない。でも……!どうしても伝えたいことなら――今はあるんです!!だから見ててください、徒町のライブを!」

 

ライブを始めようとする小鈴さん。しかし、

 

小鈴「あぅっ!」

 

転んでしまう小鈴さん。

 

さやか「小鈴さん!!」

 

小鈴「あう。ぐ。…………失敗なんて、全然平気!徒町は失敗ばっかりだけど……、でも――届いて……徒町の気持ち!!行きます!!曲はDOLLCHESTRAの――Sparkly Spot!!」

 

しかし、それでも立ち上がり、音楽がなる。踊り始める小鈴さん。その出来は、先程とは比べるまでもなく全然ダメ。何度も転び、振りもまちがえてしまう。

 

さやか「…………」

 

しかし、

 

さやか「…………? っ! これ……は」

 

小鈴『間違いなんかじゃないっ……………間違い、なんかじゃっ』

 

出来は悪くとも、小鈴さんの思いがひしひしと伝わって来る……。

 

小鈴「"――決めるのはっっ!! 自分だ!!!!"」

 

さやか「!!」

 

小鈴さんが歌詞を叫ぶ。その歌詞が、今の状況と重なる……。

 

さやか「ああ……そっか――」

 

さやか『わたしも、おねーちゃんみたいになりたいんだ!』

 

私も初めは、お姉ちゃんの背中を目指してフィギュアを始めたんだ……。

 

さやか「…………がんばれ」

 

気づいたら、声が出ていた。

 

さやか「がんばれっ、がんばれぇ!!」

 

その声がどんどん大きくなる。

 

さやか「がんばれっ……がんばれ、小鈴さん!!」

 

そして、音楽が終わった。

 

小鈴「はぁ…………はぁ……。全然、ダメだった……転んだし。振りも間違えたし、最後もきめられなかった」

 

小鈴さんは、ちゃんとライブできなかった事に落ち込んでしまう。

 

小鈴「…………もっかい。もっかいやって――あ」

 

小鈴さんが力尽きて転びかける。私は、急いで駆け寄る。

 

ガシッ!!

 

さやか「いいえ。全然ダメなんかじゃ、なかったですよ」

 

小鈴「あ……さやか、先輩」

 

小鈴さんが、抱きかかえられながら私を見つめる。

 

さやか「ねえ、小鈴さん。わたしは昔、ほんとうによく転ぶ子だったんです。小鈴さんよりずっと」

 

小鈴「え……?」

 

さやか「お姉ちゃんを追いかけて、お姉ちゃんのまねばかりしようとして。失敗しては笑われて……でも、楽しかった。よく……こうして起こしてもらいました」

 

なんで、忘れてたんでしょう……。

 

さやか「痛みはありませんか?」

 

小鈴「は、はい」

 

さやか「今のライブは、失敗なんかじゃありませんよ」

 

私がそう言うと、小鈴さんは戸惑う。

 

小鈴「で、でも。ダメだって言われた方のライブより、ずっとへたっぴで……」

 

さやか「へたっぴだって、良いんです。だって……伝わりましたから。あなたの気持ちが」

 

さやか「――"間違いなんかじゃ、ないんだ"って」

 

小鈴「……はいっ……さやか先輩に憧れることは、それだけは……!」

 

さやか「はい。がむしゃらに、まっすぐに。頑張りたい気持ちを伝えてくれた。それはね、小鈴さん。あなただけの、応援したくなる魅力なんですよ」

 

小鈴さんは、無言で私を見つめてくる。

 

さやか「「さやとボク」と、「さやとすず」は違う。綴理先輩の言葉は……あなたのライブが、意味を教えてくれました。憧れを追いかけたい……あなたの気持ちは、間違っていないって」

 

小鈴「さやか先輩…………」

 

さやか「わたしも、気づかされました。きっと――あの日お姉ちゃんの背中を追いかけていたことそれだけは、間違ってなかったんだって」

 

さやか「あなたのライブはきっと、わたしの過去を救ってくれた。そんな人の心を打つライブをする、"スクールアイドル"が、間違っているだなんて言えるわけがない」

 

 

――だから、

 

さやか「だからね、小鈴さん」

 

小鈴「はい」

 

さやか「わたしは――あなたの目標であり続けます。あなたが、追い続けてくれる限り!」

 

小鈴「あ………………はい!」

 

さやか「ありがとう、小鈴さん。わたしは、あなたのライブで――大事なことを思い出しました」

 

小鈴「あ……あはは。あれ、なんか、なんで……」

 

小鈴さんの眼が、キラキラと耀き始める。

 

小鈴「失敗したはずなのに、できた時みたいに、胸の底から熱いものがこみ上げてきて……なんかすごく、すごい――!」

 

さやか「今なら、すごいことができそうな気がしませんか?」

 

小鈴「あ……はい!!」

 

さやか「いきましょう。私も――最高の歌詞が書けそうです!」

 

ー つづく ー




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