第31話:Bloom the stars
時は少し遡り、3年生と1・2年生がそれぞれ修学旅行と敦賀ライブで金沢駅のホームで別れた後、東京に向かう北陸新幹線の中で、俺達は話していた。
梢「はぁ………」
淳平「どうした、梢?」
慈「なに、いきなり〜? 大丈夫だよ、つよつよるりちゃんがついてるんだから」
綴理「さやもいる。かほもいるよ?」
梢「ええ。だから
慈「じゃあなんなのそのため息は!」
めぐが梢にツッコむ。
梢「私がついていれば、さやかさんや他の子たちの負担を半分にすることができたのに、というだけでね……言っても仕方のないことだけれど」
淳平「そうだな。それは分かってるのか」
梢「さすがに最上級生ですもの……」
慈「まあ、気分を変えて、全力で楽しむモードに切り替えるんだよ!この瞬間から私たちは!スクールアイドルじゃなくて、修学旅行を楽しむただの高校三年生!」
綴理「ボクたち……スクールアイドルじゃ、なくなる……?」
その言葉を聞いた綴理がショックを受ける。
淳平「一時的に忘れようってだけだからな?」
ちゃんとフォローを入れるのを忘れない。
慈「と、とにかく!なんか楽しいことしよ!ほらトランプとか!」
梢「とりあえず……綴理と慈は自分の席に戻った方がいいんじゃないかしら。学校に追い返されないうちに……」
慈「追い返されたら、敦賀ライブに出られるかな」
綴理「よし」
梢・淳平「「戻りなさい(れ)!!」」
そしてその晩、ホテルの一室で、
慈「こんこーん、つーづりー」
慈は綴理の部屋の扉を開けて中に入る。すると、
梢「あら、慈」
淳平「お、めぐも来たのか」
慈「あれ?なんでいるの?まさか、私に隠れて密談……!?」
淳平「いや、それは、よくわからないけど…………」
梢「同感ね」
すると、綴理はめぐにあるものを見せる。
綴理「みてみて、こずが買ってきてくれた。つーづりーの好きなお菓子」
綴理と沙知先輩の好きなお菓子、"まねっこドーブツ"というビスケットだった。
梢「売店を覗いていたら、たまたま見つけてね。それで、なんとなく」
慈「ふーーん」
めぐが梢にジト目を向ける。
梢「なによ。って、あなた」
綴理「あ、めぐも買ってきてくれたんだ〜。ありがと〜」
めぐも同じものを買ってきていた。
慈「……なんとなくだよ、なんとなく――」
梢「そもそも、修学旅行先に来ても、どうして私たち4人で一緒にいるのかしら」
慈「そういう星の下に生まれたんじゃない?知らないけど」
淳平「星……か」
すると、めぐがコホンと咳払いし、
慈「それでは。え〜、第1回102期生、大暴露大会〜!」
梢「なに?急に」
綴理「わ〜」
慈「せっかくの修学旅行なんだから、4人で普段しなさそうな話しようと思って。ほら、いつもは言えないようなことを、ほら、ほらほら」
なるほどね、思ってることを腹割って話そうってことか。
梢「いつもは、言えないようなことそうね、ならちょうどいいわ」
淳平「お、なんかネタあるのか?」
綴理「その言い方は、お説教じゃないとみた」
梢「私をなんだと……ラブライブ!の話なの」
淳平「……………」
俺は、去年のラブライブ!決勝大会を思いだす。決勝大会には進めたものの、俺達蓮ノ空は敗退。全国の頂点に立つことはできなかった。
綴理「ラブライブ!……。でもボクは今、スクールアイドルじゃないから……」
淳平「今だけ戻っていいよ……」
綴理「!」
すると綴理は踊りだそうとする。
慈「踊るのは後にするんだよ!」
梢「……………今年は最後のチャンス。だからこそ、優勝を目指したい」
慈「ん」
淳平「ああ」
梢「でもそれは……あくまでも、私たちの事情」
慈・淳平「「ん?」」
梢「今年、スクールアイドルクラブに入部してくれた新入生にはね。まずスクールアイドル活動を楽しんでもらいたいの。スクールアイドルにとって、ラブライブ!出場は 選択肢のひとつに過ぎないわ。ただ好きなようにライブをしてもいいし、配信だけをしていてもいい。曲も衣装だって、自作しなくてもいい。スクールアイドルは、自由だから」
淳平(梢………)
俺たちは、梢の話を聞く。
梢「彼女たちが自分の意志でラブライブ!を目指してくれるのなら嬉しいけれど、部長としてみんなに強要はしたくなくて。同じユニットの子であってもね。だから、今年もいつも通り過ごしたいのだけれど……。……おかしいかしら」
はぁ、まったく………。
慈「いやー。再確認したよ。相変わらず面倒な性格してんね、あんた」
梢「慈にだけは言われたくないのだけれど……」
淳平「綴理はどうなんだ?」
綴理「こずは、みんなにかほと同じことをしてあげたいんだね」
梢「…………そうね。きっと、そうだわ。その上で、こちらがやりたいことは、いずれちゃんと伝えるつもり。私と花帆のときみたいに。お互いがすれ違ってしまわないように」
淳平「………俺も、去年の今頃花帆とすれ違って、喧嘩して、殴っちまったからな……でも、あの頃よりは成長したつもりだけど」
梢「クスッ……そうね。今はね、彼女たちが花咲けるような、そんな部になればいいと思っているの」
綴理が口を開く。
綴理「うん。こずとジュンの気持ちはいいと思う。でもこず、みんなで同じ目標に向かってがんばるのは、それはそれで楽しいとも、思うよ?」
梢「ふふっ……ありがとう、綴理」
慈「じゃ〜、次〜。つづたんなんかある?」
綴理「うん。1個、思い出した」
慈「お、なになに?」
淳平「なんだ?」
綴理「ボクはね、さちになりたい」
淳平「沙知先輩に………?」
慈「綴理が、珍しいこと言うじゃん」
綴理「うん。さちみたいに、今年入ってきたすず、ぎん、ひめのことを……スクールアイドルとして立たせてあげたい、かな?」
淳平「立たせてあげたいっていうのは……さやかちゃんに綴理がしてあげたこととは、違うのか?」
綴理「さやには、ボクのままでよかったんだ。でも、これからのボクはもっと頑張りたい」
綴理…………。
綴理「隣に立てなくてもね、見ててあげたい。日陰にうずくまっていたら、日向の場所を教えてあげたい。さちがしてくれたことが、すごく、嬉しかったから。そういうものに、ボクもなりたい」
梢「……………素敵ね」
淳平「ああ。最高の目標だ!」
慈「……シャッフルユニットのときさ、るりちゃんのこと、先輩として親身になってくれたじゃん?」
綴理「? してないよ」
慈「じゃあ、一緒に悩んでくれた」
綴理「それは、したかも」
慈「私からもありがとうって、言ってなかったなって。綴理、実はそういうの向いてると思うよ。ちゃんと悩んでくれるから。なんだったら、私や梢やジュンより上手かも」
淳平「かもな……」
梢「そうね……。きっと、そうだわ。上手よ、綴理…………」
梢が落ち込んでしまう。
慈「なにダメージ受けてんの!気にしてたの!?ごめんて!」
梢「でも立派だわ、綴理。がんばりましょうね、一緒に」
綴理「うん。まあ、ボクはさちにはなれないんだけどね。 伸びすぎた」
淳平「身長の問題かい」
慈「ま、綴理がそういうスタンスなら、私は安心して好きにやらせてもらうよ。やっぱ先輩ってのは、偉大な背中を見せなきゃいけないからね。誰もが憧れる最強のスクールアイドルが身近にいたら、後輩のモチベ爆上がりでしょ?これはめぐちゃんにしかできない役目だからね☆」
綴理「めぐかわいい〜」
淳平「はぁ、あまり調子に乗りすぎて痛い目をみないようにな?」
梢「本当にね。つまり、今までとなにも変わらないってことね」
慈「それってつまり、梢はめぐちゃんを最強のスクールアイドルだって認めてるってこと〜?」
梢「〜〜はい、私と綴理が言ったんだから、最後は慈よ」
綴理「なんか、いいね、暴露大会。毎日やりたい」
梢「それはちょっと…………」
慈「それじゃあねー。んー、これは暴露ってか、思ってたことなんだけど……」
梢「ルール違反よ」
淳平「遊びに厳格になるなよ……」
慈「そうだよ……あのさあ、あるじゃん、ホワイトボードに。梢の戒めスター」
綴理「戒めスター」
淳平「元・若木証明書な」
梢「それで?」
慈「あれさ、3色追加したいなって思って」
ほう。
綴理「おー」
淳平「良いと思う」
慈「まー、まだみんな入ってきたばかりってのはあるけど。6色ってのが気になるんだよねなんか。せっかくの後輩ができたのにさ」
淳平「たしかに。1年生だけ蚊帳の外って感じもするしな……」
慈「剥がして捨てることも考えたけど、そしたら梢が拾って部屋に貼っちゃうだろうし」
梢「人を、巣の材料が足りないスズメかなにかだと思っているの?」
綴理「ボクは賛成。みんなの色があったほうが、きれいだよね」
淳平「おれも賛成」
梢「…………どっちみち、私が意見を言える立場ではないわ。あれは綴理がしてくれたことだから」
慈「そういうのを取っ払って意見を言うと?」
梢「………私たちの愚かしさに、104期生のみんなを巻き込むのも……」
言うと思った。
慈「だから、新しい意味を作るの。嫌な思い出はいい思い出に。いい思い出は、もっといい思い出に。沙知先輩が、私たちに八重咲ステージを残してくれたみたいに。ま、あの規模に比べたら、ぜんっぜんだけどね」
梢「そうね、そういうことなら。ありがとう、慈、綴理、淳……」
慈「いいってことよ。 じゃあ綴理とジュン。なにか思いついて」
梢「えっ…………丸投げ……………?」
綴理「わかった」
淳平「はいはい」
梢「いくら綴理と淳でも、そんなパスじゃあ……」
淳平・綴理「「閃いた!」」
梢「嘘でしょう!?」
慈「天才じゃん。それで、どうするの?」
綴理「うん。こずの言う通り、みんなが花咲ける場所を、作るんだ」
淳平「星の花を咲かせよう」
◇
◆
◇
◆
◇
そして数日後、3年生が修学旅行から帰ってきた日のスクールアイドルクラブの部室では、
慈「こういうことね」
綴理「きれいだね」
梢「………………素敵だわ。夢の種が、花咲いたみたい」
慈「なんか今の、歌詞っぽくなかった?」
梢「え?そう?」
綴理「なんだかちょっと、かほっぽかったね。 あ」
すると、
淳平「あっ、声が聞こえてきた」
綴理「帰ってきた」
慈「よし、それじゃ敦賀ライブの感想会でもやっちゃおうか!」
梢「ふふ、10人分のお茶を入れるのは、大変だわ」
淳平「手伝うよ」
そして、ホワイトボードに貼られた蓮の大三角の星には、下に植物の茎と葉っぱを象った紙が貼り付けられ、今の蓮ノ空の9人のそれぞれのイメージカラーで塗られていた。
ー つづく ー
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