あのあと、俺はルリちゃんを部屋まで送り、一緒に居てルリちゃんを落ち着かせていた。
淳平「………………」サスサス
俺はルリちゃんの背中をゆっくりと擦りながら、ルリちゃんの様子を見ていた。
瑠璃乃「……………」
すると、
慈「入るよ、るりちゃん」
めぐが部屋に入って来た。
淳平「あ、めぐ。姫芽ちゃんは……?」
慈「うん、追いかけてって、ちょっと話をしたよ」
瑠璃乃「そ、そっか…………ごめんね、ルリ、頭が真っ白になっちゃって………」
慈「……………」
瑠璃乃「………ルリ、ゲーム大会が楽しみだったの、ほんとなんだ。姫芽ちゃんがあんなに嬉しそうに毎日はしゃいでて、力になってあげたいって思ったんだよ。……だからって、ちょっとやりすぎちゃったのかな。あんなに気にするなんて……。悪いことしちゃった………よね」
淳平「……そこじゃないと思うな」
瑠璃乃「え?」
慈「もとはと言えば、私が補習から逃げきれなかったから、ふたりに負担かけちゃってたわけだし………。偉そうなことは言えないけど……でも、言わせてもらうね。るりちゃんが姫芽ちゃんの夢を後押ししたいって思ったのは、それ自体は悪いことじゃないよ。先輩として、立派な行動だよ?けどさ、自分のやりたいことをほったらかして手伝うのは、違うんじゃない?「やりたいことぜんぶやる」がみらくらぱーく!でしょ?」
瑠璃乃「……あ」
慈「自分を二の次にして、裏からあれこれ手を回したり、姫芽ちゃんがうまくいくように根回ししてあげて………それって、相手をトクベツ扱いしちゃってるってことだよね。それで思ったんだ。るりちゃんは、姫芽ちゃんをまだ仲間だと思えてないのかな、って」
慈「みらくらぱーく!で隣に立つ仲間じゃなくて………手を差し伸べてあげなきゃいけない後輩。そう思ってるのかな、って。私は、このメンバーでこれからもやっていきたい。お互いに遠慮なく、言いたいことはなんでも言い合って、いちばんのスクールアイドルを目指したい。お互いの本気をぶつけ合ってこそ、いいものができあがると信じてるから」
淳平「うん。めぐの言う通りだな。ただ、補習からは逃げられないけどな?」
慈「うぐっ、ちゃかさないの!…………ただ、るりちゃんがどうしたいかは、るりちゃんが考えることだと思うから。とりあえずきょうは、お疲れさま。ゆっくり休んでね」
淳平「うん。じゃあ、俺も戻るよ。また明日」
そして、俺とめぐはそれぞれの部屋に戻っていった。
瑠璃乃「ルリ………ルリは……ミジンコだ………」
そのあと、ルリちゃんはぼっちハウスに引き籠もっていた。
瑠璃乃「……まっくら。ふふっ……ルリにお似合い………はぁ。仲間だと思ってない……か」
瑠璃乃「もう2か月も一緒にいたのに……ルリ」
すると、部屋の扉が誰かにノックされて誰か入って来た。
姫芽「あの………るりちゃんせんぱい…………」
瑠璃乃「あ」
姫芽「すみません。おやすみのところ」
瑠璃乃「…………ううん」
姫芽「……………めぐちゃんせんぱいから、さっきまた謝ってもらいました。その上で、いろいろと、聞きました」
姫芽「せんぱいは優しいから、アタシのためにいろいろとがんばってくれたんですよね。アタシが失敗しないように………」
瑠璃乃「……………」
姫芽「アタシがもっとめぐちゃんせんぱいみたいに、なんでもできたら、せんぱいも言いたいこと言えたのかな。って………えへへ………そんなこと、ムリですけど………蓮空祭。アタシだけやりたいことやるなんて 申し訳なさすぎるんですけど……でも。ここでやめちゃったら、それこそるりちゃんせんぱいがしてくれたことの意味が、なくなっちゃいますから」
姫芽「ゲーム大会は開きます。アタシの夢を手伝ってくれて、本当に、ありがとうございました」
瑠璃乃「あっ、待って、姫芽ちゃん――」
姫芽「つ――。ごめんなさい、失礼します!」
そして、姫芽ちゃんは走って出ていってしまった。
瑠璃乃「………う。……………手伝ってくれて、か。ルリは、姫芽ちゃんと、どんな風に………なりたかったんだろ………」
ルリちゃんは、引っ越す前の……淳平と慈と一緒に遊んでいた頃の小学生時代を思い出した。
瑠璃乃『へーきへーき!あとはルリがやっとくから!遊びに行ってきていいよ!』
慈『ねえ、るりちゃん。いいの?さっきの』
瑠璃乃『え?うん、ぜんぜん。だってルリは、みんなが楽しいって思ってくれたら、楽しいから。それに……』
淳平『それに?』
瑠璃乃『ルリには、トクベツなめぐちゃんとジュン兄ぃがいるから――』
そのまま、ルリちゃんは泣き疲れて寝てしまった。
◇
◆
◇
◆
◇
ルリちゃんが目を覚ますと、
瑠璃乃「めぐ、ちゃん………?」
慈「もう。ダンボールの中で寝ないの。ベッドまで運ぶの、大変なんだよ。私は梢やジュンとは違うんだからね?」
瑠璃乃「…………どうして、ここに?」
慈「まあ、そりゃ……るりちゃん、明らかにすごくショック受けてたし……………」
瑠璃乃「気にしてくれたんだ。ありがと」
慈「るりちゃんのことなんて、24時間ずっと気にしてるっての。さっきジュンからも心配する内容のLINE来たよ?ルリちゃんのスマホにも来てるんじゃない?」
ルリちゃんがスマホを確認すると、
瑠璃乃「あ、ホントだ………」
慈「………あのね、るりちゃん。いいよ、私は」
瑠璃乃「え?」
慈「るりちゃんが、そのままでも。私とジュンだけがるりちゃんの隣にいて、他の子をトクベツ扱いしてさ。今までと、なんにも変わらなくても」
瑠璃乃「でも」
慈「いいんだよ。だって『みらくらぱーく!』を始める前から、私とジュンとるりちゃんは幼馴染だったんだから」
慈「もしるりちゃんが、私とジュンだけがいいって言うなら。私たちは、ずっと、ずぅっと、るりちゃんのそばにいるよ」
慈「るりちゃんは、どう?……………るりちゃんは、どうしたい?」
瑠璃乃「ルリは……。……………。めぐちゃんがみらくらぱーく!に人を増やそうって言ったとき、ルリは、ちょっとやだった」
慈「うん」
瑠璃乃「だって、ルリとめぐちゃんとジュン兄ぃなら最強なのに、他に人が加わったら、最強じゃなくなっちゃうから。今までずっと3人だったのに。4人なんてムリだって、正直思ってた」
瑠璃乃「不安だったけど……言えなかった。だって、ちゃんとスクールアイドルがんばるって決めたから。前に進むめぐちゃんに、置いてかれたくなくて」
瑠璃乃「でもね。話してみたら姫芽ちゃんは、がんばり屋で、かわいくて、一生懸命で、すぐ大好きになれた。思い出したんだ。自分がスクールアイドルクラブに憧れたときのこと。やってみたい、って思った。最初から諦めてたら、ルリはたくさんの楽しさを知らないままだった」
瑠璃乃「前に進むって、こういうことだよね。不安で、怖くて……でもきっと、もっと楽しいことが待ってるから。いろんなことを話して、もっと深いところまでお互いを知って。そして、もっともっと遠くまで一緒に、夢の先まで、走っていきたい」
瑠璃乃「だから……ごめん、めぐちゃん。これから先、めぐちゃんとジュン兄ぃだけがルリのトクベツじゃ、なくなっちゃうかもしれないけど………」
ルリちゃんがそう言うと、めぐはルリちゃんの背中を『よしよし』と擦る。
慈「なぁに言ってんの。大好きな幼馴染が、勇気を出して前に進もうとしてるのを、応援できない幼馴染がいますかっての。きっと、ジュンも同じことを言うよ?」
瑠璃乃「めぐちゃん…………」
慈「それにね。トクベツは増えても、また別のトクベツ。そうやって、大切がいっぱい生まれていくの。るりちゃんにとってはもう、花帆ちゃんだって、さやかちゃんだって、また別のトクベツでしょ?」
瑠璃乃「っ!うんっ。めぐちゃんにとっての、梢先輩とか、綴理先輩みたいに!」
慈「んっ!まあ、今あいつらの話はしてないけどね!」
瑠璃乃「あははっ」
このときには、もうルリちゃんに笑顔が戻っていた。
慈「でも、それじゃあどうしよっか。姫芽ちゃん、今回のことかなり引きずりそうだからなあ。せっかくるりちゃんが勇気出して正直に話そうとしても、恐れ多いって言って、逃げられちゃうんじゃないかなあ………」
瑠璃乃「……確かに、さっきも。姫芽ちゃんと、正面からぶつかるためには………あ!」
慈「え?」
瑠璃乃「わかったよ。めぐちゃん!姫芽ちゃんがぜったいに、逃げられないシチュエーション!」
慈「ほんと?」
瑠璃乃「うん!だからそのためには、めぐちゃんにも協力してほしくて」
慈「いいよいいよ、なんでも言ってみ。勉強以外なら、なんでもやっちゃるよ!」
瑠璃乃「だったら――。きょうからルリの猛特訓!付き合って!」
ー つづく ー
感想・評価よろしくお願いします!!