あれから2日後、ルリちゃんが特訓相手になってもらっていためぐを勝率9割くらいで叩きのめせる様になり、ルリちゃんはいよいよ姫芽ちゃんに対して作戦決行を決めた。
散々ボロボロにされためぐは目にハイライトを無くしてボロ雑巾のようになっていた。
淳平(めぐ、今度労ってやるからな……)
俺はめぐに対してそんなことを決意していた頃、スクールアイドルクラブの部室では、
瑠璃乃「よかった。ゲームの誘いなら来てくれると思った、姫芽ちゃん」
自前のキーボードとマウスを持ったルリちゃんが、姫芽ちゃんと対面していた。
姫芽「るりちゃんせんぱい……。なんですか〜、これ、『果たし状』、って」
瑠璃乃「その名の通りだよ。ルリね、姫芽ちゃんとゲームで真剣勝負しに来たんだぜ」
姫芽「勝負、って………まさか、ほんとにやるんですか?」
瑠璃乃「うん、やる」
姫芽「いやですよ、アタシ………」
瑠璃乃「えっ?い、いやなの?」
意外。ゲームだったらノリノリで乗ってくると思ったのに……。
姫芽「はい……………。だってアタシ、1対1で勝負を挑まれたら、手加減とかできませんもん!るりちゃんせんぱいのことをボコっちゃいます!」
瑠璃乃「あ、ああ、そーゆーことか。ならいいよいいよ、ぜんぜんおっけー」
姫芽「よくないですよ〜!」
瑠璃乃「ていうかね、きょうはボコられにきたんだ」
姫芽「えっ?」
瑠璃乃「それに、ナメてると痛い目をみるのは姫芽ちゃんの方かもしれないぜ?それじゃあ、スタート!」
姫芽「ちょ、ちょっと〜――」
そしてゲームで勝負を始める2人。
ルリちゃんは次々と弾丸を命中させられ残機がドンドン減っていく。
対して姫芽ちゃんは黙々と
瑠璃乃「うわっ!ぎゃっ!」
姫芽「………………」
瑠璃乃「もう1戦!もう1戦!」
だが、ルリちゃんは止めようとしない。
そして、すぐに10戦が終わり、
姫芽「……………」
瑠璃乃「いやあ、手始めに10連敗とは。ぜんぜん手も足も出ないなあ。本気で強いんだね、姫芽ちゃん。なるべく粘れるようにって、ルリもけっこう特訓してきたのになあ………」
姫芽「どうして、こんなこと………。ごめんなさい、るりちゃんせんぱい。でもあと100回やっても、アタシが勝っちゃいますよ………?」
瑠璃乃「そっかぁ。でも、とりあえずがんばるね。ほら、次の試合始まるよ」
姫芽「〜〜っ!楽しいんですか?これ…………」
瑠璃乃「いやあ、楽しくはないよね。姫芽ちゃんとも気不味いし、バッテリーの減りやばいし。おまけに、けっこう悔しいし」
姫芽「じゃあ、なんでやってるんですか……………!」
瑠璃乃「こうしなきゃいけない、って思ったから……かな」
姫芽「…………それは?」
キーボードを弄る手を動かしながら、2人は話す。
瑠璃乃「姫芽ちゃん言ってたよね。ゲームにだけはウソつけない、って」
姫芽「……………はい。いくら相手がるりちゃんせんぱいでも、勝負なら手は抜けません。今もそうです。負けた方が気持ちは楽になるのかもしれませんけど……それでも、アタシ自身が本気でやるって決めたことですから」
瑠璃乃「そうだよね。うん、そうなんだ」
ルリちゃんはいったんキーボードとマウスから手を離した。それを見た姫芽ちゃんも今は中断だと思い手を離す。
瑠璃乃「ルリにとってのみらくらぱーく!も、おんなじだったんだよ」
姫芽「おんなじ………?」
瑠璃乃「ルリときどきね、めぐちゃんと意見がぶつかったりしてね。『こっちのほうが楽しい!』、『いや、こっちのほうがいいでしょ!』みたいな。お互い幼馴染で、遠慮なんてもうなんにもないから、ワーワー言い合っちゃってさ。で、いつもジュン兄ぃが仲裁してくれてね……」
瑠璃乃「ケンカもときどきつらくて、苦しくて、めぐちゃんとケンカなんてしたくないなー、ってホントは思ってるんだけど……でもね、だからって気まずいから折れちゃうなんて、ナシ」
瑠璃乃「そんなことしたって、めぐちゃんは喜んでくれないし、応援してくれる人にも失礼だし……なによりそれは、自分が信じる『本気で楽しいことをするんだ!』 って気持ちに、ウソをつくことだと思うから」
姫芽「あ…………」
瑠璃乃「ルリもね、逃げてたんだ。姫芽ちゃんに向かい合うことを。ゲームで手加減されて勝ったって、姫芽ちゃんは喜ばないって、ほんとはわかってたはずなのに」
瑠璃乃「だから、ごめんね、姫芽ちゃん。ルリ、最初から姫芽ちゃんにこう言わなきゃいけなかったんだ」
瑠璃乃「『ルリにもやりたいことがあって、ぜんぶをやるのはすごく大変だと思うけど……でも、姫芽ちゃんと一緒にやりたい。そうして一緒に苦しいことを乗り越えた先には、これまで以上に「楽しかった!」って思えるような、素敵な景色が待ってるって思うから。ルリとおんなじ気持ちを。隣で分かち合ってほしい』、って」
瑠璃乃「お互いさ、遠慮するのはもうやめようよ。ひとりじゃ難しいかもだから、せーので一緒にさ。そしたらルリたち、もっといいユニットになれるんじゃないかな?」
ルリちゃんは、自分の想いを姫芽ちゃんに全部ぶつけた。
姫芽「…………っ、るりちゃんせんぱい………!」
そして、ルリちゃんがゲームを再開し、姫芽ちゃんも再開する。
瑠璃乃「なろうよ、一緒に。世界中を夢中にさせる、そんな最強のユニットに!」
姫芽「あ――」
瑠璃乃「あ、……………ルリ、勝った?はは、勝っちゃった………姫芽ちゃんに。びっくり……。特訓の成果……かな?」
姫芽「るりちゃんせんぱい〜!」
瑠璃乃「おわっ!?」
姫芽ちゃんがルリちゃんに飛びついた。
姫芽「アタシ、アタシ〜!るりちゃんせんぱいと、めぐちゃんせんぱいの存在が大きすぎて〜!だからアタシはなるべく迷惑かけないようにしなきゃって思って〜!」
姫芽「でも、それってまだチームのお荷物って思われてるみたいで、悔しくて〜!せめてダンスとか歌とかがんばりたくて、企画も一生懸命考えて〜!でも……でも悔しいって思うことすら、なんかおこがましいんじゃないかって〜!」
姫芽「アタシが楽しいだけじゃなくて!大好きなおふたりの力になりたくて、ほんとに、ほんとに〜!るりちゃんせんぱいの楽しいことも、お手伝いさせてほしかったんですよぉ〜〜!」
姫芽ちゃんも、泣きじゃくりながらルリちゃんにしがみついて訴えかけてくる。
瑠璃乃「あ、あはは……。そっか、そうだったんだ……。ルリが思うみたいに、姫芽ちゃんも、そう思ってくれてたんだ。なんだか、すごく遠回りしちゃってたんだね……」
姫芽「うう〜!うう〜!」
瑠璃乃「よしよし、よしよし…………」
ルリちゃんは、姫芽ちゃんの頭を優しく撫でる。
姫芽「るりちゃんせんぱい〜…………」
すると、
姫芽「グスッ……………それはそうとして、負けて悔しいので、また今度リベンジマッチにはお付き合いください〜……………」
瑠璃乃「えっ!?う、うん、わかった……!」
瑠璃乃「ルリのバッテリーが切れない程度に、お願いね…?」
そして、2人のわだかまりが解消し、翌日………。
慈「一件落着……なのはいいとして。それ、どういうこと?」
淳平「ルリちゃん凄いくっつかれてる……」
俺もめぐも、少し苦笑いする。
姫芽「うう〜!うう〜!」
瑠璃乃「仲間だから、と言ってます」
慈「え?どういうこと??」
淳平「今ので分かったんだ……」
瑠璃乃「つまりね、ルリと姫芽ちゃんはようやく心と心を通わせることができたんだよ」
ふむ、
淳平「まぁ、それなら良かったけどさ」
慈「………心を通わせると、そんなんなっちゃうの?」
瑠璃乃「や、わかんないけど。でもさ、たまにはこういうのもいいな、って。ルリたち3人も……そうだったよね?いっぱい、いろんなことでぶつかって…………」
淳平「うん。そうだったね」
瑠璃乃「あれ、ひょっとして、その人とぶつかるごとに、次から消費バッテリーが軽減されてゆくってシステムだったり……!?」
慈・淳平「「そうだったの!?」」
姫芽「……………るりちゃんせんぱい〜」
慈「あ、喋った」
姫芽「アタシもこれから遠慮しないようにがんばりますから〜……一緒に、一緒にがんばりましょうね〜」
瑠璃乃「うん、がんばろうね、一緒に、一緒にね」
すると、ルリちゃんが「そういえば」と言い、
瑠璃乃「今回、ゲーム中に姫芽ちゃんが「うりゃりゃりゃー!」って感じにならなかったのは、あれも遠慮してたからなのかなあ」
姫芽「?なんですかその「うりゃりゃりゃー!」って〜。アタシ、普段そんなこと言ってます〜?」
瑠璃乃・淳平「「自覚なかったの!?」」
慈「え?こわ」
姫芽「でも、確かにそうですね……。るりちゃんせんぱいに果たし状で呼び出されたときから『うわ〜………やだ〜……』って思いながら戦ってたので……」
瑠璃乃「テンションのせいだったかあ」
姫芽「あ、でも次からは大丈夫ですよ!リベンジマッチが終わった後にでも!何十戦でも!何百戦でも!るりちゃんせんぱいにお付き合いしますよ!
瑠璃乃「と、ときどき一緒に遊ぼうね、ときどき!」
姫芽「あっそう、ですか……………」
瑠璃乃「いや、ちがくて!今のは遠慮したわけじゃなくて!!ルリって基本的に白黒ハッキリつける対人戦があんま得意じゃなくて!だからで!ん〜〜〜、わかった!――じゃあ、ひめっち!」
姫芽「!?」
瑠璃乃「いや、なんかこう、仲間になった証……的な!姫芽ちゃんから、ひめっちに呼び名を変更するということで、ルリの意思表示を……………。エト、ちょっと安直すぎたかな――」
姫芽「――いえ、いいと思います〜!」
姫芽ちゃんが眼をキラキラと輝かせる。
瑠璃乃「そ、そう?」
姫芽「はい〜!なんというか心の距離がグッと縮まったというか、アタシもようやくるりちゃんせんぱいに認めてもらったんだって心から思えるような本当にMVPな呼び名だと思います〜!」
瑠璃乃「そ、そこまで?」
姫芽「はい!」
淳平「で、それはいいんだけどさ」
瑠璃乃「え?」
淳平「ラジオだけど、俺の方でも生徒会や放送部にあたってみたんだけど……やっぱり放送室のスケジュール的に難しそうなんだよ。どうにか枠を譲ってもらうしかないかな……」
瑠璃乃「ありがとジュン兄ぃ。それについては、ルリに考えがあるんだ」
淳平「考え?」
瑠璃乃「うん、蓮空祭当日にスケジュールが抑えられなくても、ラジオはできるから。あ、でも、今からだと、ちょっと……いや、かなり忙しくなっちゃうかもだけど。どうかな、ジュン兄ぃ。めぐちゃん。それに、ひめっち。協力してくれる?」
慈「そりゃ、ねえ?」
淳平「喜んで」
姫芽「その言葉、待ってました〜!」
そして、そのことを生徒会と放送部に話して再度頼むと、蓮空祭当日はスケジュールがいっぱいだが、準備期間ならば空きは幾らでもあるので構わないということだった。
ー 翌日 ー
瑠璃乃「ぴんぽんぱんぽーん!」
校内放送が学校に鳴り響き、ルリちゃんのラジオが始まった。
動物喫茶を準備しているスリーズブーケは……
花帆「あ、この声!」
吟子「ほんとに毎日やるんですね……」
梢「ふふ……。不思議と準備が、いつもより楽しくなってくるわね」
瑠璃乃『お祭り準備中の、蓮ノ空の皆さまに、ルリノ・オーサワがお届けします。みらくらラジオ〜!きょうもがんばってるみんなを、応援しちゃうぜ〜!』
体育館での1発芸を披露するために準備しているDOLLCHESTRAは、
綴理「ラジオの時間だ〜」
小鈴「きょうは、どの部が紹介されるんでしょうね!」
さやか「はぁはぁ、た、楽しみですね!」
そして、ルリノDJはそれぞれの部活やグループの出し物を順番に紹介していく。
瑠璃乃『というわけで、吹奏楽部によるコンサートは、蓮空祭当日の13時から!うおーがんばれがんばれー!ルリもメッチャ応援してるからね〜!さて、お次は〜』
ルリちゃんが次の原稿を手に取る。
瑠璃乃『お。きょう蓮空祭を紹介する新聞部の記事が完成したって!すごいすごい!お疲れさま〜!じゃあちょっと、記事を抜粋させてもらって………ん?』
瑠璃乃『なんか黄色いマーカー振ってあるんだけど。これ、読めってこと?』
ルリちゃんの少し慌てた声が校内放送に乗って届けられる。生徒たちは『ん?』と、思い手が止まる。
瑠璃乃『うわ、スクールアイドルクラブの、しかも、みらくらぱーく!の紹介記事だ!ルリがこれ読むの自画自賛みたいになっちゃわない!?大丈夫!?』
その声が放送された瞬間、生徒たちは「「「あっ、また藤島(先輩)がなんかしたんだな」」」と理解したという。
瑠璃乃『いや、でも書いてくれたうちの1年生を労うという意味もありますし……………。いかせていただきます、ルリ!記事はこちら!『みらくらぱーく!!!!! 神!!!!!!!』』
それを聞いた全校のみんなは、教室でクスクスと笑い始めていた。
瑠璃乃『………ぷっ。あははははは!!』
ルリちゃんも笑い始めた。
瑠璃乃『紹介してないじゃんこれ!いいの!?いいわけないよね!だってスリーズブーケとDOLLCHESTRAはちゃんと書いてあるし!』
瑠璃乃『あ一笑った。まったく、まったくもう〜。それじゃあ、チームとしてもひとつにまとまって。ますますパワーアップしていくみらくらぱーく!の活躍を、これからもこうご期待!』
瑠璃乃『――と、ルリ思う、ゆえにみらくらぱーく!あり!』
ー つづく ー
感想・評価よろしくお願いします!!