蓮ノ空スクールアイドル録   作:松兄

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第52話:早朝ランニング

翌日、目覚めた淳平が家の外に出て背伸びをしていると、梢が練習着に着替えて出てきた。

 

淳平「梢? 自主練か?」

 

梢「ええ。吟子さんと花帆と一緒に走り込みに行ってくるわ」

 

淳平「頑張るよな……」

 

ふむ。

 

淳平「俺も行くよ。ドリンクとか用意してくるから待っててくれるか?」

 

梢「いいの?」

 

淳平「そのくらいさせろよ……」

 

淳平は家の中に戻り、水をボトルに入れて紙コップを一緒にリュックに入れて3人と一緒にでていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして走り込みを開始する3人。最初にゴールに来たのは梢。その後遅れて、吟子ちゃんが駆け込んできた。

 

吟子「はぁはぁ、先輩……やっぱり、速い………ふ、ふう」

 

梢「お疲れ様。吟子さんは地元の方々に、なかなかの声援を浴びていたわね。まるで駅伝選手みたいだったわ」

 

吟子「うっ………。みんな朝早いんだから別に、ぜんぜんですからね」

 

淳平「いいじゃん。励みになるだろ?」

 

吟子「それは、まあ……」

 

梢「花帆は……まだ少し、かかるかしらね」

 

淳平「あいつも成長したんだけどな、昔から身体を動かしてる吟子ちゃんの体力には敵わないか……」

 

吟子「花帆先輩、昔病弱だったって言ってましたっけ?」

 

淳平「そうそう」

 

吟子「…………」

 

淳平「…………」

 

梢「…………」

 

少しの間、お互いに無言になる。

 

吟子「あの、梢先輩。去年のラブライブ!って、どうだったんですか?」

 

梢「ずいぶん突然ね」

 

吟子「す、すみません。えっと……私も、より具体的な目標としてラブライブ!を目指すために、なにかこう、心構えなどをご教授願おうかと………」

 

おおう。しっかりしてるなぁ……。

 

梢「それはいい心がけだわ。でも、そうね……。言葉にして伝えるのは、少し難しいわね」

 

吟子「というと………?」

 

梢「私にとってラブライブ!の決勝は憧れの舞台、そこに立てたのは嬉しかったし、誇りでもあったわ。けれど、まだなにかを成し遂げられたわけじゃないから」

 

淳平「吟子ちゃんに言えることがあるとすれば、『怪我には気を付けて』、『クラブの仲間を大切に』、『練習を地道に積み重ねて一歩ずつレベルアップしよう』。そんな、当たり前のことばかりだな』」

 

吟子「……でも、どれも大切なことですよね!ありがとうございます!」

 

梢「ふふ。じゃあ今度は私の番。吟子さんは、どうしてそんなに伝統の文化が好きなの?」

 

俺も気になるな……。

 

淳平と梢が吟子ちゃんを見つめると、

 

吟子「えっ?それは………。花帆先輩には、ちょっとお話したんですけど………」

 

吟子「私、子どもの頃から、このあたりの職人さんたちが友達で、よくしてもらってたんです。けん玉、あやとり、いろんな遊びを教えてもらいました。どれも、私と同年代の子は、知らないものばかりかもしれませんけど……」

 

吟子ちゃんは、目を輝かせながら俺と梢に話してくれる。

 

吟子「すごいんです、職人さんたちは。みんな、私の生まれるずっと前から、ひとつのものに打ち込んでいて。気が遠くなるぐらいの年月、勉強し続けて。本当に尊敬します。私なんて1か月の刺繍で、指が痛くなっちゃうのに………。格好いいと、思います。だから好き、なんですけど……答えは、これで大丈夫ですか?」

 

梢「素敵な答えだったと思うのだけれど、大丈夫、というのは?」

 

吟子「あ、いえ。お二人の聞きたいことに答えられたら、いいんです。だから私は、ラブライブ!に優勝したくって」

 

吟子「職人さんたちみんな……おばあちゃんだってそうです。加賀繍の技術は、ちっぽけな私なんかより、ずっとずっと価値があって…………」

 

梢「……………」

 

吟子ちゃん………。

 

吟子「だから、私が伝統の文化にできることはなんだろうって考えたら。これを伝えることなんだ、って。昔の人が紡いできた想いを、未来に届けるために」

 

淳平「そっか…………。その志は、すごく立派だと思うよ」

 

吟子「それに……」

 

吟子「わ、私だって。先輩たちのお力になりたいです。一緒に過ごした時間は、花帆先輩には、ぜんぜん、勝てないかもですけ ど……………」

 

梢「まあ。……ありがとうね、吟子さん」

 

淳平「ありがとう」

 

吟子「いえ、すみません……私なんかが調子に乗って、出過ぎた発言を……」

 

淳平「………こら!」

 

吟子「えっ……」

 

淳平「そうやって自分を下げる発言は禁止!」

 

吟子「で、でも……」

 

梢「そうね。それは淳の言うとおりよ。自分を卑下した発言は私達としても悲しいわ」

 

吟子「は、はい……」

 

ショボンとする吟子ちゃん。でも、

 

梢「でもね?『私たちの力になりたい』その気持ちは、とても嬉しいわ。あなたも私たちの、かわいい後輩だもの」

 

吟子「………っ。わ、私!慈先輩のことも、綴理先輩のことも、淳平先輩のことも、尊敬してますけど、でも、いちばん尊敬してるのは、梢先輩ですから!」

 

俺と梢は顔を見合わせる。

 

淳平「え……?いちばんは花帆じゃないの?」

 

吟子「えっ!?なんで花帆先輩の名前が!?」

 

なるほど……。

 

淳平「無自覚と……」

 

梢「そうみたいね」

 

吟子「なんですかいったい〜!!」

 

するとそこへ、

 

花帆「やっとついた〜〜〜!」

 

ようやく花帆がゴールした。

 

梢「がんばったわね、花帆」

 

淳平「ほら、飲み物」

 

花帆「あ、ありがどぉ〜!淳兄ぃ〜!」

 

花帆は水を受け取ってゴクゴクと勢いよく飲む。

 

花帆「あたしがんばりましたぁ〜〜〜!梢センパ〜〜〜イ!」

 

梢「よしよし。でもいいの?後輩が見ているわよ?」

 

花帆「うう〜。このままじゃくじける5秒前なので……背に腹は代えられません〜…………」

 

吟子「…………まったく、花帆先輩は。ほら、ちょっと休憩したら、またもうワンセットいくよ!」

 

花帆「え〜!?あと1時間ぐらい休んでからにしようよお〜!」

 

梢「ふふ、やる気だこと。でもそうね………私も最近、さやかさんに長距離走で抜かれそうになってきたのよね………。また一から鍛えなおそうかしら。ねえ、花帆」

 

花帆「それはぜひ、おふたりで張り合っててください〜!」

 

あははは……。

 

俺は、梢の脳筋ぶりに乾いた笑みを浮かべることしかできなかった。

 

 

ー つづく ー




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