蓮ノ空スクールアイドル録   作:松兄

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第53話:朽ちてしまった衣装

自主練のランニングを終えて戻ってきた4人。まだ1日は始まったばかりだと言うのに、花帆はもうヘトヘトだった。

 

花帆「ひ、久しぶりに、ハードな1日でしたね…………」

 

淳平「まだきょうは始まったばかりだぞ、花帆」

 

花帆「おかしいなあ…………?あたし、クラスの友達には体力あるねって言ってもらえたんだけどなあ……?」

 

花帆は息が切れてるのに、吟子ちゃんはもう心拍も落ち着いていた。

 

吟子「がんばってください。目指せ、追い付け追い越せさやか先輩、ですね」

 

花帆「そこいちばん厳しいところじゃない!?さやかちゃんって綴理先輩とか慈先輩よりスタミナあるんだよ!?サイボーグだよ!」

 

弱音を吐く花帆。俺達が『やれやれ……』と思っていると、すると、

 

吟子祖母「ああ、ちょっといいかしら」

 

吟子ちゃんのお祖母さんが話しかけて来た。

 

吟子「どしたん?」

 

吟子祖母「ちょっと話があるんやけどぉ……」

 

お祖母さんの部屋に通された俺たち。なんだろう……。

 

吟子「それで、話って?」

 

吟子祖母「最初にい、聞いておきたいことがあるげん。この『伝統の衣装』は、あなたたちにとって、どんなもんなん?」

 

花帆「なんだかすごい衣装、です!」

 

吟子祖母「ふふ。吟子は?」

 

吟子「………先人の想いが込められた、唯一無二の大切な衣装、やと思う。それがどうしたん?」

 

吟子祖母「では、梢さんは?」

 

梢「私にとっては。ラブライブ!を優勝するための衣装です」

 

吟子祖母「……………ほーなんや、なるほどね」

 

吟子「これって、なにかのテスト……とかやないよね?」

 

吟子祖母「ええ。心配せんでも、私の答えは変わらんよ」

 

吟子祖母「…………この衣装はぁ、もう直せんげん」

 

淳平「………え?」

 

吟子「……え」

 

吟子祖母「生地そのものが痛んどるげん。これやとお、衣装の形を元通りにして、着れたとしても、"踊る"という動きに耐えられんげん。せいぜい、博物館に寄付するくらいや」

 

花帆「そんな!」

 

淳平「修復不可能なほどに傷んでしまってるって事ですか……」

 

吟子祖母「そういうことや……」

 

梢「それは……残念です」

 

吟子「……だめ、なんや。おばあちゃんでも……?」

 

吟子祖母「ええ。物には魂が宿る。そう教えてきとったがいね、吟子。ほやけどぁ、どんなに大切にしてもお、全てを残すことはできんげん。時にはぁ、滅んでゆくその儚さをしのび、心を痛めることだってある」

 

お祖母さんの言葉に、吟子ちゃんは唇を噛む。

 

吟子「そんな……。ほんなこと言わんといてよ。私は、この町の……みんなが大切にしてる伝統を、ぜんぶ守りたいって思っとるんに…………!何でおばあちゃん、ほんな諦めたみたいなことを………」

 

吟子祖母「聞かんか、吟子」

 

吟子「つ」

 

吟子祖母「あなたがぁんね、この衣装を朽ち果てるままにしたくないというのなら、もうひとつ方法がある」

 

方法?そんなのあるのか……?いや、まてよ?

 

淳平「もしかして……形を変えて残す?」

 

俺の言葉に、お祖母さんは目を丸くして驚く。

 

吟子祖母「そのとおりや。なんでわかったん?」

 

淳平「衣装じゃないですけど、前例があったんで。もしかしたらと思って」

 

花帆「あっ!もしかして、《逆さまの歌》と《Reflection in the mirror》のこと?」

 

淳平「そうだ」

 

すると、吟子ちゃんのお祖母さんはクスッと笑い、

 

吟子祖母「時代が移ろうなら、残されたものもそのあり方を変えてゆかんなん。時の流れに逆らうんじゃなくて、自らの手で未来へと針を進めるげん」

 

吟子「自らの手、って…………?」

 

吟子祖母「吟子、あなたがやるの。あなたの手で、衣装を仕立て直さんか」

 

吟子「あ」

 

花帆「吟子ちゃん……………?」

 

吟子「なんで……だって、おばあちゃんが……」

 

吟子祖母「手伝いがほしいんやったら、力を貸すしい。ほやけどぉんね、私にできることはそこまで」

 

吟子「なんで!?なんで急にそんなこと言うん!わからんよ!直してくれるって思っとったんに!」

 

吟子祖母「私はぁんね、この衣装には手を加えることはできん。これはやっぱり、今を生きるあなたたちスクールアイドルがやらんなんことや」

 

吟子「やからって、私なんかが………」

 

淳平「…………吟子ちゃん」

 

吟子「…………少し、考えさせて」

 

そして吟子ちゃんは、部屋を出ていった。

 

淳平「心配だから俺が様子見てるよ」

 

梢「お願いね? 淳……」

 

そして俺も吟子ちゃんを追って部屋を出ていった。

 

吟子祖母「はぁ……ごめんなさいね。せっかく来ていただいたのに、力になれんくってぇ」

 

梢「いえ。でも、どうして………?」

 

吟子祖母「その答えは、今はまだ。ひとつ言えるとすればぁ、この衣装がそういうものやから、かしらね」

 

梢「わかりました。ただ、この衣装をどうするべきなのかは、 私も、他のみんなと話してみないと。……まずは、吟子さんと、かしらね」

 

吟子祖母「ふぅ……あとはあの子が、踏み出せるかどうか」

 

 

ー つづく ー




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