蓮ノ空スクールアイドル録   作:松兄

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第54話:形を変えて…受け継がれるもの

吟子ちゃんのお祖母さんから「この衣装はもう直せない」と言われ落ち込む花帆たち。するとお祖母さんは形を変えて残すことを提案し、その役目は孫である吟子ちゃんにやるように言う。

 

吟子ちゃんは苦しそうな顔をして、部屋の外に出て行ってしまった。

淳平もそれを追いかけ、しばらくしてお祖母さんとの話を終えた梢たちも来た

 

花帆「ね、吟子ちゃん」

 

吟子「すみません、あの。花帆先輩、梢先輩、淳平先輩。少し、私に付き合ってくれませんか。行きたい場所が、あるんです」

 

そしてやって来たのは、昨日みんなで一緒に来た、"かなざわ暮らしの博物館"だった。

 

花帆「ここは、昨日の……………」

 

梢「在りし日の、芸楽部の写真ね」

 

吟子「……………子どものころから、私にとってこの町の人は、友達であり、家族だったんです。私が遊びに行くと、みんな嬉しそうに思い出話をしてくれました。それを聞くのが、私は好きでした」

 

吟子ちゃんは、昔を懐かしむ様に話してくれた。

 

吟子「みんなが好きなものを、大事にしているものを、私はただ、守りたいだけなのに。……どうしてなにもかも、そのままではいられないんでしょうか……」

 

吟子ちゃん………。

 

花帆「大丈夫だよ、吟子ちゃん」

 

花帆が声を掛ける。

 

花帆「ね、あたしたちでやろうよ。形を変えて残すんだよ。同じだよ、《Reflection in the mirror》のときと。今度はみんなで、作ろう?」

 

吟子「でも………!私の手で変えてしまったら……それは、たくさんの人の想いをないがしろにしてしまうことには、なりませんか………?」

 

淳平「え………?」

 

吟子「だって、今までせっかく残っていて、この先の人にも、ちゃんと正しく伝えてあげなきゃいけなくて……。こんな、私なんかが…………。私の手が加わったものに、価値なんて、ありません。伝統を、誰かの想いを、汚しちゃう……」

 

………そうか。

 

淳平「それが、吟子ちゃんの迷いだったのか」

 

梢「あなたにとって、伝えられてきたものを守ることは、自分よりもよっぽど大事なことなのね」

 

吟子「………スクールアイドルクラブのことだって、大事です………!でも、伝統は私のすべてで………!私は……」

 

梢「……………少し、聞いてくれるかしら」

 

梢が吟子ちゃんに話し始める。

 

梢「乙宗家はね、もともと音楽家の家系だったの。多分に漏れず、私も様々な楽器を習わせてもらったわ。乙宗家の伝統を守り続けるのなら、今の私はいなかったでしょうね」

 

そう。でも、梢は……、

 

梢「けれど私は、スクールアイドルを選んだわ」

 

吟子「……………先輩はいつでも胸を張って、立派です。私とは……違います」

 

花帆「そんなことないよ、吟子ちゃん。センパイだって、迷ったり、家族に反対されたりして……………それでも、自分はスクールアイドルになるんだって、決めたんだよ」

 

花帆は梢のことは吟子ちゃんよりは知っている。花帆は吟子ちゃんに訴えかける。

 

花帆「吟子ちゃんと、同じだよ。最初から、立派だったわけじゃなくて………。たくさんの不安を乗り越えて、ここまで来れたんだよ」

 

吟子「………………怖く、なかったんですか?」

 

梢「もちろん、怖かったわ。新しいことを始めるときは、いつだって」

 

吟子「!!」

 

吟子ちゃんは、昨日の1年生3人での会話を思い出す。

 

吟子『すごく不安だけど!でも、くじけたくないから!とにかく前だけ向かなきゃって、決めてるだけ!』

 

 

 

 

 

梢「でもね、もう大丈夫。今は、ひとりじゃないから」

 

淳平「それにさ、伝統を時代に合わせて変えるにしても、吟子ちゃんみたいな子なら、伝統の良さを壊さずに、きっと……もっと良いものにしてくれるって。みんな分かってるから。この街の職人さんたちも、その時が来ても吟子ちゃんなら……って言うと思うな」

 

吟子「私に……そんなことできるんかな」

 

淳平「できる! 俺だけじゃない。みんな信じてる」

 

吟子「っ!(………なんや、コレ……心がフワッてした)」

 

吟子「ラブライブ!優勝のために………。お話、聞けてよかったです。ありがとうございました!」

 

淳平「じゃあ、俺たちはみんなのところに行くよ。吟子ちゃんもどうするか決まったら来てね」

 

吟子「……はいっ!」

 

吟子「…………///」

 

俺たちが行くのと入れ違いに、吟子ちゃんのお祖母さんが吟子ちゃんに話しかける。

 

吟子祖母「いい先輩方やね」

 

吟子「うん。私なんかのために、一生懸命お話してくれて……」

 

吟子祖母「自分を卑下してしまう癖は、なかなか消えんね」

 

吟子「う……。だって………」

 

吟子祖母「吟子、あの男の子を見る目が昨日と違った気ぃするよ?」

 

吟子「へっ!? そんなわけ!///」

 

吟子祖母「ふふっ。吟子にも春がきたかいね」

 

吟子「何いっとん!?淳平先輩彼女おるよ!?」

 

吟子祖母「あら、そうなん?」

 

吟子「変なこと言わんでよ……///」

 

吟子祖母「ふふっ。さて、と」

 

吟子「…………それ、伝統の衣装を作り直すための、生地?すごい、いっぱいあるね」

 

吟子祖母「……芸楽部がなくなると聞いた日の話」

 

吟子「え……」

 

吟子祖母「年寄りの昔話や。あなたぐらいの年の子たちが、うちにやってきてぇんね。芸楽部という名前を、スクールアイドルクラブに変えたいです、って言いにきてん」

 

吟子祖母「もちろん私にそれを止める権利なんてないやろ。ほやのにどうしたんって聞くと、その子たちはできるだけたくさんの卒業生を訪ねて、直接伝えたかってんって。自分たちが新しい道に進むのを、応援してほしいから、って。ほやからぁんね、私は衣装の作り方を彼女たちに教えてあげてん」

 

吟子祖母「なにかを変えることは、とても勇気がいることや。ほやけどぉ、過去は過去。どんな時代やって、この今を生きとる人がいちばん偉いんやって、そう胸を張ってほしくてぇ」

 

吟子「そうやったんや………。この衣装は、先輩方がおばあちゃんに教わって…………」

 

吟子祖母「伝説だの、初代3ユニットだの言われていたけれどぉ。私に言わせれば、今でも残っとるのが奇跡やわ。あんな未熟な技術でね」

 

吟子祖母「久しぶりに見たあなたたちスクールアイドルクラブは、あの日、我が家にやってきた子たちと、同じ()をしとったわ。未来へ向かって、輝いとるやよ」

 

吟子「そんなことが……」

 

吟子祖母「覚えてないのも仕方ないねえ」

 

吟子「え?」

 

お祖母さんの言い方が気になった吟子ちゃんが聞き返す。

 

吟子祖母「だってぇ、あなたはまだ赤ちゃんやったもん」

 

吟子「私も、会ったん……………?」

 

吟子祖母「ほや」

 

吟子「……………昔の人が紡いできた想いを、未来に届けるために……。ねえ、おばあちゃん」

 

吟子祖母「なんや?」

 

吟子「私、やりたいことがあるげん」

 

 

ー つづく ー




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