吟子ちゃんのお祖母さんから「この衣装はもう直せない」と言われ落ち込む花帆たち。するとお祖母さんは形を変えて残すことを提案し、その役目は孫である吟子ちゃんにやるように言う。
吟子ちゃんは苦しそうな顔をして、部屋の外に出て行ってしまった。
淳平もそれを追いかけ、しばらくしてお祖母さんとの話を終えた梢たちも来た
花帆「ね、吟子ちゃん」
吟子「すみません、あの。花帆先輩、梢先輩、淳平先輩。少し、私に付き合ってくれませんか。行きたい場所が、あるんです」
そしてやって来たのは、昨日みんなで一緒に来た、"かなざわ暮らしの博物館"だった。
花帆「ここは、昨日の……………」
梢「在りし日の、芸楽部の写真ね」
吟子「……………子どものころから、私にとってこの町の人は、友達であり、家族だったんです。私が遊びに行くと、みんな嬉しそうに思い出話をしてくれました。それを聞くのが、私は好きでした」
吟子ちゃんは、昔を懐かしむ様に話してくれた。
吟子「みんなが好きなものを、大事にしているものを、私はただ、守りたいだけなのに。……どうしてなにもかも、そのままではいられないんでしょうか……」
吟子ちゃん………。
花帆「大丈夫だよ、吟子ちゃん」
花帆が声を掛ける。
花帆「ね、あたしたちでやろうよ。形を変えて残すんだよ。同じだよ、《Reflection in the mirror》のときと。今度はみんなで、作ろう?」
吟子「でも………!私の手で変えてしまったら……それは、たくさんの人の想いをないがしろにしてしまうことには、なりませんか………?」
淳平「え………?」
吟子「だって、今までせっかく残っていて、この先の人にも、ちゃんと正しく伝えてあげなきゃいけなくて……。こんな、私なんかが…………。私の手が加わったものに、価値なんて、ありません。伝統を、誰かの想いを、汚しちゃう……」
………そうか。
淳平「それが、吟子ちゃんの迷いだったのか」
梢「あなたにとって、伝えられてきたものを守ることは、自分よりもよっぽど大事なことなのね」
吟子「………スクールアイドルクラブのことだって、大事です………!でも、伝統は私のすべてで………!私は……」
梢「……………少し、聞いてくれるかしら」
梢が吟子ちゃんに話し始める。
梢「乙宗家はね、もともと音楽家の家系だったの。多分に漏れず、私も様々な楽器を習わせてもらったわ。乙宗家の伝統を守り続けるのなら、今の私はいなかったでしょうね」
そう。でも、梢は……、
梢「けれど私は、スクールアイドルを選んだわ」
吟子「……………先輩はいつでも胸を張って、立派です。私とは……違います」
花帆「そんなことないよ、吟子ちゃん。センパイだって、迷ったり、家族に反対されたりして……………それでも、自分はスクールアイドルになるんだって、決めたんだよ」
花帆は梢のことは吟子ちゃんよりは知っている。花帆は吟子ちゃんに訴えかける。
花帆「吟子ちゃんと、同じだよ。最初から、立派だったわけじゃなくて………。たくさんの不安を乗り越えて、ここまで来れたんだよ」
吟子「………………怖く、なかったんですか?」
梢「もちろん、怖かったわ。新しいことを始めるときは、いつだって」
吟子「!!」
吟子ちゃんは、昨日の1年生3人での会話を思い出す。
吟子『すごく不安だけど!でも、くじけたくないから!とにかく前だけ向かなきゃって、決めてるだけ!』
◇
◆
◇
◆
梢「でもね、もう大丈夫。今は、ひとりじゃないから」
淳平「それにさ、伝統を時代に合わせて変えるにしても、吟子ちゃんみたいな子なら、伝統の良さを壊さずに、きっと……もっと良いものにしてくれるって。みんな分かってるから。この街の職人さんたちも、その時が来ても吟子ちゃんなら……って言うと思うな」
吟子「私に……そんなことできるんかな」
淳平「できる! 俺だけじゃない。みんな信じてる」
吟子「っ!(………なんや、コレ……心がフワッてした)」
吟子「ラブライブ!優勝のために………。お話、聞けてよかったです。ありがとうございました!」
淳平「じゃあ、俺たちはみんなのところに行くよ。吟子ちゃんもどうするか決まったら来てね」
吟子「……はいっ!」
吟子「…………///」
俺たちが行くのと入れ違いに、吟子ちゃんのお祖母さんが吟子ちゃんに話しかける。
吟子祖母「いい先輩方やね」
吟子「うん。私なんかのために、一生懸命お話してくれて……」
吟子祖母「自分を卑下してしまう癖は、なかなか消えんね」
吟子「う……。だって………」
吟子祖母「吟子、あの男の子を見る目が昨日と違った気ぃするよ?」
吟子「へっ!? そんなわけ!///」
吟子祖母「ふふっ。吟子にも春がきたかいね」
吟子「何いっとん!?淳平先輩彼女おるよ!?」
吟子祖母「あら、そうなん?」
吟子「変なこと言わんでよ……///」
吟子祖母「ふふっ。さて、と」
吟子「…………それ、伝統の衣装を作り直すための、生地?すごい、いっぱいあるね」
吟子祖母「……芸楽部がなくなると聞いた日の話」
吟子「え……」
吟子祖母「年寄りの昔話や。あなたぐらいの年の子たちが、うちにやってきてぇんね。芸楽部という名前を、スクールアイドルクラブに変えたいです、って言いにきてん」
吟子祖母「もちろん私にそれを止める権利なんてないやろ。ほやのにどうしたんって聞くと、その子たちはできるだけたくさんの卒業生を訪ねて、直接伝えたかってんって。自分たちが新しい道に進むのを、応援してほしいから、って。ほやからぁんね、私は衣装の作り方を彼女たちに教えてあげてん」
吟子祖母「なにかを変えることは、とても勇気がいることや。ほやけどぉ、過去は過去。どんな時代やって、この今を生きとる人がいちばん偉いんやって、そう胸を張ってほしくてぇ」
吟子「そうやったんや………。この衣装は、先輩方がおばあちゃんに教わって…………」
吟子祖母「伝説だの、初代3ユニットだの言われていたけれどぉ。私に言わせれば、今でも残っとるのが奇跡やわ。あんな未熟な技術でね」
吟子祖母「久しぶりに見たあなたたちスクールアイドルクラブは、あの日、我が家にやってきた子たちと、同じ
吟子「そんなことが……」
吟子祖母「覚えてないのも仕方ないねえ」
吟子「え?」
お祖母さんの言い方が気になった吟子ちゃんが聞き返す。
吟子祖母「だってぇ、あなたはまだ赤ちゃんやったもん」
吟子「私も、会ったん……………?」
吟子祖母「ほや」
吟子「……………昔の人が紡いできた想いを、未来に届けるために……。ねえ、おばあちゃん」
吟子祖母「なんや?」
吟子「私、やりたいことがあるげん」
ー つづく ー
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