あのあと、吟子ちゃんはスクールアイドルクラブのみんなを集めて話を始めた。
吟子「あの……もうみんな、梢先輩から聞いたと思いますけど、伝統の衣装のこと」
小鈴「あ、うん。直せないって………」
瑠璃乃「せっかく花帆ちゃんたちが見つけてきてくれたのに、残念だよね…………」
めぐやさやかちゃんたちが暗い顔になる。すると、
吟子「それでね。私からも、お願いがあって」
みんなは顔を上げて吟子ちゃんを見る。
姫芽「えっ、なになに〜?」
吟子「この初代の伝統の衣装、もっとバラバラにしてもいいかな?」
さやか「これ以上にですか!?」
花帆「どういうこと!?」
驚愕する花帆とさやかちゃん。だが、淳平にはなんとなく意味が分かっていた。
吟子「あ、えっと………あのね。私、新しく9着の衣装を作りたいんです。その新しい衣装に、この伝統の衣装の生地を使いたくて」
花帆「それって……………」
淳平「やっぱりか」
俺の予想と合っていた。吟子ちゃんが伝統の衣装を、ただ影も形も無くすわけないからな。
吟子「この衣装には、きっとまだ想いが残っているんです。私はそれを拾い上げて、そこに……皆さんの気持ちも、私の気持ちも込めたい」
綴理「ボクたちの?」
吟子「はい。スリーズブーケの衣装は、かわいらしくて、美しく」
吟子「DOLLCHESTRAの衣装は、綴理先輩と小鈴が並んでも、見栄えがして……3人のダンスが、ちゃんと麗しく見えるように」
吟子「みらくらぱーく!の衣装は、慈先輩らしく華やかに。瑠璃乃先輩や姫芽にも、いちばん似合うように」
吟子「それができるのは、今この時代を生きてる私たちだけだから」
吟子ちゃんは、前に進もうと覚悟を決めたみたいだ。
吟子「私なんか……って、気持ちはまだなくならないけど………でも、スクールアイドルの私は『私なんか』じゃないから!先輩たちを優勝させるために!そして、金沢の伝統を世界に広めるために!私のために、ラブライブ!を優勝するんだから!」
吟子祖母「ふっふふふ」
吟子ちゃんの決意。それをそばで聞いていたお祖母さんは、優しく笑っていた。
吟子「これが私の答えです」
淳平「………で、みんなはどうする?」
俺がみんなを見渡して聞く。
梢「いいんじゃないかしら。あなたらしくて」
花帆「うん、いい!いいと思うよ、吟子ちゃん!」
吟子「……っ」
さやか「吟子さん、悩みが晴れてよかったですね」
綴理「きれいな青だね。ぎんの色は、ボクたちを彩るアートだから。一年生のときのこずとちょっと似ていて、だけど、ちゃんとぎんだけの色だ」
梢「似ていた?そうかしら」
吟子「というわけで……どうでしょうか、皆さん。大変なのはわかっています。でも、私にやらせてほしいんです。私、衣装にちゃんと魂を込めます。新しい蓮ノ空の伝統にしてもらえるぐらい」
吟子ちゃんが頼み込むと、めぐが少し厳しい顔をしていた。
慈「……………吟子ちゃんひとりで?」
吟子「ひとりでは……ないと、思います。あ、いえ、作業はひとりでやるつもりですけど……。………皆さんの気持ちを、しっかりと、お預かりしますから」
吟子ちゃんの言葉を聞いためぐは、厳しい顔から、ニヤッと笑い。
慈「いいよ、やんなさい」
吟子「ぁ………えっ?それ、慈先輩がひとりで決めて、いいんですか?多数決とか、話し合いとか………」
淳平「みんなの顔見てれば分かるよ。反対するやつなんか、一人もいないよ。寧ろみんな応援すると思うよ。それに……」
慈「やりたいことってのは、言ったもん勝ちなの。でしょ?」
吟子「慈先輩!」
姫芽「めぐちゃんせんぱい〜!」
すると、吟子ちゃんは思い出したように少し暗くなり、
吟子「も、もちろん、出来が気に入らなかったら、好きに直してもらって結構です!なんなら、捨ててもらっても……」
瑠璃乃「出てる出てる!ネガティブ出てる!」
吟子「うう」
花帆「大丈夫だよ、吟子ちゃん。みんながついてるから」
淳平「頑張ってね。じゃあ、そろそろ俺たちは蓮ノ空に戻ろうか。みんな荷物取ってこい」
スクールアイドルクラブ(吟子以外)『はーい!』
そして、荷物を持って百生家を出て、玄関先……。
吟子「それでは……その…………。皆さん、ありがとうございます!私、精一杯がんばります!」
吟子ちゃんは、実家に残って衣装を作り直す。加賀繍の工房やってるだけあって、寮よりも設備が整ってるからな。
淳平「それでは、お世話になりました!」
梢「お世話になりました!」
吟子祖母「またいつでもいらっしゃい」
花帆「吟子ちゃん、ほんとにひとりで大丈夫?」
吟子「うん。やりたいんだ。自分の力で」
花帆「わかった。あたしたちもそれ以外の準備、がんばるから!」
すると、お祖母さんが話しかけて来た。
吟子祖母「梢さん、淳平さん」
梢「はい」
淳平「なんでしょう」
吟子祖母「よかったわ。スクールアイドルクラブにあなたたちがいてくれて。少し見ん間にい、吟子も大人になったみたい」
梢「そんな、私はなにも」
淳平「俺も、そんなに力になれてるとは思えないですし……」
吟子祖母「ふふっ。……あなたたちはただ自由に、今を駆け抜ければいい。外野の声なんて、気にせんでいいんげんよ。……どうしてもあれこれと余計なことを言いたくなってしまう。やっぱり、年のせいなんかねぇ」
淳平「……梢、アレを」
梢「そうね。百生先生、これを」
梢はお祖母さんに、あるものを渡す。
吟子祖母「これは……チケット?」
梢「はい。今月度Fes×LIVEの、チケットです。吟子さんの作ってくれた新衣装は、そこでお披露目しようと思っています」
淳平「吟子ちゃんは、人の想いを力に変えて進むことのできる、強い子です」
梢「先生だけじゃない。この町の人や、かつてのスクールアイドル。芸楽部の部員たち。そして今も応援してくれている方々のために、歌います」
淳平「その決意を、見届けてくれませんか?」
お祖母さんは、チケットを受け取ると、
吟子祖母「ふふ、ありがとう。とても楽しみにしとるわ」
そう、笑ってくれた。
淳平「はい!」
梢「それじゃあみんな、帰りましよう!蓮ノ空に戻ったら、準備に練習に、大忙しよ!」
スクールアイドルクラブ(吟子以外)『おー!』
みんなが帰ったあと、百生家の作業部屋では……
吟子「…………さてと。決めたんだ。私がみんなの想いを届けるって。………まずは、伝統の衣装の中から、使えそうな生地を集めて……」
吟子「…………梢先輩や、慈先輩、綴理先輩、淳平先輩にとって、今年が最後のチャンス。ずっと、ずっとがんばってきて……最後の、ラブライブ!大会。………その衣装を、私なんかが作るなんて…………」
再び不安に襲われてしまう吟子ちゃん。
吟子「………だめ、手が震えてる場合なんかじゃ、ないのに」
すると、
ブーッ!ブーッ!
吟子ちゃんのスマホが鳴った。
吟子「なんやろ……小鈴から?」
メールを見ると、
姫芽・小鈴『『同じ空の下!一緒だよ!』』
小鈴ちゃんと姫芽ちゃんが、空が
吟子「っ………ふたりとも…………。……先輩も言ってくれた。
吟子『でもね、もう大丈夫。今は、ひとりじゃないから』
吟子「…………うん、大丈夫。みんな一緒だから」
ー つづく ー
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