蓮ノ空スクールアイドル録   作:松兄

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第55話:昔もいまも、同じ空の下

あのあと、吟子ちゃんはスクールアイドルクラブのみんなを集めて話を始めた。

 

吟子「あの……もうみんな、梢先輩から聞いたと思いますけど、伝統の衣装のこと」

 

小鈴「あ、うん。直せないって………」

 

瑠璃乃「せっかく花帆ちゃんたちが見つけてきてくれたのに、残念だよね…………」

 

めぐやさやかちゃんたちが暗い顔になる。すると、

 

吟子「それでね。私からも、お願いがあって」

 

みんなは顔を上げて吟子ちゃんを見る。

 

姫芽「えっ、なになに〜?」

 

吟子「この初代の伝統の衣装、もっとバラバラにしてもいいかな?」

 

さやか「これ以上にですか!?」

 

花帆「どういうこと!?」

 

驚愕する花帆とさやかちゃん。だが、淳平にはなんとなく意味が分かっていた。

 

吟子「あ、えっと………あのね。私、新しく9着の衣装を作りたいんです。その新しい衣装に、この伝統の衣装の生地を使いたくて」

 

花帆「それって……………」

 

淳平「やっぱりか」

 

俺の予想と合っていた。吟子ちゃんが伝統の衣装を、ただ影も形も無くすわけないからな。

 

吟子「この衣装には、きっとまだ想いが残っているんです。私はそれを拾い上げて、そこに……皆さんの気持ちも、私の気持ちも込めたい」

 

綴理「ボクたちの?」

 

吟子「はい。スリーズブーケの衣装は、かわいらしくて、美しく」

 

吟子「DOLLCHESTRAの衣装は、綴理先輩と小鈴が並んでも、見栄えがして……3人のダンスが、ちゃんと麗しく見えるように」

 

吟子「みらくらぱーく!の衣装は、慈先輩らしく華やかに。瑠璃乃先輩や姫芽にも、いちばん似合うように」

 

吟子「それができるのは、今この時代を生きてる私たちだけだから」

 

吟子ちゃんは、前に進もうと覚悟を決めたみたいだ。

 

吟子「私なんか……って、気持ちはまだなくならないけど………でも、スクールアイドルの私は『私なんか』じゃないから!先輩たちを優勝させるために!そして、金沢の伝統を世界に広めるために!私のために、ラブライブ!を優勝するんだから!」

 

吟子祖母「ふっふふふ」

 

吟子ちゃんの決意。それをそばで聞いていたお祖母さんは、優しく笑っていた。

 

吟子「これが私の答えです」

 

淳平「………で、みんなはどうする?」

 

俺がみんなを見渡して聞く。

 

梢「いいんじゃないかしら。あなたらしくて」

 

花帆「うん、いい!いいと思うよ、吟子ちゃん!」

 

吟子「……っ」

 

さやか「吟子さん、悩みが晴れてよかったですね」

 

綴理「きれいな青だね。ぎんの色は、ボクたちを彩るアートだから。一年生のときのこずとちょっと似ていて、だけど、ちゃんとぎんだけの色だ」

 

梢「似ていた?そうかしら」

 

吟子「というわけで……どうでしょうか、皆さん。大変なのはわかっています。でも、私にやらせてほしいんです。私、衣装にちゃんと魂を込めます。新しい蓮ノ空の伝統にしてもらえるぐらい」

 

吟子ちゃんが頼み込むと、めぐが少し厳しい顔をしていた。

 

慈「……………吟子ちゃんひとりで?」

 

吟子「ひとりでは……ないと、思います。あ、いえ、作業はひとりでやるつもりですけど……。………皆さんの気持ちを、しっかりと、お預かりしますから」

 

吟子ちゃんの言葉を聞いためぐは、厳しい顔から、ニヤッと笑い。

 

慈「いいよ、やんなさい」

 

吟子「ぁ………えっ?それ、慈先輩がひとりで決めて、いいんですか?多数決とか、話し合いとか………」

 

淳平「みんなの顔見てれば分かるよ。反対するやつなんか、一人もいないよ。寧ろみんな応援すると思うよ。それに……」

 

慈「やりたいことってのは、言ったもん勝ちなの。でしょ?」

 

吟子「慈先輩!」

 

姫芽「めぐちゃんせんぱい〜!」

 

すると、吟子ちゃんは思い出したように少し暗くなり、

 

吟子「も、もちろん、出来が気に入らなかったら、好きに直してもらって結構です!なんなら、捨ててもらっても……」

 

瑠璃乃「出てる出てる!ネガティブ出てる!」

 

吟子「うう」

 

花帆「大丈夫だよ、吟子ちゃん。みんながついてるから」

 

淳平「頑張ってね。じゃあ、そろそろ俺たちは蓮ノ空に戻ろうか。みんな荷物取ってこい」

 

スクールアイドルクラブ(吟子以外)『はーい!』

 

そして、荷物を持って百生家を出て、玄関先……。

 

吟子「それでは……その…………。皆さん、ありがとうございます!私、精一杯がんばります!」

 

吟子ちゃんは、実家に残って衣装を作り直す。加賀繍の工房やってるだけあって、寮よりも設備が整ってるからな。

 

淳平「それでは、お世話になりました!」

 

梢「お世話になりました!」

 

吟子祖母「またいつでもいらっしゃい」

 

花帆「吟子ちゃん、ほんとにひとりで大丈夫?」

 

吟子「うん。やりたいんだ。自分の力で」

 

花帆「わかった。あたしたちもそれ以外の準備、がんばるから!」

 

すると、お祖母さんが話しかけて来た。

 

吟子祖母「梢さん、淳平さん」

 

梢「はい」

 

淳平「なんでしょう」

 

吟子祖母「よかったわ。スクールアイドルクラブにあなたたちがいてくれて。少し見ん間にい、吟子も大人になったみたい」

 

梢「そんな、私はなにも」

 

淳平「俺も、そんなに力になれてるとは思えないですし……」

 

吟子祖母「ふふっ。……あなたたちはただ自由に、今を駆け抜ければいい。外野の声なんて、気にせんでいいんげんよ。……どうしてもあれこれと余計なことを言いたくなってしまう。やっぱり、年のせいなんかねぇ」

 

淳平「……梢、アレを」

 

梢「そうね。百生先生、これを」

 

梢はお祖母さんに、あるものを渡す。

 

吟子祖母「これは……チケット?」

 

梢「はい。今月度Fes×LIVEの、チケットです。吟子さんの作ってくれた新衣装は、そこでお披露目しようと思っています」

 

淳平「吟子ちゃんは、人の想いを力に変えて進むことのできる、強い子です」

 

梢「先生だけじゃない。この町の人や、かつてのスクールアイドル。芸楽部の部員たち。そして今も応援してくれている方々のために、歌います」

 

淳平「その決意を、見届けてくれませんか?」

 

お祖母さんは、チケットを受け取ると、

 

吟子祖母「ふふ、ありがとう。とても楽しみにしとるわ」

 

そう、笑ってくれた。

 

淳平「はい!」

 

梢「それじゃあみんな、帰りましよう!蓮ノ空に戻ったら、準備に練習に、大忙しよ!」

 

スクールアイドルクラブ(吟子以外)『おー!』

 

みんなが帰ったあと、百生家の作業部屋では……

 

吟子「…………さてと。決めたんだ。私がみんなの想いを届けるって。………まずは、伝統の衣装の中から、使えそうな生地を集めて……」

 

吟子「…………梢先輩や、慈先輩、綴理先輩、淳平先輩にとって、今年が最後のチャンス。ずっと、ずっとがんばってきて……最後の、ラブライブ!大会。………その衣装を、私なんかが作るなんて…………」

 

再び不安に襲われてしまう吟子ちゃん。

 

吟子「………だめ、手が震えてる場合なんかじゃ、ないのに」

 

すると、

 

ブーッ!ブーッ!

 

吟子ちゃんのスマホが鳴った。

 

吟子「なんやろ……小鈴から?」

 

メールを見ると、

 

姫芽・小鈴『『同じ空の下!一緒だよ!』』

 

小鈴ちゃんと姫芽ちゃんが、空が背景(バック)になるように撮られた写真を送ってきた。

 

吟子「っ………ふたりとも…………。……先輩も言ってくれた。

 

吟子『でもね、もう大丈夫。今は、ひとりじゃないから』

 

吟子「…………うん、大丈夫。みんな一緒だから」

 

 

ー つづく ー




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