蓮ノ空スクールアイドル録   作:松兄

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第59話:伝えたいもの……

あれから時間がすぎ、放課後の練習を終えた小鈴ちゃんは映画の撮影のために蓮ノ湖にやって来ていた。

 

小鈴「よおし……やるぞやるぞやるぞおー。映画のテーマは……そう。『チャレンジは楽しい!』」

 

まずは映画のテーマを明確にする小鈴。

 

小鈴「これまでの全部が間違っていたなんて思ってほしくない。だって、チャレンジは楽しいものなんだ。スクールアイドルクラブで徒町が頑張れてるのだって、そのおかげなんだから。この映画が完成すれば、きっと雪佳ちゃんも思い出してくれるはず……!」

 

小鈴ちゃんはスマホを撮影モードにして三脚にセット。録画カメラを湖に向ける。

 

小鈴「スマホセット良し。ひとまず、チャレンジに成功するところを撮ろう!まずはやっぱり最初の成功……湖渡り!」

 

そして、小鈴ちゃんは以前使った筏に乗り、適当な木をオール代わりにして湖に出る

 

小鈴「うおおおおおおっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

姫芽「お、やってるやってる〜」

 

吟子「なんで湖………」

 

淳平「危ねぇな……」

 

俺と吟子ちゃん、姫芽ちゃんがハラハラしながら小鈴ちゃんを見てると、

 

小鈴「うぉおおおおおおっ!……おおっ!?」

 

ドボーン!!

 

転覆した小鈴ちゃん。

 

小鈴「おぼぼぼぼぼぼぼ」

 

吟子&姫芽&淳平「「「小鈴(ちゃ〜〜ん)!!」」」

 

淳平「ふたりともゴメンコレ持ってて!!」

 

俺はふたりにスマホと財布を投げて靴を脱ぐ。

 

吟子「っ!は、はい!!」

 

淳平「世話の焼けるっ!!」ドボーン!!

 

俺はそのまま湖に飛び込み、泳いで小鈴ちゃんを救出に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

小鈴「あ、ありがとうございます……」ブルブル

 

小鈴ちゃんは寒さで震えている。

 

淳平「いや、危なすぎるって! いくら夏でも、水は冷たいんだぞ?なにしてんだ!」ブルッ

 

かくいう俺も少し寒い……。

 

小鈴「す、すみません……。服まで濡らしてしまって………」

 

淳平「それはぜんぜんいいけど!洗って乾かせば良いだけだし!」

 

吟子「これで映画になるの?」

 

姫芽「お〜。ずぶ濡れでも全然いいっていうのが、先輩の良いとこですよね〜」

 

淳平「そこ!からかわない! さっさと着替えるぞ。風邪ひかないうちに。俺は寮に戻るから戻ってくるまでに着替えておくこと!」

 

小鈴「は、はい。ごめんなさい、ありがとうございます」

 

淳平「まったく………」

 

そして俺は吟子ちゃんから財布とスマホを受け取り靴を持って寮に走って戻る。

 

姫芽「さて、そもそも録画は、と……ん?あー」

 

姫芽ちゃんの微妙な声に心配になる小鈴

 

小鈴「え、もしかして撮れてなかった!?何度も場所変えて頑張ったんだけど!」

 

姫芽「撮れてはいるけど〜」

 

小鈴が撮れた画像を見ると、

 

小鈴「わ、ボケが酷すぎて何も見えない」

 

吟子「映画にしようっていうのに、この画質じゃ厳しいんじゃないの………?」

 

小鈴「ぐうう……じゃあもっと近くで、肩に乗せるとか」

 

吟子「ブレが酷そうだし、そもそも一緒に沈んだらどうするのよ。スマホ壊れるよ?」

 

吟子ちゃんの正論パンチに小鈴ちゃんはハッ!とする。

 

小鈴「はー……吟子ちゃんはそういうとこ、すぐ気づいて凄いなあ」

 

吟子「こ、このくらい普通でしょ!」

 

小鈴「徒町だったら、やっちゃってたから」

 

姫芽「まあまあ、素直に誉め言葉は受け取っておこうよ。マネジメントの天才〜」

 

吟子「だから、素直に受け取るには持ち上げすぎなの!もう、淳平先輩が戻って来るまでにきがえたほうが良いんじゃないの?怒られるよ?」

 

姫芽「そだね〜」

 

小鈴「じゃあ着替えちゃいます……」

 

そして、小鈴ちゃんはふたりから借りたタオルで体と髪を拭き、持ってきた着替えに着替える。

 

吟子「それで?実際、その映画の進捗はいかほどなの?」

 

小鈴「いや、まだ、全然」

 

吟子「友だちが行っちゃう日までに、間に合いそうなの?」

 

小鈴「ヤバイデス」

 

固まる小鈴ちゃん。

 

小鈴「うおー、全然だめだー!!」

 

姫芽「小鈴ちゃんのやりたいことは叶ってほしいと思ってるけど〜、映画って大変じゃん?もちっと分かりやすく、ビデオメッセージとかに変えたら?」

 

小鈴「……………どーしても、映画が良くて。映画を、完成させたくて」

 

淳平「その子が、映画監督目指してたから?」

 

吟子「あっ、先輩……」

 

ここで、淳平が戻ってきた。

 

小鈴「あっ、いえ。それもそうなんですけど。映画は初めてやったチャレンジなんです」

 

小鈴ちゃんは自分の過去を語り始める。

 

小鈴「徒町は、家でも全然ダメダメで。小学校の頃、1回勝手に漁の手伝いしようとして大怪我しかけて、それ以来お人形みたいなものだったんだ。学校でも、人と比べて長所なんてひとつもなくて……」

 

小鈴「同じクラスだった雪佳ちゃんは徒町と真逆で、なんでもできて。凄いなって思ってたんだけど、雪佳ちゃんが言ってくれたんだ。『小鈴はいつも、へこたれなくて凄い』って」

 

ふむ………。

 

吟子「まあ、それはすごくそう思う」

 

淳平「俺も……」

 

小鈴「えへへ、ありがとうございます。雪佳ちゃんに言われた時はピンとこなかったんですけど、何かチャレンジしてみないって誘われて。目の前に居たのが映画監督目指してる雪佳ちゃんだったから、つい映画撮ろうって言ったんです」

 

なるほどね……。

 

淳平「それで最初のチャレンジが映画ってことか」

 

小鈴「はい!」

 

吟子「それは、うまくいったの?」

 

小鈴「いやもう全然ダメ。笑っちゃうくらい」

 

姫芽「だめだったんか〜い」

 

小鈴「あはは。徒町が主人公、雪佳ちゃんが監督だったんだけど、もう徒町が失敗しまくって。でもそうやって撮り直してる時に、言ってもらえたんだ。「それだよ」って」

 

小鈴「雪佳ちゃんもね、肝心な場所で音が撮れてなかったことがあったんだけど……普段失敗しないから余計に凹んじゃってね。そういう時徒町は「じゃあ次」って思うだけだからさ。徒町のそういうところに元気貰えるって言ってくれたんだ」

 

そっか……。その子は小鈴ちゃんの良さをちゃんと分かってくれてる子だったんだな。

 

小鈴「できた映画は散々だったし、雪佳ちゃんに言わせれば大失敗、だったんだけど……徒町にとってはいい思い出だったの。これからもたくさん、チャレンジしようって思えたくらい」

 

吟子「小鈴がへこまないのが、元気出た理由………」

 

小鈴「吟子ちゃん?」

 

吟子「……………小鈴が映画にこだわる理由も分かったけど、それってさ。大事なのは、小鈴が頑張ることなんじゃないの?」

 

小鈴「え?」

 

吟子「うまく言えないけど……ひとりで頑張る必要、ある?」

 

小鈴「………吟子ちゃん。………ありがと。でも、徒町は“気持ちを伝えること”を大事にしたくて。さやか先輩から学んだんです。徒町が気持ちを伝えなきゃいけないって。だから――」

 

すると、

 

さやか「そんな風に教えたつもりはありませんよ?」

 

そこに、さやかちゃんと綴理がやって来た。

 

小鈴「さやか先輩!?」

 

姫芽「こんにちは〜。あ、もうこんばんは〜」

 

綴理「こんばんは〜」

 

さやか「さっきずぶ濡れの淳平先輩を見かけて、事情を聞いて用事を急いで片付けて来たんです」

 

淳平「良いタイミングだったよ?」

 

俺がそう言うとさやかちゃんはクスッと笑う。

 

吟子「さやか先輩、今の教えっていう話は?」

 

さやか「小鈴さんが頑張らなきゃいけない、それは確かにそうです。でも、人を頼ってはいけないなんてことを教えた覚えもありません。……………いや、教えたっていうのはおこがましいんですが」

 

さやかちゃんは少し苦笑する。

 

小鈴「でも、さやか先輩!徒町がみんなに頼っちゃったら」

 

小鈴ちゃんは、今までスクールアイドルとして活動して思っていたことを吐き出す。

 

小鈴「スクールアイドルクラブのメンバーは、みんなすごいです。やってる間も、みんなだったらもっとうまくできるだろうなって、何度も思いました。さっきも、吟子ちゃんに」

 

吟子「……………」

 

淳平(そんなに劣等感感じてたんだ………)

 

小鈴ちゃんには、他のみんなとは違う、小鈴ちゃんだけの魅力が、ちゃんとあるのに。もちろん、めぐにはめぐ、花帆には花帆、さやかちゃんにはさやかちゃんだけの魅力が、それぞれ全員にあるけどね……。

 

小鈴「だから、結局徒町にできることは何もなくて、それじゃあ気持ちは乗せられないって、思って」

 

さやか「なるほど。あの時アドバイスだけで良いと言ったのは、そういう理由もあったんですね」

 

小鈴「はい……」

 

すると、

 

綴理「分かるよ」

 

小鈴「えっ?」

 

綴理「ボクも、気持ちは分かる。居るだけで良いって言われたって、みんなが頑張ってる横で。自分の色が乗っているとは思えなくて……。でもね、すず。みんなが手を差し伸べてくれるのは、すずの色があるからだ。最初にきみが居て、みんなが居る。だから、大丈夫」

 

小鈴「綴理先輩……」

 

綴理「ねぇ、すず。本当に伝えたい気持ちを、教えて。ボクたちは、それに乗るから」

 

この場にいる全員が、笑いながら頷く。

 

小鈴「……ッ! 本当に伝えたいのは……雪佳ちゃんに貰ったチャレンジする気持ちが。間違いじゃなかったよってことです!」

 

綴理「ん」

 

淳平「分かった!」

 

 

ー つづく ー




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