蓮ノ空スクールアイドル録   作:松兄

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第21話:綴理の気づき

綴理との練習で自分の足りない物を考えるさやかちゃんは、綴理に何か引っかかってるものは無いかと聞かれ、自身のフィギュアスケート選手時代の話をする。

 

さやか「最初は、なんでダメなのかも分からなかったんです。ある時から全然点数が伸びなくなって。技に失敗したわけでもなくて、ちゃんとこなせたはずで、なのに他の子よりも点数が低く出たんです」

 

淳平「理由はその後に分かったの?」

 

さやか「はい。審査員やコーチ、時にはライバルにも聞いて、言われたのは、"表現力"の問題だと言われました。演技構成……音楽表現……他の子にはあるものが、わたしにはないんだって」

 

綴理「表現力……?」

 

淳平「一番抽象的な部分だな……」

 

さやか「はい。それで、どうにもならなくなって、なんの解決策も浮かばないまま……気がついたら高校生になってました」

 

綴理「そっかぁ。それ、ボクにはあるの?」

 

さやか「それはもう。貴方のステージを初めて見た時に、これだと思いました。わたしに足りない全て……人を魅了するきらめき……」

 

綴理「一目で分かるものなんだね。その……きらめきっていうのは」

 

さやか「はい。……わたし、お姉ちゃんが居るんですよ」

 

お姉さん…?初耳だな。

 

淳平「姉妹がいるんだ」

 

さやか「はい。わたしなんか足元にも及ばないスケーターで、将来は世界大会でも活躍するに違いないって、そう言われてたほど凄かったんです。お姉ちゃんの演技にも、やっぱり人を惹きつける力があった……」

 

綴理「ふーん。……ボクとどっちが好き?」

 

淳平「綴理、その質問は意地悪すぎるぞ……」

 

さやか「そうですよ!!」

 

綴理「ごめん」

 

さやか「とにかく!そのお姉ちゃんの演技が凄く評価されてて、夕霧先輩のステージに重なるものがあって……」

 

淳平「……そのお姉さんには聞けなかったのか?」

 

綴理も同じことを思ったのかコクリと頷く。

 

さやか「……それだけは、出来ませんでした」

 

淳平「なんで?」

 

さやか「二年前、お姉ちゃんは怪我をして……もうフィギュアは諦めなきゃいけなくなったんです」

 

淳平「……悪い」

 

綴理「さや、ごめん」

 

さやか「い、いえ、そんな。それで、ふさぎ込んで、もう二度とリンクにも来ないって……そう言って……。まぁ、今はもうお姉ちゃんは元気です。わたしが家を出て寮生活を始めた時も、笑って送り出してくれましたし」

 

淳平「そっか。優しいお姉さんなんだな……」

 

さやか「はい。ただ、リンクに戻ってくることのないお姉ちゃんに……フィギュアの話をすることは、やっぱりできませんでした。わたしがお姉ちゃんの分まで頑張ると言ったのにこの体たらくですから、余計に。」

 

綴理「そっか……さやは優しいね」

 

さやか「アハハ…そうですかね? だから夕霧先輩に出会えた事は、本当に幸運でした。その幸運を、わたしの力不足で無駄にしたくない……」

 

綴理「ボクにあって……さやに無い。さやが欲しいものかぁ」

 

さやか「すみません、やっぱり難しい――」

 

綴理「なんか分かった気がする」

 

!? マジか!!綴理のこう言う時ってめちゃくちゃ頼りになる時だぞ!?

 

さやか「ほんとうですか!?教えてください!」

 

綴理「うん。じゃあ、明日は朝5:00に起こしてね」

 

さやか「はい!……はい?」

 

綴理「ジュンも、付いて来て」

 

淳平「どこか行くのか?」

 

綴理「うん。去年、ボクたちも先輩たちに連れて行ってもらった場所……」

 

淳平「?………ああ!もしかしてあそこか!確かに良いかも!ナイスアイディア!」

 

綴理「ピース」

 

さやか「えっ、あの……」

 

ああ、俺たちだけで盛り上がっても分からないよな。

 

淳平「さやかちゃん、たぶん大丈夫だから、明日は朝5:00に綴理を起こしてやって?騙されたと思って。俺も行くからさ」

 

さやか「……わかりました」

 

 

そして翌日早朝、俺と綴理、さやかちゃんの3人は、地元の朝市にやってきた。

 

綴理「こっちこっち」

 

さやか「ちょ、ちょっと待ってください!お買い物しに来たんですか!?」

 

淳平「ん?違うよ?あ、いたいた。すみません!」

 

俺は、働いていた二十代後半くらいの女性に声をかける。

 

?「ん? ああっ!淳平くん、綴理ちゃん!久しぶり!元気だった?」

 

淳平「はい。お久しぶりです。れいかさん」

 

綴理「久しぶり。で、こっちがさや」

 

さやか「へ?あ、はい!村野さやかと言います……が……」

 

れいか「うんうん、知ってる知ってる!ちゃあんと配信も見てるもの!!ちょっとみんな、淳平くんと綴理ちゃんがさやかちゃん連れてきたよ!!」

 

さやか「配信見てくださっているんですか!?」

 

さやかちゃんが喜んでいるところで、

 

淳平「それで、何すればいいですか?」

 

れいか「そうねえ……綴理ちゃんも淳平くんも久しぶりだからねえ。じゃあさやかちゃんは、お料理とかできる?」

 

さやか「えっ?!出来ますけど……」

 

綴理「うん。美味しい」

 

れいか「あら良かった。じゃあちょっと中でお手伝いして貰おうかしら!淳平くんは接客をお願いできるかしら?」

 

淳平「分かりました!」

 

すると、

 

綴理「あれ、ボクは?」

 

れいか「綴理ちゃんはそこに立ってくれているだけで、みんな喜ぶわ」

 

綴理「うん、わかった。任せて」

 

さやか「立っているだけでってどういうーーってちょっとあの!」

 

そしてさやかちゃんはれいかさんに中へと連れて行かれた。

 

そして数分後、さやかちゃんは鮮魚店のエプロンを着ていた。

 

れいか「じゃあ、改めまして宜しくね!私のことは気軽にれいかさんって呼んで!」

 

さやか「は、はあ……よ、宜しくお願いします。なにを宜しくすればよいのか、何もわからないんですけど……」

 

れいか「なに言ってるのよ!朝市に来たんだから、お店のお手伝いに決まってるじゃない!まずは海鮮丼屋さんね!」

 

さやか「まずは!?」

 

 

そして、さやかちゃんは海鮮丼屋でお手伝いをする。

 

さやか「ど、どうしてこんなことに……。あ、あの、私はどうすれば!!」

 

れいか「そうね!とりあえず見て覚えて!」

 

さやか「えーーーっ!?」

 

れいか「はいはい今日は近江町海鮮丼がおすすめよ!いらっしゃーい!!」

 

さやか「え、ええっと……い、いらっしゃーい……!」

 

れいか「ほらほらさやかちゃん、笑顔が硬いわ!淳平くんを見て?」

 

さやか「え?」

 

淳平「2番テーブルさん海鮮丼2人前!!1番テーブルのお客様にお料理お出しします!!おまちどう!海鮮丼大盛りになりま〜す!!」

 

れいか「ね?」

 

さやか「す、すごい……」

 

れいか「もっと、こういう感じよ!いらっしゃあああい!」

 

さやか「い、いらっしゃぁい……!うぅ……。」

 

れいか「うーん、慣れが必要みたいね。一緒に頑張りましょう!」

 

さやか「はい……すみません……」

 

そして終了時間になり……、

 

さやか「はあ……うまくいかなかったなあ……」

 

すると、綴理はお客さんと話していた。

 

綴理「うん。楽しいよ。そう、宜しく。わかった、またきてほしい。みんなまたね。ありがと」

 

さやか「先輩」

 

綴理「あ、さや。終わった?」

 

さやか「は、はい。なんとか……。ただ、どうしてもれいかさんと同じようにはいかなくて……」

 

するとそこへ、

 

淳平「ふ〜終わったぁ……」

 

綴理「お疲れ…ジュン」

 

淳平「おう」

 

するとさやかちゃんが、

 

さやか「あの……夕霧先輩。どうしてここでお手伝いを?」

 

綴理「それは……難しい」

 

さやか「難しい!?」

 

淳平「口で説明するのが難しいってことだよ。俺もしろって言われてもできないし……」

 

綴理「ごめん。でもたぶん、これが一番いいと思うんだ。さやが……欲しいものに。ちょっと違うか。さやがほしいものが分かるために?」

 

さやか「……夕霧先輩」

 

綴理「ごめんね。よく分からないね」

 

さやか「……いえ。自力では何も掴めなかったんです。夕霧先輩がわたしのために何か考えてくれていることは分かります。だから、信じます」

 

綴理「そっか。……うん、ありがと。さや、お店に来てくれる人を……スクールアイドルを応援してくれる人だと思って、頑張ってみて」

 

さやか「お店に、来てくれる人を。分かり、ました」

 

そしてそれから数日間、さやかは綴理と淳平と一緒に、朝市を手伝うことになった。

 

ー つづく ー




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