第66話:スランプ
それは去年……。姫芽ちゃんが動画配信で、初めて蓮ノ空学院のスクールアイドル、〈みらくらぱーく!〉と出会った頃に遡る。
姫芽『なに、これ………』
初めて慈と瑠璃乃の配信を見た時、姫芽は言葉がでなかった。
姫芽『えー!なにこれなにこれなにこれ!』
姫芽がスマホを胸に抱えながら、家の自分の部屋の中を転げ回る。
姫芽『なにこれ!かわいい!!』
姫芽『めっちゃ、かわいい!! そして――めっちゃ、たのしい!!!!』
初めて二人の配信を見た姫芽は、言葉が上手く出なかった。
姫芽『んーーーー……………』
姫芽『うああああ〜〜〜〜〜』
姫芽『たのしすぎた………あまりにも…………。み、みみみ、なんだっけ、そう、「わたしたちのテンションはここからここまでみらくらぱーく!、です!」 …………!出てきた!』
そして、その所属学校の名前を知ることになる。
姫芽『スクール、アイドル……。蓮ノ空、学院………。対戦よろしくお願いします!!!!』
姫芽『とりあえず……アーカイブ全部見るか!!』
そして、みらくらぱーく!のアーカイブを見終わった姫芽は、
姫芽『すごい……なんでこんなに……。アタシまで楽しくなるんだろ………』
姫芽『めぐちゃんと、るりちゃん………かあ。アタシもこんな風に、楽しいを伝えられたら……いいなあ』
こうして、姫芽はみらくらぱーく!と出会い、後に蓮ノ空に入学することになる。
………そして時は、現代へ。
月日は9月の中盤に差し掛かったとある日の夜、姫芽は、瑠璃乃といっしょに、FPSゲームのランクマッチを一緒に遊んでいた。
姫芽「やばい……ランク落ちる………!今度こそ全力で勝つぅ〜…………!」
瑠璃乃『ま、まあまあ、今回こそ頑張ろうよ。だいじょうぶだいじょうぶ』
装着したヘッドホンから、瑠璃乃の声が聞こえてくる。
姫芽「うう……がんばりますぅ〜。ありがとうございます、るりちゃんせんぱい……付き合ってもらっちゃって…………」
瑠璃乃『いいよいいよー。ただ、まさか同じランク帯になるとは思ってなかったケド……』
そう。このゲームの熟練度やプレイヤーの腕的に、瑠璃乃よりも姫芽の方が遥かに上手く、二人が同じランク帯に居るということはまず起こらない筈なのだ。
瑠璃乃『ひめっち、ルリ右のエリア行くねー』
姫芽「はーい」
姫芽・瑠璃乃『……………………』
無言になる2人。
姫芽「はあ………勝てるといいなあ」
瑠璃乃『調子悪そうだねえ』
姫芽「お恥ずかしい限りです〜。ゲームだけじゃなくて、部活でもちょっと調子悪いじゃないですか〜」
瑠璃乃『んー、まあ、そう、かな?』
お茶を濁す瑠璃乃。
姫芽「ダンス中うまく体が動かなくて、こう、ゲームみたいにドラッギングできればいいのにーとか思っちゃって」
瑠璃乃『そう、うまくは、いかない、よね!』
通話越しに、敵プレイヤーをkillしていく瑠璃乃。
姫芽「あれ、今思ったんですけどこのフィールド、ステージにしたら凄い楽しそうだと思いません〜?」
姫芽が気を抜いた瞬間……!
瑠璃乃『ひめっち!?そんなことより前前!!』
姫芽「にゃ!? クリアリング忘れた!?あ、待って待っ……また負けた〜!?」
クリアの証になるアイテムを取り忘れた上に、前からの敵の攻撃で倒されてしまう姫芽のキャラ。
GAME OVER
姫芽「………………」
瑠璃乃『あ〜………大丈夫?』
姫芽「ルリちゃん先輩……今日は、休みます……」
瑠璃乃『う、うん……。おつかれ〜〜〜…………』
そして姫芽はログアウトした。
次の日の朝、スクールアイドルクラブの朝練の時間……。
姫芽ちゃんがみらくらぱーく!の練習部屋にやって来た。
淳平「おっ、おはよう姫芽ちゃ………ん?」
なんか、空気がどよ~んとしてる……。暗い……。
瑠璃乃「あ、おはよーひめっ、ち………?」
ルリちゃんも気づいて挨拶すると、
姫芽「ふぇ〜ん……………」
姫芽ちゃんはもう泣きそうだ。
瑠璃乃「ああ……ひめっちがひものっちに……」
慈「ええっ、どうしたの?ひものっち!」
淳平「バカ! 落ち込んでる相手にそういう悪ノリするな!!」バシッ!
慈「痛った!彼女を叩くってなに!?」
淳平「状況考えろ状況を!!」
すると、皮肉を込めたのか……、
姫芽「ひものっち、昨日から10連敗かましてランク落ちしましたぁ〜」
淳平「姫芽ちゃんが!?」
姫芽ちゃんってかなり強いんじゃなかったっけ?確か入部する時に学生大会優勝経験あるって………
慈「10連敗だあ?そんなの、相手チームの首根っこ捕まえてリベンジ挑むしかないじゃん!やられっぱなしじゃ終われないよ!」
瑠璃乃「ランクマッチは仲間も対戦相手も毎回ランダムなんだよ、めぐちゃん…………」
慈「え?あ〜、そっか。じゃあ姫芽ちゃんが単純に弱かったってこと?」
姫芽「うっ……!」
淳平「………めぐ、殴って良いか?」
慈「ひどっ!ま、まあ元気出しなよ。そういう時もあるって。あれだけずーっと好きでやり続けてるんだから、山あり川ありだよ」
瑠璃乃「それただの悠久の大自然だよめぐちゃん………でも、そうだね、調子の悪い時はあるよ。ゲームも練習も」
淳平「あんまり気にして思い詰めたらダメだよ?」
姫芽「せんぱぁい……」
慈「ほら、今から始まるのは姫芽ちゃんのもう1個大好きな、みらくらぱーく!の練習タイムっ。楽しんで、嫌なこと塗りつぶしちゃお!」
瑠璃乃「そうそう、楽しいが一番!だよ、ひめっち!」
姫芽「れ、練習………」
ん………?
瑠璃乃「調子悪いならフォローすっからさ。ゲームもスクールアイドルもチーム戦だよ!」
姫芽「チーム……分かりました。がんばります〜!」
そして、練習が始まる。
淳平(ん〜〜……姫芽ちゃん、なんか動きが硬いんだよな。前はそんな事なかったのに……)
慈「はい、ワン、ツー、スリー、フォー。はいそこで姫芽ちゃんが前に出て一?」
めぐが姫芽ちゃんに指示するが、
慈「姫芽ちゃん?」
姫芽「わ、あ、すみません〜!」
上の空だったのか、中断してしまう。
慈「うーん、やっぱり調子悪い?前はこんなミスなかったし、寝不足とか?」
姫芽「寝てる時間は、変わらないと思うんですけど〜……」
慈「じゃあやっぱ、10連敗のショックが尾を引きまくって…………」
姫芽「それは……いや、でもあれです。アタシがほんとによくなくて〜……………」
慈「よくなくて?」
姫芽「ゲームも負け続きだし、しょーじきここ最近スクールアイドルの練習も自分で納得いってないんです」
瑠璃乃「ルリは、そこまで気になってないけど。めぐちゃんとジュン兄ぃは?」
淳平「そうだなぁ……確かに、最近前よりも動きが硬い気がするんだよな……原因が分かれば良いんだけど」
姫芽「うっ……」
慈「ま、初心者ってのはそれだけなんでも伸びやすいからねぇ。私がツマヨウ寺軍曹にしごかれたときみたいに。よく言うじゃん?勉強も30点から80点はすぐいくけど、80点を90点に伸ばすのは大変だって」
瑠璃乃「めぐちゃんが言うとものすごく説得力がないんだけど………!」
淳平「ああ。正直俺がいなかったら本当に説得力皆無だったと思う」
慈「2人共酷い!!」
憤慨するめぐ。はあ………。
瑠璃乃「いや、でも、そういうことかもね。スクールアイドルとゲーム、伸び悩みの時期が、たまたまたかぶっちゃったとか?」
姫芽「そう……でしょうか〜」
慈「とりあえず、頭で考えるより体使ってみよっか。結局、行動しなきゃうまくなんないしね!」
淳平「何か思うことあったら、何でも言ってくれていいから」
姫芽「はい〜」
姫芽「だと………いいなあ」
淳平(………?)
ー つづく ー
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