放課後、めぐは梢からとある用紙を貰い、姫芽ちゃんを探していた。
慈「わざわざそれぞれのユニットに、って…………ふう、梢は真面目なんだから〜」
淳平「まあ、それが梢の良い所で頼りになるところだけどな」
慈「まあね。お、姫芽ちゃーん!」
姫芽ちゃんの後ろ姿を見つけためぐが呼びかける。
姫芽「あ、淳平せんぱいと、めぐちゃんせんぱ〜い」
慈「やっほやっほ。姫芽ちゃんに渡したいものがあってね。探してたんだ」
姫芽「渡したいもの、ですか〜?」
首を傾げる姫芽ちゃん。めぐが用紙を手渡す。渡したい物とは……、
姫芽「!これ、って………!」
慈「そ。ラブライブ!のエントリーシート」
淳平「梢が一年生にはちゃんと意思確認がしたいって言っててな。綴理も『無理やり出るものではないから』って頷いて。いちおう、ユニットごとにひとりひとり聞こうって話になったんだ。めぐが姫芽ちゃん担当」
姫芽「ラブライブ!………アタシが、今の、アタシが………」
用紙を持つ手が震える姫芽ちゃん。
慈「ま、ほら。まずは10月の地区予選に向けて頑張ろうよ!色々サポートならしてあげるからさ!」
淳平「おう。1年生をしっかりと支えるつもりだ」
俺とめぐがそう言うと、姫芽ちゃんは恐る恐る口を開く。
姫芽「あ、の。これ、いつまでに提出を?」
淳平「ん?月末までだけど?」
姫芽「月末…………!」
慈・淳平「「姫芽ちゃん?」」
俺とめぐが二人して首を傾げる。すると、
姫芽「……淳平せんぱい、めぐちゃんせんぱい」
すると、姫芽ちゃんは泣きながら……
姫芽「恥を忍んで言います。助けてください!!」
淳平・慈「「はい!?」」
練習着に着替え、場所を練習部屋に移す。今は一緒にルリちゃんもいる。
瑠璃乃「で……助けて、って?」
姫芽「はい………じつは自分でも分かってるんです、不調の原因」
えっ!? あ〜……それなのに言わなかったってことは……。
慈「え、ほんと?なんで言わなかったの?」
淳平「言いづらいことだったんだな?」
姫芽ちゃんコクリと頷くと口を開く。
姫芽「……アタシ、ゲームもスクールアイドルも、大好きなんです」
瑠璃乃「うんうん」
瑠璃乃「ん?」
慈「え、以上!?」
もしかして………
淳平「ひょっとして、ゲームをしてる時はスクールアイドル。スクールアイドルの時はゲームが頭をよぎって、お互いに干渉してしまって集中できなかったとか?2つが同じくらい大事なものになってしまって……」
姫芽「スゴイ!そうです〜!まさに、ほんとうに、その通りなんです〜!!」
瑠璃乃「あー……あれそういうことか……」
慈「なになに? なになになに?」
コイツ、分からないのか……。
姫芽「それで、この前あったのは……」
姫芽ちゃんは例を挙げる。ます1つ目、この間の学内ライブの時、
ライブ中、観客席に目をやった姫芽ちゃんは、
姫芽『あ、右のエリア空いてる。今なら制圧できる』
〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜
慈「いや客席制圧しちゃダメだよ!?」
瑠璃乃「客席をエリアって言うな!」
姫芽「あとは……………」
2つ目の例。それは寮の姫芽の自室でゲームをしていた時。
姫芽『あ、敵の数チェックしないと。1、2、3…………てれってってんてん!なんちゃって』
姫芽『360度、私が好きな私で、あ!ぎゃーー!!』
〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜
瑠璃乃「そりゃゲームキャラが笑顔のオーディションしてたらやられちゃうよ……」
姫芽「はいい……」
淳平「思ったより重症みたいだな……」
姫芽「はい〜。ほかにも、鉄棒にぶら下がってる時にパフォーマンスしたくなったり、色々」
慈「日常生活にまで支障が出てるじゃん!」
姫芽「ゲームに関しては、いまに始まったことじゃないんです〜。全部がゲームに関連して見えてて。それはそれで楽しかったので、全然良いんですけど……」
淳平「問題は……スクールアイドルの方か」
姫芽「はい。今はスクールアイドルも同じくらい……」
瑠璃乃「だからゲーム中にスクールアイドルが、スクールアイドル活動でもゲームが、両方悪い方向に頭から離れないってことか〜」
姫芽「それで、おふたりには特に言いづらくて…。今、悩んでて……アタシはどっちかを捨てるべきなのでは、とも――」
瑠璃乃「ちょちょちょちょーい!!」
姫芽ちゃんの弱気な言葉に、ルリちゃんが突っ込む。
瑠璃乃「そんなの絶対ダメ!どっちか選ばなきゃいけな いなんて、そんなのみらぱ!じゃないかんね!」
淳平「そうだな。やりたい事は全部叶える。みらくらぱーく!はそういうユニットだ」
姫芽「で、でも!アタシはこのままじゃっ……………!」
焦燥感に駆られる姫芽ちゃん。まったく……。
淳平「………姫芽ちゃん」
姫芽「はいい……」
淳平「姫芽ちゃんはそう言うけど、俺は嬉しいぜ? ゲームと同じくらい、スクールアイドルが大好きになったってことだろ?」
慈「そうだよ。それにわざわざ選ばなくても、ラブライブ!まではまだ時間あるしさ……ゆっくり直していけばいいんじゃない?」
俺とめぐがそう言うと、
姫芽「それじゃっ……………それじゃダメなんです!」
瑠璃乃「………なんで?」
姫芽「アタシ……アタシ、去年のラブライブ!、見てました!」
慈・瑠璃乃・淳平「「「!」」」
姫芽「悔しかったです、アタシも。めぐちゃんとるりちゃん、最強だった。なのに負けて……今年、アタシが入った」
姫芽ちゃんの目から、涙が溢れる。
姫芽「なら、絶対に負けたくないです!アタシが入ったことで、めぐちゃんとるりちゃんになんの貢献もできないなんて、絶対に嫌なんです!」
思えば、こうして姫芽ちゃんのラブライブ!への気持ちを聞いたことあんまり無かったかも。
瑠璃乃「そ、っか」
慈「ん、そうだね。姫芽ちゃんの想いは受け取ったよ」
淳平「そうと決まったら、なにかアイディア考えるか」
慈「そうだねー。お互いにまで支障をきたすほど好き……でもそれが両方の足を引っ張っちゃってるから問題……………」
姫芽「はいい……もうほんとに、そこさえどうにか出来ればと……しっかり集中したいんです〜……」
淳平「いや、待てよ……?ふたつだから、問題なのか?」
姫芽「へ?」
慈「! そうだ、それだよジュン!よっしゃ!姫芽ちゃん!」
姫芽「は、はい!」
慈「だったらいっそ、もーっと増やしちゃおう!それこそ、10個とか!」
姫芽「え〜!?逆に増やすんですか!?
淳平「そうだな。人って、やりたい事が複数でも数が少ないと今の姫芽ちゃんみたいになる人もいるんだけど、あまりにも数が多いと、「まずはひとつひとつ確実に片付けよう」って言う思考が無意識に働くものだし」
姫芽「で、でもっ…………2個でも大変なのに、本当にそれで大丈夫でしょうか……」
不安そうだな……やっぱり
慈「スクールアイドルとゲームほどハマるのはムリだろうけど、他の好きなことがあったら、案外落ち着くかも!ジュンの言う通り、好きを増やせば一個一個の欲求が薄まるみたいな!」
姫芽「む、むむむ…。でもそれは……」
瑠璃乃「うん、確かにそれってありかも!」
瑠璃乃「たとえばさやかちゃんは、フィギュアとスクールアイドルだけじゃないよね。お弁当作ったり、最近だと小鈴ちゃんのチャレンジやったり、綴理先輩のお世話したり、たぶんあれってたくさんあるから切り替えられてるんじゃないかな」
姫芽「な、なるほど………え? さやかせんぱいだけ、1日50時間くらいあるんじゃ……」
淳平「時間を効率的に使うのが上手いんだよ。さやかちゃんは。ちゃんと皆と同じ24時間を生きてるから心配すんな」
慈「ま、とにかく。どう?やってみない?」
姫芽「好きを、増やす…………。上手くいかなきゃ、もっと集中できなくなる、かも……?」
だが、姫芽ちゃんは覚悟を決める。
姫芽「でも、でも。今のままじゃ、どっちにしてもアタシは………!」
姫芽「やります。やらせてください!! アタシ、ラブライブ!に出たい………!めぐちゃんせんぱいとるりちゃんせんぱいと………ふたりと一緒に!今のままじゃ、とてもそんなこと言える状況じゃない………!」
姫芽「アタシ、スランプどうにかするためだったらなんでもやります!!対戦、よろしくお願いします!!」
瑠璃乃「よ〜し、それじゃあひめっちの、好きなもの増やす旅の始まりだー!」
淳平「他のみんなにも協力を打診しておく。たぶん喜んで協力してくれるから」
姫芽「っ! よろしくお願いします!淳平せんぱい!」
ー つづく ー
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