翌日から、さやかたちは毎日3人で朝市に手伝いに通っていた。
さやかは綴理に言われた通り、お客さんをスクールアイドルを応援してくれる。人だと思って接客していた。
すると、緊張が少しずつだが取れていき、2日目には自然体で接客できるようになっていた。
れいか「はいみなさんこんにちはー!本日はマイワシやらガスエビやらお買い得よ!!そして先日に引き続き、看板娘ならぬ看板スクールアイドルもいまーす!」
さやか「いらっしゃいませ~!あと、れいかさん、人を勝手に広告塔にしないでくれます!?」
れいか「気にしない気にしない!いらっしゃあああい!」
さやか「いらっしゃいませー!」
淳平「そうそう良い感じだよさやかちゃん。らっしゃいませーーっ!!」
れいか「ほら、淳平くんも広告塔になってくれてるじゃない。それに、ほら!」
綴理「やあ」
さやか「気になってたんですけど、夕霧先輩は何やってるんですか?あれ」
れいか「立ってくれてるの」
さやか「……えぇと!?」
れいか「最初はね、色々とお手伝いを頼んでみたんだけど……」
れいかさんは1年前のことを話す。
綴理『きみはどこから来たの?』
売り物の魚を手にとって語りかける綴理
れいか『商品だから!戻して戻して!』
綴理『やすいよやすいよ。やす……すや?何度も言ってるとよくわかんなくなってくるね。やすいって、やすいって意味?』
れいか『うおああああああ!私も分からなくなってきたー!』
綴理『合わせて、2145円だよ。そう。算数はできるんだ。出来ないことも多いけど、そこには目を瞑ってほしい。最近はね、ボクに出来ることを精一杯やろうっていう風に思ったんだ。得意ってほどじゃないけど、きっとおつりも計算できる』
れいか『後ろのお客さん待ってるから!綴理ちゃん!』
――――――――――――
れいか「っていうことがあってね……。お片付けだけは誰よりも率先してやってくれてるから、そこはいつも嬉しいんだけど……」
さやか「はあ、想像できてしまいます……」
れいか「だから、さやかちゃんにはみんな期待してるわ!」
さやか「みんな?」
れいか「そうよ。ここに来てくれる、みんなが!」
さやか「……わたしが、皆さんに?」
れいか「あれ……さやかちゃん?」
さやかちゃんの顔に、れいかさんは戸惑うが、
淳平「大丈夫ですよ。ちょっと考えてるだけですから」
れいか「な、ならいいけど……」
さやか「お客さんは応援してくれる人。それならわたしは、何を返す?わたしなら、みんなに……うん。みなさーん!!応援、ありがとうございまーす!!」
何かを悟ったのか、活き活きとし始めるさやかちゃん。
淳平「ね?大丈夫だったでしょ?」
れいか「そうみたいね……あれ、今応援って言った?」
そして翌日もお手伝いをしていると、花帆が様子を見に来た。
花帆「――やっほー!!」
さやか「花帆さん!」
淳平「おう、花帆!」
花帆「淳兄ぃ、ちょっと様子見に来たよ!」
淳平「面白いかはわからないけど、好きなだけ見ていきな。あっ、何か買っていってくれると嬉しいけど……」
花帆「アハハ、商売上手だね!ねえ、さやかちゃんおすすめのお店とかあるかなぁ?」
さやか「おすすめですか?あっちには美味しいお弁当屋さんがありますし、向こうの角を曲がると素敵な雰囲気の喫茶店がありますよ」
花帆「ほえー」
さやか「どうかしましたか?」
花帆「この辺りのお店のこと、よく知ってるんだねぇ」
さやか「いえ、この3日で知ったお話ですよ。実はわたしも、今まであまり来たことが無かったので。色んなお客様と、お世話になったお店の方々が教えてくれたんです」
花帆「たった3日で……!?さやかちゃん、店員の才能あるんだね!あ、そうだ!」
すると花帆はスマホをさやかちゃんに向けて構え、
花帆「じゃあ、撮るね!」
さやか「撮るって、え!?動画ですか!?」
花帆「安心して、配信だよ!」
さやか「何に安心しろと!?」
そして、花帆の動画撮影が始まった。
花帆「はい!みなさんこんにちは!蓮ノ空学院スクールアイドルクラブの日野下花帆です!今日はなんと!近江町市場に来ています!そしてー?」
そして花帆はさやかちゃんを映す。
さやか「え、えーっと!!お、同じく村野さやかです……か、花帆さん、何をどうすれば!」
花帆「いつも通りのさやかちゃんで大丈夫だよ!実はですね、今さやかちゃんが近江町市場でお手伝いをしているんです!頑張ってるさやかちゃんが眩しくて、花帆はつい配信を始めてしまいました!」
さやか「……眩、しくて」
花帆「さやかちゃん!」
さやか「は、はい!」
花帆「さやかちゃんは、どうしてお店のお手伝いをしているんですか?お金に困っているなら言ってくれればよかったのに……!」
さやか「ち、違いますよ!これはその、夕霧先輩が―――」
するとそこへ、れいかさんからさやかちゃんへお呼び出しが掛かった。
れいか「さやかちゃーん!お会計やってあげてー!」
さやか「あ、はい!」
そしてさやかちゃんはお客さんのところに向かいお会計を始める。
さやか「こちらお会計ですね、合わせて540円です。……あ、そうなんです、お手伝いなんです。はい、蓮ノ空のスクールアイドルクラブで!あ……応援、ありがとうございます!お気をつけて!」
そしてお会計が終わり花帆のところへ戻るさやかちゃん。
さやか「ご、ごめんなさい花帆さん!えっと、なんでしたっけ」
花帆「……ううん!さやかちゃんの周り、すっごく綺麗に花咲いてるみたいだね!お買い物に来た人、みんな笑ってていいね!」
さやか「それは……そうですね。皆さんのおかげで、本当に楽しくお手伝いさせていただいています。本当に、良いところです」
花帆「へへっ、そんなわけで!地元を笑顔にしてくれる、お店のさやかちゃんをリポートさせていただきました!花帆でしたー!またねー!」
そして、花帆の配信は終了した。
さやか「えっと……結局なんの配信だったのでしょう……」
花帆「ほんとは、頑張ってるさやかちゃんにインタビューしようと思ったんだけどね。というか、あの真面目なさやかちゃんがお店のお手伝いをしてるっていうから、すごく頑張って、頑張って、頑張りすぎてるんじゃないかって思って飛んできたんだけど!でも、さやかちゃんのお話を聞いて、それから今のお客さんとの会話を見てたら、そういうのが全部吹き飛んじゃって。代わりに、あたしも何かやるぞー!って気持ちが弾けそうになってきた!」
さやか「花帆さん……?」
花帆「凄いね、さやかちゃん!さっきもね、さやかちゃんに会いにお店に行ったって人にも会ったんだ!1人だけじゃなくて、何人も!」
さやか「えっ?」
花帆「あたしもさやかちゃんみたいに、みんなを笑顔にしたい!あたしも頑張る!もちろん、さやかちゃんのことも応援してるからねー!やるぞー!」
そして、花帆は走っていってしまった。
さやか「花帆さん……」
淳平「ほんっと……良いところで超ファインプレーする奴……」
俺の中で、花帆への評価が急上昇した。
さやか「わたしが、ここの皆さんを笑顔に、か。出来てる、かな……?」
淳平「花帆の言った通りだと思うよ?さやかちゃんと話したお客さん、みんな笑顔で帰ってるの気づいてる?」
さやか「そう……なんですね」
そしてお手伝いも4日目に入る。今日はおでん屋でお手伝いだ。
さやか「ま、毎日違うところでアルバイトされてるんですね、れいかさん……」
れいか「言ったでしょ?この辺りでアルバイトしてるって!」
さやか「アハハ…言葉の意味が違う気がしますけど……」
れいか「それで、どうかしら。まさか4日連続で来てくれるとは思わなかったけれど……もう慣れた?」
さやか「どう、なんでしょう……自分ではあまり実感がなくて……」
れいか「ふふ、ごめんなさい。よし、じゃあ今日も頑張りましょう!!頼りにしているわ、さやかちゃん!」
さやか「は、はあ」
れいか「本当に頼りにしているわ!私のフォローを!」
さやか「ちょっと!?」
れいか「冗談冗談。それにしても、あの綴理ちゃんの後輩がさやかちゃんみたいな子だとわねえ。淳平くんの後輩って言う方がしっくり来るわね」
さやか「それは……」
れいか「ごめんごめん……」
さやか「……あの。初めて来た時の夕霧先輩は、どんな感じでしたか?」
れいか「なぁに、気になるの?」
さやか「それはその……はい。正直気になります。楽しくお手伝いさせて貰っていて、そこに不満はないんです。でも、そもそもどうして夕霧先輩と淳平先輩がここに連れてきてくれたのかは、まだ……」
れいか「そう……じゃあ、知る限りで話してあげましょうかね……」
ー つづく ー
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