蓮ノ空スクールアイドル録   作:松兄

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第70話:みんなの好きな物 さやか:そして〜

さやかは自室のキッチンで、姫芽ちゃんとお弁当を作るために鍋やフライパンなどを準備しながら待っていた。

 

さやか「〜♪」

 

鼻歌を歌いながら準備しているとら

 

姫芽「おはよう、ございます〜…………」

 

姫芽ちゃんがやって来た。

 

さやか「あ、いらしたんですね。おはようございます、姫芽さん。ようこそ、朝のキッチンへ」

 

姫芽「はい〜、今日はよろしくお願いします〜」

 

ペコリとお辞儀する姫芽ちゃん。

 

さやか「淳平先輩からお話はうかがっていますよ。なんでも、好きなことを増やしたいとか」

 

姫芽「はい〜!頑張ってます〜!お弁当作り、楽しみです〜!」

 

フンスッ!と鼻息荒くも、両手で拳を握りやる気を見せる姫芽ちゃん。

 

さやか「では、張り切ってまいりましょうか。姫芽さん、料理の経験は?」

 

姫芽「冷蔵庫に余ってるものでチャーハンとか、そんなくらいです〜」

 

さやか「キッチンに立つ経験はあるということですね。では……せっかくですから今日は、お弁当らしいお弁当を作るところから始めてみましょうか」

 

姫芽「はい!さやかせんぱい、対戦よろしくお願いします!」

 

さやか「た、対戦!?」

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

そして、さやかの指導の元調理していく姫芽ちゃん。

 

なかなか順調なようだ。

 

姫芽「卵焼きとウィンナー……!」

 

さやか「プチトマトを洗って、ブロッコリーは軽く茹でておきます」

 

徐々に形になっていくお弁当に、姫芽ちゃんは目を輝かせる。

 

姫芽「わー、本当にザ・お弁当って感じですね〜!卵焼き、味付けはどんな感じにするんですか〜?」

 

さやか「お出汁の風味にしたり、お醤油で整えたり、諸々ですが……姫芽さんはどちらが好みですか?」

 

姫芽「アタシは甘い方が好きです〜!」

 

さやか「では甘めにしましょうか。ボウルにお砂糖を入れていきましょう」

 

そして、ボウルに割った卵と砂糖を適量入れる。

 

姫芽「はーい。ちゃかちゃか混ぜていきます〜」

 

姫芽「……………………」

 

かき混ぜていく姫芽ちゃん。すると、

 

姫芽「……………集中切れそうになりませんか!?」

 

さやか「はやいですね!?……………姫芽さんは、たまにチャーハンを作ると言ってましたけど。それでほかにも作ってみよう、とはなりませんでしたか?」

 

姫芽「そう、ですね……大変だなーって」

 

さやか「ふふっ、わかります」

 

姫芽「えっ、でも」

 

さやかの言葉に、一瞬「え?」となる姫芽ちゃん。

 

さやか「わたしも、ひとりで料理をすることそのものは、そんなにハマらなかったんですよ」

 

さやかは、自分が料理をするようになったキッカケを話す。

 

さやか「わたしにとってお弁当は、誰かのために作るもので。今日のメニューは、きっと小鈴さんが喜ぶんじゃないかな、なんて思いながら作るんです」

 

姫芽「料理とお弁当はまた別なんですね〜。……誰かに作るお弁当、ですか」

 

さやか「そうです。綴理先輩と小鈴さんの好きを知ることで、パフォーマンスにも影響が出ますしね。理解度が上がると言いますか」

 

姫芽「そっか〜…………料理とお弁当はほとんど同じだと思ってたんですけど……………さやかせんぱいにとっては、誰かへのお弁当作りが……」

 

少し考える姫芽ちゃん。

 

さやか「何か。思うところがありましたか?」

 

姫芽「はい〜。好きなことを探そうとしてるので、さやかせんぱいの好きなことをちゃんと把握したいなって〜」

 

さやか「ふふっ!姫芽さんって、意外と真面目なんですね。では、少し量を増やしましょう」

 

姫芽「せんぱい?」

 

さやか「わたしの好きなことをするのなら…………、姫芽さんも、瑠璃乃さんと慈先輩に持っていってあげてください。あなたの作った、お弁当を」

 

姫芽「!」

 

姫芽「そっか………めぐちゃんせんぱいと、るりちゃんせんぱいのために………」

 

さやか「姫芽さん?」

 

姫芽「あ、じゃあ!」

 

さやか「?」

 

姫芽「るりちゃんせんぱいのは、お出汁の卵焼きにしてもいいですか?前にそれが好きだって聞いたことがあって!」

 

さやか「はい。では、そうしましょうか」

 

姫芽「はい〜!あははっ」

 

さやか「卵ひとつ混ぜるのも、楽しそうになってきましたね」

 

姫芽「めぐちゃんせんぱいとるりちゃんせんぱいに喜んで欲しいですから〜!」

 

さやか「その意気ですよ、姫芽さん。ふふふ」

 

姫芽「あはは。あ!」

 

何かを思い出した姫芽ちゃん。

 

さやか「どうかしましたか?」

 

姫芽「いえ、淳平せんぱいも色々と親身になってくれてますし、お礼に作ったほうが良いかなぁ?なんて……」

 

さやか「あ〜……気持ちは喜ぶと思いますけど、たぶん、姫芽さんも淳平先輩も慈先輩に睨まれるかも……」

 

姫芽「あっ、じゃあ止めておきます……」

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

そして午前中の授業を受けてお昼、食堂では……

 

慈「姫芽ちゃん、凄いじゃん!こんなしっかりしたお弁当!」

 

姫芽ちゃんが自分で作ったお弁当をめぐとルリちゃんに渡していた。

 

瑠璃乃「ねー。隠れた才能……。卵焼きうまうま」

 

淳平「へー姫芽ちゃん料理上手いんだ……」

 

姫芽「さやか先輩に教えてもらいながらですけど〜。あ、本当は淳平先輩にもいつもお世話になってるお礼に作ろうかと思ったんですけど……さやか先輩に言ったらめぐちゃんせんぱいに睨まれるからやめておけと……」

 

淳平「あはは……賢明な判断」

 

慈「ちょっと!? 私そんな子だと思われてるの!?」

 

淳平「お前好きなものや人には結構独占欲強いし嫉妬深いじゃん」

 

慈「うぐっ!!」

 

姫芽「あはは……。因みにですけどめぐちゃんせんぱいとるりちゃんせんぱいの卵焼き、味違うんですよ〜」

 

瑠璃乃「ほーなの?」

 

慈「どれ」

 

何も言わずに阿吽の呼吸で卵焼きを1つ交換するるりめぐ。

 

瑠璃乃「ほんとだ、めぐちゃんの甘い!」

 

慈「るりちゃんのは出汁巻なんだー」

 

姫芽「あっ……何も言わずに交換するるりめぐっ……」

 

瑠璃乃「ひめっち、ルリが好きなのとか分かってたんだー、すげー」

 

姫芽「えへへ、前にぼろっと言ってたの思い出して〜」

 

慈「でも凄いね。姫芽ちゃん、ほんとに美味しいよ。料理上手いんだね」

 

姫芽「いえ……それはですね〜。お弁当を好きになっただけですよ〜」

 

慈・瑠璃乃・淳平「「「?」」」

 

姫芽「めぐちゃんせんぱい、るりちゃんせんぱい、淳平せんぱい。アタシ、好きなこと増やせた気がします!みんなのおかげで!

 

瑠璃乃「お、おお。まあでも、ひめっちが何か掴めたんなら、それに越したことはないしね!」

 

淳平「なら良かったよ」

 

慈「どう?何個くらい行けた?」

 

姫芽「はい…………!ギターに、釣り。読書に刺繍、昼寝にチャレンジに筋トレに散歩!」

 

慈「後半怪しいな?」

 

姫芽「それに、お弁当作りの楽しさも知ることができました。ゲームとスクールアイドルを加えて、11個です!」

 

慈・瑠璃乃・淳平「「「おおー」」」

 

慈「10個超えたか……気持ちのつもりだったけど」

 

姫芽「これで、淳平せんぱいとめぐちゃんせんぱいの言う通り……もう、ゲームの時にスクールアイドルのことを考えたり、その逆をしてしまったりは……ない、と良いなって!」

 

瑠璃乃「ん。じゃあ…………どうする?試してみる?」

 

姫芽「はい!ぜひお願いします、試させてください!」

 

淳平「お、ゲームすんの?」

 

姫芽「るりちゃんせんぱい!今夜、対戦よろしくお願いします〜!」

 

 

そしてその晩、るりちゃんと姫芽ちゃんはFPSのゲームでランクマッチに潜っていた。

 

姫芽「るりちゃんせんぱい、数秒耐えてもらえれば〜」

 

瑠璃乃『ぐおおお頑張るぞおおお!』

 

ヘッドホンのインカム越しに会話をやり取りする2人。

 

姫芽「ありがとうございます〜。仕留めます〜。! これで終わり〜」

 

 

 

 

『You Win!!』

 

 

 

 

最後の敵を片付け、画面に表示される『Win』の文字。

 

姫芽「ふう」

 

瑠璃乃『わー、勝った勝ったやったー!ひめっちやったよー!』

 

姫芽「! そっか、アタシ、久々に……」

 

瑠璃乃『そうだよー、もっと喜んで良いってー!』

 

姫芽「そっか。……そっか!やー、嬉しい…………嬉しいです〜!」

 

目に涙を浮かべる姫芽ちゃん。

 

瑠璃乃『なんかさ、ひめっち。今日は余裕があったね、周り見えてたね』

 

姫芽「それは……はい〜。修行の成果かもしれません。今はちょっと安定している気がします〜」

 

瑠璃乃『そうだねえ。ゲームで出来たんだから、スクールアイドルでも大丈夫だよ!』

 

姫芽「! そうですね〜!やった〜!やった!わーいわーい!」

 

瑠璃乃『いえーい!』

 

姫芽「これなら、アタシ……やれる!」

 

確かな手応えを感じ、気合が入る姫芽ちゃんだった。

 

 

ー つづく ー




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