蓮ノ空スクールアイドル録   作:松兄

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第72話:姫芽の選択

翌日、スクールアイドルクラブの朝練で………、

 

姫芽「うおおおおおおっ!!」

 

姫芽ちゃんは気合いが入って練習していた。それを見た小鈴ちゃんと吟子ちゃんは感嘆の声を上げる。

 

小鈴「ふわあ……姫芽ちゃん、気合入ってるね………!」

 

吟子「うん。最近迷ってるみたいだったけど、今は……」

 

梢が姫芽ちゃんのステップを見ながら声を出す。

 

梢「姫芽さん、ステップ早いわ。もう少し余裕持って」

 

姫芽「はい、直します!次、お願いします!」

 

すぐに修正してステップを踏む姫芽ちゃん。できてんじゃん……。

 

梢「そう、その感じ。すぐ掴んだわね。さすがだわ」

 

梢が姫芽ちゃんに「できている」と声をかける。

 

花帆「お、おかしい……………あたし、何度もやってるのに……」

 

花帆は1年経ってもまだ完璧には基礎のステップをマスターできていない。それ故に焦る。

 

吟子「ま、まあ、まだラブライブ!まで時間はあるから」

 

綴理「ふむ?」

 

さやか「またしっかり集中できるようになったみたいで、良かったですね」

 

淳平「それはそうだな」

 

小鈴「よーし、姫芽ちゃんに負けないように頑張るよー!」

 

姫芽「一緒に頑張ろうねっ!」

 

小鈴「頑張ってこ!」

 

空気はだいぶ良くなったな……けど、

 

瑠璃乃「ひめっち、戻ったね……………。なにかきっかけあったのかな」

 

淳平「何かあったのは確かだろうけど……めぐ?」

 

慈「…………」

 

 

そして、昼休みの食堂で、

 

姫芽「お待たせしましたー!」

 

瑠璃乃「ん、おつかれさま、ひめっち」

 

淳平「頑張ってるな」

 

姫芽「はい〜!この前はご心配おかけして、すみませんでした。でももう大丈夫です〜!」

 

慈「ん。とりあえず座って座って」

 

めぐが座るように促し、姫芽ちゃんも「失礼します〜」と着席する。

 

瑠璃乃「実際、練習良い感じだよね、ひめっち。集中できてる気がする!」

 

姫芽「あ、そう見えます………? …………なら、良かった…………」

 

慈・淳平「「んー?」」

 

姫芽「な、なんでしょうか……?」

 

淳平「いや、練習に集中できてるのは凄く良いことなんだけどさ……」

 

慈「何をしたのかな〜?って。ちょっと気になるっていうか……」

 

淳平「確かに。ふがいないけど、俺とめぐの作戦はうまくいかなかったわけだろ?だったらどうやって解決できたのかは、気になる」

 

姫芽「う……」

 

すると、途端に姫芽ちゃんは表情を曇らせ、

 

瑠璃乃「もしかして、言いたくないことだった?」

 

淳平「…………」

 

慈「ジュン?」

 

俺には、姫芽ちゃんが言い淀んだ時点で検討が付いた。いや、ついてしまった……。

 

淳平「もしかして……」

 

姫芽「いや、言います……。あの日、色々かんがえたんです。ふたつ好きなことができても……アタシには、両方はできませんでした。それがたとえ、いくつに増えたとしても。だから………」

 

姫芽「あたし、ゲームを辞めました」

 

慈「えっ?」

 

瑠璃乃「えぇええええっ!?」

 

淳平「やっぱりか……」

 

姫芽「やっぱり最初から、甘い話なんてなかったんです。せんぱいたちみたいにうまくできないなら、ちゃんと絞らなきゃ。だから、やめます」

 

瑠璃乃「ちょ、ちょちょちょ待って待って!」

 

慈「どっちかしかやらないっていうのはナシ、そう言ったじゃん!」

 

瑠璃乃「そうだよ!ひめっちにとって一番大事なことでしょ!?」

 

慈「ゲームのためにスクールアイドル頑張ってきたのに………!」

 

瑠璃乃「なのにそのゲームやめたら本末転倒だよ!」

 

姫芽「っ…………」

 

姫芽「でも、決めたことなんです。ラブライブ!でめぐちゃんとるりちゃんに、迷惑かけたくない。それが今、アタシにとっては一番大事なんです。もしも、みらぱ!らしくないというなら、それはアタシが……アタシ、が……」

 

瑠璃乃「姫芽ちゃん…………」

 

淳平「………決意したことなのか?もう、揺らがないのか?」

 

俺は少し厳しめの語気で話す。

 

姫芽「はい」

 

淳平「じゃあ……。じゃあ、なんで泣いてるんだよ……」

 

姫芽ちゃんにの瞳からは、本人が気付かないうちにポロポロと涙が溢れていた。気付いた姫芽ちゃんは慌てて拭う。

 

姫芽「え、うそ――え、やめて、なんで。こんな、違うんですせんぱい、アタシほんとにもうゲームなんか――」

 

淳平「……………あのさ、姫芽ちゃん。1個、勘違いしてる」

 

瑠璃乃「そうだよ。今回のこと、全然迷惑だなんて思ってないよ」

 

姫芽「………そんなの」

 

瑠璃乃「ひめっちのおかげで知れたこともたくさんあった。ラブライブ!に勝とうってまっすぐ思えてるのだって、ひめっちのおかげだもん。今回のことだって、それだけのことだよ」

 

姫芽「るりちゃんせんぱい……」

 

慈「…………今日の姫芽ちゃんは、良かったよ」

 

淳平「ああ。しっかりと練習に集中できてた」

 

瑠璃乃「え?ふたりとも、それってどういう……」

 

淳平「べつにこのまま行くって意味じゃないさ。ゲームを辞めたことで、姫芽ちゃんには確かに変化があったし。でもさ、ここまで好きな物をいきなり辞めたら、普通は逆に悪影響なんじゃないかと思ってさ……。その違いが分かれば……好きが2つあっても大丈夫なんじゃないか?」

 

姫芽「!」

 

瑠璃乃「そっか……たしかに!さっすがジュン兄ぃ!」

 

淳平「今回は少しばかり挽回しないとな……」

 

姫芽「違い…………でも、ただ好きなものを絞っただけで」

 

慈「そう決めつけるには、早いってこと。まだラブライブ!まで時間があるのに……諦める?」

 

姫芽「そ、そんなことは!アタシが集中できた理由……違い……好きなものを、絞った以外に……」

 

考え込む姫芽ちゃん。

 

淳平「ゆっくり探そう?」

 

慈「うん。それに、さ。ラブライブ!のことだって、本当は気にしなくていいんだよ?」

 

姫芽「えっ…………!?」

 

慈「それよりも、みらくらぱーく!で楽しいスクールアイドルを、みんなに届ける方が大事。それに比べたら、ほんとに大したことないよ!」

 

姫芽「めぐちゃんせんぱい……」

 

慈「だいたいだよ、姫芽ちゃん。姫芽ちゃんが好きになったみらくらぱーく!は、スクールアイドルのために何かを諦めてるようなユニットでしたかってんだ!」

 

姫芽「あ……」

 

姫芽「そっか………そうですね。アタシは最初から、みらくらぱーく!みたいなスクールアイドルになりたかったんだ……。ずっと楽しそうで、ずっと可愛くて」

 

淳平「思い出した?姫芽ちゃんのスクールアイドルとしての原点」

 

姫芽「はい!みらくらぱーく!は、凹んでたアタシにもすっごく元気をくれた。元気のない人も元気にしてくれるるりちゃんと、有り余った元気を楽しいに変えてくれるめぐちゃん。アタシも、そうなりたかった!」

 

姫芽ちゃんは顔を上げる。もう陰りは無くなっていた。

 

姫芽「なのにそんなみらくらぱーく!のアタシが、好きなものを我慢なんてして良いはずがない!探します、どうして集中できたのか………その本当の理由を!」

 

瑠璃乃「ん。そうだね!それじゃあまずは、どうする?」

 

淳平「そもそも姫芽ちゃんは、"好き"って気持ちが恐ろしく強いんだよな。だからこそ、2つのせめぎ合いで折り合いがつかなくなってるわけだし」

 

慈「そうなんだよね……。スクールアイドルも、ゲームも、すっごく大好きで」

 

姫芽「はい〜、それは……あっ!」

 

姫芽ちゃんは、何かに気づいた。

 

瑠璃乃「ひめっち?」

 

慈「何か気づいた?」

 

姫芽「……………めぐちゃんせんぱい、るりちゃんせんぱい、淳平せんぱい!アタシちょっと、死ぬほどゲームしてきます!」

 

瑠璃乃・慈・淳平「「「え!?」」」

 

 

 

ー つづく ー




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