あのあと、吟子と淳平は2人を探し回っていた。
――そして、
吟子「姫芽!小鈴!」
淳平「いたいた……」
二人を見つける。
姫芽「………………」
吟子「あ、私」
俯いている姫芽ちゃん。吟子ちゃんは思っていることを話す。今度は、正直に……自分の全部を。
小鈴「うん」
吟子「……………私、ふたりに言ってなかったこと、あった」
姫芽「……………」
吟子「ほんとは苦手なステップがあって、でも見た目でわからないように、なんとなくごまかしてたりとか……バトンタッチするところが近づくと、いっつも周りを窺って、自分のダンスに集中できなくなったりとか……」
小鈴「ええっ?そうだったの!?」
驚く小鈴ちゃん。
吟子「ヘンだって思われたくなくてすぐ周りに流されたり、そのせいで妙に意固地になったり………。実は金沢おでんじゃなくて普通のおでんも好きだったり、たまに着物じゃなくてスウェットで出歩いてたり…………」
小鈴「ちょっと脱線してきた!?」
淳平「……………」
吟子「まだまだ他にもいっぱいある。だけどなにより……。「またうまくいかないんじゃないか」って。…………いつも、そう思ってた」
吟子「事前準備が必要なのだって、そう。失敗したらどうしようって、怖かった。だって、裁縫は失敗しても、何度でもやり直せるから………」
吟子「一度きりのステージは、始まる前から、失敗したときのことばっかり考えて……」
話しながら、涙を流す吟子ちゃん。
小鈴「あ………でも、それは……」
吟子「私、言えなくて……。言い出して、うっとうしいやつだって思われたくなくて……。嫌われたくなくて、黙ってたんだ。ほんとに、ごめん」
吟子ちゃんは本音を全てふたりにぶつけた。すると、
姫芽「……………知ってたよ」
淳平「!」
姫芽「吟子ちゃんがそう思ってることも、小鈴ちゃんがまた次があると思ってることも、ずっと、知ってた」
吟子「……姫芽は、どうして?」
姫芽「アタシは………」
姫芽「アタシね、チームでやる前は友達同士で一緒にゲームやってたんだけどさ………。でも、そういうところで、うまくなるために声を掛け合ってたら、ひとりが、その、ゲームを辞めちゃって」
姫芽「言い方が悪かったのか、アタシが熱くなりすぎちゃったのかわかんない。だけど、アタシが本気なことと、人に本気を押し付けることって、違うのかなって、いろいろと悩んじゃって……」
姫芽「それから、あんまり人には言わないでおこうって思ってたら…………肝心なときにも、言えなくなっちゃった」
淳平(姫芽ちゃんの過去に原因があったのか……)
姫芽「模擬店のときだって、吟子ちゃんと小鈴ちゃんに。もっとできることがあったのにさ」
姫芽「アタシのほうこそ、ごめん」
姫芽ちゃんも思っていたこと、偽りの無い本音を話す。
それをふたりは、黙って……優しい顔で聞いていた。
すると今度は、
小鈴「そ、そんなこと言ったら!徒町なんて、なんにも気づいてなくて!」
小鈴「徒町、こんなだから、弱音をはく暇があったら少しでも練習して、何度転んでも、立ち上がるんだって思って………」
小鈴「でも、ラブライブ!大会の本番で、転んじゃだめだから……ただ、がむしゃらにがんばるしかなくって…………」
小鈴「まず最初に、気持ちを言わなきゃいけないのは、徒町だったんだよ」
小鈴「なんにももってない、徒町が言わなきゃいけなかったんだ……」
吟子「小鈴……」
淳平(小鈴ちゃん……)
すると、
姫芽「……………二年生のせんぱいって、みんな自然体だよね。仲が良くて、でもワーワー言い合ったりして。いいところも悪いところもみんな知ってて、ほんとに、信頼し合ってるって感じがする」
姫芽「アタシも、あれがいいな」
小鈴「……………うん、徒町も」
吟子「…………そんなこと言ったら、三年生の先輩なんて、ものすごいストロングポイントも、ウィークポイントも一緒にもってるよね」
ん……?
吟子「慈先輩は勉強ダメダメで、梢先輩は機械が苦手で、綴理先輩なんてできないこといっぱいあって、淳平先輩は女心に鈍感すぎて……」
淳平「ちょっと!?」
飛火した!?
姫芽「あ、吟子ちゃん言ったな〜。淳平先輩の事はそのとおりだけど〜」
淳平「姫芽ちゃんまで!?」
俺が慌てていると、
吟子「……だけど、お互いを支え合ってて……ううん。だからこそ、お互いを支え合って、繋がってる」
吟子「私たちも、あんなふうに、なれないかな?」
小鈴「なれるよ! ……もう1回、最初から話そうよ。みんなの苦手なところも、恥ずかしいって思ってるとこも…………」
小鈴「大丈夫だよ、ぜったいに嫌いになんて、ならないから。だって、ふたりがどんなにがんばってるのか、徒町は誰よりも知ってるから!」
小鈴「その上でさ、いいところは尊重して、だめなところはお互いちゃんと、今度こそ!フォローし合って!」
小鈴「そうしたら、きっとぜんぶうまくいくよ!この3人なら、きっと!」
3人が、思いを新たに、今度は心からの信頼で結ばれる。
姫芽「……ほんとにごめん、ふたりとも。竜胆祭はもう、やり直せないけど……」
吟子「いいよ」
吟子「これもそのうち、思い出になるよ。私たちの、恥ずかしい思い出に」
吟子「それに、今までの姫芽ってちょっと大人っぽすぎたし。かわいいとこも見れて、ちゃんと同じ一年生なんだーってわかって、よかったかな」
姫芽「え〜。そんなこと気にしてたなんて、吟子ちゃん子どもっぽいかも〜」
吟子「な、なにそれ!」
吟子ちゃんが頬を膨らませてむくれる。
小鈴「徒町は、ふたりのこと大好きだよ!蓮ノ空で出会った、親友だから!」
小鈴ちゃんの言葉に笑う2人。
吟子「ふふふっ」
姫芽「あはは」
小鈴「えっ、なんで笑うの!?」
吟子「ううん、小鈴はかわいいな、って」
姫芽「いいこいいこ〜」
小鈴「本気で言ってるんだけどー!」
吟子「なんだか………《Link to the FUTURE》の歌詞の意味……。ようやく、わかった気がする」
姫芽「『出会えて嬉しい。本当にありがとう』って?」
吟子「………じゃあ、そう」
姫芽「あ、ありゃ……」
吟子「たぶん、お互いを理解することが大事なんじゃなくて………ほんとに大事なのは、その先にある『信頼』だったのかな、って…………」
吟子「いいところも悪いところも知っているから、背中を預けられる。別々だけど、一緒にがんばることが『繋がる』ってことなら……。『信頼』だって、繋がることなんだ」
小鈴「うん!徒町たち、繋がった、って感じした!今!」
3人は、もう大丈夫そうだな……。
小鈴「あ、もしかして姫芽ちゃん。さっきの泉さんって」
姫芽「…………あ〜、そ〜かも」
吟子「え、ふたりもなにか言われたの?」
淳平「2人もなにか他の二人を貶すようなこと言われたのか?」
姫芽「はい〜。あたしは小鈴ちゃんと吟子ちゃんが足を引っ張ってた…って」
小鈴「徒町はできてたのは徒町だけだったと……」
アイツ………。
少しイラッと来るが、それよりも呆れが勝ってしまった……。
小鈴「吟子ちゃんも?」
姫芽「わざと悪役をやってくれたのかにゃ〜……。味な真似を〜……」
吟子「そっか……。いい人だったね、泉さん」
小鈴「あとでお礼を言わなくっちゃ!」
姫芽「それもだけど〜。恩返しするなら、やっぱライブでしょ〜!」
姫芽「今度こそ最強の《Link to the FUTURE》を見せてやろうよ〜!」
小鈴「見てくれるかな、ラブライブ!予選!」
吟子「てか見せる。なんなら動画を送り付ける」
姫芽「吟子ちゃん、目が据わってる〜」
淳平「あっ、そのことだけど……」
3人が淳平を見る。
淳平「たぶんあの子、どこかのスクールアイドルだよ。予選が近いのに俺たちにアドバイスくれたところを見ると、たぶん石川の学校ではないと思うけど……もしかしたら北陸地区予選、もしくは全国大会でぶつかるかもしれない……」
3人が息を呑む。だが、
小鈴「じゃあそのためにも、完成させなくっちゃね!」
小鈴「今ならきっとできるよ!徒町たちなら、きっと!りんくとぅーざー!」
小鈴・吟子「「ふゅーちゃー!!」」
姫芽「えっ、なにそれ〜?」
吟子「帰って、さっそく練習だよ!ふたりとも、遅れないように!」
姫芽「なんか吟子ちゃん、キャラ変わってない〜??」
小鈴「あはは、急げ〜!」
淳平(大丈夫だな。今の3人なら。どんな壁だって……乗り越えられる!)
走っていく3人を追いながら、淳平はそんな事を考えていた。
― つづく ―
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