その日の放課後、スクールアイドルクラブの練習が終わった後……綴理は校内をぶらついていた。
綴理「ボクの……やりたいこと……………」
綴理「あれ?」
綴理が歩いていると、前方から見知った人間がイライラしながら歩いてきた。
慈「ええい、何度も何度も何度も何度も言わなくたって、わかってるっての!! テストの点が悪いくらいで!!」
慈「こんな生活とも、あと数か月でおさらばだよ!めぐちゃんは、ちゃーんと卒業してやるんだから………!」
歩いてきたのは慈だった。
綴理「めぐ」
慈「あれ、綴理。練習は?」
綴理「終わったとこ」
慈「なにー?じゃあ私が急いだ意味は……。あ一、ちょっと自主練でもしてくかな………」
そう言って慈がレッスン室に行こうとすると、
ガシッ!
綴理が慈の手を掴んだ。
慈「? 綴理?」
綴理「…………めぐ、ちょっと聞いてほしい」
綴理の言葉に、慈は迷わずに……、
慈「ん……どした?」
その後、屋上に向かった2人は、柵にもたれ掛かりながら綴理の感じた事を聞き、話していた。
慈「なるほどねー。卒業したあとのこと、か。隣の部屋が空いたの、ショックだったわけだ。綴理は相変わらず、感性が強いなー」
綴理「うん」
寂しそうな顔をする綴理。
綴理「めぐは……早く、卒業したい?」
慈「別に、綴理より先に卒業する気はないけど。留年するつもりもないかな」
綴理「そっか……ボクは…ずっと、あの景色を見ていたいんだ」
慈「ああ……昨日の、ね。みんなで喜んで、楽しくて。それは、分かるよ。でもさ、綴理」
慈「んー…………今の綴理にとっては、気休めかもしれないけどさ。たぶんこれから先も、綴理なら大丈夫だって、私は思うんだよね」
綴理「どうして?」
綴理はなぜ慈がそう言うのかが分からず聞き返す。
慈「私が3年間見てきた夕霧綴理は、やりたいことを慣れないながら頑張ってたから、かな?最初は「ス」だったんでしょ?今はスクールアイドルになれたじゃん。それと一緒」
慈「――たとえばさ……綴理のやりたいこと、何かないの?」
綴理「スクールアイドル以外に、ってことだよね?」
慈「うん。職業体験って言っても色々あるじゃん。ダンスパートナーとか、綴理は向いてそうだと思うけど。ほかにも、市場の看板娘とかさ。綴理がやってたものは、全部好きになれるもの……やりたいことになってくれるかもじゃない?」
綴理「そっか……そういうもの、なんだね。じゃあそうしようかな」
すると、慈は突然「あ~……」と、変な声を出す。
綴理「めぐ?」
慈「私も人の心配してる場合じゃないなーと思って。進路調査票なんて書こうかな……。ストレートにジュンのお嫁さんでいいのかな?」
綴理「怒られる気がする……」
慈「そうなんだよな〜……。まっ、るりちゃんが悲しい顔する前に、さっさと出そ」
綴理「ううっ……」
慈「ん、どうしたの?」
綴理「ボクも、さやがあれからずっと『どうなりました?』って聞いてくるから…………。このままだと、さやとしたい他の話もできない………」
慈「わー。うちより苦労してるー。そういうとこメチャクチャちゃんとしてるもんね、村野先輩」
綴理「それに逃げ続けてたら、お弁当抜きにされちゃうかもしれない………!」
慈「そんなの、綴理、生きていけないじゃん!」
綴理「やらなきゃ……!」
慈「ま、まあ綴理なりにで良いからね。なんかあったら私もジュンも、たぶん梢も、フォローするからさ」
綴理「ありがと、めぐ!」
翌日、スクールアイドルクラブの部室では――、
綴理「みんな、ありがと。ボク、頑張ってみる」
花帆・さやか・瑠璃乃・小鈴・姫芽『おおー』
梢「分かったわ」
淳平「見つかると良いな。綴理のやりたいこと」
梢「ええ。私たちも全面的にフォローするわ」
慈「ね?アタシの言った通りだったでしょ?」
綴理「うん。ありがと、みんな」
小鈴「綴理先輩!徒町のツテは全部ダメでした!ごめんなさい!」
綴理「ううん、大丈夫。ボク、頑張った」
花帆「さっそく!なにを頑張ったんですか?」
綴理「色んな人に聞いて、やっていいよって言ってくれる人たち、見つけたよ」
淳平「職業体験の場所をか?」
慈「………そう、だね!綴理は頑張ってたよ、うん。なんてったって、寮母さんに仕事くださいって言ってたからね!」
花帆「ええー!?じゃあ綴理センパイが一日寮母さんになるんですか!?」
姫芽「あ、じゃあじゃあつづりせんぱ〜い。寮母権限でラウンジにでっかいテレビとか置いてほしいんですよ〜」
淳平「いや、それは無理だろ………」
俺が突っ込む。綴理も首を横に振り、
綴理「寮母さんには、別のお仕事を買ったよ。ごめんね、ひめ」
綴理「あとは、れいかさんに頼んだら、一度ちゃんとお仕事してもいいって。立ってるだけじゃなくて」
梢「そう……本当に頑張るつもりなのね。お仕事ふたつも」
姫芽「あ〜、でも。そしたら吟子ちゃんのはどうする〜?」
綴理「ぎん?なにかしてくれたの?」
吟子「あ、いえ……場所があればと思って、一応。百生の家とお付き合いのあるお店が、ちょうど人手不足の日があるそうで。是非にとは言われたんですが……」
小鈴「わ、すごいちゃんとお仕事って感じですね!徒町まで気になってきちゃった!」
興味を持つ小鈴ちゃん。
吟子「でも、2か所もあるなら十分ですよね……」
綴理「ううん、ありがと。せっかくぎんが助けてくれたんだ。ボク、そこも行きたい」
吟子「あ、はい!本当に人手が足らないみたいなので、私だけでも行こうかと思ったくらいで。綴理先輩さえ、よろしければ」
さやか「やる気十分、って感じですね、綴理先輩」
慈「そう!綴理は頑張ってたよ、さやかちゃん!」
さやか「なんのフォローなんですか!?」
突っ込むさやかちゃん。
慈「こんなに頑張ってたらお弁当抜きとかにはならないよね!」
さやか「あ、……………確かに、そういう手もありますか」
慈「余計なこと気づかせちゃった!?」
綴理「ちゃ、ちゃんと行くよ!」
慈「そうそう、綴理の頑張りをちゃんと見てあげるんだよ、さやかちゃん!」
綴理「でも…………。みんなありがとう。ぎんもそうだし、ボクのために探してくれて。いつも、嬉しい」
淳平「友達や仲間のために協力するのなんて当たり前だろ?」
花帆「そうですよ!後輩として、綴理センパイにも、めいーっぱい、お世話になりましたし!」
瑠璃乃「スクールアイドルとして必要なものをもらえた、恩ありますからねー。なにかできることがあるなら、いつでも返したいです。気持ちが暗くなっちゃってるなら、なおさら」
綴理「ありがと!」
慈「るりちゃんにとっては、スクールアイドルクラブで唯一ユニットを組んだ“先輩”なんじゃない?私は先輩って感じじゃないし」
瑠璃乃「あ、かもね!めぐちゃんはルリのめぐちゃんだし」
めぐとルリちゃんが話してるうしろで親指を立ててめぐるり尊い――と、堪能してる姫芽ちゃん。
さやか「こほん。まあそういうわけですので、色々やってみましょう。とりあえず、最初は寮母さんからご紹介いただいたお仕事、どうですか?」
綴理「うん、頑張ってみる。市役所の事務」
…………はい?
さやか「市役所の……事務?」
梢・淳平「「大丈夫(か)?」」
さやか「わ、わたしもついていきますから!」
梢「そう………でもさやかさんがぜんぶやってあげちゃ、だめですからね………?」
さやか「わたしなんなんですか!」
綴理が市役所の事務………不安だ。
― つづく ―
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