市役所の職業体験の後日、今日は吟子ちゃんの紹介で、綴理、小鈴ちゃん、吟子ちゃんの3人で染物屋さんに職業体験に来ていた。
小鈴「聞きましたよ、綴理先輩!大活躍だったって!」
綴理「さやにも褒められたんだ。ボクは、事務作業は全然まったくダメダメだったけど……市役所のみんなの力には、なれたみたい」
吟子「それはよかったです。小鈴が、先輩方のお力になりたいと、今にも飛び出していきそうな顔をしてましたから」
小鈴「で、でもちゃんとガマンしました!その分まで、頑張ります!今回は!」
吟子「ふふ、きょうはよろしくお願いします」
綴理「ん、こちらこそ」
小鈴「それはそうとして、ずっとやってみたかったんだ!伝統工芸のお手伝い!金沢って感じがするね!」
吟子「今日行く【茜や】さんは、染め物の工房です。職人さんにはご迷惑をおかけしないように、気を付けようね」
小鈴「頑張るぞー、ちぇすとー!」
綴理「ちぇすとー」
掛け声を入れて気合十分の2人。ここで2人は吟子ちゃんを見る。
吟子「えっ?あっ、はい。ちぇすと〜……………」
そして、染物屋【茜や】さんに着いた3人。店員さんにまずは挨拶から。
吟子「こんにちは。今日はよろしくお願いします。こちらのわがままを聞き入れてくださり、ありがとうございました」
小鈴「ありがとうございます!精一杯やります!」
綴理「なにをすればいいのかな?」
吟子「ここは、百生の家と昔からお付き合いのある、伝統ある染物屋さんです。そして今は、染め物の伝統をたくさんの方に知ってもらうべく、体験コーナーも開いていて」
小鈴「わー。徒町もやってみたいです!」
吟子「今日はその体験コーナーで接客してくれる人が足りないということなので、私たちでその役回りを埋めてほしいと」
小鈴「はい、分かりました!徒町もやってみたいけど、今日はガマンします!!」
吟子「そうだね小鈴。綴理先輩も、どうですか?」
綴理「ん、分かった。任せて」
吟子「では、よろしくお願いします。私が出来る限りサポートしますし………工房には職人さんたちもいらっしゃいますから、困ったことや、分からないことがあれば、随時連携を取っていきましょう」
小鈴「わっかりました!頑張るぞー!ちぇすとー!」
すると――、綴理が少し考える素振りを見せる。
綴理「ん…………体験コーナーか」
小鈴「綴理先輩?」
綴理「ボク、こういうの得意かもしれない」
小鈴・吟子「「!!」」
そして、いざ職業体験が始まると――、
綴理「うん、とても綺麗。ボク、これ好き。アドバイス?ううん、要らないよ。次にキミがどんな色を足すのか、楽しみ」
綴理「キミのも、筆が細やかで踊っているみたいだ。ここらへん、もっと足してほしくてうずうずしてそう」
体験してる人たちの作品を見ながら綴理のアドバイス。綴理は芸術系の感性が並外れているため、みんな自分の作ろうとしている作品の数々デッサンを見ただけで顔を輝かせていた。
小鈴「ほわ一……綴理先輩、めちゃくちゃ人気………」
すると、
綴理「すず」
小鈴「はい!」
綴理「ぎんに頼んで、もう1枚デザイン用の紙、出してもらって。この子、もっと描きたいって」
小鈴「はい!すぐに!」
吟子「綴理先輩、そちらはどうですか?」
綴理「うん、良い感じだよ。ね、みんな」
綴理の言葉に、『はーい!』と嬉しそうな声を出す体験に来た人たち。すると、
綴理「ボクの描いたのも見たい?…………ぎん、いいかな?」
吟子「え、あ、はい。皆さんが望まれていることなのなら「」
綴理「じゃあ………そうだな、こうやって、こんな感じとかどうかな」
吟子「わあ………」
吟子「綴理先輩、ダンスだけじゃなくて、芸術の分野においても本当に、才能のある方ですね…………」
綴理「それはよく分からないけど……気持ちが伝わったなら、良かった」
綴理の言葉の意味が分からず、首をかしげる吟子ちゃん。
吟子「気持ち、ですか?」
綴理「うん。みんなが良いって言ってくれたってことは、ボクの気持ちが、伝わったってことなんだよ」
吟子「これは、どういう気持ちで………?」
綴理「このお店に感じる、懐かしくて暖かい雰囲気と……ここに興味を持ってやってきたみんなの………風みたいなものをイメージして――、今日のこのお店を、描いてみたんだ」
吟子「!!」
綴理の感性に、感銘を受ける吟子ちゃん。
吟子「自由な発想………心に溶けるモチーフ。そっか、こんな風にしてもいいんだ………。私が言うのもなんですけど、綴理先輩」
綴理「?」
吟子「来てくれて、ありがとうございました。皆さん、良いものが見られたと思います。その……私も」
綴理「お礼を言うのは、ボクの方だよ。こんな風に綺麗なものが描けたのは、ぎんと、みんなのおかげだから」
そこへ――、
小鈴「綴理先輩!紙、たくさんもらってきました!」
綴理「よし、じゃあみんな、もっともっと描こうか」
小鈴「綴理先輩、すっごくイキイキしてますね!」
綴理「そうかな、そうかも。あ……」
綴理は、なにかに気づいたように……、
綴理「…………そっか、これもまた、みんなで作る芸術なのかもしれない。うん、イキイキしてるよ、ボク」
そして、【茜や】さんでの職業体験は大成功で終わり、また後日、今日は近江町市場に綴理と淳平でやって来ていた。
れいかさん「……………」
綴理「はいおつり。美味しい煮つけにしてね。ありがとう、また来てねー」
れいかさん「…………綴理ちゃん」
れいかさんの唖然とした顔。
淳平「驚きました?」
れいか「驚くわよ……前とは別人じゃない……」
ここで綴理は呼ばれたことに気づき、
綴理「なあに?」
れいかさん「いや、なんだかその……2年前と比べて、すっごく見違えたわね」
綴理「そう?あんまり伸びてない気がする」
綴理は頭の上に手をやり、身長を測るようなポーズをする。
れいかさん「あはは、身長の話ではないのよ。そういう緩いところは変わらないわね」
れいかさん「でも、そうね。もう立ってるだけの綴理ちゃんじゃないのね。立派なスクールアイドルになったわ、綴理ちゃん!」
綴理「あ……。ボクね、今色んな職業体験してるんだ。みんなに背中を押してもらって、色んなことをしたよ。未来のボクが、卒業した先にやりたいことを見つけられれば、って」
綴理「ボクがやりたいことってなんだろう……そう思いながら、この数日頑張ってみたんだ」
俺とれいかさんは、黙って綴理の話を聞く。
綴理「できないこともあったけど……できたことは、どれも楽しかった。金沢市のみんな、金沢のことが好きな人たち…………そして、ボクの大好きな、市場の人たち。みんなとの時間が、ボクは好きで……みんなのために、頑張るのは楽しいんだ」
れいかさん「そっか……。こうやって、頑張ってくれたものね。はあ、ちょっとお姉さん泣きそう」
綴理「れいかさん?」
れいかさん「大丈夫よ、綴理ちゃん。あなたはどこでだって、素敵な人で居られるわ!綴理ちゃんは本当に、成長したもの!」
綴理「!……ありがと、れいかさん。そういうれいかさんは、いつもれいかさんだね」
れいかさん「それは、褒めてくれているのかしら……?」
れいかさんはどう反応したら良いか分からない微妙な表情をする。
綴理「うん。いつもボクに向ける笑顔が変わらない……いつも、ちゃんと見てくれてる」
れいかさん「ふふ。それはこれから先も変わらないんだからね!」
綴理「うん……ありがと。ボクは、成長…………頑張る」
― つづく ―
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