DOLLCHESTRAの3人のみの会話となります。
では、始まります!
綴理を追いかけた小鈴。途中でさやかとははぐれてしまったが、小鈴は屋上で綴理を発見した。
小鈴「綴理先輩……」
綴理「すず……来てくれても、何もあげられないよ……?」
小鈴「大丈夫です!徒町は経理先輩を笑顔にするチャレンジをしに来ました!」
綴理「…………そっか。ありがと。ボクは、笑えるよ」
小鈴「それならチャレンジ成功です」
――だが、
綴理「……すずが居るから、笑えるんだ」
小鈴「あう。……えっと、その。どう、したんですか?綴理先輩」
綴理「…………あのね。ボクは、スクールアイドルになりたかった。中学までのボクは、言われるがままに、独りでただ踊ってただけだったから。苦しいと思ってるだけなのに、それが凄いって、ボクにもよく分からないところで持ち上げられて……ずっと、独り」
綴理「だから、スクールアイドルに憧れた。スクールアイドルが、夢だった。スクールアイドルに、なれたんだ。この場所で」
綴理「それでいいと思ってたし、未来にも、ボクの頑張れる場所は、あるんじゃないかって思った。――でも……違うんだ。違ったんだ。ボクだけがスクールアイドルになっても、意味がない。ボクがスクールアイドルで居られるのは、大好きなみんなが居るから。ボクが好きなスクールアイドルは、みんななんだから」
綴理「……ショックだったんだ。ボクはさっき気付いたよ。ボクはあのスクールアイドルの部室が、みんなが居る部室にいられるのが好きだったんだ」
綴理は嗚咽を漏らしながら、今にも泣きそうだ。
綴理「ボクはここから居なくなる。ボクがこの子を連れて行けば、この子も部室とお別れ。ボクもこの子も部室に居る、いつもみたいにみんなと居られる瞬間は……もう少ない」
綴理「未来に、すずも、さやも、みんなもいない……。ボクの周りから、誰も居なくなっちゃうんだ」
小鈴「……………」
小鈴「じゃあ、時間を止めるっ……チャレンジ………」
綴理「ふふっ……ありがと。――時計は、残酷だ」
小鈴「う、うぅうううっ!」
小鈴「時間、止まれええええええええ!!!」
綴理「……………」
小鈴ちゃんが必死になるが、人間にはそんな事は不可能だ。
小鈴「止まれ!止まれ!!綴理先輩が……綴理先輩が、泣いちゃうよぉ…………!」
綴理「つ。………ありがと、すず。ほんとに……ありがと」
――すると、声を聞きつけたさやかが合流する。
さやか「……………綴理先輩。小鈴さん」
綴理「さや……」
さやか「扉の向こうまで聞こえてましたよ。小鈴さんの声が」
小鈴「はぁ、はぁ…………さやか先輩ぃい」
さやか「小鈴さんのまっすぐさは、いつだって、わたしたちの心に沁みますね」
綴理「…………うん。本当に。いつまでも……見ていたいよ」
さやか「そうですね。わたしも、同じ気持ちです。――わたしも、小鈴さんも、みなさんも。………綴理先輩のことを、ずっと見ていたい」
綴理「ボク……?」
さやか「スクールアイドル、夕霧綴理を、ですよ」
綴理「っ……………さや。――それが、もうできないのは、つらいよ」
さやか「綴理先輩。わたしは、綴理先輩はご自身がスクールアイドルで居続けたいのだと。思っていました。そしてそれなら……卒業後も、気持ちのありようではないかと。職業体験で、この3年間培ったあなたの経験が発揮されていたこと……それは、わたしにとっては確信でしかありませんでしたから」
綴理「うん……ボクも、ボク自身がスクールアイドルでなくなってしまうのが、怖かった。でも――」
さやか「はい、でも違った。あなたがスクールアイドルで居られるこの場所から離れること……この場所から、あなたの好きなスクールアイドルが去っていくこと…… それが、怖かった」
綴理「うん」
さやか「わたしたちに、それはどうしようもありません」
綴理「っ…………分かってる。分かってるよ。それが、正しいってことも」
小鈴「ただしいから、なんだぁ………!」
小鈴はそう言うが、高校は3年間の限られた時間しか過ごせない。
綴理「すず……」
さやか「ふう」
綴理「ボクは、どうすればいいの?」
さやか「…………それを、わたしが決めることはできません」
綴理「どうして?ボクは、さやとなら…………」
さやか「わたしだって……」
さやかは何かを言いかけるが、途中で止まる。
綴理「さや?」
さやか「わたしは、綴理先輩の幸せを一番に願っています」
綴理「そんなの、分かってる。分かってるけど――」
さやか「じゃあ、先輩。――わたしが明日
綴理「へっ?」
さやか「あり得ないことじゃないでしょう。明日の自分がどうなるかなんて、分かったものじゃないんですから」
さやか「明日にはわたしは居ないかもしれません。その時、綴理先輩はどうするんですか」
極端だが、ありえない話ではない。いつ、どんな事がきっかけで別れが訪れるかなど――未来は誰にも分からない。
綴理「さや、が…………。待って、待ってさや。聞きたくない、苦しい」
さやか「たとえあなたが溺れそうになったとしても、言わなきゃいけないじゃないですか!」
さやか「わたしだけじゃありません、小鈴さんも……みんなだって同じことです。どんなに一緒に居るって言ったって、未来に何が起こるかは分からないんですよ!」
小鈴「さやか先輩!それ以上は綴理先輩がっ…………」
綴理「うう」
小鈴「さやか先輩、そんなの極論じゃないですか!」
さやか「……………」
綴理「さや。だったら、なおさらずっと一緒に居ようよ。明日も明後日も、何も……取りこぼさないように」
さやか「それをいつまで続けられると思うんですか。仕事も、家でも、ずっと一緒なんてできませんよ」
綴理「っ…………でもっ」
さやか「そこでわがままには、なれないんですよ。この先ひとりになったら、どうするんですか」
綴理「独りっ……!」
綴理「そ、そんなの……ボクは、ボクは」
綴理「…………どうして?」
綴理「どうしてそんなひどいこと言うの!!」
綴理が怒鳴る。本当に、怒りに震えた声。綴理がここまで怒るのは初めてだ。
さやか「っ、たとえわたしがあなたにどう思われても、それがいつか来ることだからですよ!」
綴理「もしもそんなときが来たら、ボクはもう消えてなくなるしかない!!」
さやか「っ、あなたがそんなだから今言いたくもないこと言ってるんです!」
綴理「言いたくないなら言わないでよ!」
さやか「っ――このっ。どうして分からないんですか!!」
綴理「分からないよ!!分かりたくもない!!置いていくなら、振り返らないでよ!!」
さやか「違う!たとえひとりになったあとでも、あなたがつらいのは嫌なんです!」
さやか・綴理「「はぁ、はぁ………」」
綴理「……………なんで。居なくなるのに、なんで」
さやかは、優しくさ諭す――。
さやか「…………たとえ誰もいなくなったとしても、それでもあなたには、幸せになってほしいからですよ」
綴理「それでも、幸せに…………」
さやか「それが達成されるなら、もうあとはなんでもいいんです」
綴理「難しいことを言う。とても、難しい…………」
小鈴「……………でも、徒町も、そう、思います。……たとえ何があったとしても、これから先、綴理先輩が笑ってたらいいなって。さやか先輩も、みんなも!」
綴理「………無理だ。みんなと離れても幸せなんて」
綴理「ボクにそんな力はない。ないよ……」
すると、
綴理「――ああ。さやが言いたいこと、分かった気がする。ボクは、これから……ボク自身を、幸せにしなきゃいけないんだ」
さやか「そう、ですね。きっとそれが、わたしの望みです」
綴理「そっか、そうなんだね。ボクはこれから、ボク自身で何かを決めなきゃいけないのか。それは、大変だ。本当に……大変。正しいか分からないことをするのは……」
小鈴「…………綴理先輩!」
小鈴「でも、忘れないでください!独りじゃないです!いつだって!こうしたいと思って失敗することは、ほんとのほんとに、たくさんあるけど……。一緒に居る誰かを捕まえることだって、綴理先輩のチャレンジなんですから!」
綴理「…………うん。ありがとう。――じゃあひとつ、わがまま良いかな。ボクが……未来に進むために、必要なことがしたいんだ。それがボクの……最初に、自分で決めて、やりたいことだ」
さやか「……………はい。なんでも」
― つづく ―
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