後日、蓮ノ空の第二音楽堂。八重咲ステージでは――、
さやか「わがままというから、何かと思いましたよ」
綴理「ボクは、ボクひとりがやろうと思ったんだけど。一緒にやりたいって人、結構多かったんだ。嬉しかった」
綴理の発案で、ある事を企画を行っていた。
梢「私は結局、趣旨がよく分かっていないのだけれど、これはなんなの?」
淳平「恥ずかしながら同じく……」
綴理「すずを見てて……思ったんだ。やりたいって。これは――ビッグボイス選手権だよ」
俺たち3年生がステージを注目してると、緊張しながらトップバッターでステージに上がる小鈴ちゃん。
小鈴「では、僭越ながら徒町、トップバッターいかせて貰います!!この場所を作ってくれた綴理先輩に、感謝を!」
感謝を述べた後、小鈴ちゃんはマイクに向かって自分の思いの丈を力いっぱい叫ぶ。
小鈴「徒町は!!!スクールアイドルがどうあるべきとか!全然分かりません!!だから、スクールアイドルとはそういうものだって言われて、そうなんだ、と思って諦めることしかできませんでした!!――でも!」
小鈴「徒町は、綴理先輩が卒業しないって言った時………すっごく嬉しかったんだ!!」
小鈴ちゃんの本心。本当は、先輩たちに卒業してほしくなかった。ずっと一緒に居たかった。
小鈴「綴理先輩に、あんな悲しい顔させるものなんて、嫌いだ!卒業なんて………卒業なんて!時間、止まれえええええええええ!!!」
最後に魂の叫びを叫んで、落ち着いた後……。
小鈴「…………以上です!!ここでは、なんでも言っていいと聞いて、ぶちまけました!!せっかく、綴理先輩が作ってくれた舞台です!みんなも色々言おうね!!」
綴理はこの発案の趣旨を俺たちに説明してくれる。
綴理「ボクが先に進むためにひとつ、区切りが欲しかったんだ。気持ちを吐き出す機会。そうしたら、すずも、みんなも、やりたいって言ってくれた。ボクだけじゃなかったみたい。区切りが、欲しかったのは」
さやか・淳平「「………………」」
梢「そうね……抱えたままでは居られない気持ちを、吐き出す機会……………か」
綴理「そう、ビッグボイス選手権」
梢「……………先輩と離れたくない。卒業せずにここに居たい。様々な、未練。もしかしたら、蓮華祭という催しは、そこから始まったのかもしれないわね」
淳平「そうかも、しれないな……」
綴理「そうなの?」
梢「どうかしら。先輩の先輩の、さらに先輩……その人たちの考えは、断定はできないけれど。きっとそうかも……と思ったの。どんなに先輩でも、その時の高校生だったんだから」
綴理「じゃあ、そうだよ」
さやか「ふふ。かもしれませんね。…………あ、花帆さんですよ」
続いてステージに上がったのは花帆。何を言う気だろう……。
梢「そ、そう……やっぱり、花帆もなのね………」
淳平「少し不安」
花帆「あの、あたしは今、ラブライブ!優勝を目指して、がんばっているので……それ以外のことは、あんまり、考えられません!」
花帆「梢センパイとは、一生一緒にスリーズブーケですし、淳兄ぃの事は今も大好きです!その想いにも、変わりはありません」
花帆「でもやっぱりあたしは、部室の雰囲気が、好きでした。スクールアイドルクラブの……梢センパイが紅茶を淹れてくれて、慈センパイと綴理センパイが、お喋りしてくれて、淳兄ぃがあたしを……叱るけど、でも、優しく色々教えてくれて……………。あたしたちのこと、いっぱいいっぱい構ってくれて…………。みんな、みんな大好きなんです!」
花帆「センパイ方がいないスクールアイドルクラブなんて、ぜんぜん想像できません!」
花帆「やだよー!卒業しないでー!ずっとずっと、あたしたちと一緒にいてくださいー!一生スクールアイドルクラブしましょうよぉー!」
花帆「……これがあたしの本当の気持ちです!ご清聴ありがとうございました!」
梢・淳平「「……………」」
花帆―――。
さやか「……………わたしもですよ、梢先輩、淳平先輩。ユニットの先輩だけじゃなくて、みなさん、102期生の先輩方が、大好きなんです。――4人もいなくなってしまうなんて……それはちょっと、寂しすぎますよ」
梢「………ふふ、そうね。賑やかなステージの後が、いちばん……寂しいものね」
慈「愛されてるね、私たち。いやー、面白そうなことやってるじゃん?」
綴理「こんなに大きくなるとは、ボクも思ってなかったよ」
慈「ふうん…………意外とそんなこともないんじゃないかな。なんて」
綴理「?」
慈「綴理もやるんじゃないの?」
綴理「ボクは、最後にやる……らしい」
慈「そっか。ちょっと来るの早かったかな……。と」
次にステージに上がったのは姫芽ちゃんだ。
姫芽「ども〜、なんでも言っていい場所と聞いて、アタシも立たせていただきます。……言いたいことは1個だけなんですけどね〜」
慈「姫芽ちゃん……あの子が言いたいことって………」
淳平「想像がつきすぎる……」
姫芽「るりめぐ、離れ離れなんて嫌だ〜〜〜!!」
慈「ふふっ…………そう、だよねえ」
姫芽「めぐちゃんせんぱいは割り切ってる感じだし、るりちゃんせんぱいも、そこに何も言ってなかった……。それなら、アタシから言えることは、ほんとは何もないんですけど!でも!るりちゃんせんぱいはめぐちゃんせんぱいとも、じゅんぺいせんぱいとも、離れ離れにはなりたくないはずで!」
姫芽「――だから、その……めぐちゃんせんぱい、じゅんぺいせんぱい!!どーすかもう1年!!!るりちゃんせんぱいだって……アタシだって、もっともっと最強のみらくらぱーく!を、ずっとずっと見てたいんです〜!!」
姫芽「以上です!!わがまま失礼しました〜!!!」
梢「愛されているわね」
慈「ま、そうだね。姫芽ちゃんの気持ちとも、向き合ってあげなきゃ、か」
淳平「うん……」
続いてはルリちゃん。姫芽ちゃんに触発されたか?
瑠璃乃「あー…………いや、来るつもり、なかったんだけど。ひめっちが結構言いたいこと言ってたから、ルリも言っておこうかなって思いました。まる。こう、ちゃんとね。ルリの思ってることは、ルリが言わないと、なんて。ルリ思った。ゆえにルリあり」
慈・淳平「「……………」」
瑠璃乃「―ルリが思う、世界中を夢中にするために―、これからも、頑張っていくよ」
慈「るりちゃんまで」
瑠璃乃「――未練とか、辛いこととか、すぐそこに来てるお別れとか。大変なこと、いっぱいあるよね。ルリも、寂しいことはあるんだよ。一緒に高校生活を送れるのは、もう少しの時間しかないんだなーって。ないんだ、なーって…………」
瑠璃乃「……………過ぎ去る時間って寂しいね!だから一日一日、大事にします!そういう気持ちをしっかり固める機会を作ってくれて、ありがと!綴理パイセン!」
瑠璃乃「ルリは……ルリが思う、世界中を夢中にするために……これからも、頑張っていくよ。離れていたって、気持ちは同じだって信じてるから。だからっ……めぐちゃんも、ジュン兄ぃも、がんばれ!!応援してる!!」
淳平「改めて、良い催しだと思うよ」
慈「私も、そう思う」
綴理「ん、だと嬉しい」
綴理「それじゃあ、ボク行ってくるね。みんなにも、聞いててほしい」
梢・慈・淳平「「「ええ(ん)(ああ)」」」
さやか「いってらっしゃい」
そして、綴理がステージに向かって行った。
綴理「みんな、今日は付き合ってくれて、ありがとう」
綴理「……ボクは、未来に進むのが怖かった。でも、今は進める気がしてる。だから今日は、最後の錨を引き上げるために、これがやりたかったんだ。みんな、聞いて欲しい」
綴理「スクールアイドルは、未完成でも熱を持ったみんなで作る芸術。この3年間でボクは、夢だったスクールアイドルになれたよ。――だからありがとう、スクールアイドル。ボクの踏ん切りは、もう着いてた。だから最後の錨は、簡単だ」
綴理「ボクはただ、大好きなみんなと一緒に、スクールアイドルができなくなること、大好きなみんなと、離れること……それだけが、未練だったんだ」
綴理「ありがとう、大好きだよ。ボクをスクールアイドルにしてくれたみんな。ボクと一緒に、スクールアイドルをしてくれた……みんな」
綴理「これからもずっとずっと大好きだよ。ボクは……ボクを頼りにして、卒業しても、頑張っていくから!」
綴理「…………ありがとう」
そして、ステージから降りてくる綴理。
綴理「ボクのわがままは、これで終わり。聞いててくれて、ありがとう」
梢「…………こちらこそ、と言っておこうかしらね」
綴理「あ…………うん」
淳平「綴理のわがままは、確かに終わったみたいだな」
綴理「?」
慈「ほら、聞いてあげなよ。後輩の、晴れ舞台」
笑う俺たちが気になり、綴理がステージを見ると、
さやか「まったく…………。わがまま言える場所なんてものを作るからこうなるんですよ」
さやかちゃんがステージに立っていた。
さやか「わたしはこれから、自分の想いを叫ぶためではなく、聞かせるために、この場をお借りします。よろしいですね」
さやかちゃんは、大きく息を吸い込み、
さやか「他の、どこの誰よりも!!――わたしが、一番、あなたとずっと一緒に居たい!決まってるでしょうが!!!
綴理「っ………!」
綴理の脳裏に、さやかと綴理が始めてユニットになれた日のことが思い出される。
さやかのお姉さんの引退と、綴理の楽しみにしていたライブの日程が重なりさやかにどちらか選ぶように迫った綴理。
だが、さやかはどちらも諦めたくないとわがままを貫いた。
さやかは、今わがままを言っていいなら、綴理と――ここまで一緒にやってきた大好きな先輩と別れたい筈など無かった。
綴理は、ようやくそれに気付けたのか、ポロポロと涙を零し……、
さやか「……………おしまい」
こうして、綴理主催の〈ビッグボイス選手権〉は終わった。
― つづく ―
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