蓮ノ空スクールアイドル録   作:松兄

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第95話:Not a marionette

綴理主催のビッグボイス選手権の後、綴理は1人黄昏れていた。

 

綴理「旅の終わりだ。お片付け……いや、違うな。ボクの旅は、これから始まるのか………」

 

綴理「ん?」

 

綴理が周りを見ると、

 

小鈴「さあ、すっきりした気持ちでお片付けです!今日中に終わらせましょー!」

 

瑠璃乃「大変だとは思うけど、頑張ろうねー。今日のことは今日、区切りをつけておこうじゃん」

 

花帆「そうじゃなくても、年末はこれから大忙しだからね!」

 

3人が使った音楽堂のお片付けをしていた。

 

小鈴「おーらい、おーらい……あ、綴理先輩!」

 

花帆「おつかれさまでーす!」

 

瑠璃乃「どーもです!」

 

挨拶してくる3人。綴理も挨拶を返し、

 

綴理「3人とも、みんなとお片付けの途中?」

 

小鈴「はいです!みんなも、徒町も、とってもすっきりしたので……明日からは、またいつもの学校生活に戻れるように、今日中に全部お片付けをと!」

 

花帆「おかげさまで、ありがとうございました」

 

綴理「そっか………。かほも、言いたいことは言えた?」

 

花帆「はい。終わってみると、ちょっと……いや、かなり、恥ずかしかったですけど………」

 

瑠璃乃「いやー、照れちゃいますなあ」

 

花帆「えー!?瑠璃乃ちゃんはちゃんとしてたじゃんー!あたしたちのほうが、子どものワガママみたいなー!」

 

小鈴「そうですそうです!や、徒町と花帆先輩を一緒にするのはよくないですけど!」

 

花帆「そんなことないよ、一緒に瑠璃乃ちゃんと戦おう!」

 

花帆が小鈴ちゃんに共闘を提案。ルリちゃんは微妙な顔。

 

瑠璃乃「た、戦う……?でも、綴理先輩にはまた、俯いている誰かの気持ちの底を、救い上げてもらいましたね」

 

綴理「また?」

 

瑠璃乃「ありゃ、忘れちったんですか?ルリは、2月のあの日……、スクールアイドルとして大切なことを、教えて貰えたと思ってますよ」

 

綴理「あ」

 

綴理は、この2年間で後輩たちに良い影響をたくさん与えていた。

 

小鈴「徒町も、みんなで頑張ることの楽しさは、綴理先輩から教えてもらいましたよ!」

 

花帆「あたしもあたしも。梢センパイのトレーニングにへこたれそうになってたとき、内緒でお菓子くれたりして………。センパイってみんな、こんなに優しいんだ!って、感動しちゃいました」

 

綴理「そっか。そっか」

 

小鈴「……………」

 

シュンとする小鈴ちゃん。すると――、

 

瑠璃乃「あ、ね、花帆ちゃん。あとはお掃除、ルリたちでやっておこーか」

 

花帆「んー?…………あ!うん!今すっごくお掃除したい気分かも!」

 

瑠璃乃「ちゅーわけで、小鈴ちゃん。あとは大丈夫だから。ね?」

 

小鈴「えっ?」

 

花帆「それじゃあ、また明日ね!」

 

小鈴「えっ。えっ?」

 

瑠璃乃「さあ、気張っていこうねー!」

 

花帆「ふーらわー!」

 

ルリちゃんと花帆はふたりを残して行ってしまった。話せるようにと気を使ったのだろう。

 

綴理「……さっきも、思ったけど。ふっ、なんかいいね、みんなが頑張ってるの」

 

小鈴「あ、はい!そうですね!」

 

綴理「みんなが、気持ちをひとつにして、頑張ってる。スクールアイドルじゃない子たちも、スクールアイドルみたいだ……………まぶしい」

 

小鈴「……綴理先輩は、これで前に進めそうですか?」

 

綴理「……………心配してくれてる?」

 

小鈴「してます!」

 

綴理「そっか。ありがと。正直に言うとね、不安はあるよ。怖くもある。卒業どころじゃなく、明日どうなってるかも分からない……それに、気づかされたから」

 

綴理「でも……すずのおかげで、ボクはもう一つのことにも気づけたよ」

 

小鈴「え、なんだろ。徒町が、何を」

 

綴理「ボクも、すずみたいに……目の前のことに、全力になろうって。自分で、自分のために、頑張ってみようって」

 

綴理の言葉に、小鈴ちゃんは笑顔になり……、

 

小鈴「そうですかっ。それなら徒町、何でもチャレンジしてきた甲斐がありました!」

 

綴理「ん」

 

そこへ――、

 

さやか「ここに、居たんですね」

 

綴理「さや」

 

さやか「まずはお礼を。わたしも……必要な機会をいただけました」

 

綴理「…………聞いても、いいかな?」

 

さやか「はい。綴理先輩の思う通りに」

 

綴理「うん。さっきのさやの気持ちは……本当なんだよね」

 

さやか「はい。先輩に幸せになってほしい気持ちも、離れたくないわたしの気持ちも、本音です」

 

綴理の問いに、偽りのない本音だと答えるさやかちゃん。

 

綴理「…………んありがと」

 

小鈴「うぅ〜……さやか先輩、だったら…………」

 

さやか「小鈴さん、ごめんなさい。ご迷惑をおかけしましたね」

 

小鈴「迷惑ってわけじゃないですけど!でも――」

 

綴理「ん、大丈夫だよ、すず。ふたりに教えてもらえたことは、ボクにとって必要なことだったんだ。だから、そう。――スクールアイドルでなくなっても、ボクは、ボクだ」

 

小鈴「はい!」

 

さやか「たとえ蓮ノ空を卒業したとしても、スクールアイドルでなくなっても」

 

小鈴「はい!徒町にとって綴理先輩は、スクールアイドルとか関係なく、大好きな先輩です!」

 

さやか「わたしの好きな、夕霧綴理です!」

 

そして綴理の心に、一つの区切りがちゃんとついた――。

 

 

 

 

 

 

その夜、寮の前の噴水広場――

 

慈「……………眠れぬ子羊ちゃんがいるかな?」

 

淳平「よっ」

 

綴理「めぐ。と、ジュン。 あのあと……るりとひめは、どうだった?」

 

慈「あの場所で起きたことは言いっこなしだよ。話自体はするつもりだけどね。綴理が創った場所は、そういうところでしょ」

 

綴理「そっか……じゃあ、2人は?」

 

慈・淳平「んー(ん)?」

 

綴理「ふたりは、るりとひめの気持ちに、どう思った?」

 

慈「最近の綴理は聞きたがりだねー」

 

めぐはいたずらっぽく笑い少し意地悪する。

 

綴理「あ、ごめん」

 

淳平「めぐのいつものだよ」

 

慈「ジュン〜?もう。……私は綴理のこともかわいがってるからね。――私は、みんなと一緒にいるのも、悪くないとは思ってるけど。でも、ずっとどこかに縛られてるのは嫌かな」

 

慈「変わっていく風景を見るのも、変わっていくみんなの姿を見るのも、けっこう好きなんだよね。未来は明るいって、信じてるからさ」

 

綴理「…………そっか」

 

慈「ん、そう。……………で、手に持ってるそれは?」

 

綴理「進路調査票。書いたんだ」

 

淳平「ついにか」

 

――綴理、ちゃんと書けたのか。

 

綴理「…………ねえ、めぐ、ジュン。ボクも、ちゃんと卒業するよ」

 

淳平「前向きになったか?」

 

綴理「なった」

 

淳平「だったら、それがいちばんだ」

 

慈「しょうがないから卒業しなきゃ、なんて答えは、私も好きじゃないからね。未来は勝ち取るものだよ☆」

 

めぐはウインクして言う。「未来は勝ち取るもの」そのとおりだ。

 

――すると、

 

慈「…………綴理は、振り回されっぱなしだったもんね」

 

綴理「え?」

 

慈「この3年間。綴理は言わないけどさ、大変だったでしょ」

 

慈「スクールアイドルがやりたくて入ってきたのに、梢にラブライブ!だーって引っ張りまわされたり、沙知先輩にDOLLCHESTRAに誘われたり」

 

綴理「それは、楽しかったよ?」

 

慈「私が怪我して、沙知先輩に置いてかれて、梢にも気持ちを裏切られて」

 

綴理「っ……」

 

2年前の事。綴理には1番辛い時期だったと思う。1年経って、入ってきたのがさやかちゃんであったことが本当に良かった。

 

慈「ごめんごめん。そんな顔しないでよ。ほら、きょうのビッグポイス選手権、その延長ってことでひとつ。あのときは……手を離しちゃって、ごめんね」

 

淳平「でも、それでも綴理はくじけず……少しずつ変わっていった。前に向かって、少しずつ。……綴理?」

 

綴理「卒業したあと、ボクは何をするんだろうって。スクールアイドルだった夕霧綴理に……ただひとりの夕霧綴理にできることは、なんだろうって。…………場所を作るっていうのは、ちょっと思ったけど……さちみたいにできるとは、思えない」

 

慈「なるほど、なるほどねい。私はちょっと違うと思うよ。綴理の考えてること」

 

淳平「ん?」

 

綴理「え?」

 

慈「沙知先輩が作る場所と、綴理が作る場所はそもそも違う。修学旅行のときにちょろっと話したけどさ。綴理は、沙知先輩にはなれないからね。わかるよ。ずっと見てたから。綴理を大好きなのが、後輩だけだと思うなよー?」

 

慈「――だから私が言いたいのは、自分でやりたいことができた綴理に。おめでとうってことの方」

 

綴理「ありがと」

 

慈「今回のイベント、良かったと思うよ。ほんとにね。綴理、こういうの向いてるんじゃない?オープンキャンパスの時も思ったけど……誰かのための場所を作ってあげる、みたいな」

 

綴理「ボク、迷ってるんだ。うん。今は、なんとなくわかる」

 

慈「お、成長したじゃん。私もね、別にならなくてもいいと思うよ。なんていうかな。綴理は、みんなの気持ちを導くのが上手いんだよ」

 

綴理「そうなのかな。それは、まだなんとなくわからない」

 

慈「ま、べつにわからなくてもいいんだよ。やりたいことならやればいい、でしょ?それを今日できたばっかりなんだからさ」

 

綴理「……ボクの、やりたいこと。そっか。どうなるとか、どうするとかじゃないんだね。ボクの未来は、ボクがやりたいことで、決めるのか」

 

慈「そういうこと」

 

淳平「綴理や俺たちがあの日、スクールアイドルクラブのドアを叩いたときのように、か?」

 

俺たち3人の脳裏に、俺たちが沙知先輩1人しかいなかったスクールアイドルクラブに入部を希望し部の門を叩いた時のことが蘇る。

 

慈「そういう事!」

 

綴理「だったら――あるよ。やりたいこと。場所を作るとかを考えたのも、そうだけど……ボクは、誰かのきらめきを見るのが、好きなんだ。頑張ろうとしている誰かの、きらめく瞬間を見ること。それが……ボクのやりたいことだ」

 

慈「……………あはは。あははは!」

 

綴理「なぜ笑う……」

 

慈「ごめんごめん、すっごく良いなと思ってさ。あれだけダンスを評価されてきた綴理がやりたいことが、綴理のパフォーマンスを活かすことじゃないんだもん。

 

綴理「えっと?」

 

慈「だから。頑張れ」

 

慈・淳平「「私(俺)たちの親友。夕霧綴理」」

 

綴理「ん」

 

俺達3人は、そう言って、これからのお互いに健闘を願う意味を込めて拳を合わせた。

 

慈「で、実際、調査票にはなんて書いたの?」

 

綴理「…………秘密」

 

 

 

 

 

 

 

 

――数日後、蓮ノ空学院スクールアイドルクラブのライブの会場。

 

さやか「以上、DOLLCHESTRAでした!」

 

小鈴「ラブライブ!北陸大会も。蓮ノ空学院スクールアイドルクラブを、宜しくお願いします!」

 

綴理「みんなありがとねー。楽しかったよー」

 

DOLLCHESTRAが出番を終えて舞台袖に戻ってくる。

 

綴理「ふぅ」

 

淳平「綴理」

 

綴理「ん?」

 

淳平「この子が、綴理に言いたいことがあるんだってさ?」

 

綴理「?」

 

綴理は、来ていた小学生の女の子に目をやる。

 

小学生「あ、あの!!」

 

綴理「ん?」

 

小学生「あ、い、いまのすっごくかっこよかったです!」

 

綴理「ん、それは良かった。

 

小学生「そ、それで!あなたみたいなスクールアイドルには、どうやったらなれますか!?」

 

綴理「……そうだなあ」

 

綴理「ボクはね、いつかスクールアイドルの大会で、言われたことがあるんだ。ボクはただの夕霧綴理であって、スクールアイドルじゃないって。今思うと……あれは半分合ってて、半分間違ってたと思うんだ」

 

綴理は昔の事を話そうとするが……事情を知らないこの子には分からないと思うんだが。

 

小学生「えっと……………」

 

綴理「大丈夫、きっとキミはなれるよ、スクールアイドルに」

 

綴理「なろうと思ったらいつでもなれる。スクールアイドルは、特別なものじゃない。必要なのは、キミのきらめきたい気持ちだけ」

 

綴理「それさえあれば、この先の未来は、ずっと明るいはずだから――」

 

 

― つづく ―

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