蓮ノ空スクールアイドル録   作:松兄

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第103話:約束

めぐの卒業後の進路が決まったことに安堵していた矢先、叔母さんから連絡が来て、そのメッセージを見ためぐが青ざめた。

 

 

慈「まずいことになったよ!!」

 

吟子「えっと………すみません、どういうことですか?」

 

 

うん。なにが不味いんだ……?

 

 

慈「忘れてたの…………」

 

小鈴「わすれてた?」

 

梢「なにがなんだかわからないわ、慈。最初から説明してちょうだい」

 

 

梢がめぐに事態の詳細な説明を求める。

 

 

慈「……あのね」

 

 

要約すると、慈はもともと叔母さんにに言われて、蓮ノ空に入れられた。そのときに、ひとつ約束させられたらしい。

 

――その内容というのが、『蓮ノ空卒業までにしっかり勉強して、“立派な常識人”になること』

 

 

さやか「立派な常識人…………梢先輩のような方、でしょうか」

 

花帆「あはは。さやかちゃん、それはムリだよ」

 

淳平(うん。無理だ)

 

慈(ギロッ!!)

 

 

言葉に出した花帆を睨むめぐ。

 

 

花帆「ひえっ」

 

慈「それで今、こんなメールが来て」

 

 

 

――――――――――――

 

慈母『慈ちゃん、もうすぐ卒業だね。3年間、よくがんばりました。淳平くんと瑠璃乃ちゃんと冬休みに帰ってきたら、またみんなで集まってお誕生日会を開きましょうね。ママ楽しみ♡

 

P.S,約束覚えてるよね?ママ、本当に楽しみ♡因みに、この間帰ってきたとき淳平君と交際をオッケーしたけど、達成できてないようなら白紙にします♡』

 

ママより。

 

――――――――――――

 

 

 

小鈴「なんだか、かわいい感じのメールですね!」

 

慈「そこじゃない!最後!恐ろしいことが書かれてる!!」

 

淳平(白紙にされたら俺の決意が………)

 

さやか「文面からして笑顔で追い詰めてますね……」

 

慈「私、約束のこと、3年間ずっと忘れてたんだ……毎日が、あまりにも楽しくて……」

 

吟子「とはいえ、慈先輩も長期休みには、実家に帰ってますよね?親と顔を合わせる機会は、あったのでは……?」

 

 

そうだ。そこはどうしてたんだ………?

 

 

慈「………ごまかしてた」

 

 

………は?

 

 

吟子「え?」

 

慈「そのたびに、ごまかしてた。藤島家の人間はね、ごまかすのが得意なんだよ」

 

 

ドヤ顔するめぐ。うん。今は凄く殴りたい……。

 

 

瑠璃乃「ドヤ顔で言うことじゃないよ!」

 

慈「もうおしまいだよ!私のミライはお先真っ暗!予想外すぎる!」

 

 

すると、綴理がめぐの肩に優しく手を置き、

 

 

綴理「平気だよ、めぐ。めぐは立派な常識人。赤信号だって止まれるし、機械を使うのも得意。ボクが保証する」

 

慈「うえ〜ん!つづたん〜!私もう夕霧慈になる〜!」

 

 

ついに壊れためぐ。めぐがそう言うと、

 

 

さやか「あっ、じゃあ淳平先輩は貰いますね」

 

梢「また争奪戦ね」

 

 

慈が放棄したと見做し、再び争奪戦を開始しようとするみんな。

 

 

慈「ちょっと!?ダメ!そういうつもりじゃない!!」

 

淳平「俺とは遊びだったのか。めぐ……」

 

慈「違うからぁっ!!」

 

 

俺も少しショックだったから悪乗りする。

 

 

小鈴「あ、あの慈大先輩が、こんなになっちゃうなんて……!」

 

姫芽「え、えっと…………。めぐちゃんせんぱいママって、そんなに怖い人なんですか〜?」

 

淳平「いや、基本的には優しい人だぞ? でも、約束を破ったりすると……怖いな」

 

瑠璃乃「昔、めぐちゃんが、めぐママの宝石のネックレスを勝手に持ち出して、チェーン壊しちゃったときがあったんだけど……」

 

淳平「そのとき『私じゃないしーっ!』って嘘ついてごまかしたのが、後からバレて……壊したことよりもむしろそっちで大目玉……」

 

さやか「バレてるじゃないですか!」

 

 

いやぁ……あのときはひどかった。

 

 

慈「あのときはまだ子どもだったの!」

 

瑠璃乃「子どもめぐちゃん、お説教をなんと四分の一日も食らってた。めぐママは、そんな人デス」

 

小鈴「ろ、六時間も……!」

 

 

戦慄する小鈴ちゃん。

 

 

慈「……大人になった今、今回はもうそれどころじゃ済まないよ!今度は、蓮ノ空卒業後、家に閉じ込められて………永遠に勉強させられるんだよ……。窓もない、Wi-Fiも電波もない、暗くて冷たい地下室で………」

 

 

確かに、大人は自分で責任を取らなければならない立場だからな。もっと悲惨なことに………。

 

 

花帆「慈センパイのおうち、地下室があるんですか?」

 

瑠璃乃・淳平「「ねーよ」」

 

慈「帰ったら作られてるんだよ!あのママなら、それぐらいのことはやるよ!」

 

 

いや、それはねーだろ。

 

 

 

瑠璃乃「めぐちゃんのママ、普通の会社員さんじゃん!」

 

慈「計画性がえぐいんだよ!ジュエリーデザイナーだもん!」

 

淳平「関係あるか………?それ」

 

 

関係ないと思うが……。

 

 

さやか「ジュエリーデザイナー……。素敵なお仕事ですね」

 

姫芽「あ、もしかしてめぐちゃんせんぱいが、アクセサリー作りが趣味なのって〜?」

 

慈「まあ……ママの影響も、ちょっとはあるかもだけど……」

 

吟子「わかります。身近に物作りをお仕事にしてる方がいると、影響されますよね」

 

小鈴「慈大先輩、絵もお上手ですもんね!」

 

慈「いいんだよ!そんな和やかな話は、今はどうでも!」

 

 

大声を上げるめぐ。

 

 

慈「いい!?みんなめぐちゃんのこと、大好きでしょ!?愛してるでしょ!?」

 

 

めぐがみんなに問いかける。愛してるならなんとかしてくれ!とか?

 

 

姫芽「大好きです!愛してます!」

 

慈「だったら!めぐちゃんが幸せになれる方法をちゃんと考えて!めぐちゃんの幸せだけが、みんなの幸せでしょ!?」

 

 

あたってた……

 

 

姫芽「その通りです!!わかりました!!」

 

梢「過言だわ」

 

淳平「姫芽ちゃん、あまり甘やかさないで……」

 

 

――すると、

 

 

綴理「はい。思いついた」

 

慈「さすがつづたん!早い!天才!はいどうぞ!」

 

綴理「こずがめぐのフリをすればいい。変装とかして」

 

慈「それだ!天才!」

 

 

無理だろ

 

 

梢「できるわけないでしょう!実の親相手なのよ!?」

 

吟子「これは……慈先輩も、ずいぶんやられとるね……」

 

淳平「というか、昔ごまかしてすごく怒られたんだったら、またごまかそうとするのは余計に成長してないと思われる気がする」

 

さやか「同感です……」

 

 

こういうときは昔やってしまって悪いことになったのを、もうやらなくなってる。というところを見せたほうが案外近道だったり……?

 

 

慈「ジュンとさやかちゃんは正論しか言わない!さやかちゃんは綴理からなにを教わったんだよぉ!ジュンはめぐちゃんのこと愛してないの!?」

 

さやか「スクールアイドルのすべてですけど!?」

 

淳平「愛してるからこそ厳しく行った方が良いかな?って」

 

慈「そこは甘やかして!! つづたんは、さやかちゃんたちと私、どっちの味方なの!?」

 

綴理「? ボクはみんなの味方だよ?」

 

慈「私だけの味方になって!ほら!今!」

 

綴理「めぐだけの…………ごめん……………」

 

 

顔をくもらせる綴理。

 

 

さやか「綴理先輩を困らせないでください!」

 

慈「いちばん困ってるの私なんだけど!」

 

 

逆ギレすんな……。――すると、

 

 

瑠璃乃「おばさんは、"立派な常識人"になるように言ってきたんだよね?じゃあ、それって具体的に、なにができる人なのかな?」

 

 

お、良い目の付け所かも。

 

 

淳平「あ〜、確かに。一言で常識って言っても色々あるしな。めぐがもうすでにできてる常識もあるにはあるし、どんな常識を獲得することを求めてるのか……」

 

小鈴「この中だとイメージに近いのは、梢大先輩か、さやか先輩って感じですよね」

 

瑠璃乃「さやかちゃんはたまにそのカテゴリーをはみ出すような気もするけど………。立派すぎる鉄人とか、歌って踊れる鋼の料理人とかのほうが………「」

 

さやか「わたし、そんなんですか!?」

 

瑠璃乃「よっし。ちょっと要素を書き出してみよ!」

 

 

そして、みんなで意見を出し合って"常識"と呼ばれるものを思い当たる範囲で挙げていった。

 

 

瑠璃乃「だいたいこんなもんかなー、と!」

 

姫芽「生活力、言葉遣いなどのマナー、一般常識力……………」

 

淳平「さっき言ってたのに関係するけど、悪いことをしたら誤魔化さずに素直に謝れる。っていうのも大切な事だと思うぞ?」

 

梢「そうね。それは人として大事なことだわ。一般常識力っていうのは………まあ、ざっくり言えば学力のことでしょうから、今は置いといておくとして」

 

さやか「生活力は、ひとり暮らしに関するあれやこれやですね」

 

吟子「言葉遣いとかマナーも、ちゃんとした人はできてる印象あるかな」

 

姫芽「さ、めぐちゃんせんぱい!お好きなコースを選んでください〜!めぐママさん相手に、しっかりと試合前の対策をしましょう〜!」

 

綴理「めぐ?」

 

慈「…………ぜんぶ」

 

 

―――はい?

 

 

花帆「ぜんぶ!?」

 

慈「決まってるでしょ!どれか一個だけなんて、ママに通用するわけないもん!ぜんぶだよ、ぜんぶ!ぜーんぶやって、私は立派な常識人になるの!」

 

さやか「ムリですよ、慈先輩!」

 

瑠璃乃「そーだよ!べんきょーもしなきゃなんだよ!?」

 

花帆「死んじゃいますよ!?」

 

慈「うるさいうるさいうるさい!二年坊主ども!ぜんぶやるったらぜんぶやるのー!」

 

 

まったく………。

 

 

淳平「本気なんだな?」

 

慈「本気だよ。ようやくここまできたんだから。『私の夢、ママに奪われてたまるか』だよ!」

 

淳平「わかった。めぐがそこまで言うなら、俺も覚悟を決める」

 

梢「ジュン、勉強は私も一緒に面倒を見るわ。仕方ないわね。……友達の、ピンチだもの。

 

慈「ジュン! こずたん……!」

 

梢「それはやめて」

 

 

こずたん呼びを拒否する梢。

 

 

慈「みんなも………冬休みに突入するまで、力を貸して!どうかお願いします!」

 

綴理「ボクからも、お願い」

 

綴理「ボクはわかったんだ。未来は明るいから、踏み出していけるんだ、って。さちも、教えてくれた。さやも、すずも……スクールアイドルクラブのみんなが教えてくれた。未来は明るくなくちゃ、だめなんだ」

 

 

綴理!お前ホントに良いやつだな!!

 

俺の目頭が熱くなってると、

 

 

綴理「もしめぐの行く先が暗くて寒いところなら……そのときは、めぐ。夕霧慈になってもいいよ」

 

慈「綴理お姉たん!」

 

 

コイツ…。

 

 

さやか「淳平先輩、私と付き合いましょう」

 

花帆「いや、ここは私が」

 

瑠璃乃「ふたりともずるいよ!」

 

梢「私も立候補するのだけど」

 

慈「ちょっと!?何度も言うけど冗談だからぁっ!?ジュンも私を捨てないでぇええええっ!!!」

 

 

泣き崩れるめぐ。やれやれ………。

 

 

さやか「……冗談はさておき、そこまで言われては、仕方ないですね」

 

慈「冗談だったの!?」

 

さやか「本気の方がよかったですか?ともあれ、慈先輩には、わたしたちもお世話になりましたし……」

 

花帆「おいしいカフェいっぱい教えてもらったり………」

 

吟子「休みの日には、スクールアイドルとしてのアピール講習とかも………」

 

小鈴「配信のコツも、いろいろアドバイスくれました!」

 

慈「たくさん恩を売っておいてよかったー!」

 

 

うん。言い方だけを見ると最低だな………。

 

 

梢「そういうことは言わない方がいいと思うのだけれど」

 

姫芽「みなさん、やりましょう〜!めぐちゃんせんぱいのために〜!」

 

花帆・さやか・瑠璃乃・梢・綴理・慈・吟子・小鈴・姫芽・淳平『おー!!!』

 

ー つづく ー




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