さやかちゃんから生活力を覚えるための宿題としてスーパーのチラシから商品のだいたいの値段を覚える事を言い渡されためぐ。
淳平(まあ、このままじゃあものの相場も分からずに金使いまくるだろうしな……)
そして翌日、今日は言葉遣い、マナーの勉強をするために吟子ちゃんの部屋にやって来た。
慈「じゃあ、きょうはよろしくね。豚コマ100グラム78円」
覚えるために、隙を見て口に出して頭にたたき込むめぐ。
吟子「はい。よろしくお願いします。……………え?なんですか?」
困惑する吟子ちゃん。後で謝っておこう……。
慈「ううん、気にしないで。鶏むね肉一枚108円」
吟子「はあ……」
――やっぱり今謝ろう。
淳平「ごめん吟子ちゃん。さやかちゃんから物の値段をちゃんと覚えるように言われてるんだよ。ああやって絶えず口に出してないとたぶん一気に忘れる……」
吟子「わかりました……」
姫芽「というわけで、言葉遠いやマナーの先生に、吟子ちゃんをお呼びしました〜!アタシはアシスタントです〜!」
この2人なら、ちゃんと教えてくれそうだけど、
淳平「でも、大丈夫?吟子ちゃんって、前に敬語苦手って言ってなかった?」
吟子「それはまあ、そうなんですけど。―――慈先輩が生活力の特訓をしてる間、私も一度実家に戻って、祖母にしごかれてきましたので」
姫芽・淳平「「そこまでして(くれ)たの!?」」
驚く俺と姫芽ちゃん。
吟子「他ならぬ、配信のお師匠様………慈先輩の頼みです。またすぐ敬語が抜けてしまうかもしれませんが……特訓の間は保てるように、がんばります」
慈「ありがとね……私、みんなに愛されて、幸せだよ………。牛乳1パック203円……………」
今、一瞬殴ってやろうかと思った……が、辞めておこう。コイツも必死なんだ。
吟子「なんか気が抜けるんだけど!」
姫芽「保ててないな〜」
吟子「あっ、うっ…………!がんばります……………!」
淳平(今のはしょうがないよなぁ………)
姫芽「そ〜いえば、めぐちゃんせんぱい〜。最近るりちゃんせんぱい見ないんですけど、どうしたんですか〜?」
慈「るりちゃんは、別ルートでママの弱点を探ってもらってるよ。具体的に言うと、るりママとジュンママなんだけど」
………はい!?
吟子「弱点……?」
姫芽「るりママとめぐママとジュンペイセンパイのママも、幼馴染なんですか〜!?やば〜!尊い〜!」
慈「いや、幼馴染ではないけどね。確か、大学の同級生?でも仲良いのは間違いないから、なんか知ってんじゃないかなー、って」
吟子「真面目にがんばってるかと思えば、そんな手まで……」
淳平「叔母さん……ホント苦労してたんですね」
慈「目的はママに認められることじゃなくて、私が自分の人生を手に入れることだからね!勝てばなんでもいいんだよ!私は、私の夢を奪わせたりしなーい!あとジュンそれどういう意味!?」
憤慨するめぐ。
姫芽「さっすがめぐちゃんせんぱい〜!めぐちゃんせんぱいしか勝たん〜!生きざまがスクールアイドル!」
淳平「そうか……?」
吟子「まあいいや。では、慈先輩。とりあえず、目上の方との話し方を勉強していきましょうか。私を祖母だと思って、話してください」
居住まいを正す吟子ちゃん。
吟子「ちなみに、梢先輩から『容赦せずに」とのお言葉をいただいておりますので、厳しくやらせてもらいますから」
姫芽「アタシも、厳しく判定しますからね!FPSで鍛えた観察眼が火を噴きますよ〜!!」
――すると、
慈「承知いたしました。どうぞよろしくお願い申し上げます」
吟子・姫芽「「!?」」
だよなぁ………。
吟子「えっと…………。本日は良い天気でございますね?」
慈「そうですね。大変心地のいい青空が広がっておりました」
姫芽「えっ……なんですぐできるんですか〜!?」
慈「適切な言葉連いは、スクールアイドルにおきましては重要な武器でございますので。自ずと学習いたしましたことは言うまでもございません」
淳平「まあ、めぐは元タレント。芸能界に居たからな。芸能界と言えば、上下関係が滅茶苦茶厳しいところだし、先輩に嫌われたら干される事も珍しくないし……」
吟子「!!そうか……」
姫芽「か、かっこいい〜〜〜…………♡」
慈「ま・ね」
吟子「すごいところは素直に本当にすごいんですね。慈先輩…………」
慈「その態度、スリーズブーケの先輩どもがうつってないか?いや、いいけどね?」
吟子「あっ、すみません。驚いてしまって。じゃ、じゃあ、言葉遣いは大丈夫そうなので、次はマナーの方も見させてもらえれば、と」
慈「よっしゃ、どんとこい!」
そして、言葉遣い、マナー講座は無事に終了。この【常識】は、めぐは改めて学ぶまでもなくすでに身についていたのですぐに終了した。
――その後、
慈「ついにお勉強のお時間ですのね〜」
梢「なに、その喋り方」
慈「いえいえ、どうぞご心配なさらず…………。じゃなくて!なんでもない!」
梢「……あなたががんばっていることは、さやかさんや吟子さんから、聞いているわ。もし疲れているなら、後日に回してもいいのだけれど」
慈「ううん、やる。私の人生がかかってるんだもん」
慈「めぐちゃんが不幸になったら、全国5000万人のめぐ党さんだって、悲しんじゃうからね」
淳平「そうだな。がんばろう」
花帆「あたしも、なんだかんだ慈センパイにお世話になったり、一緒にやったシャッフルユニットだって、すっごく楽しかったので……慈センパイにも、花咲いてほしいです!」
慈「花帆ちゃん……………!ううん、さすが私の花帆!」
花帆「あ、“私の”ではないですけど」
一蹴されて流されるめぐ。
梢「それじゃあ、ジュン、花帆」
淳平「うん。今回は常識力を図るテストだから、いろんな企業で使ってる一般常識問題集を取り寄せてもらった」
花帆「これが解ければ、社会人として必要な常識はもっている……という風に、判断してもらえること間違いなしです!」
慈「企業の問題集って……え、めちゃくちゃ難しいんじゃ……!?」
梢「そんなことはないのよ。時事問題、社会情勢を除けば、ほとんどは中学校までのカリキュラムで解ける問題だわ」
淳平「それに、中学・高校と、俺がテスト期間のたびに教えてやってた事が頭に残ってれば解ける筈」
花帆「あたしも高校受験だけはがんばったので、お手伝いできるかと思います!」
慈「私はついに………花帆ちゃんにまで、勉強を、教わるのか………っ!」
花帆「それどういう意味ですか!?」
慈「私たち仲間じゃん!」
花帆「違いますー!あたし今はこっち側ですー!」
そんな事で仲間作ろうとするなよ……。
花帆「でも慈センパイ、留年は回避できたんですもんね!いけます、いけます!」
慈「つまり、いよいよ私の本当の実力を見せるときが来た、ってわけだ………」
梢「そうね。それじゃあ、始めましょう」
慈「どんとこいだよー!」
そして、開始されるテスト。――たが、
梢「虎穴に入らずんば○○を得ず。○○に入る正しい言葉を選びなさい」
慈「勝利!」
梢「江戸時代の前は、何時代?」
慈「石器時代!」
梢「サイコロを3回振ったらすべて6が出た。4回目に6が出る確率は?」
慈「出るか出ないか、二分の一でしょ!」
そして、テストは終了。………コイツっ!!
慈「はぁ、はぁ……な、なかなかやるじゃん……………」
梢「どうすればいいのよ、こんなの……」
淳平「俺が教えたこと全く覚えてねぇ!!」
花帆「常識テスト、100点満点中、12点……………。逆に、この6問だけよくわかりましたね……」
淳平・梢「「俺(私)はどうしたら、お前(あなた)を今の8倍賢くできるんだろう(のかしら)…」」
慈「おいおいそんなに賢くなったら、めぐちゃん神になっちゃうよ?」
梢・淳平「「はぁ…………」」
2人息の合った盛大な溜め息。
慈「ためいきやめて。きずつく」
梢「今から、お母様への謝罪文の書き方を勉強しましょうか………?」
淳平「そっちのほうがまだ可能性あると思う」
俺と梢が諦めムードになると、
慈「もうちょっとだけがんばるからぁっ!」
花帆「うーん……あ」
すると、めぐの解答用紙を見ていた花帆が何かに気づく。
花帆「もしかして……………。あの、慈センパイ。この漢字なんて読むか、わかります?」
慈「ん?“群青(ぐんじょう)”でしょ?さやかちゃんの」
!?
花帆「あ、じゃあじゃあ、えと……!淡路島があるのはどこの県ですか?
慈「兵庫県。みんなでライブ行ったとき、パンフかなんか見た気がする」
!!
花帆「これですよ!」
慈「え?」
淳平「花帆……お前何に気づいた?」
花帆「あたしも、勉強いやだなーって思ったとき、ムリヤリこじつけたりして覚えることがあるから、わかるんです!慈センパイは、スクールアイドルに関連することなら、覚えてるんです!だったら、なんでもかんでもスクールアイドルに関係させちゃえば!」
淳平「!!」
俺としたことが、盲点だった!!
梢「ええ……?」
慈「そ、そうだったのか………!ナイスアイディアだよ!花帆ちゃん!」
淳平「よく気づいたな……!」
花帆「はい!もうこれしかありません!」
慈「やっぱり私を救ってくれるのは、スクールアイドルってことかー!」
梢「あなたは結局、蓮ノ空に来た3年間で、スクールアイドルしかしてこなかったってことなのね………」
慈「それでいいじゃん。スクールアイドルには、生きる上で大切なことのすべてが詰まってるんだから!」
梢・淳平「「そうか(しら)……?」」
慈「よっしゃ、梢!ジュン!どんどんいこ!」
淳平「ああ。唯一見えた突破口だ!めぐのやる気がある内に行くぞ!!」
梢「まったく…………………ああもう、わかったわ!」
梢「たとえテストの点を取るための勉強だとしても、あなたの未来がかかっているんですものね!」
梢・淳平「あなた(めぐ)のために、頭をひねってあげるわ(やる)よ!!」
― つづく ―
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