一昨日、さやかちゃんがフィギュアの大会で優勝し、今日からまた一週間が始まる。今は朝練前で、スクールアイドル部の部室では花帆と梢、そして淳平が話していた。
梢「村野さん大活躍ねぇ」
梢がスマホのスポーツニュースのフィギュアスケートの記事を見てつぶやく。
淳平「おう、本当にすごかったぞ……」
花帆「はい!さやかちゃん、凄くキラキラしてて、綺麗でした!」
梢「私も、用事が無ければ行きたかったわ。部活会ももう少し時間の融通が利けば……」
するとそこへ、
さやか「すみません、遅くなりました!」
さやかちゃんと綴理が一緒に入ってきた。
淳平「おっ、主役の登場だな」
綴理「え、なに?」
梢「あなたじゃないわ。……また村野さんに迷惑かけて。大会の疲れもあるでしょうに」
さやか「大丈夫です。乙宗先輩。これも仕事ですから。ん?仕事?夕霧先輩を連れてくるのが……仕事……?」
すると花帆は見ていたスマホのニュース記事を綴理に見せる。
綴理「……これは?」
花帆「さやかちゃんが優勝した記事ですよ!一昨日のフィギュアの大会で!」
綴理「あー……。さや、おめでと」
さやか「はい、ありがとうございます!といっても、夕霧先輩には昨日からたくさんのおめでとうをいただいていますけども」
淳平「次は、梢も綴理も、スクールアイドルクラブ全員で応援に行こうな!」
さやか「あ、よろしければ是非、お願いします!」
梢「そうね。私も楽しみだわ」
綴理「ん。さや、また大会あるの?」
さやか「はい、実は色々連絡が来てまして。また来月に県大会があります。なので今日も、練習後にリンクに行く予定です」
淳平「帰りは迎えに行くよ。女の子を夜に一人で歩かせたら危ないしな。さやかちゃん可愛いし、変な奴が寄ってこないとも限らないし」
梢「それには同意ね。じゃあ淳、宜しく頼むわね?」
淳平「おう!」
梢「あと、今の発言のお仕置きも考えておくわね?」
淳平「なんで?!」
花帆「あはは……」
綴理 プイッ
さやか「…………///(なんでだろう?すごく嬉しい、ドキドキする///)」
さやかは、自身も良くわからない感情に陥っていた。
そして花帆と梢は校庭へ、綴理とさやかちゃんはレッスン室へと練習に向かう。
綴理と梢は、次のライブイベントに向けて気合が入る。
ー レッスン室 ー
さやか「夕霧先輩。レッスンの前に、少しお話し良いですか?」
綴理「え、なに。こわい。聞かない方が良さそう」
さやか「そんな……」
綴理「聞くけど」
さやか「アハハ……。ありがとうございます。少し、力が抜けました。ごめんなさい」
さやかちゃんは綴理にまずは頭を下げる。
さやか「わたしがスクールアイドルクラブに入りたいと思った理由は……夕霧先輩の技術を学びたいと思った理由は、全部フィギュアスケートで結果を出せていないからでした」
綴理「……………」
さやか「夕霧先輩に、多くのことを学ばせてもらって。わたしは本当に日々成長を実感しています。でも……でもわたしは、そんな夕霧先輩にその恩を返すばかりか、ずっとそんな不純な動機でスクールアイドルをやっていたんです」
綴理「それは……知ってたよ?」
さやか「……え?」
綴理「知ってた、というより分かってた?スクールアイドルを知らないのに、ボクにパフォーマンスを教えてほしいって言ってたし」
さやか「そ、それはそうですが」
綴理「うん。えっと、じゃあ練習しようか。次のライブもあるし―――」
さやか「夕霧先輩。夕霧先輩のおかげで、わたしは本当に多くの成長が出来たのだと思います。わたし今、すごく充実しているんです。自分の動画を見直しても、暗い気持ちにならなくなって……初めて優勝も出来て……お姉ちゃんのためにも頑張るって誓った、あの日の自分にも胸を張れる。だから、お礼を言いたかったんです」
綴理「そっか。うん、良かった。じゃあ練習を」
さやか「さ、さっきから!そんなに切り上げたがらなくてもよくないですか!?」
綴理「だって」
さやか「だって?」
綴理「今そんなことを言われても、あまり嬉しくない。なんか、まるで、もう終わりみたいだ」
さやか「え、スクールアイドルは辞めませんが!?」
綴理「え?」
さやか「辞めたりしませんよ、なんてこと言うんですか!」
綴理「いや、だって今……スクールアイドルを始めた理由は、って」
さやか「………。そう、言われると」
綴理「うん」
さやか「ひょっとしてお別れの挨拶みたいになってましたか?」
綴理「ボクそう言ってる」
さやか「ふっ……あはは。ごめんなさい。そんなつもりは全く無かったんです。わたしって本当に……もう、愚か者ですね。スクールアイドルとして頑張って来られたから、今のわたしがあるんです。そして、今のわたしで完成しただなんて思ったことはありません。ですからどうか、これからも宜しくお願いします。夕霧先輩。わたし、これからも頑張りますから!」
決意を改に綴理にそう伝えるさやかちゃん。
綴理「そっか」
綴理も、安心したように頷き……
綴理「分かった、変なこと言ってごめん。じゃあ、やろうか」
さやか「はいっ!!」
そして朝練が終わり昼休み、梢は綴理に用があって探していて、中庭でさやかちゃんと一緒にいる綴理を見つけた。
梢「綴理。急なのだけれど、あなたにも確認してほしいものが……」
さやか「こんな感じ……でしょうか?」
さやかちゃんは綴理に見てもらいながら、昼休みダンスの練習をしている。それを見た梢は……、
梢「……ふふ。村野さんは良い動きをするようになったわね。また後でにしましょう。ああいう時間は、楽しいものね」
そしてその日の放課後、さやかちゃんはスケートリンクに練習に来ていた。俺はスクールアイドル部の練習を見るのを早めに切り上げ、さやかちゃんの練習しているスケートリンクに向かった。
淳平「お、いたいた……」
俺は休憩場所からリンクのさやかちゃんを見ていた。
さやか「ふぅ……うん、良い感じ。疲れは……あるけど。でも、身体が軽い。昔のわたしじゃ、考えられない。こうやって、自分で納得できる自分になりたかった。そのために1年以上、つらくても頑張ってきた。わたしのこと、見ててね。お姉ちゃん。ん?休憩場所から見てるのは……淳平先輩?本当に来てくれたんだ……」
そしてさやかちゃんはリンクから出て、俺の見ていた休憩場所に入ってくる。
淳平「あっ、さやかちゃん。終わり?」
さやか「いや、本当に来てくれたんですね」
淳平「そりゃあね。本当は花帆も来たいって言ってたんだけどさ……」
さやか クスッ「花帆さんらしいですね。でも、バスが出ているのでそこまで危ないとは……」
淳平「それだけじゃなくてさ、さやかちゃんが無理して頑張ってないかな?と思ってさ。今日も綴理とみっちりやってたし、あれだけ練習したあとでスケートも、なんて…体力大丈夫なのかなと思ってさ。要らない心配だったみたいだけど」
さやか「ふふっ」
淳平「わ、笑わなくても……」
さやか「すみません。先輩を笑ったわけではないんです。つい……嬉しくて。それに、先輩と話してると楽しいですから」
淳平「そっか……」
さやか「ご心配痛み入ります。でも大丈夫です。子供の頃から鍛えてますから!」
淳平「はは。確かに花帆とは違うか……」
さやか「でも、もう終わりますから。待っていてください。一緒に帰りましょう。わたしを迎えに来てくれた先輩を、門限破りにしてしまう訳にはいきませんから」
淳平「ハハッ、言うじゃん」
少し挑戦的なさやかちゃんに、俺もつられて少し煽るような返しをする。
喧嘩になんかならんから心配すんなよ?
そしてその日の夜、女子寮のさやかの部屋ではさやかが料理をしながら、撮っていた自分のスケートの動画を見ていた。
さやか「もう少し、指先の表現をにメリハリをつけるべき……か。……味も少し弱いかな。後は……、こっちは少し動きに無駄があるというか。ジャンプ……スクールアイドルのときの癖が出てる。気を付けないと。もう少しじっくり……お芋もじっくり。うん、良い感じ。淳平先輩にああ言った手前、無理して怪我だけはしないようにしないと……今日から少し柔軟の時間増やして……。フフッ、頑張らなきゃ!……淳平先輩にも、わたしの料理食べてもらいたいなぁ……」
さやかちゃんはハッと気づいたのか、首をブンブンと振り、
さやか「なに言ってるのわたしは……!最近、なんか気がつくと淳平先輩を見てるし……、これじゃあまるで……まるで……」
すると、さやかちゃんのスマホが鳴った。
さやか「? ……お姉ちゃん?」
ー つづく ー
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