蓮ノ空スクールアイドル録   作:松兄

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第109話:子の想い 仲間の言葉

めぐのお母さんが、めぐ(自分)のためにジュエリーデザイナーを辞めていたことを知っためぐは、ショックで部屋を飛び出し、寮の外に走った。

 

俺もそれを追いかける。

 

――そして、外に出た所で

 

淳平「めぐ………」

 

慈「私が………ママの夢を、奪ったんだ」

 

慈「私がタレントを始めたいって言ったから、ママは、私のために……私の夢を、叶えるために………」

 

慈「自分を、犠牲にして…………」

 

慈「私の、せいで………」

 

淳平(かける言葉が見つからねぇ……)

 

何を言っても逆効果になりそうな気がする。

 

慈「…………なんなの。誰かのために、自分の夢を諦めるなんて………。そんなの、意味わかんないよ!」

 

慈「私が大人になったら、いちばんきれいなアクセサリー作ってくれるって……………。だから、自分は、世界一のデザイナーになるんだ、って言って………!だったら私だって……世界中を夢中にするときには、ママのアクセサリーも一緒に連れていってあげる、って………そう言ったのに―――」

 

慈「ばか!ばかばかばかばか!ママのばか!こんなの、ぜんぜん!嬉しくない!」

 

淳平(めぐ………)

 

慈「私だったら絶対………ぜったいに、諦めないのに」

 

めぐは、去年の自分がスクールアイドルに復帰した時のことを思い出す。

 

 

瑠璃乃『せーのっ!』

 

瑠璃乃&慈『『みらくらぱーく!』』

 

 

 

慈「なのに…………」

 

慈「勝手にやめないでよ………」

 

慈「ママの、ばか……」

 

淳平「めぐ…………」

 

慈「ん、あれ……?」

 

めぐの視線の先には、

 

淳平「梢?」

 

望遠鏡をセットして覗き込んでいる梢がいた。

 

梢「なにしているの?あなたたち」

 

慈「……………梢こそ」

 

梢「私は天体観測だけれど」

 

慈「……………あっそ」

 

梢「…………なんなの」

 

慈「……………」

 

梢「なに?」

 

淳平「めぐ?」

 

慈「梢とジュンって、大学行くんだよね」

 

梢「ええ。推薦入学が、もう決まっているから」

 

淳平「俺も」

 

慈「そっ。私も行こうかな、大学」

 

は?

 

梢「えっ?いや、その、入ろうと思って、急に入れるような場所では……………」

 

慈「………………」

 

梢「………なにか、あったの?…………話を聞くぐらいは、できるけれど」

 

慈「頭の中、ぐしゃぐしゃで……うまく、まとまってないけど」

 

梢「そう。いいわよ、時間がかかっても。星を見ているから」

 

慈「私、ママに大変なことをしちゃってたんだ。私のせいで、ママは、自分の夢を諦めなきゃいけなくって」

 

慈「そのことに、私は気づかなくて……………。ずっと、自分勝手だった」

 

梢「………あなたが自分勝手なのは、今に始まったことじゃないでしょう」

 

淳平「それは、まあ………」

 

慈「……………ごめん」

 

梢「どうしちゃったのよ、本当に…………」

 

めぐ、本当に責任を感じてるな…………。

 

慈「今さら、どうすればいいんだろ………。ごめんって謝っても、時間は戻らないのに………」

 

梢「………だから今度は、母親のためにあなたが夢を諦めて、大学に入るって言うの?」

 

慈「………………それもありなのかな、って。ママが私を、梢みたいな"立派な常識人"にしたいんだったら……今度は私がその夢を、叶えてあげるべきなんじゃないかな……とか」

 

梢「………………母親の娘としてなら、そういう選択肢もあるでしょうね」

 

慈「うん………」

 

梢「でも、スクールアイドルとしては、どうかしら」

 

梢「配信であなたを応援してくれる人たちは、みんな、あなたの幸せを願っているわ。その人たちに胸を張って、自分の選択を報告できる?」

 

慈「それは……」

 

梢「私たちもうすぐで、知り合ってから3年になるわね。沙知先輩には、4人でずいぶんと迷惑をかけてしまったわ。

 

慈「………なに、急に」

 

梢「この3年間で、私がいちばん憤ったことがなんだか、わかる?」

 

慈「……………沙知先輩が、勝手に辞めたこと?」

 

梢「いいえ」

 

慈「じゃあ、私が怪我して部を辞めたこと」

 

梢「それも、いいえ」

 

梢「怪我をしたあなたが、私と綴理と淳に謝ったことよ。リハビリに付き合うなんて、ぜんぜん平気だった。私と綴理と淳 はあなたの手を掴んでいたのに。あなたは、自らその手を振り払ったの―――」

 

梢「自分の夢を、諦めたのよ。あのとき以上に悔しくて、悲しくて。あなたの身勝手さと、自分の無力感に憤ったことはなかったわ」

 

淳平「あの時はな………」

 

自分が無力に感じて仕方なかった。

 

慈「……………そんなこと、言われても。あんたには、ラブライブ!優勝っていう夢があったでしょ。それに……その話は、もう終わったじゃん」

 

梢「あなたはきっと正しいことをした。でも私は、死ぬまで根にもつわ」

 

慈「なんなの?私になにを言わせたいの!?」

 

梢「私は―――、」

 

慈「―――え?」

 

梢「私は、もし新入部員が誰も入ってこなかったとしても、今でも綴理と不干渉を貫いていたとしても、ぜったいにスクールアイドルクラブを辞めなかったわ」

 

梢「どんなにみっともなくて、無様でもね。あなたが私に謝ったんだから。私のために、あなたが夢を諦めたんだから」

 

慈「そんなの…………そんなの、私のせいでしょ!私が踊れなくなったのは、ぜんぶ私のせいなんだから!人の責任まで引き取らないでよ!この、戒めバカ!」

 

梢「じゃあどうしてあなたは、今そんなに苦しんでいるの!?同じことでしょう!」

 

慈「―――つ」

 

梢「たったの半年間だったかもしれないけれど…………。あなたが本気だったから、私も、その夢を背負ってスクールアイドルを続けることを選んだのよ」

 

梢「……ごまかすのが下手だわ。あなたは、いつも」

 

慈「人のこと、なんでもわかってるような顔をして!自分がそうしたんだから、私にもこれまでと同じようにやれってこと!?私の犠牲になった人がいても、それを知っても前を向け!応援してくれる人に、これまでと同じ、これまで以上の笑顔を振り撒け、って!」

 

慈「私が決めたことなんだから!最後までやり通せ、ってさ!」

 

慈「なにそれ!?ぜんぜん優しくない!私のこと、梢みたいに人の心がない女だとでも、思ってんの!?あんたや綴理と違って、私がしがみつく理由なんて…………そんなの……そんなの!」

 

 

慈・瑠璃乃『『世界中を夢中にしよう!!』』

 

姫芽『お誘いいただけるなら、願ってもないことです。どうか、よろしくお願いします!』

 

淳平『よし、それじゃあ練習、始めるぞ!!』

 

 

慈「そんなの―――!」

 

慈「――山ほどあるに、決まってんじゃん!!私は楽しいことが、大好き!どんなときでも、みんなと楽しく笑っていたいよ!」

 

慈「たとえその途中で、沙知先輩や、綴理。それにあんたや、ジュン、ママを傷つけても………それでも、私のやりたいことは、ずっと、ずっと変わらない………!」

 

慈「私は、るりちゃんと一緒に、姫芽ちゃんの手を引いて、もう、走り出したんだ………!」

 

慈「いいよ、わかったよ、やってやるっての!どんなことがあっても、目を背けずに!つらいことも悲しいことも、ぜんぶ背負って、それでも世界中を夢中にしてやるんだから!」

 

慈「中途半端は、辞める!私はどうせ自己中だよ!だったら、世界一カワイイ自己中になってやる!あんたが卒業した翌日だって、笑顔で配信してやるからね!」

 

やっとめぐの調子が戻ってきた。

 

梢「あなたも卒業しているのよ、そのときは。私をがっかりさせないでね、慈」

 

慈「うっさいわ!勝手に死ぬまで根にもってろ!ばか!あほ!ぼけー!」

 

梢「口が悪いわね……」

 

慈「がるるるるるる………」

 

姫芽「めぐちゃんせんぱい〜!」

 

慈「がる?」

 

瑠璃乃「めぐちゃん、野生化してる!?」

 

慈「あ、ふたりとも!さっきは、ごめ―――ハッ。よし!ふたりとも!曲の新しいイメージ、バージョン2を思いついたから、すぐ帰るよ!」

 

瑠璃乃「えっ、なになに!?」

 

梢「………………自己中って、そういうことではないと思うのだけれど」

 

慈「今度のテーマは、覚悟!私は私の決めた道を行くんじゃい!そう!たとえどんなことがあっても、自分の決めた道を!」

 

淳平「なんか、あんまり変わってなさそうだけど?」

 

慈「変わってるの!ニュアンスとか、私の心情が!だから手伝って!るりちゃんと姫芽ちゃんが手伝ってくれないと、私の最高の曲が完成しな〜い〜!」

 

瑠璃乃「なんか、飛び出したときより、元気になってない……?」

 

瑠璃乃「めぐちゃんが心配だから、充電振り絞って、ここまで走ってきたのに………!」

 

慈「ありがと、るりちゃん!大好きだよ!ラブ!」

 

瑠璃乃「あ、うん……ルリも大好きだけど〜………」

 

姫芽「るりめぐ……………」

 

梢「うふふ」

 

慈「きょうは、話を聞いてくれて………ありがとう」

 

淳平「俺からも。ありがとう梢」

 

梢「あら」

 

慈「お礼に、あんたのいちばんほしいもの、くれてやるから。全国への切符」

 

慈「北陸大会は、任せて。私の曲で、圧勝してやるんだよ!」

 

梢「それは、楽しみだわ」

 

慈「ベーだ」

 

瑠璃乃「梢先輩、めぐちゃんになにかしました?」

 

梢「いいえ?私はただ、星を見ていただけよ。ずっとね」

 

――それから2日後、叔母さんの職場で、

 

慈ママ「その件は進めていただいて。はい、大丈夫です。それでは、また後ほどお願いいたします」

 

慈ママ「あら慈ちゃんから、メール……じゃなくて。これはビデオレター?」

 

めぐのお母さんが、ビデオを再生する。

 

慈『やっほ、ママ。慈ちゃんだよ』

 

慈『ママ、聞いたよ。私のために、ジュエリーデザイナー辞めたんだって?そういうの黙ってるとこ……ほんと、私そっくり。やっぱり、親子だね』

 

慈『……………あのね、私、やりたいことがあるんだ。世界中を夢中にさせたいの』

 

慈『これからも迷惑かけるかもしれなくて、それはごめんだけど!でもその代わりに、ママの大好きな私が、世界中で元気に笑ってる姿を、いつでも見せてあげるから』

 

慈『――どこにいても、今が幸せだよって歌うから』

 

慈『蓮ノ空に入って、友達ができて、前も言ったけど、彼氏もできた。仲間ができて、先輩ができて、ライバルができて、後輩ができた――。いつだって私には、助けてくれる人がいるから。だから――』

 

慈『――もう、大丈夫だよ。だから、今月のライブ、見てて』

 

慈『北陸大会っていうすごく大切な日に、成長した私の姿と、私の仲間をぞんぶんに見せてあげるから。自慢の娘の晴れ舞台、ぜったい見ててよね!』

 

慈『それと……大好きだよ、ママ。今まで、ほんとに、ありがとう!』

 

そこで、ビデオレターは終わった。

 

慈ママ「まったく、慈ちゃんってば………」

 

慈ママ「予定、空けておかなくっちゃね」

 

 

― つづく ―




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