蓮ノ空スクールアイドル録   作:松兄

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第113話:足りないもの

あのあと、瑞河からの帰りの新幹線の中で………、

 

花帆「すごかったね……勝つための、ステージ」

 

吟子「……………そうだね」

 

淳平「ああ……」

 

花帆「あたし、そんなスクールアイドルがいるなんて、考えたこともなかった。――でも、そうだよね。ラブライブ!は、スクールアイドルの出場する競技、なんだもんね」

 

花帆「あれが勝ちにこだわってきた人の強さ、なんだ……」

 

吟子「……勝つための練習なら、私たちもしてきたよ」

 

花帆「うん。でもやっぱり……あたしたちとは、ちょっと、違うよね……………。うまく言えないけど、あたしたちは、スクールアイドルをやりながら勝ちたいっていうか……………勝てるのかな。あんな風に、勝ちを積み重ねてきた人に………」

 

弱気になる花帆、

 

吟子「………勝てるかどうかじゃなくて、勝つんでしょ」

 

淳平「確かに、すごいステージだった。けど俺は、蓮ノ空のほうが好きだ」

 

吟子「私もです。私たちには、私たちの戦い方がある。そうでしょ?」

 

花帆「……そうだよね。瑞河がどんなにすごくても、勝てるかどうかじゃない。勝たなきゃいけないんだ。約束したんだもん。勝つって!」

 

花帆の脳裏に、去年のラブライブで負けた時の事が呼び起こされる。

 

花帆「去年、ラブライブ!に負けたとき……みんな、すごく、悔しがってた。あたしだって……今度こそ優勝するんだって、その気持ちで1年間やってきたんだから!――なにより、梢センパイの夢のために……ぜったい勝たなきゃ!」

 

花帆「吟子ちゃん!淳兄ぃ!」

 

吟子「な、なに」

 

淳平「どうした」

 

花帆「あたし、吹っ切れたよ!ありがと!」

 

吟子「そ、そう」

 

花帆「よし!帰って早速、作戦会議だね!やるぞー!」

 

吟子「……………相変わらず、オンオフのわかりやすい人」

 

淳平「そこが魅力でもあるから」

 

吟子「はい……」

 

 

そして、俺たちは蓮ノ空に戻ってきて、

 

 

―― 蓮ノ空スクールアイドルクラブ部室 ――

 

吟子「では、再生しますね」

 

全員「…………………」

 

皆が画面を注視する。そして、泉さんのパフォーマンス映像が流れる。

 

吟子「……………これが、瑞河のパフォーマンスです」

 

瑠璃乃「うわぁ〜」

 

梢「……とんでもないわね」

 

慈「これは、えぐいね。聞いてたよりも、ずっと」

 

綴理「うん。赤い炎かな。宝石の中で燃え盛る、消えない炎。見入ってたら、いつの間にか石の中に閉じ込められてるような。そんな風に見えたよ」

 

さやか「凄まじいほどの執念と、そして自信を感じます。指の先まで、髪の毛の一本に至るまで、『絶対に勝つんだ』という想いが、あふれて見えます」

 

姫芽「こういうタイプ、アタシ知ってますよ。『覚悟を決めた天才』ってヤツです」

 

1番敵にしたらヤバいタイプじゃねぇか………。

 

小鈴「……………!……!」

 

ん?

 

瑠璃乃「こ、小鈴ちゃん!?だいじょぶ!?」

 

小鈴「ぷ、ぷはあっ!すみません徒町、息するのを忘れてました!パフォーマンスを見てたら、つい………!それくらい、それくらいすごかったです…………」

 

花帆「あの……梢センパイは、どう思いましたか?」

 

梢「そう、ね。負けられない戦いを積み重ねたせいでしょうね。泉さんからは絶対の自信と、必死さ、いえ懸命さが両方感じられる。おそらく何度も限界を超えながら、多くの舞台で、勝ってきたんだわ。そして、まだ上を目指すのだと、彼女の瞳が言っているように見える」

 

梢「強い。決勝の相手としては、そう言うしかないわね」

 

花帆「それでも…………。優勝するためには、この瑞河に勝たなきゃいけないんです!泉さんに勝つことができれば、きっと優勝できるんですよ、あたしたち!だから、あともう一歩なんです!」

 

淳平「あと一歩……………。そうだな」

 

梢「十人それぞれがなにをするか、考えましょう。悔いのないように」

 

花帆「勝つために…………!」

 

梢「………ええ、勝つために」

 

すると、

 

姫芽「あの〜。アタシ、試合がしたいです〜!いっぱいいっぱい、い〜っぱい!」

 

瑠璃乃「試合って、スクールアイドルの?」

 

姫芽「はい〜!勝つためには、とにかく実戦あるのみです〜!相手の真似をするわけじゃなくて、アタシはこれまでずっとそうやって、勝ってきましたから〜!時間の許す限り、『たのも〜!』って乗り込んでいってきます〜!いろんな学校に……いえ、あらゆる学校に〜!」

 

淳平「それはさすがに迷惑かかるから、試合したい学校を予め俺に言ってくれ。試合を申し込んでおくから」

 

姫芽「あ、はい〜!お願いします〜!!」

 

姫芽「全国すべてのスクールアイドルに、片っ端から果たし状を……」

 

慈「効率が悪い!というわけで、私もついていってあげよう。こう見えても、顔が広いからね。ジュンにも協力するよ」

 

淳平「サンキュめぐ」

 

姫芽「めぐちゃんせんぱい………!」

 

慈「それにね、私もここらで実戦のカンを研ぎ澄ませておきたいんだよ。暴走姫芽ちゃんに押されてるようじゃ、優勝なんて夢のまた夢だからね」

 

姫芽「お、おお…………。じゃあ、アタシとめぐちゃんせんぱいでも、勝負ですね〜!」

 

さやか「あの、御三方が邪魔でなければ、わたしもご一緒したいです」

 

淳平「さやかちゃんも?」

 

さやか「はい。本番に向けた練習は、しっかりと積み上げてきましたので。あとは最適化を図るための調整に、時間を使いたいんです。綴理先輩と、小鈴さんがよろしければ、ですが」

 

小鈴「もちろんです!徒町は徒町でやりたいことがありますから!」

 

さやか「やりたいこと………?そうですか、わかりました」

 

綴理「さやをよろしくね、めぐ、ひめ」

 

――すると、

 

梢「だったら……私は、綴理を借りてもいいかしら」

 

綴理「おー?」

 

梢「私のコーチをしてほしいの」

 

綴理「ボクが、こずの?」

 

梢「ええ。一年生のときに、少しやってもらったでしょう。あの頃は私もまだまだ未熟で、あなたの足を引っ張っていたけれど」

 

梢「でもね、今ならきっと、やりきれそうな気がするの。もちろん、私からもあなたに教えられることがあると思うわ」

 

綴理「うん、わかった。楽しみだね」

 

梢「ええ、ありがとう」

 

これはなかなかの胸アツ展開だな。成長した今の2人なら、きっとお互いに良い科学反応を起こせるはず!

 

吟子「綴理先輩と梢先輩がマンツーマンで………。すごいことになりそう」

 

慈「るりちゃんはどうする?」

 

瑠璃乃「ん〜。実は、ルリもやりたいこと思いついたんだ。みんなが個々のパワーアップをがんばるなら、ルリはみんなのサポートがしたいな、って。例えばだけど、ステージで誰かになにかあったとき、ルリがすぐにカバーに入れるようになったら、みんな安心して自分のことに集中できるっしょと、ルリ思う」

 

慈「さすが現代に生誕せし博愛の聖女!」

 

瑠璃乃「なんでめぐちゃんまでそれを!」

 

吟子「あ、だったら!私も一緒に行ってもいいですか?瑠璃乃先輩!」

 

瑠璃乃「吟子ちゃんも?」

 

吟子「はい。私、どうしても想定外の事態に弱くて…………。だったら、あらかじめすべてのミスの可能性を頭に叩き込んでおけば、動揺せずに済むと思うんです」

 

瑠璃乃「あ〜、なるほどねぇ。でもいいの?時間ないから、たぶん、けっこーハードになると思うよ」

 

吟子「どんとこいです」

 

花帆「みんな、すごい!すごく、レベルアップしそう………!」

 

さやか「花帆さんは、どうするんですか?」

 

花帆「えっ?う、うん。そのね。もちろん考えてるよ!あたしは――」

 

梢「花帆。後で少し話があるのだけれど、いいかしら」

 

花帆「は、はい?」

 

そして、各自やりたい事を行うために部室からそれぞれ出ていく。俺はまずめぐと姫芽ちゃん、さやかちゃんから試合したい学校をリストアップしてもらい、先生の許可を貰って先方の学校に対外試合を申し込む。

 

向こうも練習試合なら、と、引き受けてくれるところも多く。日程はすぐにまとまりそうだった。

 

淳平(あとは………)

 

 

― 梢・花帆 Side ―

 

花帆「あの、ええと、梢センパイ。もしかして、わかっちゃいましたか…………?」

 

梢「なにか不安そうにしている、ということはね。話してもらえるかしら」

 

花帆「迷ってる……んだと思います。優勝するために何かしないといけないのに。何をしていいのか、まだはっきりとわからなくて………。で、ですけど!もう時間はないですし!まずは練習あるのみかなーって!」

 

花帆がそう答えると、梢は、

 

梢「もしよければなのだけれど。この特訓期間中、あなたにはやってほしいことがあるの。聞いてくれる?」

 

花帆「えっ?」

 

梢「それはね。それぞれのグループの特訓に、一回ずつ参加して、みんなの心に触れてくること。そこで見つけてほしいの。ラブライブ!優勝を目指す上で、今のあなたには足りないものを」

 

花帆「足りないもの………!?それはやっぱり、あたしの実力…………!?」

 

梢「そうじゃなくてね」

 

梢が少し焦る。

 

梢「歌に関してもダンスに関しても、あなたはこの二年で本当に成長したわ。さやかさんや瑠璃乃さんにも引けを取らない。ステージ上のパフォーマンスならそれこそ、誰よりも魅力的よ」

 

花帆「そ、それはさすがに褒めすぎだと思うんですけど……!?でも、それじゃあ足りないものって……?」

 

梢「……………大丈夫。あなたなら、すぐにわかるわ」

 

花帆「え!?今、教えてもらえないんですか!?」

 

梢「今ぜんぶを言葉で説明しても、実感できないと思うの。みんなのところを巡ってきて、そして最後に私の下へ帰ってきてくれれば、きっと、答えがわかるから。だから、がんばって。花帆」

 

そして、梢は部屋から出ていった。

 

花帆「あたしに、足りないもの………!?」

 

 

― つづく ―




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