蓮ノ空スクールアイドル録   作:松兄

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第114話:心に触れる

花帆は、梢に言われた『今の自分に足りないもの』について考えていた。

 

花帆「あたしに足りないものって、なんだろ………?実力じゃなかったら、経験……?運の良さ、とか……!?」

 

考えるが、分からない花帆。

 

花帆「う〜〜ん、なんだろ〜〜…………。とりあえず、他の子と合流して……と」

 

そして花帆は、他のメンバーを探しに向かった。

 

― 屋上 ―

 

小鈴「わんつー!わんつー!」

 

花帆「…………ん?あれ?」

 

見ると、小鈴ちゃんが1人で練習していた。

 

小鈴「ちぇすとー!ちぇすとー!」

 

花帆「小鈴ちゃん?」

 

小鈴「か、花帆先輩!?」

 

慌てる必要は全くないのに、慌てる小鈴ちゃん。

 

小鈴「あ、いや、徒町は!徒町は、その、決してみんなの足手まといになると思ってひとり練習しようと考えたわけではなく!」

 

花帆「わけではなく?」

 

小鈴「わけではなく………わけです………。すみません……」

 

花帆「ど、どうして謝るの?」

 

小鈴「だって、みなさん、今の自分をもっともっとレベルアップしようとがんばってるのに、徒町だけこんな、普段の練習と変わらないことをして……」

 

落ち込む小鈴ちゃん。たが――、

 

小鈴「でも徒町は、二倍、三倍練習してようやく、他の方の背中が見えてくるので……。なので、自主練というわけです…………」

 

花帆「そっかぁ。ね、ね、じゃああたしもきょう一日、一緒にやっていい?」

 

小鈴「ええ!?花帆先輩も……ですか?それはもちろん、構いませんけど!」

 

花帆「梢センパイからの指令もあるけど………。でも、小鈴ちゃんが見てくれたら、あたしも、いつもよりもっとがんばれるかもしれないから」

 

小鈴「はい。こんな徒町ですが、よろしくお願いします!」

 

花帆「ん、よろしくね!」

 

そして、しばらく二人で練習する花帆と小鈴ちゃん。少し疲れてきたので休憩を取る。

 

花帆「小鈴ちゃん、ちょっと休憩しよっか?」

 

小鈴「は、はぃいいい………」

 

花帆「だいじょうぶ?」

 

小鈴「………なんだか、いつもと違うんです、徒町」

 

小鈴「予選のときも、北陸大会のときも、大丈夫だったのに……。いよいよ次が決勝戦って思うと……、体の震えが、止まらなくなっちゃって……。次は、ぜったいに失敗できないんです!失敗して……そして次またチャレンジしようって、できないんです……。それが、こわくて………」

 

花帆「…………うん、そうだよね。一緒だよ、あたしも」

 

小鈴「そんな……花帆先輩が!?」

 

小鈴「あの、いつでもキラキラしてて、まぶしくて、目標に向かってまっすぐに突き進んでゆく、みんなの憧れの花帆先輩が……徒町と一緒、だなんて………」

 

花帆「それどういうイメージ!?」

 

ものすごく美化されたイメージに驚くと同時に突っ込む花帆。

 

小鈴「だって、さやか先輩は、いっつも花帆先輩のことを褒めてますよ………?」

 

花帆「さやかちゃんはさやかちゃんだからだよ!今だって………。あたしが原因で負けたらどうしよう、本番でミスしちゃったらどうしよう、って……不安で、いっぱいだよ」

 

小鈴「それじゃ、ほんとに徒町と……」

 

花帆「だって…………うん。泉さんはものすごく強敵だし、今年のラブライブ!は、今年しかないんだから………」

 

小鈴「……………」

 

花帆「大事な人の力になりたくて、足を引っ張りたくなくて。でもそういう気持ちが強くなればなるほど、自分にできることはなんだろう、って悩んじゃって。だったら!あとはもう『がんばる』しかないと思うんだ」

 

小鈴「でも、それだけじゃあ……!」

 

花帆「……あたしもね。今、精一杯、もがいてるんだ。こんな自分になにができるかわかんないけど。せめて、後悔したくないから、って」

 

小鈴「でも……後悔すると、思います………。どんなにがんばっても、徒町のせいで負けたんだったら………」

 

花帆「うん。だからこそやっぱり、勝たなくっちゃ!勝ってみんなで笑顔で帰ってくる!もう、それしかないと、思うんだ。これが、あたしのとりあえずの結論!」

 

花帆「梢センパイには、まだあたしには足りないものがあるって言われちゃったけど………。他になにか見つかったら、そのときは小鈴ちゃんにも教えるからね!一緒にがんばろ?似た者同士……………ね?」

 

小鈴「……ありがとうございます。花帆先輩も同じ……それでもがんばるんだって、そう言ってもらえると、徒町も、ほんのちょっぴり、勇気が出ました。徒町も……今できることを、精一杯、がんばります!」

 

すると、小鈴ちゃんの瞳に一筋涙がつたう。

 

小鈴「す、すみません……ちょっと、顔洗ってきます!」

 

そして、小鈴ちゃんは行ってしまった。

 

花帆「みんなの心に触れるって……こういうこと、なのかな。でも、なんだか……うん、小鈴ちゃんと一緒に練習できて、よかった、気がする」

 

花帆「この調子で……、あたしに足りないもの、見つけるんだ!がんばるぞー、ちぇすとー!」

 

 

 

― 翌日 ―

 

今日はさやかちゃん、姫芽ちゃん、慈のグループと一緒に他校に練習試合に行く。

 

因みに淳平は先生から、『しっかり者の村野さんが居るから大丈夫だとは思うが、藤島さんの手綱を握ってくれ』と、先生から頼まれて引率をしている。

 

花帆「本日は、他校との練習ライブ!一日、よろしくお願いします!」

 

慈「ん、よろしく〜」

 

淳平「今日は花帆もか」

 

さやか「きょうもがんばりましょう」

 

姫芽「本日は〜、5校回る予定ですからね〜」

 

花帆「そんなにやるの!?」

 

慈「もちろんこれぐらいはね。私は生ぬるい環境に身を置いて、すっかりと錆びついてた!つもりは、まあ、ぜんぜんまったくないんだけど。少なくとも、姫芽ちゃんが暴れ回ってるのを後ろから眺めて、楽しんでる節はあった。でもね、今回はそれじゃだめなんだよ。私は、私の手で優勝を掴む!そのほうが、きっと楽しいからね!」

 

慈「完全燃焼!それは……今!」

 

淳平「暴走はするなよ〜?」

 

花帆「わぁ………慈センパイ、いつも以上に燃えてる……!」

 

姫芽「めぐちゃんせんぱいがバトルの喜びに目覚めてくれて、アタシは嬉しいです〜。戦いはいいですよ、戦いは………。これまで培ってきた、人生が出ますからね〜……………」

 

花帆「じ、人生?」

 

姫芽「はい〜。日々の取り組み方はもちろんのこと、練習でできたことをどれだけ本番で発揮できるか〜とか。追い詰められたときには、本当の精神力が試されますし、全身の細胞がフル活動して、うおおお今が生きてる〜!って感じがするんですよぉ〜」

 

姫芽「あのスリル、焦燥感、喜怒哀楽のすべてが混ざり合った感覚は、やっぱり戦いの中でしか味わえないのです〜!」

 

花帆「そ、そっか…………だから姫芽ちゃんは対戦が好きなんだね」

 

姫芽「そうですよ〜。んふふふふ…………桂城泉、相手にとって不足はなし………」

 

姫芽ちゃんの目がギラギラと輝いている。

 

花帆「姫芽ちゃん、目がキラキラしてる……!」

 

姫芽「やはり本気であれば、本気であるほどに、楽しい〜…………。いくらめぐちゃんせんぱいでも、そう簡単に見せ場はあげませんからね〜」

 

慈「上等!奪い取ってやるもんねー!」

 

花帆「なんか……なんか、すごいね……!」

 

淳平「だろ?」

 

さやか「はい。おふたりのおかげで、グループ内で火花を散らすというのも大切だなと、改めて実感しました。お互いに切磋琢磨し、高め合う。蓮ノ空が数々の大会で結果を残すことができた理由もきっと、ユニット制だからなのかもしれませんね」

 

花帆「大変じゃない?」

 

さやか「確かに大変は大変です。少しは加減してください、と思わないでもありませんが……ですが、本番では、おふたりに負けじと跳ね返すだけのパフォーマンスを見せられないと、意味がないとも思います。これはこれでやりがいがありますしね。ふふふ……次は負けませんよ、ふふふ…………」

 

花帆「そうだった、さやかちゃんって、ちゃんと負けず嫌いだったんだ……!」

 

淳平「そ。今回はさやかちゃんも暴走組に片足突っ込んでるんだよな………」

 

さやか「いくらなんでもそれは失礼じゃないですか!?」

 

花帆「ハッ……この三人にあって、あたしに足りないもの……!それは、闘争心……勝ちへの執念……!?そっか……あたしも、もっともっと、燃え上がらなきゃ……!」

 

淳平「お、おい……?」

 

冷や汗が出てくる俺。

 

花帆「よっし!慈センパイ!姫芽ちゃん!きょうは思う存分、戦おうね!」

 

淳平は心のなかで『ブルータス(花帆)お前もか』と、頭が痛くなる。

 

慈「お、やる気かぁ〜?」

 

さやか「花帆さん、あまり無茶はしないでくださいね」

 

花帆「ううん、やっちゃうんだから!」

 

姫芽「いくらめぐちゃんせんぱいとコラボしたかほせんぱいと言えど、負けませんからね〜?」

 

花帆「それいつの話!?かほめぐ♡じぇらーとのことだよね!?」

 

姫芽「くぅ……アタシもいつか………!」

 

慈「もう一緒のユニットでしょうが!」

 

姫芽「そこはまた違う栄養素がぁ〜!」

 

淳平「やれやれ。ほら、先方との約束の時間があるからそろそろ行くぞ」

 

姫芽「うお〜。かほせんぱい〜。そしたら、めぐ♡じぇらーと権をかけて、勝負しますか〜」

 

花帆「の、望むところだよ!」

 

慈「やだ、取り合いされちゃってる…………。わたしってば罪な女の子♡」

 

淳平「早く行くぞ!」

 

 

 

そして、他校との対外試合も経験し、夜、寮の自室に戻ってきた花帆はベッドに寝転がっていた。

 

花帆「う、うう……バトル……。姫芽ちゃんが、姫芽ちゃんが襲い掛かってくる……ん?」

 

すると、花帆のスマホに電話がかかってきた。

 

花帆「あ、えっと…………もしもし?」

 

花帆が電話に出ると、

 

綴理『やほ、ボクだよ』

 

花帆「あ、綴理センパイ」

 

綴理『こずに言われて、電話してきたよ。これがボクのターンなんだって』

 

花帆「な、なるほど………?」

 

綴理『そっちはどう?』

 

花帆「毎日へとへとになってます!」

 

綴理『ふふ、ボクも。今はね、こずと山の上にあるお寺に泊まってるんだ』

 

花帆「山籠もりじゃないですか!」

 

綴理『スマホもね、たまにしか繋がらないんだよ。この電話は、こずがお風呂に入ってる間にかけてるのだ』

 

花帆「そんな、まるで監禁されてるみたいな……!」

 

綴理『? ボクは楽しいよ。いや……たぶん、こずも。起きてから寝るまで、ふたりでずっとスクールアイドルのことだけを考えてるんだ』

 

花帆「……生き生きしてそうですね、梢センパイ」

 

綴理『たぶん?』

 

花帆「そこは断言してもいいと思います」

 

綴理『だから、もう少し貸しててね』

 

花帆「はい……でも、あ」

 

花帆は、綴理なら何か聞いてるかもしれないと思い聞いてみる。

 

花帆「あの、綴理センパイはあたしに足りないものがなにかって、聞いてます………?」

 

綴理『ん〜……………。ボクにはよくわからないけど。でも、かほの気持ちは伝わってくるよ。勝ちたい。負けたくない、って気持ち』

 

綴理『二年前の、こずみたいだ。…………っていうと、だめなのかな?って思うかもしれないけど、だめじゃないよ。ぜんぜん。こずもだめじゃなかった。その気持ちは、すごく大事』

 

綴理『ボクも、一緒だよ。今年は……今年こそは、勝ちたい。『蓮ノ空さいきょー』。その気持ちは、去年よりもずっと強くなったから』

 

花帆「綴理センパイ……」

 

綴理『こずのためにも、みんなのためにも。そして、ボクのためにも。みんなで勝とう。みんなで、ね』

 

花帆「……そのためには、ひとりひとりの努力が必要、ってことですよね!」

 

綴理『うん?』

 

花帆「その………ぜったい勝つぞっていう、執念とか!」

 

綴理『それは、どうなんだろ。かほが思うなら、そうなのかも?』

 

綴理『あ、そうだ。あとひとつだけ。ありがとう、かほ』

 

花帆「え?」

 

綴理『こずを助けてくれて、ありがとう。こずにお願いされなくても、これを伝えるために、 電話したかったというのもある。ありがとう。ボクにはできなかった。でもね、この1年間のこずを見てるのは、すごく、幸せだったよ。きっと、かほのおかげだ』

 

花帆「やっ、えっ、あの……そんな、突然……………」

 

突然の言葉に照れる花帆。

 

綴理『ビッグボイス選手権で伝えきれなかった想いをね。みんなに、ぜんぶ言っておきたいんだ。これが……リトルビッグボイス選手権?』

 

花帆「大きいのか小っちゃいのかわかんないですよぉ………。――ありがとうございます、綴理センパイ」

 

花帆「あたし、梢センパイの笑顔を、本当の意味で花咲かせるために、あと少し。がんばりますから!」

 

綴理『うん。………あ』

 

梢『さ、そろそろ寝て、明日に備えましょう』

 

綴理『だって。じゃあね、かほ』

 

花帆「あ、梢センパイと、ちょっとぐらいお喋り……ううん!おやすみなさい、綴理センパイ、梢センパイ!」

 

そして花帆は、電話を切る。

 

花帆「梢センパイとお話しするのは、課題が終わってから……!」

 

花帆「次が最後のひとつ。瑠璃乃ちゃんと、吟子ちゃんのところ………。そうしたらきっとなにか、掴めるはず……」

 

花帆「ううん、掴まなくっちゃ!あたしに足りないものを見つけて……そして、ラブライブ!で優勝するんだから!」

 

 

― つづく ―




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