翌日、花帆は最後のメンバーである、ルリちゃんと吟子ちゃんのところに来ていた。
― 大倉庫 ―
場所は大倉庫の、スクールアイドルクラブの物が閉まってある場所。
花帆「じゃあ、蓮ノ空の過去の映像を見たりしてたんだ?」
瑠璃乃「うん!」
吟子「それに瑠璃乃先輩は、メンバー全員のパートと振りを覚えようとしてるんです」
花帆「えっ、全員分!?」
驚く花帆。
瑠璃乃「もしかしたらそれで、誰かがミスってもカバーできるようになるかもだしねえ。面白いんだよ、いろんな発見があって。――例えば梢先輩パートは、バレエの動きがたくさん取り入れられていて、手足をこんな風に伸ばす動作が多かったり」
瑠璃乃「実際やってみるとね、あ、こういうところが大変なんだな、ってわかったり。よりその人の気持ちになって考えられるような気が……する!」
花帆「瑠璃乃ちゃん……………すごい!」
瑠璃乃に尊敬の眼差しを向ける花帆。
瑠璃乃「やっぱねー、勝つにしても負けるにしても……あ、いや、もちろん負けることは考えたくないんだけど。みんなで笑って卒業できるように、がんばりたいからね」
花帆「いい子……………!瑠璃乃ちゃん、さすが聖女……!」
瑠璃乃「それ流行ってんの!?」
ツッコミを入れる瑠璃乃。
――すると、
吟子「あの、それじゃあ瑠璃乃先輩。私は先に、失礼しますね」
瑠璃乃「はいはーい」
花帆「吟子ちゃんはどうするの?」
吟子「私の心構えは一通りできたので、あとは衣装の手直しに時間を割こうかと」
花帆「あ、それじゃあたしも一緒に行ってもいい?」
吟子「それは、いいですけど………?」
花帆「じゃあ、またね瑠璃乃ちゃーん!」
瑠璃乃「ん………花帆ちゃん。花帆ちゃんも、根詰めすぎないよーにねえ」
花帆「………うん、ありがと!」
そして、吟子ちゃんと花帆は部室へと向かった。
― スクールアイドルクラブ部室 ―
花帆「さ、それじゃ……吟子ちゃんが本当の本当にラストだからね!」
吟子「…………なにが?」
事情を知らないので戸惑う吟子ちゃん。
花帆「吟子ちゃんのお手伝いをして、その心に……触れる……!」
『触れる!』と言いながら変な手つきを見せる花帆。
吟子「心にって………。それなんかやだ!」
吟子「なんでそんなことしてるの?」
花帆「梢センパイに言われたんだ。あたしには足りないものがある、って。でもね、みんなと話していくうちに、なんだかわかってきた気がする」
花帆「――あたし、きっと
花帆の言葉に、吟子ちゃんは『は?』と、信じられないと言うような顔をする。
吟子「……………なにそれ」
花帆「話を聞くとね、みんな、すっごくがんばってて。自分のことも、今なにをすればいいかも、よくわかってて。あたしは自分の強みとかもぜんぜんわからないし。ただ目の前のことで、いっぱいいっぱいだったから………」
花帆「途中でいろいろ考えたけど、わかったんだ。梢センパイはね、あたしに『自信』がないってことを、気づかせてくれようとしてたんだよ、きっと」
吟子「ちょ、ちょっと。どうしてそうなるんですか。周りの人と、自分を比べたって、仕方ないじゃない……」
吟子「スクールアイドルの私は『なんか』じゃないって言ったときに………真っ先に喜んでくれたの、花帆先輩でしょ………」
花帆「でも、吟子ちゃんも見たでしょ。瑞河は………泉さんはすごいんだよ。大会に出場したら、嫌でも比べられちゃうんだから」
花帆「あたしね、参考にしようと思って、泉さんの動画もいっぱい見たんだ。そうしたらね、中学までは東京の学校に通ってて…………。経歴だけでも、ものすごいんだよ。女優としてもいくつも賞を取ってて、フェンシングは全国一位。プログラミングでも、コンテストに優勝してて……」
吟子「は………?めちゃくちゃな受賞歴………………」
花帆「あの人、なんでもできちゃう人だったんだ。あたしとは、ぜんぜん違うから。――その分ね、もっともっとがんばらなくちゃ!」
花帆「だって、そうじゃないと……」
『負ける』花帆の頭にはその言葉が浮かぶ。
吟子「花帆先輩。5分でいいから。聞いて。一緒に瑞河に行ってから……花帆先輩、なんだかおかしいよ。梢センパイがどういうつもりで、花帆先輩に『足りないものがある』って言ったのか――、私……なんとなく、わかる気がする」
花帆「え?」
吟子「私だけじゃなくて、たぶん、今の花帆先輩を見ていたら、みんな」
花帆「それは、やっぱりあたしが、まだまだ足りないから…………これじゃあ、優勝、できないから………?」
吟子「そうじゃなくて………。とにかく、今の花帆先輩は、なんかヘン、だよ」
花帆「……ヘンだったのは、今までのあたしだよ。あたし、ほんとは、もっと早くこうしてなきゃいけなかったんだ。梢センパイを優勝させるって誓ったんだから、もっとちゃんと、勝つための努力をするべきだったんだよ」
花帆「――間違ってたのは、今までのあたし」
吟子「っ!!」
吟子ちゃんの顔に怒りの感情が現れる。
吟子「なんで……なんでそんなこと言うの!?花帆先輩は私に、スクールアイドルのことを、いろいろと教えてくれて…………私はそれが、間違ってるなんて……」
花帆「でも!梢センパイにとっては、今年が最後のラブライブ!なんだよ!優勝できなきゃ……意味ないんだよ!」
吟子「それは、そうかもしれないけど!だからって、今までの時間を、間違ってたみたいに言わないでよ!――私は、楽しかったよ!」
吟子ちゃんは、心の中がぐちゃぐちゃになってきていて、今にも泣きそうな雰囲気だ。
花帆「楽しいとか、楽しくないとかじゃないの!あたし、約束したんだもん!梢センパイを優勝させるって!去年の1月から、もっと早く始めてたら、きっと、間に合ったのに!」
吟子「そんなの、私は知らんもん!」
吟子「花帆先輩が、泉さんみたいになるなんて、私はやだ!そんなの花帆先輩らしくない!」
花帆「あたしらしく、って……………」
吟子「花帆先輩だったら、もっと、こう……!みんなを花咲かせたいって……それが花帆先輩のいつも言ってることなんじゃ、ないの!?」
花帆「わかんないよ、吟子ちゃん……。だって今のあたしの夢は、ラブライブ!優勝、だから……。それ以外のことなんて、考えられないよ……」
吟子「だったら、なおさらだよ!花帆先輩が、花帆先輩らしくない方法で勝っても、私には意味ないし……っ!」
花帆「え………?」
吟子「花帆先輩の、だら!」
吟子ちゃんは、涙を流して部室から出ていった。
花帆「なんで……?最後のチャンスなんだよ………?勝たなきゃ、意味ないのに………。あたしが、間違ってるの………?足りないものも、もう、わかんないよ………。だって………あたし、今まで遊んでばっかり……」
花帆「梢センパイの泣いてるとこ……もう、見たくないだけなのに…………」
ガチャ!
すると、部屋の扉が開いて瑠璃乃が入って来た。
花帆「えっ、あっ」
瑠璃乃「……………ごめんね、ちょっと話、聞こえちゃった」
花帆「瑠璃乃ちゃん、どうして」
瑠璃乃「着替えて、ルリも練習しようかなーって思って。えっと………あのね。ルリも、花帆ちゃんの泣きそうな顔を見ると、悲しくなっちゃうよ」
花帆「瑠璃乃ちゃん………ごめんね、ヘンなところを見せちゃって。もう、大丈夫だよ。あたしね、吟子ちゃんとちょっとケンカしちゃったけど……でも、めげないよ。二年生だもん」
瑠璃乃「………………」
花帆「………………こんな気持ちじゃ、ラブライブ!に出ても、きっと、 優勝なんてできないよね」
?「そうだな。今のままじゃあ無理だろうな」
声に驚き、2人がそっちを見ると、
淳平「ったく……、そんなに思い詰めてたのか……梢も、もう少しやり方考えろよな……」
花帆「淳兄ぃ……。あたしに足りないものって、やっぱり『自信』だったのかな……」
淳平「さあな……でも、ヒントくらいは与えられるかもな。でも、まずはルリちゃんが言いたいことあるみたいだからそっちが先な?」
瑠璃乃「う、うん。――ルリは、花帆ちゃんの気持ちも、吟子ちゃんの気持ちもわかるよ。花帆ちゃんにとって、梢先輩はトクベツな人なんだろうし。……だけど、それで今までの自分が間違ってるって言われたら、 吟子ちゃんはショックだろうってルリ思う」
花帆「でもあたしは……吟子ちゃんのことだって、 優勝させてあげたい………。梢センパイだけじゃないよ。みんな……去年、あんな風に、悔しがってたみんなのことだって…………」
瑠璃乃「吟子ちゃんは花帆ちゃんのことも、大好きなんだよ。それは……花帆ちゃんも、わかってるよね?」
花帆「うん」
淳平「なあ、花帆。これまでラブライブ!に出場した蓮ノ空の先輩の事とか、調べてたんだけど……」
花帆「う、うん」
淳平「優勝当時の蓮ノ空を知ってる人に話を聞いてみないか?もしかしたら花帆の悩みの解決につながるヒントあるかもだし」
花帆「え?」
淳平「自分が今どうすればいいかわからないってときには、やっぱ先輩方の知恵を借りるべきだしな。梢の言ってた、『足りないもの』の答えだって、見つかるかも。言ったろ?ヒントくらいは。与えられるかもって」
瑠璃乃「そうだね。ひとりで悩むより、まずは行動!それでだめなら、次の方法を考えよ」
瑠璃乃「花帆ちゃんが、入部したてのルリに、してくれたことだよ」
花帆「…………うん、わかった。ごめんね、瑠璃乃ちゃん、淳兄ぃ」
瑠璃乃「そこはお互い様でしょ」
淳平「そ。気にすんなって」
淳平「じゃあ明日話を聞きに行くから、朝の9時に吟子ちゃんとルリちゃん、花帆の3人で女子寮のロビーに来てくれ。当時の話、聞いてみよう」
― つづく ―
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