蓮ノ空スクールアイドル録   作:松兄

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第116話:みんなの夢

翌日の朝、俺が約束通り女子寮のロビーで3人を待っていると、3人が一緒にやってきた。

 

瑠璃乃「ジュン兄ぃおまたせ〜」

 

吟子「おまたせしました」

 

花帆「……………」

 

淳平「いや、時間通りだよ。じゃあ、当時の蓮ノ空を知ってる人に話を聞きに行くか……」

 

そして、向かった先は―――

 

寮母「それで、私に当時の話を聞きたいと?」

 

花帆「当時を知ってる人って、寮母さんだったんだ………!?」

 

吟子「あ、でも確かに…………」

 

淳平「はい。お願いします」

 

寮母「先に、理由を伺っても?」

 

淳平「はい。寮母さんは、蓮ノ空でずっといろんな生徒を見守ってくれてました!だから、優勝したときのスクールアイドルクラブの話を聞ければ、今、現在進行形で悩んでる花帆の悩みも解決するかな?と」

 

瑠璃乃「はい!ぶっちゃけアドバイスとかいただけたら、メッチャ嬉しいです!」

 

俺とルリちゃんがそう答えると、

 

寮母「それはあまり、気が進みませんね」

 

瑠璃乃・淳平「「え?」」

 

あれ?雲行き怪しい?

 

寮母「今の時代の伝統は、今の時代の子たちが作っていくものです。あまり過去や部外者に引きずられるべきではない。私はそう思っていますから」

 

淳平「い、いや、でも!」

 

寮母「他になければ、私には仕事がありますので。皆さん、全国大会、がんばってください」

 

そして、行こうとする寮母さん。

 

――すると、

 

吟子「ちょっと待ってください!」

 

吟子ちゃんが声を上げる。

 

花帆「吟子ちゃん!?」

 

吟子「私たちは楽しようとか、ズルしようって考えてるわけじゃありません!花帆先輩は……先輩のために、泣きそうになるぐらい、思い悩んでたんです!お願いします!私たちの話を、聞いてください!」

 

花帆「吟子ちゃん…………」

 

寮母「…………」

 

吟子「………お願いします」

 

寮母「………………確かに、あなたの言う通りですね。少し、待っていてください」

 

すると、寮母さんは部屋の奥に行って1つの箱を持って戻ってきた。

 

寮母「"Dream Believers."ラブライブ!を優勝した時に披露した曲」

 

吟子「え?」

 

寮母「あれは、当時のスクールアイドルクラブの集大成です。そこに、あの子たちの想いが詰まっています。それと、これを」

 

寮母さんは、持ってきた箱を渡してきた。

 

瑠璃乃「これって………スカーフ?」

 

寮母「卒業の際、部長が寮に遺していったものです。私が預かっているよりも、あなたたちが持っていたほうがいいでしょう。――それでは、今度こそ失礼しますね」

 

そして、寮母さんは今度こそ行ってしまった。

 

吟子「えっと………」

 

瑠璃乃「ふぃ〜…………。ルリは寿命が三日縮んだぁ………」

 

吟子「ご、ごめんなさい………。頭が熱くなっちゃって」

 

淳平「悪い事じゃないよ。カッコよかったし」

 

瑠璃乃「うん。ぜんぜんヨシ。かっこよかったよ。ね、花帆ちゃん?」

 

花帆「あ…………うんっ。ありがと、吟子ちゃん。あたし……嬉しかったよ」

 

吟子「私は、別に…………それより、"Dream Believers"に想いが詰まってるっていうのは、なんだろ………」

 

瑠璃乃「ううむ。このスカーフも、いったい………」

 

花帆「"Dream Believers"ずっと、蓮ノ空に歌い継がれてきた曲………」

 

吟子「いい曲、ですよね」

 

花帆「うん。…………でも。あれはやっぱり、夢を叶えた人たちの曲、なんだよ」

 

花帆…………。

 

瑠璃乃「花帆ちゃん…?」

 

花帆「勝つためには、がんばらなきゃいけなくて………。努力はつらいもので、早起きは大変で、でも周りもみんながんばってて、勝つって、そんな簡単なものじゃないから………」

 

花帆「嫌なことでも、やりたくないことでもやって、ちゃんと、つらいことを乗り越えなくっちゃいけなくて……!――信じるだけじゃ、夢は、叶わないから」

 

吟子「それは………」

 

花帆「……………それでも、あたし。あの曲が好き……大好きだよ…………」

 

花帆の目から、大粒の涙がボロボロ零れ落ちていく。

 

花帆「もしも、梢センパイの夢が叶わなくても………。楽しかった日々を、間違ってるなんて、思いたくない……。梢センパイにも、そう思っててほしい…………」

 

花帆「優勝できなかったから、ぜんぶ無駄になっちゃうなんて、そんなの、やだ………!」

 

花帆「泣いて、笑って、駆け抜けた毎日が……楽しかったから……!ずっと、楽しかったから…………!」

 

瑠璃乃「……………花帆ちゃん、見て」

 

花帆「え?――あ」

 

スカーフを広げて裏面を見せると、そこには………『行こうよ!いまを頑張ることが楽しい!』と、書かれていた。

 

淳平「"Dream Believers"の、歌詞だ…………。先輩たちも、同じだったんだな」

 

花帆「あたしちょっと、梢センパイのところに、行ってくるね!」

 

吟子「あ……………私も!」

 

瑠璃乃「ジュン兄ぃ、行ってあげて?」

 

淳平「分かった。ルリちゃん、ありがとう!!」ダッ!!

 

そして、俺と花帆と吟子ちゃんは部室へと走っていった。

 

― スクールアイドルクラブ部室 ―

 

花帆「梢センパイっ!」

 

ガチャ!

 

梢「あら、花帆。それに、吟子さん。淳も」

 

花帆「あたし、わかりました。わかったんです!あたしに足りなかったもの!」

 

梢「聞かせてくれる?あなたの、答えを」

 

花帆「はい!」

 

花帆「去年、ラブライブ!で負けたとき、あたし、すっごく悔しかったです。でもそれは、負けたことじゃなくて――、ステージの上で、応援してくれる人の顔が、見えなかったこと」

 

花帆「あたしはずっと、楽しいからライブをやってました。それは、初めて梢センパイのライブを見たときから、ずっと、この胸にあった気持ち。楽しいって気持ちが周りの人たちに伝わって、みんなの笑顔が花咲いていく」

 

花帆「それが、あたしがスクールアイドルを続けていく理由……だったのに。あたし、自分を、見失ってました。勝つために……勝つんだから、楽しんでる場合じゃないって、そう思い込んでた」

 

花帆「瑞河のライブを見たとき……すごく、不安になったんです。あたしたち蓮ノ空がこれまで積み上げてきたそのすべてが、無駄になっちゃうんじゃないか、って………。でも……それは、違いますよね。やってきたことが無駄になんて、ぜったいならないんです」

 

花帆「蓮ノ空の魅力は、誰にも負けません。むしろ、この楽しいって気持ちを伝えることが、今のあたしにできるいちばんの武器なんじゃないか、って!」

 

花帆「勝とうって気持ちも大事だけど!繋がって楽しむことができれば、何倍も、何十倍も気持ちを届けられるんだって、わかったんです!」

 

梢「………よかった、花帆。あなたには、思い出してほしかったの。初めてスクールアイドルを始めたときの、その気持ちを。今をがんばっているみんなの心に触れれば………きっと、思い出してくれると思ったのよ」

 

梢「『みんなを花咲かせたい』という、素敵な夢を。あなたが一番最初に抱いた、そして私が一番好きなその想いを」

 

梢「けれど………あなたががんばってくれているのは、私やみんなのためだから。あなたに間違っているとは、言いたくなくて。―――でもその役目は………どうやら、吟子さんが果たしてくれたみたいだけれど」

 

吟子「いえ、私は、そんな………。花帆先輩、昨日は、その………態度が悪くて、ごめんなさい」

 

吟子「でも……今の花帆先輩の言った言葉、とても………いいと思う。花帆先輩らしくて……すごく、スクールアイドルっぽいと思うんだ。…………そういうところ、好きです」

 

お、吟子ちゃんが遂に素直になった………。

 

花帆「吟子ちゃん………!だよね!あたしも、スクールアイドル大好きだもん!」

 

吟子「あ………う、うん!そう、スクールアイドルが!」

 

花帆、お前ここでそれをやるか……

 

花帆「ん?って淳兄ぃその目何!?」

 

淳平「ん?どうしようもないものを見る目」

 

花帆「なんで!?」

 

梢「こら、……ねえ、ふたりとも。ありがとう」

 

花帆「え?」

 

梢「改めてふたりに、この一年の感謝を伝えようと思って。昔から、苦手だったわね、花帆は。努力も、早起きも。でも周りがみんながんばってるからって、なんとか続けてきた」

 

花帆「うっ、そ、それは…………」

 

梢「いいのよ。私も、同じ気持ち。ずっとそうだったから」

 

梢「すべては、ラブライブ!に優勝するため。楽しんでいる暇なんて、ないんだ、って。でもね、楽しかったの。この1年間は、本当に楽しかった。まるでずっと、夢の中にいるように………。先輩として成長していく花帆と、スリーズブーケに入ってがんばる吟子さんを見ていて、私も、ようやくわかったの」

 

梢「きっと私の夢は、ここにあったんだ、って」

 

花帆「梢センパイ………」

 

梢「私の憧れたスクールアイドルが輝いていたのは、ラブライブ!に優勝したからじゃない。――最高の仲間たちと、最高のステージに立っていたから。"この瞬間を全力で生きていた"からこそ、彼女たちは輝いて見えたのよ」

 

梢「同じ輝きを、花帆。あなたに初めて出会ったとき、見つけたの。そして今、吟子さん。綴理や慈、さやかさんに、瑠璃乃さん。小鈴さんと、姫芽さん、淳の中にも、自分たちだけの輝きを、見つけたわ」

 

淳平「俺たちの、輝き………………」

 

梢「ええ。だから、ありがとう。吟子さん、あなたが蓮ノ空に来てくれて、ありがとう。ありがとう、花帆。あなたが私に花咲かせると言ってくれて、本当に、ありがとう。ありがとう、淳。こんな私を、3年間支えてくれて……」

 

梢「私はなにももっていない人間では、なかった。私には、日野下花帆が……かけがえのない仲間たちが、いてくれる。みんな、今をひたむきに生きて、輝いている」

 

梢「きっと、ずっとそうだったのね。あの日見た綺麗な光の中にもう、私は立っていたの。日々の中で、私の夢は、叶っていた。みんなが、叶えてくれたのよ」

 

花帆「梢センパイ………!そう思ってもらえて、嬉しいです、あたし!ほんとに、すごく……!」

 

吟子「梢先輩は……誰よりも、幸せになってほしいって、思います。それだけのことをきっと、してきましたから」

 

花帆「梢センパイは、本当に、本当に、あたしの中ではずっと、世界でいちばんのスクールアイドルですから!」

 

梢「ええ。だからね、吟子さん、花帆、淳。私の愛するこのスクールアイドルクラブが、世界でいちばんの仲間たちだと証明するために。叶えましょう、私たちの夢。ラブライブ!優勝を。今度こそ楽しみながら、みんなで、夢を叶えにいきましょう」

 

花帆・吟子・淳平「「「はい(おう)!!!」」」

 

あ、そう言えば……、

 

淳平「花帆、あれ……」

 

花帆「え?……あ、そうだ!それで、みんなにも話したいことが!ねえ、吟子ちゃん。スカーフの話!」

 

吟子「あ、うん、そうだね」

 

梢「スカーフ?」

 

花帆「ふっふっふ。あたしたちの心をひとつに繋げるための……おまじない、ですよ!」

 

 

― つづく ―




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