翌日の放課後、姉に呼び出されたさやかは、待ち合わせ場所のスケートリンクに来ていた。
さやか「お姉ちゃんが、ここを待ち合わせ場所にするなんて。二度と来ないって言ってたのに……」
つかさ「さーやーかー」
さやか「久しぶり」
つかさ「久しぶりだねぇ。優勝おめでとっ!やるじゃん!」
さやか「……うん。ありがと。演技……見ててくれた?」
つかさ「見た見たー。本当……綺麗になったねー、さやかー」
つかさはさやかの頭をよしよしと撫でる。さやかは少し恥ずかしそうだが、内心喜んでいた。
さやか「うん。……うん。わたし、頑張ったよ。約束した通り、頑張ったよ」
つかさ「そうだねー。……うん、そうだねぇ。さやか……ありがとね」
つかさはさやかを思い切り抱きしめる。さやかもそれに答え、つかさを抱きしめ返す。
つかさ「わたしが腐ってたせいで、色々嫌な思いさせてごめんねぇ。ほんと……お姉ちゃんの分まで頑張るって言って……今、こんな風に凄い子になって……わたし、嬉しいよ」
さやか「ぁ……うん。うん!」
つかさ「でも、色々あってわたし、元気になれたよ。それこそ……また、ここに来ようって思えるくらいに」
さやか「……まぁ、正直に言うと驚いたよ。お姉ちゃんがここに来たのは」
つかさ「でしょー。秘訣があったんですよ、秘訣がー。聞きたい?」
さやか「えっ。気にならないわけじゃないけど、その言い方するお姉ちゃんからちゃんとした話が出てくるとは……」
バッサリと切り捨てるさやか。
つかさ「ひどっ!?」
さやか「大げさにする時に限って、動画の影響とかだったりするんだもん」
つかさ「ぶー。全然違いまーす。ひどいなー」
そして、つかさは自身のスマホを見せる。
そこには、
さやか『みなさん!今日は来てくれて、本当にありがとうございます!』
綴理『ん。良かったら、最後まで見て行ってほしい』
さやかちゃんと綴理の、スクールアイドルとしてのライブ動画だった。
さやか「え?」
つかさ「んふふー」
さやか「……知ってたの?」
つかさ「知ったのは、偶然。でも……さやか、ほんとーに楽しそうだったねー」
さやか「………………」
つかさ「きっと、あの場所がさやかを、すっごく綺麗にしてくれたんだなーって……すぐに分かったよ。それが、わたしに元気をくれたんだー!」
さやか「お姉ちゃん……うん。わたし今、スクールアイドルやってるよ。素敵な出会いがあって……今のわたしがあるのは、スクールアイドルクラブのおかげ。頼りになる友達や、優しい先輩たちに囲まれて、すごく幸せ……」
つかさ「うん。……だからさ、さやか。今日言いに来たのは、実はその話なんだ」
さやか「え?」
つかさ「もし……フィギュアを頑張るのが、わたしのためだーって言うんなら、もう無理しなくて良いからね?もうろくにジャンプも出来ないし、出来ない自分が悔しくて、二度と来るかって思ってたけど……。ご覧の通り、またここに来られるくらい元気になれたから!スクールアイドルが凄く楽しそうなのは、見ただけですぐわかるよ。……そんなスクールアイドルに元気をもらったわたしはわたしで、また頑張れる!」
さやか「っ、ちがっ……わたしはそんなつもりじゃ!」
つかさ「分かってるよ。そりゃわたしだって、フィギュアで活躍するさやかは見たいから」
さやか「……分かった」
つかさ「怒らないでよー」
さやか「怒ってない。……ただ、わたしは、別に無理なんてしてないってだけで……」
つかさ「……そう思ってて、怪我したからさ。わたしは」
さやか「っ……ずるいよ、それは」
つかさ「ごめんってー。でも、それだけ言いたかったんだー。もしこの先、さやかがさ。なにか決めることに迷った時は……わたしのことは気にしなくていいからね」
さやか「別に、迷ってることなんて無いし。今は凄く充実してるよ。お姉ちゃんこそ、自分のことを棚に上げて人を心配しすぎなんだよ」
つかさ「そ……っか。そっか。強くなったねえ、さやか、別人みたい」
さやか「褒めてるんだよね?」
つかさ「もちろん。……ねえ、さやか」
さやか「なに?」
つかさ「こんな事言っておいてなんだけど……わたし、けじめをつけようと思ってるんだー」
さやか「けじめ?」
つかさ「そう、けじめ。さやかが、私の気持ちを背負ってまで頑張るって言ってくれて。一人で凹んでたわたしも、色々考えたんだー。結果が出なくて、苦しそうにしてるさやかに、わたしは何も言えなくて……」
さやか「お姉ちゃん!」
つかさ「ごめんごめん、もう言わない。何が言いたかったかっていうとね……ちゃんと、引退しようと思うんだ。怪我してから、みんなに何にも言わずに引き篭もっちゃったからさ。それでね。引退する事をみんなに言ったら…、最後にアイスショーをすることになったんだー!」
さやか「アイスショー……!お姉ちゃん、滑るの?」
つかさ「ううん。わたしを送り出すために、みんなが出てくれるって。お世話になった、先輩とか、友達とか。……それで、その。良かったらなんだけど、さやか」
さやか「出るよ」
つかさ「……良いの?」
さやか「もちろん。だって、これはわたしのやりたいことだから。無理もしてないしね」
するとつかさは、感極まってさやかを再び抱きしめる。
つかさ「ありがとさやか!!」
さやか「お姉ちゃん、苦しいよ」
つかさ「っとと、ごめんごめん。つい愛が溢れたー」
さやか「なに言ってるんだか」
つかさ「……ごめん。ほんとは言い出しにくかったんだー。無理しないでって言いに来た口で、アイスショーには出て欲しいなんて、ねえ?」
さやか「まったく……変なところで気を遣うんだから。わたしのフィギュアには、ずっとお姉ちゃんがいたんだよ。だから、見送りくらい、させてよ」
つかさ「……ありがと。ほんとに」
さやか「ん」
つかさ「ところでさ……さやかのスクールアイドルのマネージャーの男の子いるでしょ?この間さやかが滑ってる時にたまたまあったんだけどー」
さやか「え?お姉ちゃん、淳平先輩に会ったの?」
つかさ「うん。見様見真似で一回転跳んだって言ったときにね」
さやか「あの時かー……わたしも驚いたよ。あの時初めて滑るって言ってたのに、ジャンプなんかするんだもん。しかも倒れなかったし……怒ったけど、内心驚いてたんだよ。普通はそんな事できないから……」
つかさ「うん。それはわたしも厳しく言っておいた。けど、あの子絶対にフィギュアの才能あるよね?」
さやか「あはは……否定できない」
つかさ「……?さやか、なんか楽しそうにあの子のこと話すねー?」
さやか「えっ?!いや、ちがっ!!」
つかさ「いったいなにが違うのかなー?詳しくは何も言ってないよー?」
さやか「うう……」
つかさ「……好きなの?」
さやか「分からない……でも、気がついたら目で追ってたってことは最近多いかな?」
つかさ(あらあら……)
つかさは楽しそうな笑顔を浮かべ、
つかさ「じゃあ、わたしはもう帰るね?またお話ししよう。さやか」
さやか「っ……うん!」
そして、つかさは帰って行った。
ー つづく ー
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