蓮ノ空スクールアイドル録   作:松兄

28 / 339
第27話:村野つかさ

翌日の放課後、姉に呼び出されたさやかは、待ち合わせ場所のスケートリンクに来ていた。

 

さやか「お姉ちゃんが、ここを待ち合わせ場所にするなんて。二度と来ないって言ってたのに……」

 

つかさ「さーやーかー」

 

さやか「久しぶり」

 

つかさ「久しぶりだねぇ。優勝おめでとっ!やるじゃん!」

 

さやか「……うん。ありがと。演技……見ててくれた?」

 

つかさ「見た見たー。本当……綺麗になったねー、さやかー」

 

つかさはさやかの頭をよしよしと撫でる。さやかは少し恥ずかしそうだが、内心喜んでいた。

 

さやか「うん。……うん。わたし、頑張ったよ。約束した通り、頑張ったよ」

 

つかさ「そうだねー。……うん、そうだねぇ。さやか……ありがとね」

 

つかさはさやかを思い切り抱きしめる。さやかもそれに答え、つかさを抱きしめ返す。

 

つかさ「わたしが腐ってたせいで、色々嫌な思いさせてごめんねぇ。ほんと……お姉ちゃんの分まで頑張るって言って……今、こんな風に凄い子になって……わたし、嬉しいよ」

 

さやか「ぁ……うん。うん!」

 

つかさ「でも、色々あってわたし、元気になれたよ。それこそ……また、ここに来ようって思えるくらいに」

 

さやか「……まぁ、正直に言うと驚いたよ。お姉ちゃんがここに来たのは」

 

つかさ「でしょー。秘訣があったんですよ、秘訣がー。聞きたい?」

 

さやか「えっ。気にならないわけじゃないけど、その言い方するお姉ちゃんからちゃんとした話が出てくるとは……」

 

バッサリと切り捨てるさやか。

 

つかさ「ひどっ!?」

 

さやか「大げさにする時に限って、動画の影響とかだったりするんだもん」

 

つかさ「ぶー。全然違いまーす。ひどいなー」

 

そして、つかさは自身のスマホを見せる。

 

そこには、

 

さやか『みなさん!今日は来てくれて、本当にありがとうございます!』

 

綴理『ん。良かったら、最後まで見て行ってほしい』

 

さやかちゃんと綴理の、スクールアイドルとしてのライブ動画だった。

 

さやか「え?」

 

つかさ「んふふー」

 

さやか「……知ってたの?」

 

つかさ「知ったのは、偶然。でも……さやか、ほんとーに楽しそうだったねー」

 

さやか「………………」

 

つかさ「きっと、あの場所がさやかを、すっごく綺麗にしてくれたんだなーって……すぐに分かったよ。それが、わたしに元気をくれたんだー!」

 

さやか「お姉ちゃん……うん。わたし今、スクールアイドルやってるよ。素敵な出会いがあって……今のわたしがあるのは、スクールアイドルクラブのおかげ。頼りになる友達や、優しい先輩たちに囲まれて、すごく幸せ……」

 

つかさ「うん。……だからさ、さやか。今日言いに来たのは、実はその話なんだ」

 

さやか「え?」

 

つかさ「もし……フィギュアを頑張るのが、わたしのためだーって言うんなら、もう無理しなくて良いからね?もうろくにジャンプも出来ないし、出来ない自分が悔しくて、二度と来るかって思ってたけど……。ご覧の通り、またここに来られるくらい元気になれたから!スクールアイドルが凄く楽しそうなのは、見ただけですぐわかるよ。……そんなスクールアイドルに元気をもらったわたしはわたしで、また頑張れる!」

 

さやか「っ、ちがっ……わたしはそんなつもりじゃ!」

 

つかさ「分かってるよ。そりゃわたしだって、フィギュアで活躍するさやかは見たいから」

 

さやか「……分かった」

 

つかさ「怒らないでよー」

 

さやか「怒ってない。……ただ、わたしは、別に無理なんてしてないってだけで……」

 

つかさ「……そう思ってて、怪我したからさ。わたしは」

 

さやか「っ……ずるいよ、それは」

 

つかさ「ごめんってー。でも、それだけ言いたかったんだー。もしこの先、さやかがさ。なにか決めることに迷った時は……わたしのことは気にしなくていいからね」

 

さやか「別に、迷ってることなんて無いし。今は凄く充実してるよ。お姉ちゃんこそ、自分のことを棚に上げて人を心配しすぎなんだよ」

 

つかさ「そ……っか。そっか。強くなったねえ、さやか、別人みたい」

 

さやか「褒めてるんだよね?」

 

つかさ「もちろん。……ねえ、さやか」

 

さやか「なに?」

 

つかさ「こんな事言っておいてなんだけど……わたし、けじめをつけようと思ってるんだー」

 

さやか「けじめ?」

 

つかさ「そう、けじめ。さやかが、私の気持ちを背負ってまで頑張るって言ってくれて。一人で凹んでたわたしも、色々考えたんだー。結果が出なくて、苦しそうにしてるさやかに、わたしは何も言えなくて……」

 

さやか「お姉ちゃん!」

 

つかさ「ごめんごめん、もう言わない。何が言いたかったかっていうとね……ちゃんと、引退しようと思うんだ。怪我してから、みんなに何にも言わずに引き篭もっちゃったからさ。それでね。引退する事をみんなに言ったら…、最後にアイスショーをすることになったんだー!」

 

さやか「アイスショー……!お姉ちゃん、滑るの?」

 

つかさ「ううん。わたしを送り出すために、みんなが出てくれるって。お世話になった、先輩とか、友達とか。……それで、その。良かったらなんだけど、さやか」

 

さやか「出るよ」

 

つかさ「……良いの?」

 

さやか「もちろん。だって、これはわたしのやりたいことだから。無理もしてないしね」

 

するとつかさは、感極まってさやかを再び抱きしめる。

 

つかさ「ありがとさやか!!」

 

さやか「お姉ちゃん、苦しいよ」

 

つかさ「っとと、ごめんごめん。つい愛が溢れたー」

 

さやか「なに言ってるんだか」

 

つかさ「……ごめん。ほんとは言い出しにくかったんだー。無理しないでって言いに来た口で、アイスショーには出て欲しいなんて、ねえ?」

 

さやか「まったく……変なところで気を遣うんだから。わたしのフィギュアには、ずっとお姉ちゃんがいたんだよ。だから、見送りくらい、させてよ」

 

つかさ「……ありがと。ほんとに」

 

さやか「ん」

 

つかさ「ところでさ……さやかのスクールアイドルのマネージャーの男の子いるでしょ?この間さやかが滑ってる時にたまたまあったんだけどー」

 

さやか「え?お姉ちゃん、淳平先輩に会ったの?」

 

つかさ「うん。見様見真似で一回転跳んだって言ったときにね」

 

さやか「あの時かー……わたしも驚いたよ。あの時初めて滑るって言ってたのに、ジャンプなんかするんだもん。しかも倒れなかったし……怒ったけど、内心驚いてたんだよ。普通はそんな事できないから……」

 

つかさ「うん。それはわたしも厳しく言っておいた。けど、あの子絶対にフィギュアの才能あるよね?」

 

さやか「あはは……否定できない」

 

つかさ「……?さやか、なんか楽しそうにあの子のこと話すねー?」

 

さやか「えっ?!いや、ちがっ!!」

 

つかさ「いったいなにが違うのかなー?詳しくは何も言ってないよー?」

 

さやか「うう……」

 

つかさ「……好きなの?」

 

さやか「分からない……でも、気がついたら目で追ってたってことは最近多いかな?」

 

つかさ(あらあら……)

 

つかさは楽しそうな笑顔を浮かべ、

 

つかさ「じゃあ、わたしはもう帰るね?またお話ししよう。さやか」

 

さやか「っ……うん!」

 

そして、つかさは帰って行った。

 

ー つづく ー




感想・評価よろしくお願いします!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。