淳平にそれぞれ役割を分担され、花帆とさやかちゃん、そしてセラスさんは、まずは近くの商店街にやって来た。
花帆「というわけで、やってきました、商店街!」
さやか「まずはいつも通り、草の根活動からスタートですね……」
セラス「どうぞよろしくおねがいします」
やる気十分な2人に頭を下げるセラスさん。
さやか「はい、がんばりましょう」
花帆「大丈夫だよ、せっちゃん。さやかちゃんはビラ配りに関しては、もう、プロだからね!」
去年の竜胆祭の時からビラ配りに関してはもう慣れているさやかちゃん。だから淳平はさやかをここに分担したのだ。そこに瑞河の生徒であるセラスさん。そしてセラスさんが人見知りとかにならないよう、院友であり旧友の花帆。
一応考えられた分担だった。
セラス「おおー」
さやか「なにかと配る機会が多いんですよね……すべて蓮ノ空に入ってからですが………。しかし、よく思いつきましたね、花帆さん。文化祭だなんて」
花帆「お、あたし褒められてる?」
さやか「ええ。スモールステップの原理ですね。最初からプレーオフに出るための協力を求めるのではなく、まず手近な目標。文化祭を開くために協力してもらい、最終的な目標につなげる、という手法があって」
さやかちゃんがそう説明するが、
花帆「???」
花帆はまったく分かっていないようた。
さやか「つまり、手伝ってくださる人の心理的なハードルも下がる、よいアイディアかと!」
花帆「えへへ。ま、文化祭だって、開くために乗りこえなきゃいけないハードルは、山ほどあるんだけどね!」
さやか「許可取りもそうですが、集客が十分にいかなければ、それも失敗に終わってしまいますからね。各自、得意分野でがんばっていきましょう」
花帆「頼りにしてるからね、さやかちゃん!」
さやか「もう、はいはい」
笑い合う花帆とさやかちゃん。すると―――、
セラス「さやかさんも、長野の人なの?」
さやか「わたしは金沢出身ですよ。どうしてですか?」
セラス「花ちゃんと、小学校からの友達だったりするのかな、って」
花帆「え〜、それってあたしたち幼馴染っぽいってこと〜?」
嬉しそうな花帆。
さやか「花帆さんとは高校に入ってからの付き合いですが、確かに、一緒にいた時間はかなり濃密かもしれませんね」
花帆「さやかちゃんもあたしのこと、花ちゃんって呼んだりする?」
さやか「それもかわいいですね。花ちゃん」
2人がそんなことを言い合っていると、
セラス「1回300円です」
花帆「まさかの花ちゃん料!?」
「それは私の特権なのに!」と、嫉妬するセラス。――でも、
セラス「でも、瑞河のためにがんばってくれてるから……。1回1ハグにしてあげてもいいよ?」
さやか「花ちゃん呼びをするたびにセラスさんを抱きしめるのは、ちょっと意味がわからなすぎますね!」
ツッコミが止まらない花帆とさやかちゃん。ここに外野として皆がいたら笑いをこらえてたかもしれない。当事者としてだったら同じく突っ込んでいるだろうが。
セラス「それか、わたしのことを『せっちゃん』って呼んでくれてもいいよ」
さやか「ええと……せっちゃん、さん」
さやかちゃんが「良いのかな?」と、恐る恐るそう呼ぶと、
セラス「さん付け……!?」
さやか「す、すみません、つい癖で………」
セラス「どう?花ちゃん。わたしもせっちゃんって呼ばれちゃったよ」
セラスさんは花帆に「私だけの呼び方だ!」と、嫉妬して欲しいんだろうが………、
花帆「え?うん。かわいいよね、せっちゃんって呼び方!」
生憎、花帆にはそんな物は通じない。言っている意図がマジで理解できないだろう。
セラス「………わかってない」
むくれるセラスさん。
花帆「なにが!?」
さやか「まあ、花帆さんはおおらかでかわいらしい方ですから………」
セラス「……さやかさんって、苦労人?」
さやか「え!?いや、それは、どうでしょう……。日々、楽しく過ごしているつもりではありますが………?」
セラス「楽しく過ごしている人は、みんなそう言うんだよ」
さやか「ただの事実だからでは!?」
さやかちゃんのツッコミ。セラスさんはクスリと笑うと、
セラス「花ちゃん。わたし、蓮ノ空の人とも、仲良くなれそう」
花帆「せっちゃんって昔から、看護師さんから人気あったもんねえ。ちっちゃくて、お姫様みたいにかわいくて」
セラス「花ちゃんがそれ言うの?」
花帆「え?あたしも?」
花帆がそう言うと、セラスさんが突然怒る。
セラス「蓮ノ空の人は、花ちゃんにどういう教育をしていらっしゃるんですか!」
さやか「す、すみません…………」
謝るしか無いさやかちゃん。さやかちゃんは何故怒ってるか何となく察しているようだ。
花帆「なんで謝ってるの!?あたし!?あたしのせい!?」
最後まで気づかない花帆。
すると突然冷静になるセラスさん。
セラス「さやかさん、ビラ配り、がんばろうね」
さやか「はい、セラスさん。瑞河のプレーオフを目指して、一緒にがんばりましょう」
花帆のことは放っておく方針で一致してしまう2人だった。
花帆「ふたりだけで仲良くなっちゃだめだよー!ねー!」
蚊帳の外にされて焦る花帆だった。
― つづく ―
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