花帆、さやかちゃん、セラスがビラ配りをしている間、瑞河のスクールアイドル部の部室では、めぐと姫芽ちゃん泉が共同で合同文化祭のPR動画を作っていた。
――そして、
姫芽「よし!これであとはエンコード終了を待って、アップするだけですね〜!」
姫芽が勢いよくエンターキーを叩き、「終わった〜!」と、背伸びする。
慈「よーし!文化祭の宣伝動画、かんせーい!」
姫芽「わ〜!」
泉「お疲れさま。コーヒーでいいかな?」
慈「お、さんきゅー」
そう言う間に、コーヒーを淹れてくれる泉。
泉「はい、どうぞ」
姫芽「ありがとうございま〜す〜」
慈「気が利くじゃん、泉ちゃん」
泉「私は素材を提供しただけだからね」
泉がそう言って肩を竦める。が、
慈「なに言ってんの。瑞河パート部分は、けっこう作ってくれたでしょ?」
泉「慈先輩の見よう見まねだよ。うわべだけ真似るのは得意なんだ。――それにしても、さすが蓮ノ空。動画制作のレベルも高いね「」
慈「私が好きでやってるだけだけどねー。めぐちゃんの卒業後も、ひとまず後継者ができたので、安心である」
姫芽「おす〜。ストリーマーとしてやってくなら、自分で動画も作れた方が、ぜったいいいですからね〜。人生に大切なことはすべて、みらぱ!に教わりました〜……………」
泉「ふふ。いい師弟関係だ」
泉も笑顔を見せる。
泉「瑞河は、私が入部したときには、もう他にスクールアイドルはいなかったから、少し憧れるよ」
慈「ずっとふたりでやってきたの?」
泉「正確にはひとりかな。セラスは部員ではなかったから。でも、そうだね。そういう意味では、私の師匠は、セラスということになるね」
姫芽「まだ中学生なのに〜」
泉「練習メニューを作ってくれたり、他校とのアポを取ってくれたり。練習後のマッサージ。ストレスケアに、なぜか岩盤浴の予約を取ってきてくれたこともあったよ」
慈「えーいいなー。メッチャ有能じゃん」
泉「できることはぜんぶしようと思っていたんだろうね。セラスはどうしても瑞河を救いたかった。私をスカウトしに来たのも、そのひとつだから。……瑞河の経営はずっと綱渡り状態で、去年の今ぐらいには、もう廃校計画が進められていたらしいから。後がない。本人はそのつもりだったんだろうね」
泉「スクールアイドル部が中部大会優勝を決めたところで、一度は廃校が撤回されるかもしれない………………という話になったけど、結果はこの通り。――あれほど力を尽くしていたのに、ままならないものだね」
また肩を竦める泉。すると、
慈「ずいぶん、他人行儀な言い方するね、キミ」
泉「そう、かな?」
姫芽「泉ちゃんはぶっちゃけ〜、セラスちゃんのこと、どう思ってるの〜?」
泉「………ふっ」
姫芽ちゃんが聞くと、突然何かを思い出したのか笑う泉。
姫芽「え、なになに〜?」
泉「セラスは、眺めていると面白い」
慈「急に俗っぽい部分出してくるじゃん!?」
突っ込むめぐに、泉は穏やかに話す。
泉「素直な気持ちを言うと、感謝しているよ。おかげでこの一年は退屈せずに済んだ。夢に向かって突き進むセラスは、輝いていたから。それに、私も楽しかったからね」
姫芽「え〜!素直〜!」
泉「私は素直で一途なんだよ。ひねくれものは、セラスの方さ」
慈「あの子、そうなの?」
泉「ああ。だから蓮ノ空にも、素直に感謝しているよ。あなたたちやあのマネージャーくんのおかげで、瑞河の生徒たちにも火が付いた。まだ自分たちにはやれることがあると、気づかせてもらった」
泉「廃校を止めることはできなくても、悔いのないように卒業することはできるだろう。本当に、ありがとう」
慈「文化祭と、その後のプレーオフが成功すれば、ね。まだ準備段階。なにかを成し遂げたわけじゃないんだから、お礼を言うのはちょっと早いんだよ」
泉「ふふ……そうだね」
姫芽「そうだよ〜。ちゃんと決着つけてやるんだからね〜」
シュッシュッ! シャドーボクシングしてファイティングポーズを取る姫芽ちゃん。めぐも泉もそれを見てクスッと笑う。
泉「ははっ。姫芽さんは本当に、戦うのが好きだね」
姫芽「泉ちゃんは〜?」
泉「実は私はそうでもないんだ。たいていは勝ち続けてきたからね。勝負と名のつくもので、楽しい思いをしたことが、ほとんどない」
慈「うちの天才ちゃんみたいじゃん」
姫芽「つまり〜、プレーオフは楽しみ、ってことですかね〜?」
泉「そうだね。引き分けは本当に予想外だった。私にも、セラスにも」
慈「廃校かかってたキミたちには悪いけど、譲れない理由だったらこっちにもあったからね。――夢ってのは、願ってる人数が多けりゃ強いってわけじゃない。たったひとりでも夢は夢。誰にだって大切でしょ――」
慈「――だから、勝負するっきゃないの。叶えられるかどうかは、後は自分次第」
泉「……………自分次第」
泉がめぐの言葉を反芻して考える。
泉「だから、あなたは、私のことを全力で舞台に立たせてくれようとしているんだね」
慈「そういうこと。ステージに立てず夢を諦めるなんて、論外だから。そこまでは手伝ってあげるんだよ。――でも、負けないからね」
そう言い切るめぐをまじまじと見つめる泉。すると、
泉「なるほど………。これが『先輩』か。蓮ノ空が、ちょっと羨ましくなったよ」
姫芽「うぇへへ。そんじょそこらのせんぱいじゃありませんよ〜!うちのめぐちゃんせんぱいですからね〜!泉ちゃんも、めぐ党に入りたいですか〜?も〜、しょうがないな〜!あとで会員ナンバー発行してあげる〜!」
泉「これまででいちばん嬉しそうだ………」
慈「卒業した後、蓮ノ空に私の銅像立てたりしないよね?」
姫芽「!! その手が………!?」
慈「ない!」
絶対やめろと今のうちに釘を刺すめぐだった。
その頃、綴理とルリちゃん、そしてビラ配りから合流したセラスは役所を巡っていた。
瑠璃乃「ありがとうございました〜!」
綴理・セラス「「ました〜」」
瑠璃乃「ふい〜。お役所さんを巡った巡った。文化祭の準備、着々と進んでますな〜。これで蓮ノ空からのお手伝いもやってくれば、いよいよ現実的に………!」
綴理「応援の方ははこずに任せてるし、準備もジュンがやってるからね。きっと大丈夫だよ」
セラス「あの、オトナのお姉さんとお兄さん」
綴理「そう。こずはボクたち三年生の中で、誕生日もいちばん早い。でも、ジュンはああ見えていちばん遅いめぐと誕生日一緒………末っ子双子?」
セラス「すごい。まるでオトナであることを運命づけられたと言っても。お兄さん、3年生の中で1番下なの……?」
綴理「こずはかごんではない。ジュンも、長男?だから」
瑠璃乃「いつの間にそんな息ぴったりに!?」
セラス「わかんない。でもなんだろう……他人の気がしない……」
瑠璃乃「ルリがつづパイと完全にシンパシー合うまで、半年かかったのに!」
綴理「せら…………。ひょっとしてきみは、ボクの……」
セラス「わたしの」
綴理「……後輩?」
瑠璃乃「そうだよ!」
渾身のツッコミを入れるルリちゃん。
瑠璃乃「なんだろう、魂の形が一緒なのかな………」
頭を抱えるルリちゃん。すると、
セラス「大丈夫。わたしはちゃんとわざとボケてる」
綴理「じゃあボクもだよ」
セラス「やっぱり」
瑠璃乃「つづパイはウソでしょ!2年間キャラ作ってたって言われたら、ルリ、人間不信になるよ!?」
ルリちゃんが叫ぶ。そこへ、
Prrrrr……
セラス「あ」
セラスのスマホに電話が掛かってきた。
セラス「オトナのお姉さんだ。はい、セラスです」
梢『セラスさん。取り急ぎ、報告しようと思って』
セラス「はい、お姉さん」
梢『お姉さん……? ええと、蓮ノ空からも、瑞河のために協力してくれるという人が、かなりの数、集まってくださったわ』
セラス「わーい。こっちも、現時点で、えと………お手伝いしてくれる人は、何百人も集まってくれました。瑞河の生徒や、先生、父兄の方々……それに、長野のスクールアイドルも」
梢『そう……………。ありがたい話ね』
セラス「はい、誰になにをしてもらうかは、瑞河の生徒会と淳平さんに一任することにしました。その分わたしたちは、知ってもらうことに全力を注ごう、って」
梢『ええ、それでいいと思うわ。慈たちの作ってくれた動画も、再生数が伸びてるみたいね』
セラス「『こういうことをやりたいんです』ってお手伝いをお願いするときの紹介映像としても、助かってます」
梢『これで文化祭を開催することは、ひとまずできそうかしら』
セラス「はい。なにからなにまで、ありがとうございます」
梢『ううん。それじゃ、そちらもがんばってね』
そして、通話を終了しセラスがポケットにスマホをしまうと、
瑠璃乃「うう。やっぱりしっかりしてるかも、セラス後輩……………。二個下なのに…………」
セラス「いえい」
綴理「せらは、がんばりやだね」
セラス「え……?」
綴理「プレーオフ、やろうね。必ず「」
セラス「あ……はい。ありがとうございます…………」
瑠璃乃「ふふふ、やっぱり綴理先輩には、誰も敵わねーや」
綴理「ボク、さいきょー?」
瑠璃乃「さいきょーデス!」
セラス「………………」
二人の会話にセラスは黙ると……、
セラス「……大丈夫。人格では勝てなくても、ステージの上では泉が勝つから」
瑠璃乃「とんでもねーこと言ってる!?」
セラス「泉はときどき悪魔みたいになるから……」
綴理「そうなの?」
セラス「そう。あれはね、魂と引き換えに力をくれる、おとぎ話の悪魔」
Prrrr………!
すると、また電話が掛かってきた。
瑠璃乃「お?」
セラス「悪魔からだ」
瑠璃乃「だいぶ語弊が!」
セラス「はい、もしもし」
セラス「………テレビ局から、取材?」
瑠璃乃「! これで、もっと多くの人に!」
綴理「瑞河のことを、知ってもらえる」
セラス「え……?わたしが、出るの?なんで?泉じゃなくて?」
セラス「えええ……」
綴理・瑠璃乃「「?」」
セラス「む、むり…………」
― つづく ―
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