蓮ノ空スクールアイドル録   作:松兄

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第123話:合同文化祭に向けて②

花帆、さやかちゃん、セラスがビラ配りをしている間、瑞河のスクールアイドル部の部室では、めぐと姫芽ちゃん泉が共同で合同文化祭のPR動画を作っていた。

 

――そして、

 

姫芽「よし!これであとはエンコード終了を待って、アップするだけですね〜!」

 

姫芽が勢いよくエンターキーを叩き、「終わった〜!」と、背伸びする。

 

慈「よーし!文化祭の宣伝動画、かんせーい!」

 

姫芽「わ〜!」

 

泉「お疲れさま。コーヒーでいいかな?」

 

慈「お、さんきゅー」

 

そう言う間に、コーヒーを淹れてくれる泉。

 

泉「はい、どうぞ」

 

姫芽「ありがとうございま〜す〜」

 

慈「気が利くじゃん、泉ちゃん」

 

泉「私は素材を提供しただけだからね」

 

泉がそう言って肩を竦める。が、

 

慈「なに言ってんの。瑞河パート部分は、けっこう作ってくれたでしょ?」

 

泉「慈先輩の見よう見まねだよ。うわべだけ真似るのは得意なんだ。――それにしても、さすが蓮ノ空。動画制作のレベルも高いね「」

 

慈「私が好きでやってるだけだけどねー。めぐちゃんの卒業後も、ひとまず後継者ができたので、安心である」

 

姫芽「おす〜。ストリーマーとしてやってくなら、自分で動画も作れた方が、ぜったいいいですからね〜。人生に大切なことはすべて、みらぱ!に教わりました〜……………」

 

泉「ふふ。いい師弟関係だ」

 

泉も笑顔を見せる。

 

泉「瑞河は、私が入部したときには、もう他にスクールアイドルはいなかったから、少し憧れるよ」

 

慈「ずっとふたりでやってきたの?」

 

泉「正確にはひとりかな。セラスは部員ではなかったから。でも、そうだね。そういう意味では、私の師匠は、セラスということになるね」

 

姫芽「まだ中学生なのに〜」

 

泉「練習メニューを作ってくれたり、他校とのアポを取ってくれたり。練習後のマッサージ。ストレスケアに、なぜか岩盤浴の予約を取ってきてくれたこともあったよ」

 

慈「えーいいなー。メッチャ有能じゃん」

 

泉「できることはぜんぶしようと思っていたんだろうね。セラスはどうしても瑞河を救いたかった。私をスカウトしに来たのも、そのひとつだから。……瑞河の経営はずっと綱渡り状態で、去年の今ぐらいには、もう廃校計画が進められていたらしいから。後がない。本人はそのつもりだったんだろうね」

 

泉「スクールアイドル部が中部大会優勝を決めたところで、一度は廃校が撤回されるかもしれない………………という話になったけど、結果はこの通り。――あれほど力を尽くしていたのに、ままならないものだね」

 

また肩を竦める泉。すると、

 

慈「ずいぶん、他人行儀な言い方するね、キミ」

 

泉「そう、かな?」

 

姫芽「泉ちゃんはぶっちゃけ〜、セラスちゃんのこと、どう思ってるの〜?」

 

泉「………ふっ」

 

姫芽ちゃんが聞くと、突然何かを思い出したのか笑う泉。

 

姫芽「え、なになに〜?」

 

泉「セラスは、眺めていると面白い」

 

慈「急に俗っぽい部分出してくるじゃん!?」

 

突っ込むめぐに、泉は穏やかに話す。

 

泉「素直な気持ちを言うと、感謝しているよ。おかげでこの一年は退屈せずに済んだ。夢に向かって突き進むセラスは、輝いていたから。それに、私も楽しかったからね」

 

姫芽「え〜!素直〜!」

 

泉「私は素直で一途なんだよ。ひねくれものは、セラスの方さ」

 

慈「あの子、そうなの?」

 

泉「ああ。だから蓮ノ空にも、素直に感謝しているよ。あなたたちやあのマネージャーくんのおかげで、瑞河の生徒たちにも火が付いた。まだ自分たちにはやれることがあると、気づかせてもらった」

 

泉「廃校を止めることはできなくても、悔いのないように卒業することはできるだろう。本当に、ありがとう」

 

慈「文化祭と、その後のプレーオフが成功すれば、ね。まだ準備段階。なにかを成し遂げたわけじゃないんだから、お礼を言うのはちょっと早いんだよ」

 

泉「ふふ……そうだね」

 

姫芽「そうだよ〜。ちゃんと決着つけてやるんだからね〜」

 

シュッシュッ! シャドーボクシングしてファイティングポーズを取る姫芽ちゃん。めぐも泉もそれを見てクスッと笑う。

 

泉「ははっ。姫芽さんは本当に、戦うのが好きだね」

 

姫芽「泉ちゃんは〜?」

 

泉「実は私はそうでもないんだ。たいていは勝ち続けてきたからね。勝負と名のつくもので、楽しい思いをしたことが、ほとんどない」

 

慈「うちの天才ちゃんみたいじゃん」

 

姫芽「つまり〜、プレーオフは楽しみ、ってことですかね〜?」

 

泉「そうだね。引き分けは本当に予想外だった。私にも、セラスにも」

 

慈「廃校かかってたキミたちには悪いけど、譲れない理由だったらこっちにもあったからね。――夢ってのは、願ってる人数が多けりゃ強いってわけじゃない。たったひとりでも夢は夢。誰にだって大切でしょ――」

 

慈「――だから、勝負するっきゃないの。叶えられるかどうかは、後は自分次第」

 

泉「……………自分次第」

 

泉がめぐの言葉を反芻して考える。

 

泉「だから、あなたは、私のことを全力で舞台に立たせてくれようとしているんだね」

 

慈「そういうこと。ステージに立てず夢を諦めるなんて、論外だから。そこまでは手伝ってあげるんだよ。――でも、負けないからね」

 

そう言い切るめぐをまじまじと見つめる泉。すると、

 

泉「なるほど………。これが『先輩』か。蓮ノ空が、ちょっと羨ましくなったよ」

 

姫芽「うぇへへ。そんじょそこらのせんぱいじゃありませんよ〜!うちのめぐちゃんせんぱいですからね〜!泉ちゃんも、めぐ党に入りたいですか〜?も〜、しょうがないな〜!あとで会員ナンバー発行してあげる〜!」

 

泉「これまででいちばん嬉しそうだ………」

 

慈「卒業した後、蓮ノ空に私の銅像立てたりしないよね?」

 

姫芽「!! その手が………!?」

 

慈「ない!」

 

絶対やめろと今のうちに釘を刺すめぐだった。

 

 

 

その頃、綴理とルリちゃん、そしてビラ配りから合流したセラスは役所を巡っていた。

 

瑠璃乃「ありがとうございました〜!」

 

綴理・セラス「「ました〜」」

 

瑠璃乃「ふい〜。お役所さんを巡った巡った。文化祭の準備、着々と進んでますな〜。これで蓮ノ空からのお手伝いもやってくれば、いよいよ現実的に………!」

 

綴理「応援の方ははこずに任せてるし、準備もジュンがやってるからね。きっと大丈夫だよ」

 

セラス「あの、オトナのお姉さんとお兄さん」

 

綴理「そう。こずはボクたち三年生の中で、誕生日もいちばん早い。でも、ジュンはああ見えていちばん遅いめぐと誕生日一緒………末っ子双子?」

 

セラス「すごい。まるでオトナであることを運命づけられたと言っても。お兄さん、3年生の中で1番下なの……?」

 

綴理「こずはかごんではない。ジュンも、長男?だから」

 

瑠璃乃「いつの間にそんな息ぴったりに!?」

 

セラス「わかんない。でもなんだろう……他人の気がしない……」

 

瑠璃乃「ルリがつづパイと完全にシンパシー合うまで、半年かかったのに!」

 

綴理「せら…………。ひょっとしてきみは、ボクの……」

 

セラス「わたしの」

 

綴理「……後輩?」

 

瑠璃乃「そうだよ!」

 

渾身のツッコミを入れるルリちゃん。

 

瑠璃乃「なんだろう、魂の形が一緒なのかな………」

 

頭を抱えるルリちゃん。すると、

 

セラス「大丈夫。わたしはちゃんとわざとボケてる」

 

綴理「じゃあボクもだよ」

 

セラス「やっぱり」

 

瑠璃乃「つづパイはウソでしょ!2年間キャラ作ってたって言われたら、ルリ、人間不信になるよ!?」

 

ルリちゃんが叫ぶ。そこへ、

 

 

Prrrrr……

 

セラス「あ」

 

セラスのスマホに電話が掛かってきた。

 

セラス「オトナのお姉さんだ。はい、セラスです」

 

梢『セラスさん。取り急ぎ、報告しようと思って』

 

セラス「はい、お姉さん」

 

梢『お姉さん……? ええと、蓮ノ空からも、瑞河のために協力してくれるという人が、かなりの数、集まってくださったわ』

 

セラス「わーい。こっちも、現時点で、えと………お手伝いしてくれる人は、何百人も集まってくれました。瑞河の生徒や、先生、父兄の方々……それに、長野のスクールアイドルも」

 

梢『そう……………。ありがたい話ね』

 

セラス「はい、誰になにをしてもらうかは、瑞河の生徒会と淳平さんに一任することにしました。その分わたしたちは、知ってもらうことに全力を注ごう、って」

 

梢『ええ、それでいいと思うわ。慈たちの作ってくれた動画も、再生数が伸びてるみたいね』

 

セラス「『こういうことをやりたいんです』ってお手伝いをお願いするときの紹介映像としても、助かってます」

 

梢『これで文化祭を開催することは、ひとまずできそうかしら』

 

セラス「はい。なにからなにまで、ありがとうございます」

 

梢『ううん。それじゃ、そちらもがんばってね』

 

そして、通話を終了しセラスがポケットにスマホをしまうと、

 

瑠璃乃「うう。やっぱりしっかりしてるかも、セラス後輩……………。二個下なのに…………」

 

セラス「いえい」

 

綴理「せらは、がんばりやだね」

 

セラス「え……?」

 

綴理「プレーオフ、やろうね。必ず「」

 

セラス「あ……はい。ありがとうございます…………」

 

瑠璃乃「ふふふ、やっぱり綴理先輩には、誰も敵わねーや」

 

綴理「ボク、さいきょー?」

 

瑠璃乃「さいきょーデス!」

 

セラス「………………」

 

二人の会話にセラスは黙ると……、

 

セラス「……大丈夫。人格では勝てなくても、ステージの上では泉が勝つから」

 

瑠璃乃「とんでもねーこと言ってる!?」

 

セラス「泉はときどき悪魔みたいになるから……」

 

綴理「そうなの?」

 

セラス「そう。あれはね、魂と引き換えに力をくれる、おとぎ話の悪魔」

 

Prrrr………!

 

すると、また電話が掛かってきた。

 

瑠璃乃「お?」

 

セラス「悪魔からだ」

 

瑠璃乃「だいぶ語弊が!」

 

セラス「はい、もしもし」

 

セラス「………テレビ局から、取材?」

 

瑠璃乃「! これで、もっと多くの人に!」

 

綴理「瑞河のことを、知ってもらえる」

 

セラス「え……?わたしが、出るの?なんで?泉じゃなくて?」

 

セラス「えええ……」

 

綴理・瑠璃乃「「?」」

 

セラス「む、むり…………」

 

 

― つづく ―




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