あの後、テレビ局の取材との待ち合わせで、吟子、小鈴、セラスの3人は上高地線の波田駅にやって来た。
セラス「むむむ〜、悪魔め〜……」
小鈴「そろそろ取材の人たちが来る時間だけど、セラスちゃん、行けそう?」
小鈴がセラスを気に掛ける。すると―――、
セラス「あれは私が7歳のとき。当時天才ヴァイオリニストを目指していた私に、テレビ局の取材がやってきた日のこと」
唐突な回想が始まった。
吟子「なんか始まった」
セラス「私はいつものように余裕綽綽に受け答えをして、ひょいひょいと演奏してみせる――はずだった」
セラス「しかしそこで、悲劇が起きた。そう、大人たちに囲まれて私はとても緊張して、本当に下手っぴな演奏しかできなかった。そして後日テレビを見た人にものすごく気を遣われてしまったの。そのことが悔しくてむかついて、それ以降私はテレビというものがすごく苦手になった」
小鈴「そんな悲しい過去が!」
吟子「全部やつあたりじゃない!」
セラス「だから本当は配信もあんまり得意じゃない。誰かが一緒にいてくれるなら、まだ頑張れるけど1人だと……」
不安げなセラス。すると――、
小鈴「……だったらね、……吟子ちゃん!!」
吟子「待って」
小鈴「徒町と吟子ちゃんも、一緒に取材を受けるよ」
セラス「そんな、いいの?」
小鈴「もちろんだよ。徒町たちが力になれるなら。ね、吟子ちゃん!」
強引に行く小鈴。この1年で強くなったなぁ……。
吟子「絶対こうなると思った。なんでここに姫芽がおらんの!?」
小鈴「失敗するなら、3人で派手に失敗しようよ!そうしたら、むしろ興味を持ってくれる人も増えるかもしれないし!!」
セラス「失敗して、興味を……そっか、そういう考え方もあるんだ。すごい目からウロコ」
小鈴「エヘヘそう?」
セラス「すごいです。小鈴先輩!」
"先輩"。そう呼ばれた小鈴の頭に電流が走る。
小鈴「!! セラスちゃん、今、なんて……」
セラス「小鈴先輩!」
小鈴「徒町が、先輩……。こんなちっちゃい徒町も、中学3年生のセラスちゃんにとっては先輩……セラスちゃん!徒町がずっとそばにいるからね、徒町に任せてね、ちぇすと〜!!」
ニヤけた顔からの気合の入った掛け声。「かわいい後輩のために一肌脱ぐ!!」と、燃えている。
吟子「大きな声」
完全に乗せられた小鈴。
セラス「はい。小鈴先輩、私一緒なら頑張れると思います。小鈴先輩、頑張ろうね吟子」
だが、吟子ちゃんには呼び捨てのセラス。
吟子「おかしいでしょ!私と小鈴で、どうして私の方が呼び捨てなの、この身長差で!」
セラス「だって吟子は、花ちゃんの後輩なんでしょ?」
吟子「だったら小鈴だってそうでしょう!?」
セラス「緊張しないようにね、吟子大丈夫だよ。失敗しても、それを、それで興味を持ってくれる人がいるかもしれないんだから」
吟子「こ、この………!」
小鈴「セラスちゃん」
セラス「うん小鈴先輩」
吟子「もう!どうなっても知らないんだから!!」
そして、テレビ局との取材に向かった。
取材が終わり、文化祭当日、会場では、
泉「いやあ、なかなかどうしてうまくやったじゃないか。セラス」
セラス「面白がってるこの人、最悪……、馬鹿、阿呆……、悪魔」
泉を罵倒するセラス。
泉「ひどい罵倒だね。私は誰よりもセラスが適任だと思ったんだよ」
泉「誰よりもラブライブに出る理由があるのはあなただ。それなら誰よりも情熱を持っているのはあなたということだ。それはそれとして面白がってはいたけどね?」
セラス「むー……」
泉「でもごらんよ。あなたがテレビ取材で夢を語り、それが成功したから、ほら文化祭を開くことができたんだ」
2人がステージを見ると、蓮ノ空のシャッフルユニット。《かほめぐ♡じぇら〜と》、《蓮ノ休日》、《るりのとゆかいなつづりたち》が、ライブしていた。
花帆「みんな〜!今日は来てくれてありがとうね!」
さやか「配信の方々もどうぞ楽しんでいってくださいね」
泉「このイベントによって、さらに多くの人が瑞河の現状を知ってくれるだろう」
泉「これまでもたくさんの支援があった。交通手段や機材の提供、徐々に寄付も集まってきている。廃校は免れないとしても、プレーオフ成立まではきっとあと少しだ」
セラス「うん。私にできるのは、ここまで。あとは泉に任せるから」
泉「まだ残っているよ、あなたの仕事は」
セラス「え?」
泉「あなたが受けたのは、文化祭を開くことについてのテレビ取材だろう。なら当日本番にだってやってくるさ」
セラス「あんなにたくさん」
泉「それだけ注目を集めることができたということさほら、頑張って」
セラス「今度は一緒じゃないと嫌だ」
泉「はいはい、お姫様」
瑠璃乃「こっちこっち!瑞河の人の言葉を聞かせてあげて」
そして、セラスさんはカメラの前に立つ。
セラス「初めまして。私は瑞河女子高等学校、附属中学の生徒です。瑞河女子スクールアイドル部は、ラブライブ!全国大会に進みましたが、そこで学校の廃校決定に伴い、部活動ができなくなりました」
セラス「本当に残念です。このまま、不戦敗で終わる。そう諦めていたところで、蓮の空に声をかけてもらったんです。最後までもがいてみようよと、その言葉に勇気をもらいました。だから私も最後までもがいてみたいです。1人1人は小さな力でも集まってより大きな力へと変えるために」
セラス「今もたくさんの方々が応援してくださってます。そのおかげで、こうして瑞河と蓮ノ空を繋ぐ文化祭、"瑞蓮祭"を開くことができました。だから、あともう少し皆さんの力を貸してください。本日はどうもありがとうございました」
そして、中継の中、伝えたい事を伝え切ったセラスさん。いろんな人に届いていたらいいな。
姫芽「良い挨拶だったぜ〜せらすちゃん〜」
小鈴「蓮ノ空の名前も入れてくださってとても嬉しいです」
セラス「ごめん、なんだか急に思いついちゃって」
淳平「良いひらめきだったと思うよ」
小鈴「はい!この文化祭が、ビシッと決まった感じがします」
泉「前の取材のときもそれぐらい堂々としていればよかったのに」
セラス「何だろう、泉とステージに上がったからかな。ドキドキしたけど、でもそれよりわくわくできたから」
泉「さて、どうかな。これから蓮ノ空の皆さんとステージに上がるのだけど」
セラス「え?泉が?」
泉「せっかくだから私達高校1年生同士で組もうという話になってね」
泉「もしよかったら、セラスもどうだい?私たちとステージに一緒に……」
セラス「ありがとう。でもここはイズミとみんなに任せるよ。みんなを楽しませてあげてそう」
泉「うん、わかった。任せて」
セラス「いってらっしゃい。やっぱりいいなスクールアイドルって」
そして、"瑞蓮祭"は終了し、瑞河のスクールアイドル部部室では………、
花帆「……………」
吟子「……………」
慈「……………」
綴理「……………」
姫芽「……………」
小鈴「緊張感が……」
さやか「はいセラスさんたちは大丈夫でしょうか?瑞河の理事長室に呼ばれてから、もう1時間は」
梢「………………」
淳平「……………」
緊張感に包まれる中、セラスさんと泉が入って来た。
花帆「せっちゃん、どうだった?」
セラス「うん。部活動停止措置は1ヶ月延期、学校側も認めてくれた。プレーオフ、できるよ!」
花帆「や!」
蓮ノ空『やったー!!』
大喜びする俺たち。良かった良かった。
さやか「やりました!やりましたね!」
小鈴「おめでとー!泉さん!」
泉「うん、本当によかった。あなたたちには、何度も長野に来てもらって。本当に、本当に感謝してもし足りない。――どうも、ありがとう」
慈「私たちは自分のためにやっただけだよ!でもそのお礼はありがたくもらっておくね!気分がいいからね!」
綴理「よかったね、みんな」
瑠璃乃「ルリ、目の奥があっつくなってきちゃいました………!」
綴理「ふふ。それも幸せだね」
梢「それじゃあ、プレーオフまでの期間、精一杯練習しなくっちゃ!」
花帆「ね、せっちゃん。瑞河のみんなにも、報告しに行こ!」
セラス「うん。いこ」
花帆「いこいこ〜!」
― つづく ―
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