蓮ノ空スクールアイドル録   作:松兄

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第124話:瑞蓮祭

あの後、テレビ局の取材との待ち合わせで、吟子、小鈴、セラスの3人は上高地線の波田駅にやって来た。

 

セラス「むむむ〜、悪魔め〜……」

 

小鈴「そろそろ取材の人たちが来る時間だけど、セラスちゃん、行けそう?」

 

小鈴がセラスを気に掛ける。すると―――、

 

セラス「あれは私が7歳のとき。当時天才ヴァイオリニストを目指していた私に、テレビ局の取材がやってきた日のこと」

 

唐突な回想が始まった。

 

吟子「なんか始まった」

 

セラス「私はいつものように余裕綽綽に受け答えをして、ひょいひょいと演奏してみせる――はずだった」

 

セラス「しかしそこで、悲劇が起きた。そう、大人たちに囲まれて私はとても緊張して、本当に下手っぴな演奏しかできなかった。そして後日テレビを見た人にものすごく気を遣われてしまったの。そのことが悔しくてむかついて、それ以降私はテレビというものがすごく苦手になった」

 

小鈴「そんな悲しい過去が!」

 

吟子「全部やつあたりじゃない!」

 

セラス「だから本当は配信もあんまり得意じゃない。誰かが一緒にいてくれるなら、まだ頑張れるけど1人だと……」

 

不安げなセラス。すると――、

 

小鈴「……だったらね、……吟子ちゃん!!」

 

吟子「待って」

 

小鈴「徒町と吟子ちゃんも、一緒に取材を受けるよ」

 

セラス「そんな、いいの?」

 

小鈴「もちろんだよ。徒町たちが力になれるなら。ね、吟子ちゃん!」

 

強引に行く小鈴。この1年で強くなったなぁ……。

 

吟子「絶対こうなると思った。なんでここに姫芽がおらんの!?」

 

小鈴「失敗するなら、3人で派手に失敗しようよ!そうしたら、むしろ興味を持ってくれる人も増えるかもしれないし!!」

 

セラス「失敗して、興味を……そっか、そういう考え方もあるんだ。すごい目からウロコ」

 

小鈴「エヘヘそう?」

 

セラス「すごいです。小鈴先輩!」

 

"先輩"。そう呼ばれた小鈴の頭に電流が走る。

 

小鈴「!! セラスちゃん、今、なんて……」

 

セラス「小鈴先輩!」

 

小鈴「徒町が、先輩……。こんなちっちゃい徒町も、中学3年生のセラスちゃんにとっては先輩……セラスちゃん!徒町がずっとそばにいるからね、徒町に任せてね、ちぇすと〜!!」

 

ニヤけた顔からの気合の入った掛け声。「かわいい後輩のために一肌脱ぐ!!」と、燃えている。

 

吟子「大きな声」

 

完全に乗せられた小鈴。

 

セラス「はい。小鈴先輩、私一緒なら頑張れると思います。小鈴先輩、頑張ろうね吟子」

 

だが、吟子ちゃんには呼び捨てのセラス。

 

吟子「おかしいでしょ!私と小鈴で、どうして私の方が呼び捨てなの、この身長差で!」

 

セラス「だって吟子は、花ちゃんの後輩なんでしょ?」

 

吟子「だったら小鈴だってそうでしょう!?」

 

セラス「緊張しないようにね、吟子大丈夫だよ。失敗しても、それを、それで興味を持ってくれる人がいるかもしれないんだから」

 

吟子「こ、この………!」

 

小鈴「セラスちゃん」

 

セラス「うん小鈴先輩」

 

吟子「もう!どうなっても知らないんだから!!」

 

 

そして、テレビ局との取材に向かった。

 

 

取材が終わり、文化祭当日、会場では、

 

泉「いやあ、なかなかどうしてうまくやったじゃないか。セラス」

 

セラス「面白がってるこの人、最悪……、馬鹿、阿呆……、悪魔」

 

泉を罵倒するセラス。

 

泉「ひどい罵倒だね。私は誰よりもセラスが適任だと思ったんだよ」

 

泉「誰よりもラブライブに出る理由があるのはあなただ。それなら誰よりも情熱を持っているのはあなたということだ。それはそれとして面白がってはいたけどね?」

 

セラス「むー……」

 

泉「でもごらんよ。あなたがテレビ取材で夢を語り、それが成功したから、ほら文化祭を開くことができたんだ」

 

2人がステージを見ると、蓮ノ空のシャッフルユニット。《かほめぐ♡じぇら〜と》、《蓮ノ休日》、《るりのとゆかいなつづりたち》が、ライブしていた。

 

花帆「みんな〜!今日は来てくれてありがとうね!」

 

さやか「配信の方々もどうぞ楽しんでいってくださいね」

 

泉「このイベントによって、さらに多くの人が瑞河の現状を知ってくれるだろう」

 

泉「これまでもたくさんの支援があった。交通手段や機材の提供、徐々に寄付も集まってきている。廃校は免れないとしても、プレーオフ成立まではきっとあと少しだ」

 

セラス「うん。私にできるのは、ここまで。あとは泉に任せるから」

 

泉「まだ残っているよ、あなたの仕事は」

 

セラス「え?」

 

泉「あなたが受けたのは、文化祭を開くことについてのテレビ取材だろう。なら当日本番にだってやってくるさ」

 

セラス「あんなにたくさん」

 

泉「それだけ注目を集めることができたということさほら、頑張って」

 

セラス「今度は一緒じゃないと嫌だ」

 

泉「はいはい、お姫様」

 

瑠璃乃「こっちこっち!瑞河の人の言葉を聞かせてあげて」

 

そして、セラスさんはカメラの前に立つ。

 

セラス「初めまして。私は瑞河女子高等学校、附属中学の生徒です。瑞河女子スクールアイドル部は、ラブライブ!全国大会に進みましたが、そこで学校の廃校決定に伴い、部活動ができなくなりました」

 

セラス「本当に残念です。このまま、不戦敗で終わる。そう諦めていたところで、蓮の空に声をかけてもらったんです。最後までもがいてみようよと、その言葉に勇気をもらいました。だから私も最後までもがいてみたいです。1人1人は小さな力でも集まってより大きな力へと変えるために」

 

セラス「今もたくさんの方々が応援してくださってます。そのおかげで、こうして瑞河と蓮ノ空を繋ぐ文化祭、"瑞蓮祭"を開くことができました。だから、あともう少し皆さんの力を貸してください。本日はどうもありがとうございました」

 

そして、中継の中、伝えたい事を伝え切ったセラスさん。いろんな人に届いていたらいいな。

 

姫芽「良い挨拶だったぜ〜せらすちゃん〜」

 

小鈴「蓮ノ空の名前も入れてくださってとても嬉しいです」

 

セラス「ごめん、なんだか急に思いついちゃって」

 

淳平「良いひらめきだったと思うよ」

 

小鈴「はい!この文化祭が、ビシッと決まった感じがします」

 

泉「前の取材のときもそれぐらい堂々としていればよかったのに」

 

セラス「何だろう、泉とステージに上がったからかな。ドキドキしたけど、でもそれよりわくわくできたから」

 

泉「さて、どうかな。これから蓮ノ空の皆さんとステージに上がるのだけど」

 

セラス「え?泉が?」

 

泉「せっかくだから私達高校1年生同士で組もうという話になってね」

 

泉「もしよかったら、セラスもどうだい?私たちとステージに一緒に……」

 

セラス「ありがとう。でもここはイズミとみんなに任せるよ。みんなを楽しませてあげてそう」

 

泉「うん、わかった。任せて」

 

セラス「いってらっしゃい。やっぱりいいなスクールアイドルって」

 

そして、"瑞蓮祭"は終了し、瑞河のスクールアイドル部部室では………、

 

花帆「……………」

 

吟子「……………」

 

慈「……………」

 

綴理「……………」

 

姫芽「……………」

 

小鈴「緊張感が……」

 

さやか「はいセラスさんたちは大丈夫でしょうか?瑞河の理事長室に呼ばれてから、もう1時間は」

 

梢「………………」

 

淳平「……………」

 

緊張感に包まれる中、セラスさんと泉が入って来た。

 

花帆「せっちゃん、どうだった?」

 

セラス「うん。部活動停止措置は1ヶ月延期、学校側も認めてくれた。プレーオフ、できるよ!」

 

花帆「や!」

 

蓮ノ空『やったー!!』

 

大喜びする俺たち。良かった良かった。

 

さやか「やりました!やりましたね!」

 

小鈴「おめでとー!泉さん!」

 

泉「うん、本当によかった。あなたたちには、何度も長野に来てもらって。本当に、本当に感謝してもし足りない。――どうも、ありがとう」

 

慈「私たちは自分のためにやっただけだよ!でもそのお礼はありがたくもらっておくね!気分がいいからね!」

 

綴理「よかったね、みんな」

 

瑠璃乃「ルリ、目の奥があっつくなってきちゃいました………!」

 

綴理「ふふ。それも幸せだね」

 

梢「それじゃあ、プレーオフまでの期間、精一杯練習しなくっちゃ!」

 

花帆「ね、せっちゃん。瑞河のみんなにも、報告しに行こ!」

 

セラス「うん。いこ」

 

花帆「いこいこ〜!」

 

 

― つづく ―




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