さやかがお姉さんと話した3日後、スクールアイドルクラブの部室では、
淳平「日程が重なったって、本当なのか?綴理……」
綴理「ん」
梢「そう……。このこと、村野さんにはもうお話ししたの?」
綴理「ううん、話してない。話すつもりも……ないかな」
淳平「は!?なんで!!」
綴理「ライブはずらせば良いからね」
梢「簡単に言うけど、それは今回の催しに出られないってことなのよ?」
綴理「うん。でも……フィギュアの方も、さやのお姉ちゃんの引退試合って聞いてるから。大事なものだよ」
淳平「それは……そうだけど、でも、綴理自身の気持ちは、どうなるんだ?次のライブイベント、楽しみにしてただろ?最近の練習、全部その調整だったじゃないか……」
梢「そうよ……」
綴理「見てたんだね……」
梢「まあ、一応これでも部長なんだから」
淳平「俺もマネージャーだし、部員には気を配ってたからな……すぐに気づいたよ。去年…楽しかったからな」
綴理「そうだね。スクールアイドルクラブに居続けようと思ったのは、去年のあのライブがあったからだ」
そして、綴理は顔を伏せ……
綴理「でも……良いんだ。ただでさえ、さやは両方頑張ろうとしてるんだ。そんなさやに、自分じゃどうにもならないようなところで嫌な思いさせたくない」
梢「綴理……」
綴理「だめ……?」
梢「いいえ。……あなたが前に、私に言ってくれたことだけれど。あなたも、良い先輩になったのね」
綴理「どうかなぁ……。ボクだって、寂しい気持ちがないわけじゃないからね。」
淳平「そりゃあ人間出しな。仕方ないさ。本当に……良いんだな?」
綴理「うん……」
すると、部室の扉が開いた。すると、
さやか「……今の、なんのお話しですか?」
!?まさか……聞かれてた?
綴理「さや……」
梢「っ!」
淳平「………ッ!」
俺たち3人は顔を見合わせる。
綴理「聞いてた?」
さやか「聞いてしまったことは……ごめんなさい。でも。でも、お姉ちゃんの引退の日に……ライブがあるって……。それも……夕霧先輩にとって、大事なライブだって……。本当なんですか……!?」
綴理「嘘だよ……?」
さやか「夕霧先輩!!」
綴理「……ごめんね、聞かせちゃって」
さやか「っ〜〜!謝ってほしくなんかありません!むしろ、謝らなければならないのは―――」
綴理「さやは悪くないよ」
さやか「でも!」
綴理「ライブも、フィギュアも、日程を決めたのはさやじゃない。どうしょうもないことはある。ボクはさやのお姉ちゃんの引退の日をさやから聞いてた。……それだけのこと」
さやか「でも……夕霧先輩が次のライブを大事に思っている気持ちは、それと関係ありませんよね……!?」
綴理「……べつに、大したことじゃないよ。来年誰かと一緒にステージに立てたら……綴理もスクールアイドルだよ……って、先輩に言われただけ」
さやか「っ……ご、ごめっ……」
綴理「良いんだ。本当に大したことじゃない。確かにその約束はあったけど……でも、それが果たされるかどうかなんてもう関係ない。それよりずっと早く、こうしてさやとスクールアイドルになれたんだ」
さやか「せんぱ……でもっ……!」
綴理「だから、うん。やっぱり、はっきり言おうと思う」
さやか「へ?」
綴理「市場に行ってから、さやは見違えたと思う。それはきっと、自分を見つけられたからだった。今のさやが魅力的で、みんなが凄いって言ってくれるのは……ボク自身も凄いなと思うのは……さやが、さやらしくあるからだ。さやがまた、何かを理由に押し込められるのは、なんていうか意味がないんだ」
さやか「先輩……私は……!」
綴理「むしろもっと、わがままになっていいんだ。ボクのこととか、気にしないで。今回のことだって……さやが凹む必要、ない」
さやか「でも……!」
綴理「さやは色んなことをしてくれたよ。ボクも、こずも、ジュンとかほも、配信に駆けつけてくれたみんなも、さやが頑張り屋で素敵な子だってことはもうわかってる。本当に……ボクは、さやと一緒にスクールアイドルができて嬉しかった。でも、それはボクの気持ちだ」
さやか「やめてください。それじゃあまるで……もう、終わりみたいな……」
綴理「終わらせるか、終わらせないかは、キミ次第だ。でも。スクールアイドルは、誰かにやらされるものじゃない」
さやか「っ……!」
綴理「ボクは、キミが本当にやりたいものをやるべきだと……思う。そこに、ボクも、フィギュアの人たちも、関係ない。スクールアイドルを頑張らなきゃいけない理由は……どこにもない」
さやか「そんな……そんなの……っ!」
そして、さやかちゃんは部室を飛び出して行った。
淳平「さやかちゃん!!悪い梢、そのバカ頼む!!」
梢「淳!頼んだわよ!」
俺は、急いでさやかちゃんを追い駆けた。
梢「それも、良い先輩……のつもり?」
綴理「……ライブは、こずとかほに任せるよ」
梢「……雨、降ってきたわね」
その頃、俺は雨が本格的に降り始める中、濡れながらさやかちゃんに探していた。一応校舎の外に出る前に傘は持って出たが……
淳平「敷地内にはいると思うけど……」
俺が校庭の方に向かうと、端のベンチにさやかちゃんが濡れながら座っていた。
良かった………。
俺は、さやかちゃんに近づき、黙って傘の中に入れる。
淳平「濡れるぞ?」
さやか「わたしのような愚か者は、ほうっておいてください」
淳平「………綴理が悪かったな」
さやか「いえ……わたしが愚かだったんです。ちょっとフィギュアがうまく行き始めて……もうなんにも心配することなんてないと思って……夕霧先輩の気持ちを踏みにじったんです」
淳平「……昨日綴理と話したときは、最近さやかちゃんが凄く頑張ってるって喜んでたのに……な」
さやか「その結果がこれです。まさか日程が重なるなんて……」
淳平「でもさ、それはさやかちゃんにはどうしょうもないよな?大好きなお姉さんの引退も、綴理とのライブも、どっちも大切に決まってるよな?選べっていうほうが難しいよ」
さやか「はい……お姉ちゃんにも、自分のために無理しなくていいって言われて、夕霧先輩にも、スクールアイドルを頑張らなきゃいけない理由はどこにもないって言われて!わたしは……何を間違えたんですか……?」
淳平「俺は、さやかちゃんのお姉さんには会ったけど、詳しいことはよく知らない。綴理のことは比較的知ってるけど、全部は分からない。でも、分かることはある。さやかちゃんのお姉さんも、綴理も、さやかちゃんが要らないからそう言ったわけじゃないってこと」
さやか「……そんなことは」
淳平「じゃあ、そうだな。今から少し良くないこと言うぞ?」
さやか「え?」
淳平「俺は、さやかちゃんがスクールアイドルとフィギュア。どうしてもどちらかを選ばなきゃいけないとしたら、スクールアイドルを取って欲しい」
さやか「淳平、先輩……」
淳平「必死に頑張るさやかちゃんを見てると、俺もまだまだ頑張らなきゃと思うし、元気が貰えるから。いなくなるのは嫌だな……。だから……さやかちゃんがいつ、「スクールアイドル辞めようか迷ってるんです」って言い出すかと焦ってる気持ちもあったんだ」
さやか「なぜ……?」
淳平「だってさやかちゃん、スクールアイドルを始めた理由はフィギュアが行き詰まったからだって言ってただろ?そのフィギュアがうまくいったら、「もうスクールアイドルはポイです」とか言うんじゃないかってさ……」
さやか「そ、そんな事絶対言いませんよ!!」
淳平「はは……だよな」
さやか「え?」
淳平「俺は、フィギュアが凄くなってもスクールアイドルを辞めずに頑張ってくれてるさやかちゃんが好きだから」
さやか「ッ!!////」
淳平「だからさ、そんなに落ち込まないでくれよ……」
さやか「先輩……」
淳平「でも正直、俺みたいに正直に言うのはズルいと思うんだよ。きっと、さやかちゃんのお姉さんも、綴理も、さやかちゃんにしてほしいことはあっても、無理はしてほしくないんじゃないかなって。それだけなんじゃないかな?」
さやか「………」
淳平「適当な事いってたらゴメン。俺は戻るから。傘、ここに置いとくな?」
さやか「あの!!」
去り際に、さやかちゃんが立ち上がる。
淳平「なに?」
さやか「ありがとう……ございました!!」
淳平「おう……!」
そして、俺は校舎に戻っていった。
さやか「どのみち、やらなきゃいけないことはある……いえ、やりたいことは、あるんです。ひとまずはそれに、向き合います!」
そして、さやかちゃんはその日は寮に戻っていった。
さやか(淳平……先輩……ッ///)
ー つづく ー
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