蓮ノ空スクールアイドル録   作:松兄

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第135話:J・K・G

翌日、俺は金沢駅鼓門前で梢と吟子ちゃんを待っていた。

 

しばらく待っていると、2人がやって来た。

 

梢「ごめんなさい、待ったかしら?」

 

淳平「いや、今来たとこ」

 

吟子「お待たせしてすみません……」

 

2人が待たせたことを謝ってくる。って、言っても時間ピッタリだしな。

 

淳平「時間ピッタリだから気にすんなよ。俺が早く来ただけだから」

 

俺が気にしないように二人に言う。

 

―――さてと、

 

梢「きょうは、私に1日付き合ってくれる?」

 

吟子「は、はい!」

 

淳平「ちゃんとめぐにも許可もらったから大丈夫だ」

 

梢「………ホントのところは?」

 

淳平「めちゃくちゃ文句言われた。でも卒業したら2人きりで旅行行くってことで手を打ってくれた」

 

吟子「慈先輩………」

 

吟子ちゃんが苦笑する。

 

吟子「ええと、コンサートと、ライブと、オペラでしたよね?」

 

気を取り直して、今日行くところを確認する。

 

梢「ええ。とにかく、外からいろんな刺激をもらおうと思って。ハードなスケジュールだけれど、よろしくね」

 

淳平「りょ〜かい」

 

吟子「はい、大丈夫です。それで、あの………えっと…………」

 

おずおずと声を上げる吟子ちゃん。どうした?

 

吟子「実は、きょうは、お弁当を作ってきたんです」

 

梢「あら……吟子さんが?」

 

吟子「はい。どうにか梢先輩に元気を出してほしいと思い、部のみんなに相談して」

 

梢「小鈴さんや、姫芽さんかしら」

 

吟子「あの子たちに言うと、面白がって3回に1回はからかわれてしまうので………………」

 

淳平「まぁ、さやかちゃんとルリちゃんだろうな」

 

吟子「そのとおりです……」

 

梢「仲がいいのね。さすが、蓮ノ小三角」

 

吟子「そ、そういうんじゃないです。だから、先輩方に聞いてきたんです。そうしたら……………」

 

 

 

 

 

さやか『それなら、おいしいごはんを食べるのがいちばんですよ』

 

瑠璃乃『うんうん!もしあれだったら、お弁当手作りとかしちゃう?』

 

さやか『素敵ですね。それなら、わたしもお手伝いします』

 

 

 

 

吟子「って………」

 

さすがあの2人だな。

 

吟子「なので、もしご迷惑でなければ」

 

梢「…………嬉しいわ、吟子さん。あなたのそういう、しっかりと事前に準備をしたり、いろいろと用意をしてくれるところは、本当に頼りになるわね」

 

吟子「あっ……ありがとうございます。それじゃあ、その………………」

 

 

すると―――、

 

吟子「きょうは吟子お姉ちゃんと一緒に、がんばろうね、梢ちゃん」

 

淳平(!?)

 

ブフォッ!

 

驚いて咳き込んでしまう俺。

 

吟子「だ、大丈夫ですか?淳平先輩………!」

 

淳平「だ、大丈夫………」

 

梢「待って。今のは………」

 

吟子「ど、どうかしたの?梢ちゃん」

 

淳平「プッ、クククッ」

 

梢「そういえばさっき、『先輩方』にアドバイスをもらった、って言ってたかしら」

 

淳平「あっ、もしかして………」

 

アイツら…………。

 

吟子「はい。綴理先輩と慈先輩にも聞いてきました!」

 

 

 

 

 

 

慈『梢を元気づけたい、ねえ〜』

 

綴理『そういえばこず、前にお姉さんがほしいって言って、るりのこと『瑠璃乃お姉ちゃん』って呼んでた』

 

慈『いいじゃんそれ☆吟子ちゃんも1日お姉ちゃんになってあげなよ☆』

 

 

 

 

 

 

 

吟子「って」

 

本人は真剣に悩んでるのに……うん。帰ったら説教しとこう………。

 

梢「吟子さん、あなたの好意は嬉しいわ。でも私は大丈夫だから」

 

吟子「あっ…………慈先輩が、『梢が“大丈夫”って言ったら、それは照れてるだけだから〜☆』って…………」

 

淳平「はぁ………もっと早くに注意するべきだったかな。吟子ちゃんは、ろくでもない上級生ふたりに、からかわれたんだよ」

 

吟子「そんな…………。あのおふたりが、そんなことを……?」

 

梢「するのよ。私相手には」

 

淳平「するなぁ……」

 

吟子「ああ……仲いいですもんね。さすが、蓮ノ大三角と太陽」

 

梢「さてと、この話はここまでにしましょう。コンサートに行く前に、疲弊してしまいそうだわ」

 

吟子「では、1日お姉ちゃんは?」

 

梢「しなくていいから!」

 

 

 

 

 

そして、まず俺たちはオーケストラのコンサートを聴きに行き、その後近くの公園で、

 

吟子「すごくきれいな演奏でしたね」

 

梢「ええ、特にフルートとオーボエの掛け合いが絶妙だったわ。バイオリンのソロも、まるで歌っているみたいで。作曲にも、活かせる部分がありそうね……。ごめんなさい、少しメモを取っていてもいいかしら」

 

吟子「はい、もちろん」

 

メモを取る梢。

 

梢「ふぅ……お待たせしたわね」

 

吟子「いえ、こちらも準備ができたところです」

 

梢「まあ………素敵なお弁当だわ」

 

淳平「ホントだ」

 

おにぎり、肉じゃが、きんぴらごぼう。

 

梢「卵焼きに、これは揚げ出し豆腐かしら?」

 

吟子「はい。梢先輩が、お豆腐が好きだと聞いたので」

 

梢「これだけ作るのは、大変だったでしょう」

 

吟子「さやか先輩と瑠璃乃先輩も、手伝ってくれましたから」

 

吟子「蓮ノ空に来てからは、久しぶりに腕を振るいました。あ、でも昨年末は、おばあちゃんと一緒におせちを作ったんですよ」

 

吟子ちゃんの作ったお弁当を食べ始め、食べながら3人で話す。

 

梢「そう……。先生は、お元気?」

 

吟子「はい!口ではあんまり素直じゃないですけど、7月以来、すっかりスクールアイドルクラブに夢中ですよ」

 

淳平「嬉しいな」

 

梢「ええ……………誇らしいわね。……ラブライブ!優勝で、少しは先生に恩返しができたかしら」

 

吟子「蓮ノ空の名前を、たくさんの人に知ってもらえたと思います!」

 

そっか。―――そうだな。

 

淳平「だとしたら蓮華祭はなおさら、みっともないところは見せられないな」

 

梢「ええ。ちゃんとスランプを乗り越えて、曲を完成させなきゃ…………」

 

吟子「あっ……………、次はロックバンドのライブでしたね。私も普段、触れることのない文化なので、楽しみです!」

 

梢「……………そうね。お弁当を味わったら、次へ向かいましょうか」

 

吟子「はい。物販列に並んで、Tシャツやタオルを買わなきゃですもんね」

 

ん?

 

淳平「えっと……吟子ちゃんは、ライブはよく行くのか?」

 

吟子「いえ、今まで一度も。この日のために、しっかり調べてきました」

 

梢「そう……………。あなたは本当に真面目で、いい子ね……………」

 

 

そして、弁当を食べると、ロックバンドの会場に向かいライブを聴き、その後はオペラを鑑賞。

 

そして、蓮ノ空への帰りのバス内で、

 

吟子「きょうは……なんだか、とても素敵な1日でした………」

 

梢「ライブ、オペラと続けて参加して、疲れたでしょう?」

 

吟子「いえ……これも、蓮ノ空で梢先輩と出会っていなければ、できなかった経験だと思いますので。帰ったら、花帆先輩に自慢してやりたいぐらいです」

 

淳平「すごく騒がしくなりそうだな」

 

吟子「ですよね。花帆先輩、梢先輩のこと大好きだから。ふふっ」

 

淳平「梢は今日どうだった?」

 

梢「ええ。私も、きょうはたくさんの刺激がもらえたわ。音楽は様々で、表現も様々……………。そんな当たり前のことを、忘れていたみたい」

 

吟子「メモもたくさん取ってましたもんね。これだけがんばったんですから、きっと、大丈夫ですよ!」

 

梢「ええ、そう思うわ。行き詰まっていた迷路に、ようやく光明が見えた気分。あなたたちと一緒に感想を話し合えたことも、大きかったわね。ひとりじゃ気づけないことも、たくさんあったもの。付き合ってくれて、ありがとう」

 

淳平「ならよかった」

 

吟子「お役に立てたなら、なによりです!」

 

梢「そういえば、改めて聞いたことはなかったわね。吟子さんは、これからどうするの?」

 

あ〜そういえば。

 

淳平「たしかに。吟子ちゃんはラブライブ! を優勝することが夢だ!って言って、 部に入ってきたしな」

 

俺と梢が吟子ちゃんを見る。

 

吟子「あ、そうですね。私は、んー………。先輩とは違って、蓮ノ空と、金沢の伝統文化を世間に知らしめるために、ラブライブ!を目指していたので。活動内容としては、これから先も変わらないかなと、思います」

 

吟子「むしろ、蓮ノ空に注目してもらっている今が、がんばり時かな、って」

 

梢「そう」

 

吟子「梢先輩は、どうですか?ラブライブ!に優勝して、夢を叶えたお気持ちは」

 

梢「…………もちろん、最高の気分よ。みんなの力でつかみ取った夢だもの」

 

淳平「ああ………」

 

吟子「すごいですよね、3年間も挑戦し続けて、そして最後の年に優勝を果たすなんて。本当に、全世界のスクールアイドルの、憧れですよ」

 

梢「……………そうね。でも、本当に………そうなのかもしれないわね」

 

淳平(?)

 

梢の様子が気になったが、その日はもう蓮ノ空の寮の自室に戻る3人だった。

 

 

 

― 梢の部屋 ―

 

梢「やっぱり、書けない……………」

 

梢「あんなに素晴らしい音楽をたくさん味わってきて、吟子さんにもあれだけ付き合ってもらったのに…………」

 

――何日経っても………………。

 

梢「嫌になるわね………。もう少しで、卒業なのに……。私を救ってくれたあの子たちに、せめて曲を遺したいのに………」

 

コンコン

 

梢「?」

 

梢部屋の扉がノックされた。

 

梢「……………どうぞ」

 

花帆「梢センパイ!」

 

入って来たのは花帆だった。

 

梢「どうしたの?もう、消灯よ。……吟子さんから話を聞いて、ヤキモチを焼いてきた?」

 

花帆「じゃないですー!あたしもマジメに考えてきたんです!梢センパイのスランプをどうにかする秘策を!」

 

花帆「梢センパイ、これからあたしに付き合ってください!」

 

梢「これから…………って。あなた、体調は?」

 

花帆「もうばっちりです!梢センパイは作曲で部屋にこもってるから知らないかもですけど、練習だって復帰してますから!」

 

梢「だったら、いいけれど………。でも、なにをするの?」

 

花帆「ここ最近はずーっと忙しかったですよね。竜胆祭とラブライブ!予選から始まって、ビッグボイス選手権、慈センパイの激闘、北陸大会に、ラブライブ!決勝大会………………」

 

梢「え、ええ、そうね」

 

花帆「そして来月には、蓮華祭!104期スリーズブーケ集大成の曲も作らなくっちゃいけないですし、ずーーっと気を抜けない日々です」

 

花帆「こんなの、いくら梢センパイでも、疲れちゃうに決まってます!」

 

梢「そ、そうかしら………?」

 

花帆「はい。あたしは知ってますから。梢センパイは人より少しがんばり屋さんなだけで、スーパーマンでもなんでもなくて。あたしたちと変わらないんだって。――なので、行きましょう!」

 

梢「行くって、どこに?」

 

花帆「今夜は、センパイの背負ってる荷物、ぜーんぶ置き去りにしちゃって。あたしと、駆け落ちしましょう!」

 

梢「か、駆け落ち………?」

 

 

― つづく ―




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