あのあと朝になり、生徒たちは学校に登校。そして授業を受けてあっという間に放課後になりスクールアイドル部室では……
梢「ごめんなさい」
花帆「え……」
吟子「梢先輩、今、なんて………」
梢「……できないの。私にはもう、曲が作れないの。だから………スリーズブーケの曲は、あなたたちで作って頂戴」
花帆「どうして、梢センパイ………!」
吟子「そ、そうですよ。どうしちゃったんですか」
吟子「あの、まだまだスランプが続いてるんですか?だったら私、コンサートならいくらでもお付き合いしますから」
花帆「あ、あたしも!もっといろんなアイディア出しますよ!梢センパイが、元気になるようなアイディア!」
後輩たちが色々と言ってくれるが……、
梢「………そうではないの。私の夢は……もう、叶ってしまったから。曲を作る力も、情熱も、すべて抜けていってしまったの。私のスクールアイドル活動は、もう、終わってしまったんだわ」
そして、梢は部室から出ていった。
花帆「あっ」
吟子「梢先輩………」
― 梢の部屋 ―
梢「処分するものが、たくさんあるわね……………」
梢「……………それもそうね。私の3年間はずっと、スクールアイドルクラブと一緒にあったんだから」
梢「本当にずっと……スクールアイドルのことばかり、考えていたわね。楽譜も、こんなにたくさん………」
梢は高校に入ってから書いた楽譜を広げて懐かしむ。
梢「懐かしいわ。これは、メンバーみんなに宛てて、考えていた曲ね。アイディアばかり先行して、未完成だった曲も、たくさん」
梢「練習して、勉強して、へとへとになっても机に向かって、曲を考えて……………。よくやっていたわね、私も」
梢「――どうしてかしら。遥か遠くのゴールに向かって走り続ける時間は、果てしなくて………。ずっと、苦しかったはずなのに………楽しかったのね………私は。もう二度と、戻らない日々………」
すると、
コンコン!
綴理「こず、いる?」
梢「綴理?」
綴理「ちょっと、聞きたいことがあって。今作ってる曲のことで」
梢「DOLLCHESTRAの、ユニット曲?」
綴理「うん。とりあえずできたんだけど、もっとよくしたいんだ。聞いてくれる?こず」
綴理は梢にアドバイスを求めに来ていた。――だが、
梢「…………ごめんなさい、綴理。私は、あなたの力にはなれないわ」
綴理「………どうして?」
梢「私にはもう、曲が作れないの。きっと、理由がなくなってしまったからだわ。スクールアイドルを、する理由が」
綴理「じゃあ、こずはスクールアイドルをやめたいの?」
梢「続けられるものなら、最後まで続けていたかったけれど………」
綴理「それなのに、やめちゃうの?」
梢「花帆も吟子さんも、もう私がいなくても大丈夫。ふたりならきっと、いい曲を作ってくれるわ。仕方がないの。私の夢は、すべて叶ってしまったのだから」
梢「て、こんな有様じゃ、スクールアイドルどころじゃないわね。音楽だって、続けられるかどうか。そういうわけでね、ごめんなさい」
口ではそう言うが、梢の顔は暗い。綴理は梢のそんな顔を放っておくような子でない。
綴理「待って、こず。こずは、他にやりたいことができたの?」
梢「………それは、どうかしらね。とりあえず大学に進学して、そこで、ゆっくりと決めてゆくことになるかしら」
梢「仕方がないの。私の夢は、すべて叶ってしまったのだから。……………情熱も一緒に、燃え尽きたのよ、きっと」
綴理「こずがそう決めたのなら……ボクは、寂しいけど………わかった、って言うよ。でも、そうじゃないのなら。夢だって一緒だよ。終わりを決めるのは、自分だけなんだ」
梢「だけど、終わってしまったのよ、もう、ラブライブ!は。――私たちはみんなで優勝した。最高の仲間たちと築き上げたそれは、最高のステージだったわ。ずっと待ち望んでいた瞬間は、もう過ぎたの!」
梢「終わったのよ…………」
綴理「…………聞いて、こず」
綴理「みんなの気持ちを導くのがうまいって、めぐに言ってもらったんだ」
梢「え?」
綴理「1月のラブライブ!で、思ったんだ。こういうの、すごくいいな、って」
綴理「みんなで一緒にがんばって。目の前で、夢の形が花咲いて、きらめいていって。ボクはきっと、こういうのがしたかったんだ、ってわかったんだ」
綴理「……せ、先生になりたいんだ」
梢「あなたが………?」
綴理の語った夢に、梢は驚愕の表情を浮かべる。
綴理「口に出すのは、これが初めてだ。でも、誰かを支えて、そばにいてあげたい。きらめきのそばに、寄り添っていたい」
梢「それがあなたの………次の夢」
綴理「うん」
梢「……………誰にも言っていなかったのに。どうして、私に?」
綴理「それを打ち明けることが、寄り添うことだと思ったから」
綴理「寄り添いたかったんだ。ずっとボクが大好きな、こずのきらめきに。ボクはスクールアイドルを卒業するけど。続けていくよ。――やりたいから。熱をもった未完成な芸術を、いつまでも」
綴理「こずは、どう?」
梢「私の、やりたいこと………。私にとってラブライブ!は、憧れで、目標で………。だけど、終わってしまった………」
綴理「それでも、なくならないよ。憧れに向かった気持ちは。胸の中に、残り続ける」
梢「私の中に、残る気持ち………?」
吟子『むしろ、蓮ノ空に注目してもらっている今が、がんばり時かな、って』
梢「ラブライブ!を終えてなお、新しい夢に向かって進む、吟子さんのように………」
梢「そして……………」
花帆『―――次は、どんな夢を見ましょうか?』
梢「ラブライブ!が終わっても…………また次のラブライブ!を、始めればいいの……?」
梢「私にとっての、また次のラブライブ!……………」
梢「それが、夢の先………………。何度でも、あのステージを、これから先も………でも、そんな……そんな夢のようなことが、本当に、できるのかしら………」
綴理「こずは、できると思ったから、ラブライブ!優勝を目指したの?」
梢「それは………」
綴理「ボクだって思ってないよ。自分に先生ができるなんて。でも、やりたいんだ」
綴理「――この気持ちがあれば、きっと、未来はずっと明るいから」
梢「………………でも、果てしないわ。ラブライブ!優勝だって、3年間必死になって走り続けて、ようやく叶えられた夢だったのに。独りで、また新しい夢に向かって、ゼロからのスタート、だなんて」
梢「いったい、またどれほど努力すれば………」
梢が弱音を吐いてると、
淳平「ったく、それがお前に燻ってた物かよ………」
淳平が部屋に入って来た。
綴理「ジュン」
淳平「梢、梢はひとりになんて、ならねーよ」
綴理「うん。ボクと、ボクたちと離れたくないって、言ってくれた。だから、一緒だよ。これから先も。いつまでも」
梢「そう………そうなのね。どんなに離れていても、この3年間が、私の背中を押してくれる………。だったら、きっと…………」
梢「ありがとう、綴理。あと淳。あなたたちと同じ3年間を共に歩めたことは、私の誇りだわ」
淳平「俺もだよ」
綴理「ボクも」
その頃には、梢の顔は晴れていた。
梢「私、ちょっと行かなきゃいけないところがあるみたい。悪いけれど、曲の相談は、その後でね」
綴理「うん」
綴理「こず」
綴理「ボクも知らなかったけど、どうやら、人生は長いらしい。きみの人生に、幸あれ、だよ」
淳平「俺も、もちろんめぐだって、応援してる」
梢「それなら、きっと大丈夫よ。私にも、あなたたちにも、みんながいるんだもの」
そして、梢は部室に戻って行った。
― つづく ―
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