蓮ノ空スクールアイドル録   作:松兄

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第137話:未来への一歩

あのあと朝になり、生徒たちは学校に登校。そして授業を受けてあっという間に放課後になりスクールアイドル部室では……

 

梢「ごめんなさい」

 

花帆「え……」

 

吟子「梢先輩、今、なんて………」

 

梢「……できないの。私にはもう、曲が作れないの。だから………スリーズブーケの曲は、あなたたちで作って頂戴」

 

花帆「どうして、梢センパイ………!」

 

吟子「そ、そうですよ。どうしちゃったんですか」

 

吟子「あの、まだまだスランプが続いてるんですか?だったら私、コンサートならいくらでもお付き合いしますから」

 

花帆「あ、あたしも!もっといろんなアイディア出しますよ!梢センパイが、元気になるようなアイディア!」

 

後輩たちが色々と言ってくれるが……、

 

梢「………そうではないの。私の夢は……もう、叶ってしまったから。曲を作る力も、情熱も、すべて抜けていってしまったの。私のスクールアイドル活動は、もう、終わってしまったんだわ」

 

そして、梢は部室から出ていった。

 

花帆「あっ」

 

吟子「梢先輩………」

 

 

― 梢の部屋 ―

 

梢「処分するものが、たくさんあるわね……………」

 

梢「……………それもそうね。私の3年間はずっと、スクールアイドルクラブと一緒にあったんだから」

 

梢「本当にずっと……スクールアイドルのことばかり、考えていたわね。楽譜も、こんなにたくさん………」

 

梢は高校に入ってから書いた楽譜を広げて懐かしむ。

 

梢「懐かしいわ。これは、メンバーみんなに宛てて、考えていた曲ね。アイディアばかり先行して、未完成だった曲も、たくさん」

 

梢「練習して、勉強して、へとへとになっても机に向かって、曲を考えて……………。よくやっていたわね、私も」

 

梢「――どうしてかしら。遥か遠くのゴールに向かって走り続ける時間は、果てしなくて………。ずっと、苦しかったはずなのに………楽しかったのね………私は。もう二度と、戻らない日々………」

 

すると、

 

コンコン!

 

綴理「こず、いる?」

 

梢「綴理?」

 

綴理「ちょっと、聞きたいことがあって。今作ってる曲のことで」

 

梢「DOLLCHESTRAの、ユニット曲?」

 

綴理「うん。とりあえずできたんだけど、もっとよくしたいんだ。聞いてくれる?こず」

 

綴理は梢にアドバイスを求めに来ていた。――だが、

 

梢「…………ごめんなさい、綴理。私は、あなたの力にはなれないわ」

 

綴理「………どうして?」

 

梢「私にはもう、曲が作れないの。きっと、理由がなくなってしまったからだわ。スクールアイドルを、する理由が」

 

綴理「じゃあ、こずはスクールアイドルをやめたいの?」

 

梢「続けられるものなら、最後まで続けていたかったけれど………」

 

綴理「それなのに、やめちゃうの?」

 

梢「花帆も吟子さんも、もう私がいなくても大丈夫。ふたりならきっと、いい曲を作ってくれるわ。仕方がないの。私の夢は、すべて叶ってしまったのだから」

 

梢「て、こんな有様じゃ、スクールアイドルどころじゃないわね。音楽だって、続けられるかどうか。そういうわけでね、ごめんなさい」

 

口ではそう言うが、梢の顔は暗い。綴理は梢のそんな顔を放っておくような子でない。

 

綴理「待って、こず。こずは、他にやりたいことができたの?」

 

梢「………それは、どうかしらね。とりあえず大学に進学して、そこで、ゆっくりと決めてゆくことになるかしら」

 

梢「仕方がないの。私の夢は、すべて叶ってしまったのだから。……………情熱も一緒に、燃え尽きたのよ、きっと」

 

綴理「こずがそう決めたのなら……ボクは、寂しいけど………わかった、って言うよ。でも、そうじゃないのなら。夢だって一緒だよ。終わりを決めるのは、自分だけなんだ」

 

梢「だけど、終わってしまったのよ、もう、ラブライブ!は。――私たちはみんなで優勝した。最高の仲間たちと築き上げたそれは、最高のステージだったわ。ずっと待ち望んでいた瞬間は、もう過ぎたの!」

 

梢「終わったのよ…………」

 

綴理「…………聞いて、こず」

 

綴理「みんなの気持ちを導くのがうまいって、めぐに言ってもらったんだ」

 

梢「え?」

 

綴理「1月のラブライブ!で、思ったんだ。こういうの、すごくいいな、って」

 

綴理「みんなで一緒にがんばって。目の前で、夢の形が花咲いて、きらめいていって。ボクはきっと、こういうのがしたかったんだ、ってわかったんだ」

 

綴理「……せ、先生になりたいんだ」

 

梢「あなたが………?」

 

綴理の語った夢に、梢は驚愕の表情を浮かべる。

 

綴理「口に出すのは、これが初めてだ。でも、誰かを支えて、そばにいてあげたい。きらめきのそばに、寄り添っていたい」

 

梢「それがあなたの………次の夢」

 

綴理「うん」

 

梢「……………誰にも言っていなかったのに。どうして、私に?」

 

綴理「それを打ち明けることが、寄り添うことだと思ったから」

 

綴理「寄り添いたかったんだ。ずっとボクが大好きな、こずのきらめきに。ボクはスクールアイドルを卒業するけど。続けていくよ。――やりたいから。熱をもった未完成な芸術を、いつまでも」

 

綴理「こずは、どう?」

 

梢「私の、やりたいこと………。私にとってラブライブ!は、憧れで、目標で………。だけど、終わってしまった………」

 

綴理「それでも、なくならないよ。憧れに向かった気持ちは。胸の中に、残り続ける」

 

梢「私の中に、残る気持ち………?」

 

 

吟子『むしろ、蓮ノ空に注目してもらっている今が、がんばり時かな、って』

 

 

梢「ラブライブ!を終えてなお、新しい夢に向かって進む、吟子さんのように………」

 

梢「そして……………」

 

 

花帆『―――次は、どんな夢を見ましょうか?』

 

 

梢「ラブライブ!が終わっても…………また次のラブライブ!を、始めればいいの……?」

 

梢「私にとっての、また次のラブライブ!……………」

 

梢「それが、夢の先………………。何度でも、あのステージを、これから先も………でも、そんな……そんな夢のようなことが、本当に、できるのかしら………」

 

綴理「こずは、できると思ったから、ラブライブ!優勝を目指したの?」

 

梢「それは………」

 

綴理「ボクだって思ってないよ。自分に先生ができるなんて。でも、やりたいんだ」

 

綴理「――この気持ちがあれば、きっと、未来はずっと明るいから」

 

梢「………………でも、果てしないわ。ラブライブ!優勝だって、3年間必死になって走り続けて、ようやく叶えられた夢だったのに。独りで、また新しい夢に向かって、ゼロからのスタート、だなんて」

 

梢「いったい、またどれほど努力すれば………」

 

梢が弱音を吐いてると、

 

淳平「ったく、それがお前に燻ってた物かよ………」

 

淳平が部屋に入って来た。

 

綴理「ジュン」

 

淳平「梢、梢はひとりになんて、ならねーよ」

 

綴理「うん。ボクと、ボクたちと離れたくないって、言ってくれた。だから、一緒だよ。これから先も。いつまでも」

 

梢「そう………そうなのね。どんなに離れていても、この3年間が、私の背中を押してくれる………。だったら、きっと…………」

 

梢「ありがとう、綴理。あと淳。あなたたちと同じ3年間を共に歩めたことは、私の誇りだわ」

 

淳平「俺もだよ」

 

綴理「ボクも」

 

その頃には、梢の顔は晴れていた。

 

梢「私、ちょっと行かなきゃいけないところがあるみたい。悪いけれど、曲の相談は、その後でね」

 

綴理「うん」

 

綴理「こず」

 

綴理「ボクも知らなかったけど、どうやら、人生は長いらしい。きみの人生に、幸あれ、だよ」

 

淳平「俺も、もちろんめぐだって、応援してる」

 

梢「それなら、きっと大丈夫よ。私にも、あなたたちにも、みんながいるんだもの」

 

そして、梢は部室に戻って行った。

 

 

― つづく ―




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