蓮ノ空スクールアイドル録   作:松兄

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第29話:わがまま on the ICE!!

あれから数日が経ち、いよいよさやかちゃんのお姉さんの引退、そしてライブイベントの日がやって来た。

 

スケートリンクには、綴理が見に来ていた。

 

綴理「……さやの出番までもうちょっとか」

 

するとそこへ、

 

花帆「あっ、いたいた。綴理センパ〜イ!」

 

花帆と梢、そして淳平がやって来た。

 

綴理「かほ?」

 

梢「こんにちは、綴理。村野さんの応援なら、一緒に来れば良かったのに」

 

綴理「……え、でも今日、2人はライブ」

 

淳平「忘れたのか?今日のライブはオンラインだ。17時までに配信でパフォーマンスを映せば問題ない」

 

綴理「そっか。……そうだったね」

 

梢「……村野さんが間に合わないのは残念だけれど。私たちは後で撮影するわ」

 

綴理「ん」

 

淳平「おい、……あの後さやかちゃんとは」

 

綴理「……始まるよ」

 

いいタイミングで始まって逃げやがったなコイツ。

 

花帆「!凄い歓声!みんな、さやかちゃんを観に来たんだ……。あ、出てきた!!さやかちゃーん、頑張れー!」

 

綴理「……さや」

 

そしてさやかちゃんの演技は無事に終了。美しく華麗な演技に、会場は大歓声に包まれていた。

 

梢「観に来られて良かったわ。本当に綺麗ね」

 

花帆「すごいすごいすごーい!さやかちゃーん!」

 

淳平「さやかちゃん良く頑張ったー!」

 

梢「ふぅ。さて、私たちはそろそろ行かないとね」

 

花帆「あ、時間!!でも、さやかちゃんのスケート見られてほんとに良かった!……綴理センパイ!どうでした!?」

 

綴理「そうだね。本当に綺麗だったと思う」

 

花帆「で、ですよね!えーっと……!」

 

淳平「……なあ、綴理?」

 

綴理「なんだい?」

 

淳平「お前はいつも俺や梢に言ってたよな?さやかちゃんのスクールアイドルとしてのパフォーマンスには"水色のきらめき"があると。よく自慢してたよな?」

 

綴理「…………」

 

淳平「フィギュアスケートで培ったものが、さやかちゃんのスクールアイドルとしてのきらめきを生み出していたんだとしたら、今のさやかちゃんのフィギュアスケートの演技には―――」

 

その瞬間、会場の照明が全て落ちた。

 

花帆「えっ!?何?」

 

梢「停電……?」

 

すると、リンクの中心部にスポットライトが当たり、さやかちゃんが立っていた。

 

さやか「あー、あー、マイクてす……マイクてす。本日はたくさんの人にお越しいただき、ありがとうございます!姉妹ともども、本当に嬉しく思っております。そして、こうしてお時間いただけたことに感謝します」

 

さやかちゃんは言葉を続ける。

 

さやか「無理にお願いしてしまったのてすが、快くみなさんが背中を押してくれました。なので少し、聞いてください」

 

梢「無理にお願い……あの村野さんが……」

 

さやか「わたしは、誇らしいお姉ちゃんを持って、幸せで、それだけでした。でも、だからこそ、お姉ちゃんがリンクに立たなくなって、わたしがお姉ちゃんの分まで頑張らなきゃって思ってからは、本当に大変だったんです。1年以上なかなか結果が出ないまま、何をどうすればいいのかも分からないまま。お姉ちゃんの分まで頑張るって言ったのに、そのお姉ちゃんに合わせる顔がないくらい、だめだめでした。」

 

そして、「でも……」と続ける

 

さやか「素敵な出会いがわたしを変えてくれました。こうして、みなさんの前に胸を張って村野つかさの妹だと自己紹介できる、そんなフィギュアスケーターになれたのは……あなたのおかげ。あなたに、あの日会えたから、頑張ろうって思えたんです。あなたが教えてくれたから、わたしは今ここにいる。でも……」

 

さやか「……わがままになっていいってなんですか?フィギュアを続けることは無理ですか?スクールアイドルを辞めることが、わがままなんですか?フィギュアも楽しい、スクールアイドルも楽しい!どれが正しいわがままかなんて、あなたが隣に居なきゃ、もう分かるものも分からない!」

 

綴理「さや、何を……」

 

さやか「わたしをこの場に立たせてくれたあなたは、わたしにわがままになれと言ってこの場に置き去りにした!」

 

綴理「ちが、ボクは」

 

さやか「もしも違うと言うならこの場に出てきて!!ここで!!わたしと!!ライブをして!!スクールアイドルの大会に、わたしとあなたで出してください!!夕霧綴理(ゆうぎりつづり)!!」

 

淳平「……さやかちゃんにここまで言わせたんだぞ?行かないのか?」

 

花帆「いってらっしゃい!」

 

綴理「……うん。行ってくる!」

 

そして、綴理はリンクに出ていった。

 

さやか「ぁ……本当に居た……」

 

綴理「居ない想定があったかぁ……。……ごめんね、さや。置き去りになんて、してないよ。ボクはただ、キミのきらめきを見ていたかった。ボクにとって、キミが一番のきらめきだから。どんな(かげ)りも、さしてほしくなかった。それだけなんだ」

 

さやか「っ……!じゃあ……特等席、空いてます」

 

綴理「隣……でいいのかな」

 

さやか「他に、席はありません」

 

綴理「……ねえ、さや」

 

さやか「……はい」

 

綴理「さやの、水色のきらめきは……このリンクにあるものだと思ってた」

 

さやか「…………」

 

綴理「でも、それだけじゃなかった。いつの間にか、ボクたち2人でやって来たスクールアイドルのきらめきが、フィギュアスケートに映りこんでいたんだね」

 

さやか「っ……はい!」

 

綴理「キミのわがままを聞こう」

 

さやか「……フィギュアも、スクールアイドルも、やめません。あなたと、ここで、アイスショーです」

 

綴理「わかった。リンクに立つのなんて初めてなのに不思議なんだけどさ。ボク、今なら―――」

 

さやか「―――凄いことが、できそうですね!」

 

そして始まった、2人のライブ。氷の上で踊るその様子は比喩でも何でも無く、まさに氷上の妖精だった。

 

そしてライブが終わり、

 

さやか「皆さん、ありがとうございます!!わたし、フィギュアもスクールアイドルも、両方頑張って、凄い人になるので!これから大会とか、スケジュール融通利かせてくださーい!」

 

綴理「……わぁ、凄いわがままだ」

 

さやか「もっとわがままになって良いんだって言ったのは、夕霧先輩ですよ?」

 

綴理「……綴理でいいよ」

 

さやか「え?」

 

綴理「苗字はいちいち呼ばなくていい」

 

さやか「えっ……いや、それは」

 

綴理「ダメ?」

 

さやか「分かりました……照れくさいですけど…綴理先輩!」

 

綴理「先輩……要る?」

 

さやか「さすがに要ります!!」

 

綴理「………ふ、そっか」

 

すると、

 

つかさ「凄かったねー」

 

さやか「お姉ちゃん!」

 

綴理「お姉ちゃん」

 

つかさ「はいはーい!お姉ちゃんでーす!」

 

さやか「綴理先輩にお姉ちゃんって言われたことに突っ込みなよ……」

 

つかさ「2人共、凄かったね……また元気貰っちゃった!」

 

綴理「ありがと。ボクも見たよ?キミの動画」

 

つかさ「昔の?ちょっと照れるなー。あははー」

 

さやか「初対面の会話のテンポじゃない……」

 

つかさ「あのさ……ありがとね!すごいパフォーマンスだった。……こんな事言うとあれだけど……2人を見ててわたし、もう一度滑ってみようかなと思った!!」

 

さやか「えっ?でも……」

 

つかさ「リハビリ重ねてー……アイスダンスに転向しようかなって。今日の2人を見てたら、それもすっごくいいなって!」

 

さやか「お姉ちゃん……!うん、応援するよ、わたし!」

 

綴理「アイスダンスって、2人でやるやつだよね?」

 

つかさ「そう!だから本当に……あなたたちに負けないくらいの選手になりたいって、そう思えたんだー」

 

綴理「そっか。ボクたちも頑張らないとだ」

 

さやか「はい。頑張りたいから、頑張りますよ?」

 

綴理「ん」

 

つかさ「ふふっ。本当に……良い人たちに会えたね、さやか」

 

さやか「うん!…ん?たち?ッ!!お姉ちゃん!!」

 

つかさ「ごめんごめん!それじゃあ、わたしみんなに伝えてくる!もう一度、復帰目指して頑張るって!!アイスダンスでーーあなたたちに負けないくらいのステージを作る!」

 

綴理「おー」

 

さやか「気が早いんだから……」

 

つかさ「あ、そうだ!」

 

さやか「?」

 

つかさ「あなたたちのことも……これから応援したいなって。良かったら、ユニットの名前教えてほしいな」

 

綴理「ボクたちの名前は―――」

 

綴理・さやか「「DOLLCHESTRA(ドルケストラ)です!!」」

 

そして、綴理とさやかちゃんは和解し、ステージは大成功で幕を閉じた。

 

ー つづく ー




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