蓮ノ空スクールアイドル録   作:松兄

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第146話:前を向いて

あのあと、102期生で改変した"Dream Believers."を歌い、花帆たちに聴かせた俺たち3年生。

 

――歌い終えると、

 

梢「……………どうだった、かしら」

 

花帆「………素敵な、歌でした………!」

 

淳平「ありがと」

 

さやか「………………時を超えた、繋がりの歌」

 

瑠璃乃「…………感じられたよ。今のルリたちだけじゃない。これまでの先輩も、これからの後輩も、繋がってるんだって。初めて、"Dream Believers."を作った人たちだって、繋がってる」

 

慈「私たちなりに、精一杯想いを込めて作ったよ。なんたって、蓮ノ空でいちばん有名な曲に手を加えたわけだからね」

 

綴理「寂しくなったら、思い出してほしいな」

 

梢「これからは私たちが、あなたたちを見守っているわ。どんなときでもね」

 

頷く3年生。――すると、

 

花帆「はい………とても、とても………伝わりました」

 

梢「花帆。私も、寂しいわ。こんなにも本気で一緒に夢を追いかけた仲間と別れて、卒業するなんて。2度と戻らない、この高校生活を、私は何度でも思い出すでしょうね……」

 

梢「だとしても、私が次の夢に進んでいけるのは。みんなと出会い、笑い合い……共に過ごしてきた時間のおかげだから。私は何度でもあなたたちに『ありがとう』を、贈りたい」

 

淳平「ああ。時間はいつだって、前に進んでいく」

 

慈「残酷なことだけど、私は、悲しいとは思わないよ。楽しかったことも、つらかったことも、ぜんぶが私を作る思い出だから。どんなに寂しくても………今この一瞬も、愛してあげたいんだ」

 

綴理「そうして、思い出が重なってきたからこその、八重咲だよ。だからボクたちで、この"Dream Believers."を作ったんだ」

 

淳平「これが俺たちから、みんなへの、最後の贈り物」

 

花帆「うぅ……センパイ………淳兄ぃ!」

 

花帆が、涙を流して俺と梢に抱きついてくる。

 

綴理「かほ。これは、ひとつ前の三年生が言ってたことだけどさ。今が一番、寂しいから―――。来年はきっと――また」

 

花帆「そう、ですよね。ありがとう、ございました。センパイたちの気持ち………ちゃんと受け取りました。だから花帆は前を向きます」

 

花帆「―――来年を楽しみに、できるくらいに」

 

 

そして、お話もお開きになり淳平は男子寮に戻ったっていた。

 

― 淳平の部屋 ―

 

淳平はベッドに横たわると天井をボヤッと見上げていた。

 

淳平(花帆………)

 

コンコン!

 

淳平「ん?」

 

すると、部屋がノックされた。誰か訪ねてきたのか?

 

淳平「は〜い」

 

ガチャ!

 

淳平が扉を開けると、

 

亮「よっ!」

 

訪ねてきたのは亮だった。色々あったけど、コイツには3年間助けられたな………

 

淳平「どうした?」

 

亮「いや、ちょっとした世間話に来ただけだよ」

 

淳平「そっか。まあ入れよ」

 

亮を部屋の中に入れる俺。飲み物と……丁度あったポテチを出してやる。

 

亮「サンキュ」

 

ポテチと飲み物をつまむ亮。

 

淳平「亮は進路は体育系の学校だっけ?」

 

亮「ああ。将来は野球のコーチとかになる予定」

 

淳平「そっか。ウチの野球部、去年は県大会の準決勝敗退だったもんな。2年生の頃はお前もレギュラーだったし」

 

亮「まあな。生徒会長やることにして部活は辞めなきゃだったけど、部の視察や、練習の身体に対するアプローチとかの勉強はしてたからさ。お前こそ、ギリギリで進路変えたじゃん。先生たち困ってたぞ?」

 

淳平「その節は大変申し訳なかったです。――でも、めぐを一人で海外に放り出して無事でいられると思うか?」

 

亮「大丈夫――と、言いたいけど否定できない」

 

亮は苦笑いを浮かべる。

 

淳平「だろ?」

 

俺もお茶をすする。

 

淳平「野球部は蓮華祭でなにか出し物はするのか?」

 

亮「後輩たちがなにか考えてたよ。俺にあるかは分からないけども」

 

淳平「2年生からはあるんじゃないか?1年だけとはいえ一緒にやってたんだし」

 

亮「だといいけどな………」

 

 

俺たちはそんな事を話しながら、夜も更けていった。

 

 

――さかのぼること数10分前、

 

女子寮ではさやかと瑠璃乃が花帆を部屋まで送っていた。

 

さやか「それじゃあ花帆さん、おやすみなさい」

 

花帆「うん………」

 

そして、花帆は部屋へと入っていった。

 

さやか「花帆さん、大丈夫でしょうか」

 

瑠璃乃「どうだろうね。見守ってくれてるって温かさと、離れたくないって気持ちは別物だから………」

 

さやか「わたしたちに、何かできることはないでしょうか」

 

瑠璃乃「…………元気になって、ほしいよね。いつも明るい花帆ちゃんに、ルリたちも元気もらってきたからさ」

 

さやか「はい。オンオフの激しい蛍光灯みたいな人ですけど………やっぱり、明かりが点いている時は、何よりも輝いている気がするんです。だから私は…………」

 

瑠璃乃「さやかちゃんは?」

 

さやか「いえ、すみません。これはまた、本人のいる時に。でもそうですね。花帆さんが、どんなことがあっても諦めずに突き進むあの光が、わたしたちにいつも力をくれていた」

 

瑠璃乃「そうだね。今回のことは、卒業だし………しょうがないことだけど。でも、気持ちを取り戻して、明るくなってほしいのは、本当」

 

2人が話していると、

 

吟子「花帆先輩がどうかしたんですか?」

 

吟子が声をかけた。

 

瑠璃乃「あれ、吟子ちゃん」

 

さやか「どう、というと?」

 

吟子「すみません、その花帆先輩を探していて」

 

瑠璃乃「花帆ちゃんは………」

 

さやか「先ほど、お部屋にふたりで送ったところです」

 

吟子「あの、さやか先輩、瑠璃乃先輩。花帆先輩どうでした?」

 

さやか「どう、というと……?」

 

吟子「ちょっと普段と違うっていうか。連絡送ってもなかなか返ってこないし、練習中も上の空だし、何聞いてもなんでもないの一点張りだし」

 

瑠璃乃「トリプルパンチ……………。うん、でも吟子ちゃんの言う通りだよ」

 

吟子「え、じゃあやっぱり」

 

さやか「先輩方の卒業が、かなり堪えてしまっているみたいです」

 

吟子「そう、ですよね・………………。花帆先輩、みなさんのこと、大好きですもんね」

 

瑠璃乃「だからちょうど、ルリたちにも何かできることがあるといいよねって話してたんだ」

 

吟子「………だったら、少し。先輩方に、相談したいことがあるんですけど―――」

 

 

 

― つづく ―




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