蓮ノ空スクールアイドル録   作:松兄

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番外編:桂城泉

あのあと、花帆の部屋で色々と話をしていた俺たち。泉さんはセラスさんの案で、『自分を出す』と言うのを手っ取り早く分かりやすくするために自分の言葉で作詞をする事になった。今は部屋で書いてる頃だろうな………。

 

花帆「でね?そこでさやかちゃんと瑠璃乃ちゃんが……」

 

梢「まあ、そんな事があったのね」

 

綴理「仲良し」

 

さやか「はい!」

 

瑠璃乃「ルリたち蓮ノ三連華も先輩たちに負けないように頑張ります!」

 

慈「楽しみにしてるよ」

 

みんなが楽しく話している。セラスさんも3年生に色々と話を聞きたいみたいだ。

 

淳平「ゴメン、ちょっとトイレ行ってくる」

 

花帆「あ、うん。分かった」

 

そして俺は部屋を出ていく。

 

淳平「………さてと」

 

淳平は、とある場所へと向かった。

 

― 泉の部屋 ―

 

泉「………だめだ。書けない……」

 

泉(私には、初めから自分なんか無かったのか……?)

 

コンコン

 

泉「? セラスか?どうぞ」

 

ガチャ

 

扉を開けたのは……

 

泉「! 淳平さん?」

 

淳平「作詞、調子はどう?」

 

淳平は部屋の中に入り泉さんに声を掛ける。

 

泉「わざわざ来てくれたのかい?」

 

淳平「うん。えっと……進んで、無いみたいだね」

 

歌詞の紙を覗き込んだが、消したあとはあるものの何も書かれていなかった。

 

泉「ああ。どうやら、私に自分の意志とか、伝えたい物とか、そんな物は無かったみたいだ」

 

ふむ…………。

 

淳平「どうしてそう思う?」

 

泉「………私は、昔女優だったのは知ってるかい?」

 

たしか…………、

 

淳平「ああ。ラブライブの時に経歴調べたから知ってるよ。東京の有名な劇団に所属してたって。――でも、」

 

ある日を境に、泉さんは忽然と演劇の世界から姿を消した。しかし、とある時期と一致していた。

 

淳平「当時、泉さんと組んで賞を貰うほどの実力を持ってた泉さんの先輩。彼女が病気で入院してしばらくした時期に泉さんは辞めている。そしてその数週間後にその子は治療に専念すると発表した。これらを踏まえて考えると……その子は泉さんと一緒にやりたくて治療そっちのけでやって悪化したってところかな?」

 

泉「なんでそんな僅かなヒントでそこまで言い当てられるんだ……。逆に恐ろしいな。まあ、正解だよ。理由もすべて」

 

――やっぱりか。

 

泉「私も辞めてからは、ある程度の事はほぼ出来るせいで、何をしても張り合いが無くてね。そんな時に夢を追ってる子の力になった事があったんだ。その間は生きてると、自分には夢があると錯覚できた」

 

淳平「何をやっても上手くいくってのも考え物だな。要はそのせいで自分の意思でやりたい事とか伝えたい事が無いのか。他人依存になって」

 

泉「そうだよ……。私は……空っぽだ……」

 

泉さんはポロポロと涙をこぼす。この子が泣いた所初めてみたな。

 

でも、

 

淳平「じゃあ、その自分には何もないとか、空っぽだって言うのを歌にすれば?」

 

泉「は!?」

 

泉さんは驚愕の顔をする。

 

淳平「言ったでしょ?何でもいいんだって」

 

俺がそう言うと、

 

泉「いや、どう考えてもネガティブな歌にしかならない…!そんな物を聞きたがる人が居るとは……」

 

淳平「別に、世の中の歌だってネガティブなのいっぱいあると思うけど」

 

泉「それは……でも、スクールアイドルはそういうのは……」

 

違うな。

 

淳平「スクールアイドルっていうのは、パフォーマンスや歌、そして活動を通して自己表現する。けど、全部がポジティブなグループなんて今までに1つも無いよ。たぶん。まあ、最終的にいい結果になったならいっぱいあるけど、道中はネガティブな事や辛いこともたくさんあったはず。それをぜんぶ吐き出して良いんだよ」

 

泉「………………」

 

淳平「それにさ?昔の写真ネット見てたら見つけたけど、演劇やってる頃の泉さんは楽しそうな顔で笑ってたよ?その時の気持ちで少し歌詞をアレンジしてやればいい感じのできるんじゃね?あとは、君のパートナーがどうにでも曲を作ってくれるだろ?」

 

泉「セラス………」

 

泉さんは顔を俯かせる。

 

淳平「じゃ、俺は戻るわ」

 

そして俺が部屋を出ていこうとすると、

 

ガシッ!

 

淳平「!?」

 

泉さんに後ろから抱きつかれた。はい?!

 

泉「……ありがと/// ようやく、なんとか書けそうだ……」

 

淳平「……うん。泉さん「呼び捨てにしてくれ」へ?」

 

泉「泉って、呼び捨てにしてくれ///」

 

コレが俺の悪いところなのかな………。でも、

 

淳平「はいはい。じゃあ、歌詞を楽しみにしてるよ。()

 

そして部屋を出ると、

 

淳平「! みんな!?」

 

吟子「遅いと思ったら!」

 

姫芽「泉ちゃんを口説いてたんですか〜?」

 

淳平「口説いてないから!」

 

花帆「泉ちゃんがあんな台詞吐いたの初めて聞いたんだけど?」

 

さやか「まったく………」

 

瑠璃乃「ジュン兄ぃにはお仕置きが必要だと思いま〜す!」

 

小鈴「淳平先輩、さすがに擁護できません!」

 

梢「淳?」ゴゴゴゴ

 

綴理「……………」ムカムカ

 

慈「悩んでる子をほっとけ無いのはジュンのいいところではあるけど、ジュンは私の彼氏なのを忘れないでね?(怒)」

 

淳平「はい……」

 

セラス「花ちゃん、淳平先輩って女たらしなんだね」ヒソヒソ

 

花帆「無自覚にタラシてるから手に負えないんだよ?」ヒソヒソ

 

コイツら!勝手なことばかり言いやがって!でも事実だから反論できない……

 

淳平「つ〜か心配しなくても、あの子がこんな事で惚れるわけねーだろ!?」

 

スクールアイドルクラブ『は?』

 

みんなの満場一致の『マジかコイツ』みたいな顔。うん。みんな仲良くてうれしい限りですよ?こっちは泣きそうだけどね。

 

淳平「え?何その顔………」

 

花帆「いやいや…………」

 

さやか「あの顔はどう見ても…………」

 

セラス「花ちゃん、淳平さんがもしも軽い男だったら女遊び酷かったかもね」

 

花帆「ホントだね。幸い淳兄ぃは一途だから。周りがハンターの目になるだけで……」

 

酷い言われようだな。

 

淳平「…………ゲストルーム戻っていい?」

 

梢「そうね。もう消灯時間近いしお開きにしましょうか。明日帰る前に淳にはお仕置きするとして」

 

スクールアイドルクラブ『は〜い』

 

お仕置きは確定なのね………。

 

 

そして寝静まったみんな。俺も寝ていたのだが、

 

〜♪ 〜♪

 

淳平(ん?)

 

スマホが鳴り、起きてスマホを操作する淳平。そしたら前にプレーオフの時に登録した泉の番号から、LINEと共に写真が送られてきた。

 

淳平(………フッ ちゃんと書けてるじゃないか)

 

写真には、泉が書いた歌詞が写っていた。

 

俺はそれにスタンプで『よく頑張りました』のアイコンを押して再び眠りについた。

 

 

― つづく ―




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