部室で、後輩たちと久しぶりにあった
"Bloom Garden Party"の準備はどうやらまだ終わってないらしく、最低でもあと5日は掛かるらしい。
ユニットごとに分かれて準備しているらしいので、淳平は1日ごとに別のユニットに付いて準備を手伝うことになった。
最初は、さやかちゃ…ギロッ!……さやかと、小鈴ちゃん。
さやかに心を読まれて睨まれてしまったが、俺たちは綴理と一緒に、
小鈴「やーったやった、やったったー!」
嬉しいのか、はしゃぐ小鈴。さやかが窘める。
さやか「こらこら小鈴さん、あんまり先に行きすぎないでくださいね」
小鈴「もちろんです! こんなせっかくの機会に、わざわざ自分から離れていったりしません! というか、さやか先輩淳平先輩の手を握ってますね!」
さやか「ま、まあ……///」
照れるさやか。う~む……
小鈴「さやか先輩と淳平先輩、お父さんとお母さんみたいです!」
綴理&さやか&淳平「「「!!???」」」
突然の小鈴ちゃんの爆弾発言。
さやか「小鈴? いい子ですね。もっと言っていいですよ?」ナデナデ
その気になってしまったさやか。ノリノリの上機嫌で小鈴ちゃんをなでる。
小鈴「えへへ……」
すると、
綴理「すず、ボクは?」
すると、綴理が淳平の腕に抱きつく。淳平は慌ててしまう。
淳平「つ、綴理!? 珍しいな……」
小鈴「綴理先輩と淳平先輩だと仲の良い恋人さんって感じがします!」
これ以上はやめて小鈴ちゃんんーーーっ!!
心の中で絶叫する淳平。さやかは、
さやか「私は妻ですから私の勝ちですね!」ドヤッ
綴理「むう」
勝ち誇るさやかに膨れる綴理。俺はどっちの物でもないからね……?
淳平「小鈴ちゃんもからかうのは辞めなさい……」
小鈴「は〜い…スミマセン。久しぶりにこうして先輩たちと居られて楽しくなっちゃったんです」
綴理「………そうだね。久しぶりにこうしてお仕事とはいえ、一緒にいられる。ボクも自分から離れたりはしないかな」
さやか「あ、ある程度は離れるんですよ!? これから手分けして、お店にイベントのポスターを配って歩くんですから!」
さやかは手に持ったチラシをそれぞれ数枚渡してくる。
綴理「これは、"Bloom Garden Party"のポスターだね。よくできてる」
チラシを見た綴理が感心した声をあげる。
さやか「ありがとうございます。もう開催も間近ですし、いろんなお店に貼ってもらって、雰囲気を盛り上げていこうという施策ですね」
綴理「さや、すず」
さやか「はい?」
小鈴「なんですか?」
綴理「ふたりとは、電話やビデオ通話で連絡を取り合ってたけど……やっぱり、変わったと思うよ。ね?ジュン」
ここで俺に振るか。けど、
淳平「うん。すごく変わった。成長してるのがすぐに分かったもん」
さやか「あ、ありがとうございます///」
小鈴「ありがとうございます!」
……うん。態度からして本当に変わった。
綴理「すずは高く、大きくなった。さやは……そうだな、こういう言い方が正しいのかわからないけど」
何を言うんだ……?
綴理「すごく、きれいになったね」
さやか「………ッ!/////」
顔が真っ赤になるさやか。
小鈴「それは徒町もそう思います!」
淳平「綴理、お前も凄い変わったな。なんていうか……」
綴理「? そうかな?」
さやか「そうですね、変わってます。………綴理先輩は、どうやら口がお上手になったみたいですね」
顔を真っ赤にしながら、恥ずかしさから綴理をジト目で睨むさやか。
すると、
綴理「
さやか「え?」
綴理「嬉しく思うよ。さやが、自分だけの道を見つけたことを。本当に、いい名前だなって思う」
淳平「うん……」
さやか「それに関しては……はい。正直、蓮ノ大三角に憧れていた気持ちも、ありました。……ですが、わたしたちはわたしたちです。星ではなく、誰かのそばで咲く花になろうと、3人で決めたんです」
綴理「きみのきらめきは、朝露に濡れて輝く花だったんだね。……何度踏まれても、咲き続ける」
淳平「その強さに、出会えてよかった」
さやか「あ、あの………。ありがとう、ございます………」
綴理「それと、
小鈴「はい!」
小鈴ちゃんが元気よく返事する。
綴理「新たな星に出会って形を変えたきみは、去年よりはるかに力強く、自分の意思で輝いてる。いい出会いがあったんだね」
小鈴「それは、もう……お電話では伝えきれないほど、すっごくいろんなことがありましたから! ……実は、蓮ノ小四辺形っていうのはどうかなって言い出したのは、徒町だったんです」
綴理&淳平「「へえ?」」
さやか「そうだったんですか?」
小鈴「はい。姫芽ちゃんにも話を聞いてもらって!吟子ちゃんには、ちょっと相談するタイミングがなかったんですけど……でも、ぜったいに賛成してくれるってわかってましたから!」
小鈴「徒町はこの一年で、誰かと繋がることってすごいことなんだな、って思ったんです。だから泉ちゃんとも繋がれたら、もっともっとすごいことができるんじゃないかな、って!」
小鈴「前は徒町が足を引っ張ったりするんじゃないか、とか……。そういうことが頭をよぎって、あんまり自分からは言い出せなかったんですけど。でも、先に泉ちゃんが心を開いてくれたから。徒町もその想いに、応えたいって思って!」
淳平と綴理は顔を見合わせる。
淳平「……ずっと見ていた、と思ってたんだけな」
綴理「うん。やっぱり、顔を合わせないとわからないこともあるんだね」
小鈴「えへへ」
綴理「聞かせてくれる? ボクとジュンに。ふたりの、この一年の軌跡を」
さやか「それは、もちろん。作業をしながらでよければ、いくらでも」
小鈴「徒町も、いっぱい聞いてほしいです! あ、でも、先輩たちのことも聞かせてほしいです!」
綴理「そうだね、なにから話そうか」
淳平「ん〜……」
綴理「あ、さんにんに言ってないことがあったんだ」
淳平「?」
さやか「おお」
小鈴「なんですか?」
綴理「ボク、バイトを始めたんだよ」
さやか&小鈴&淳平「「「え!?!?!?」」」
4人はしばらくチラシを配り、お昼時になったのでよくお世話になっていた綴理の好きなおでん屋に移動してお昼ご飯を食べていた。
綴理「んー……!これこれ。ほっくりして、喉を通り過ぎる熱が」
さやか「やけどじゃないでしょうね!?」
慌てるさやか。過保護だなあ……。
綴理「そこまで子供じゃない。大丈夫」
さやか「そうですね……なんたって、アルバイトまで始めたんですもんね…」
小鈴「徒町もさすがに驚きました……! ひとり暮らしをがんばっていらっしゃるとは、聞いておりましたが……!」
淳平「俺もビックリした。そんな事聞いてなかったし……」
綴理「といっても、最初はお手伝いだったんだよ。近くにおでん屋さんを見つけてね。ずっと通ってたんだけど……ある日、お店がすごく混んでた日があって」
さやか「まさか、お手伝いしたんですか?」
綴理「おお、よくわかったね。さすがさや」
さやか「なんとなく……そのままお店の人にお願いされて、働き始めるところまで、今想像できました」
淳平「お手伝いしたら気に入られたんだなwww」
小鈴「綴理先輩らしいエピソードです」
話を聞いて笑顔になる淳平、小鈴、さやか。
綴理「うん。そうしたら、週に何度かお手伝いに来てほしいってお願いされて……楽しいよ。いつもおでんの匂いに囲まれてて、ごはんの心配もなくなった」
さやか「………ある日から、綴理先輩がひとりで簡単に作れる自炊メニューをわたしに聞いてこなくなったのは、そういうことだったんですね」
綴理「ぎく。さ、最初はがんばろうと思ったんだけど」
さやか「いえ、いいと思います。大学生活で初めてのひとり暮らしは、なにかと大変でしょうし。ただ、わたしは栄養が偏らないかだけ心配ですが……」
すると―――、
れいかさん「大丈夫よ。おでんは完全栄養食だもの」
さやか「とはいえ、練り物が中心の食生活では、ビタミンや食物繊維が不足しがちに……って」
声に気付いて振り返るさやか。
小鈴「れいかさん!?」
れいかさん「なんとか間に合ったわよ!! "Bloom Garden Party"に!!」
小鈴「わあ! お久しぶりです。れいかさん!!」
れいかさん「ええ、お久しぶりね、みんな! 104期DOLLCHESTRAと、マネージャー勢揃いね」
小鈴「はい! 勢揃い、です!」
淳平「どこか行ってたんですか?」
さやか「あ、そっか。先輩たちは知らないんでした。世界一周に行ってらしたんですよ」
綴理「おおー。ボクの知らないところでも、いつも地球は回ってるね」
れいかさん「あなたたちは変わらないわね。今日はゆっくりしていってね! いろいろおまけするわよ!!」
綴理「わあい」
さやか「ありがとうございます、れいかさん」
小鈴「"Bloom Garden Party"もぜひ来てくださいね! こちら、ポスターです!」
れいかさん「ありがと! 楽しみだわ!」
チラシを小鈴から受け取るれいかさん。
小鈴「れいかさんも帰ってきて、さらに一年前って感じです!」
綴理「ボクは大学、ジュンはめぐと一緒に外国、れいかさんは世界一周。さやは蓮ノ三連華で、すずは蓮ノ小四辺形。今年はいろいろあったんだねえ」
淳平「な?」
さやか「ずっと毎年、こんな感じだったじゃないですか」
綴理「それは、間違いないね。一年生のときも、二年生のときも、三年生のときも……そして今年も、たくさんいろんなことがあった」
綴理はふと、天井を見上げる。
綴理「ボクは鳥籠を出て、世界の広さを知った。でも、ひとつ学んだことがあった」
綴理が顔をさやかたちに戻す。
綴理「大学も、おでん屋もね、きっとそれぞれの鳥籠があるだけだったんだ」
小鈴「……というのは?」
綴理「鳥籠を出たボクは、次の鳥籠に入った。そこは前にいたところよりちょっと広くて、暖かな鳥籠がいくつもあった。営みが続く場所には、必ず鳥籠があるんだ。寂しくなった時には、軒下に、お邪魔させてもらってる」
淳平「綴理――」
綴理「みんな温かく、迎えてくれたよ。……ボクが手にしたコンパスは、鳥籠から鳥籠へ、旅するためのものだったんだ、って」
さやか「…………それは、素敵な例えですね。どうですか? 今の鳥籠の居心地は」
綴理「それぞれに、それぞれの良さがあるって思うよ。さやもすずも、ジュンもいないけど、なんとかやっていけてる。……いい人たちがたくさんいるんだ。今もボクは、みんなに支えられて生きている」
淳平とさやかはお互いに顔を見合わせると、くすっと笑う。
淳平「なによりだな」
さやか「ですね。きっと、綴理先輩の人望がなせるわざですよ」
綴理「うん。……ああ、でも自分で言っちゃいけないからね」
さやか「ふふ、そうですね」
淳平「おお、覚えてたか」
すると、
小鈴「………綴理先輩」
綴理「うん?」
小鈴「大学と蓮ノ空とどっちが………あ、いえ、なんでもありません!」
綴理「……すず」
小鈴「は、はい!」
綴理「かけがえのないものは、増えるばかりだよ。減ることなんてない」
小鈴「……………………そう、なんでしょうか」
綴理「うん。すずにもすぐに分かる。映画を作った…きみになら。ね? ジュン」
淳平「ああ。小鈴ちゃんにも必ず分かるよ……もしかしたら、もうすぐかな?」
小鈴「……大切な人は、減らない………でも」
さやか「綴理先輩には大学で素敵な出会いがあった。それは喜ばしいことです。そして、わたしは綴理先輩の今に何があろうとも、わたしの居場所を誰かに譲る気はありません。だから、それでいいんですよ。小鈴さん。綴理先輩にとってのあなたは、いつだって変わらない」
小鈴「さやか先輩……」
淳平「さやかはどう思ってる? さやかの中での、小鈴ちゃんは、変わらないか?」
さやか「そんなの、当たり前です」
さやかはニコッと微笑み、
さやか「わたしにとっての小鈴さんの場所は、いつまでも小鈴さんの場所です」
淳平「……だってさ」
小鈴「……わかってます。わかってるんです」
さやか&綴理&淳平「「「……………」」」
小鈴「あ、ご、ごめんなさい! ちょっとお手洗いに行ってきます!!!」
そして、小鈴ちゃんはおでん屋を出ていってしまった。
綴理「……さや」
さやか「わかっています。……難しいものですね。果たして、わたしから言えることはあるのだろうかと。離れる側に、言えることはあるのでしょうか」
淳平「小鈴ちゃんの気持ちの問題では、あるからな」
さやか「……淳平先輩、綴理先輩。わたしは……彼女に、なにかを遺したいと思っています」
綴理「出会った時からたくさん渡してるよ」
さやか「………でしたら、最後に―――。せめて、寂しくないように」
綴理「だとしたら………一番伝えたいことを、伝えてあげることじゃないかな」
さやか「一番伝えたいこと………」
淳平「まあ、たくさんあるだろうなぁ……。それは分かるよ」
綴理「うん。でも、その思いをまとめる一本のリボンが、見つかるといいね」
さやか「わたしにとっての、一本のリボン、か……」
そうして、さやかが考えていた頃………
小鈴「"Bloom Garden Party"、ぜひおいでくださいね!」
小鈴は、1人で市場で宣伝をしていた。
小鈴「105期最後の………大舞台です!!」
― つづく ―
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