翌日、淳平は慈と一緒に、みらくらぱーく!のステージ設営を手伝っていた。
淳平「そこ行き過ぎ!もう少し右で少し傾けて角度つけて……よし、オッケー!」
生徒「先輩! ここはどうしたら……」
淳平「ここはそうだな……。一度メンバー集めてもらえるか?」
生徒「はい!」
去年要領で、ステージ設営班に指示を飛ばす淳平。作業スピードが一気に進んでいる。
瑠璃乃「さっすがジュン兄ぃだねぇ……」
慈「だよね〜……んし! これでオープニングライブの見通しもついてきたね!」
作業の手を止めて一息つく慈。
瑠璃乃「やっぱり、めぐちゃんとジュン兄ぃがいると、早いねえ……」
慈「でしょでしょ。これも武者修行の成果だよ!」
瑠璃乃「あとはスリーズブーケが中心になって作ってる新曲だけど……」
淳平「そっちのほうは、心配いらなさそうだしな」
慈「あ、ジュンお疲れ〜」
淳平「おう」
2人で缶コーヒーを空けて飲みながら談笑する慈と淳平。るりちゃんはその様子を見て笑っている。
慈「それにしてもさー? みんな一年で曲作り上達しすぎじゃない? 私びっくりしちゃったんだけど」
淳平「な?」
瑠璃乃「それだけがんばってきたんだよ。成長したんだから、みんな」
慈「……あの子も?」
めぐの視線の先には、カメラを持って遠くから見守っているピンク髪の後輩が……
姫芽「あっ、え、えっと! めぐちゃんせんぱい、るりちゃんせんぱい! アタシ次はどこにひとっ走りしてきますか!?」
瑠璃乃「姫芽は、なんでそんな雑用ばっかり引き受けようとしてるの!?」
姫芽「い、いやぁ……せっかく幼馴染3人の再会ですからぁ……」
淳平「姫芽ちゃんは相変わらずだな」
姫芽「でへへぇ…………」
瑠璃乃「姫芽はずっとずっと成長したんだよ! そしてなんで姫芽も否定しないんだ!!」
ツッコミを入れるるりちゃん。姫芽ちゃんは申し訳なさそうな顔になり、
姫芽「うっ……確かに、アタシも成長しました………。昔は、先輩たちの作業風景を見てるだけで、他にはなにもいらなかったのに…。今は、アタシもめぐちゃんせんぱいと、じゅんぺいせんぱいとも、お喋りしたいと思ってしまいます〜……」
瑠璃乃「成長ってそこ!?」
再度突っ込むるりちゃん。
すると―――、
慈「姫芽ちゃん、私は何度も伝えたはずだよ? "みらくらぱーく!"で、あるなら?」
姫芽「ハッ……どちらかではなく、両方を選ぶ………!!」
慈「そう! おいで!」
姫芽「めぐちゃあああん!」
姫芽ちゃんは、めぐの胸に飛び込む……直前で止まり、
姫芽「それでは! 写真を撮らせていただきますね! じゅんぺいせんぱいもご一緒に!」
淳平「いえい!」
パシャッ!
慈「って、なんでだ!」
流れ的におかしいだろ!? と、突っ込むめぐ。
姫芽「腕を上げたんですよ、アタシも………! くふふふ……」
瑠璃乃「くぅ……どうすればめぐちゃんの前で、姫芽のかっこよくなったところを見せられるのか!」
慈「本人が望んでなさそう」
淳平「ほんと相変わらずだな……」
瑠璃乃「姫芽はこの一年、ルリのことを支えてくれて、すごく頼りになって……!」
るりちゃんが必死に俺たちに力説してくる。
淳平「それぐらい伝わってるって」
慈「細かく突っ込んだりはしなかったけど……なんか知らないうちに、るりちゃんが『姫芽』呼びになってるし〜?」
瑠璃乃「相棒だからね」
姫芽「あっ、あっ、えっと、あの! そ、そうです……!」
慈「ん。それでこそ私の見込んだ姫芽ちゃん」
姫芽「よ…」
瑠璃乃&淳平「「よ?」」
姫芽「よかったぁ〜」
慈「ちょっとちょっと! 私がそんなことでジェラるような心の狭い女だって思ってたの!?」
淳平「プッ」
憤慨するめぐ。淳平は少し吹き出してしまう。
姫芽「いえ、そうではなく〜………。でも、ほんとのところどう思ってるのかな〜っていうのは、ちょっぴり気にはなっていたものでして〜」
慈「少しでも思うところがあれば、先にぜんぶぶちまけてるっての。よくやってると思うよ、ほんとに。ちゃんと月一でるりちゃんの活動レポートも提出してもらってたしね」
淳平「な?」
姫芽「いやあ、あれは毎月、力が入りましたね〜」
瑠璃乃「へいひめめぐ、ルリなんも知らねー話出てきた。ってジュン兄ぃも知ってたの!?」
淳平「まあ見せてもらったし」
瑠璃乃「なんでこの間会った時教えてくれなかったの!?」
慈「まあまあ、あとでるりちゃんにも見せてあげるから☆」
瑠璃乃「それ読んでルリはどういう感想を抱けばいいの!?」
笑いが漏れる俺たち。すると、
姫芽「っていうか、これも今さらかもなんですけど〜。めぐちゃんせんぱい、外国に行ってやっぱりますます華やかになりましたよね〜」
瑠璃乃「それはすごく思った」
慈「ま、外見磨きは自分ひとりでどうにかなる部分だからね。はっきり言って私って、スクールアイドルに必要なものは、最初からぜんぶもっていたわけじゃん?」
瑠璃乃「ん?」
慈「みんなが部活動として成長していく中、 こっちは最初から大活躍の売れっ子タレント……。そりゃ人気が出るのも当たり前」
う~わ、調子乗りだした……。
慈「最終的にラブライブ!も優勝しちゃって、うまく行き過ぎてたわけだからさ。今みたいに周りの連中が手強ければ手強いほど、燃えてくるんだよね」
沙知「そんなに万事うまくいってたようには、見えなかったけどねい」
突然の声に、淳平とめぐが振り向く。
慈「げ」
淳平「沙知先輩!」
沙知「久しぶりだね」
淳平「お久しぶりですー!!」
慈「うわ、ジュンの尻にすごい振られてるワンちゃんの尻尾が見える」
瑠璃乃「ルリにも……」
沙知先輩と少し話した後、先輩は俺たち4人の写真を撮ってくれた。
沙知「さ、笑って笑ってー」
パシャ!
沙知「ん、いい笑顔だ」
瑠璃乃「沙知パイ、あざまーす!」
慈「でもなんでここに?」
沙知「あたしも"Bloom Garden Party"には出るつもりだからねぃ。裏方としてだけど」
姫芽「さちせんぱいは、ステージには立たないんですか〜?」
慈「この人、そういうことには興味ないから」
沙知「そこまでは言わないが……」
沙知先輩は少し考えると、
沙知「まあでも、歌ったり踊ったりするよりも、みんなの輝く舞台をひとつでもより良いものにするのが、あたしにとっては自分のスクールアイドルの形で、やりたいことなんだ」
沙知「たくさんの個性的なステージが立ち並ぶことになる、"Bloom Garden Party"は、裏方としてすごくやりがいがあるよ……。毎月やってくれないかなあ………」
瑠璃乃「また無茶を言う………!」
沙知「そういえば、芸楽部やスクールアイドルクラブのOGの方々も、ちらほら見かけたよ? いやあ盛況でなによりだねい。はい」
沙知先輩は、写真を撮ったスマホを姫芽に渡す。
姫芽「ぎゃっ!」
瑠璃乃「ひめ? どったの?」
姫芽「くっ……誰よりも"みらぱ!"にうるさいと自負するこのアタシをして、完璧と言わざるを得ない宣材写真…………!」
沙知「姫芽。ひょっとしてキミは、自分が世界一の"みらくらぱーく!"推しだとでも、思っているんじゃないかい?」
姫芽「な!?」
沙知「世界はもっともっと広い。精進したまえ! "Bloom Garden Party"当日も、楽しみにしているよ! なーっはっはっは!」
慈「うわ、性格悪う」
瑠璃乃「あはは……。沙知パイって、ああいうとこあるよね………」
姫芽「あ、アタシは…………。アタシはうぬぼれてた………!?」
淳平「まあまあ……」
すると、
瑠璃乃「でも、ほんとにいい写真だよね。ねえ? これアルバムツリーに飾ろうよ」
慈「お、いいね」
姫芽「待ってください!!」
姫芽ちゃんが二人を止める。
姫芽「アタシに、アタシにもう一度チャンスをください!今度こそ、アタシが最高の"みらくらぱーく!"を撮ってみせますので! 負けたままじゃ、引き下がってらんないですよぉ!」
瑠璃乃「勝ち負けとかじゃなくない!?」
―――すると、
慈「そうだね、姫芽ちゃん」
瑠璃乃「あれ!?」
慈「あんなのに負けてちゃだめだよ! コテンパンに叩きのめして、号泣しながら『あたしの負けですぅ』って言わせてやれ!」
姫芽「押忍!!!!」
瑠璃乃「な、なんとなく沙知パイと姫芽の相性ってよくないのかなって思ってはいたけど、ここまでだなんて………。いや、むしろ逆にいいまである………!?」
慈「でもだからって、私とるりちゃんの写真ばっかり撮ってちゃ、勝ちとは言えないからね。ちゃんと、"みらぱ!"3人の写真で戦うこと」
姫芽「うっ……お、押忍!」
やれやれ……
淳平「じゃあ、るりちゃん審査委員長は、アルバムツリーに飾る写真はどんなのがいいとか、なにかある?」
瑠璃乃「ルリも巻き込まれた………!」
頭を抱えるるりちゃん。
瑠璃乃「でも、そうだなあ。姫芽が今、率先してアルバムツリーに写真を飾ろうとしてくれてるけど、 ああいうルリとめぐちゃんだけを写したやつは、ちょっとあれとして………」
慈「まあ吟子ちゃんにも怒られてたしね」
姫芽「むぐ」
瑠璃乃「あれを見てて、思ったんだ。ただ写真を飾ってるだけじゃなくて………アルバムツリーは、これまでの軌跡が見えるものなんだって。知ってる?裏にメッセージとか書いてさ。今、もっとエモくなってるの」
慈「まあ私も、るりちゃん宛にいくつか書いてたからね」
淳平「俺も後輩宛に少々……」
瑠璃乃「え、うそ!? そ、それはあとで見るとして……くそう、脱線が多い……! ルリ思うんだ。あの場所にアルバムツリーを遺すことで……思い出のメッセージが残ることで、離れた場所にいたって、いつでも一緒だよっていう気持ちになれたらってさ」
慈「でも、あの木って、完成したらどうするつもりなの? ずっと部室に置いとくわけじゃないでしょ?」
瑠璃乃「ルリは、"Bloom Garden Party"が終わったら、大倉庫とかにしまうのかなーって思ってたけど、それを決めるのは卒業していくルリたちじゃないからねえ」
慈「ふうん」
淳平「そうだね……」
瑠璃乃「なんかあった?」
慈「ううん。どういう形が在校生にとっていちばんいい形なんだろうなーって思っただけ。ま、それは確かに私が考えることじゃないからね」
姫芽「アタシも……それは、これから考えることにします。今は、完成を目指して、一枚でも最高の写真を撮らなきゃですからね!」
慈「ま、それもそーだ」
慈「誰が世界一の"みらくらぱーく!"推しか、あのちっこい先輩に見せつけてやれ☆」
姫芽「はい!!!」
やれやれ……。というか、
淳平「前から思ってたけど」
慈「ん?」
淳平「めぐ、人を煽ってなにかやらせたりするとこ、なんか少しずつ沙知先輩に似てきたよな?」
慈「ジュン!?」
今度はめぐが頭を抱える番だった。
そして、いろいろ場所の作業風景を写真に取りながら、俺たちは八重咲ステージに来ていた。
瑠璃乃「いやあ、いっぱい撮ったねえ」
姫芽「撮らせていただきました……」
淳平「でも、なんだかんだ上手だったよね。姫芽ちゃん」
慈「さては、ちゃんと3人や、4人での構図も考えてたな〜?」
姫芽「うっ……そ、それは、まあ、はい! アタシも"みらくらぱーく!"の安養寺姫芽ですから……!」
姫芽「アルバムツリーをるりめぐまみれにして、吟子ちゃんにも怒られましたし、これは大人しくアタシの部屋用のアルバムツリーに飾ることにします」
瑠璃乃「なんかまた
姫芽「でも、どうですか? めぐちゃんせんぱい、じゅんぺいせんぱい。久々にるりちゃんせんぱいと一緒にはしゃいで、寂しさが埋まったんじゃないですか?」
慈&淳平「「んー」」
瑠璃乃「ルリとだけじゃないっしょ」
姫芽「え」
淳平「まあね」
慈「そりゃもちろん、"みらくらぱーく!"から離れてたことも、寂しかったんだから」
慈「それだけに、今回のイベントでふたりと一緒にステージに立てるのが、楽しみなんだからね」
姫芽「お、おお……!」
瑠璃乃「だね。ルリたちやジュン兄ぃで作る、もしかしたら本当の本当に最後のステージかも」
姫芽「ええ!? そんな殺生な! 来年も、再来年も!」
瑠璃乃「いやほら。来年はもしかしたら、姫芽の後輩もいるかもだし」
姫芽「!」
姫芽「……………そっか。来年は、るりちゃんとめぐちゃんの分も、アタシが」
慈「燃えてきた? それともプレッシャーの方が大きい?」
姫芽「ないと言ったら大ウソですね。最近、ずっと考えてます。来年のアタシは、なにをするべきなのか。アタシが決めなきゃいけないことなのは、わかってるんですけど」
慈「そんなに抱え込むことでもないでしょ」
瑠璃乃「ルリたちはいつでも、姫芽の相談には乗るからさ。どうしようもなくなったら、必ずめぐちゃんとルリっていうライフラインがあるって、思っててね」
姫芽「は、はい…! でも、できる限りがんばって、アタシなりの答えを見つけます! みらぱ!魂は、ちゃんとふたりからこの2年間で、学んだはずのアタシなので〜!」
慈「いい返事じゃん。姫芽ちゃんが率いるみらくらぱーく!がどんなユニットになるのか、楽しみにしてるよ」
瑠璃乃「今年のめぐちゃんみたいに、来年はルリもちゃんと見守ってるからね!」
姫芽「は、はい!」
瑠璃乃「…………………そういう想いも、アルバムツリーに込められたらいいなあ」
淳平「いいね…それ」
そして、夕焼けの空を見つめる4人だった。
― つづく ―
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