蓮ノ空スクールアイドル録   作:松兄

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EXストーリー第5話:Side:スリーズブーケ

 

 

 みらくらぱーく!の面々と久しぶりに話、ステージ設営を手伝った淳平。

 

 翌日、今日はスリーズブーケだ。

 

花帆「どうかな、吟子ちゃん。ここのメロディ」

 

吟子「うん、いいと思う。軽やかで華やかで……。これで全体像はできてきたかな?」

 

花帆「やったぁ。なんとか間に合いそうだね。あ、梢センパイと淳兄ぃは、どうですか?もしなにか意見があれば!」

 

 

 2人の様子を見て、淳平と梢は呆気にとられていた。

 

 

淳平「ふたりとも……」

 

梢「……すごいわね。曲作り、本当に上手になったのね……」

 

花帆「えっ、ほんとですか? 嬉しい!」

 

 花帆の嬉しそうな顔。吟子ちゃんと笑い合う。

 

吟子「ふふふ。今年一年、がんばってきましたもんね。ケンカも、ちょっとはしましたけど」

 

花帆「仲良い証!」

 

 その様子を見て、淳平と梢は顔を見合わせてフッと笑い合う。

 

梢「そうよね……今年一年、あなたたちふたりでスリーズブーケの新曲を作ってきたんだものね…」

 

淳平「はぁ………すごいな、本当に」

 

吟子「そ、そんなにしみじみと……」

 

 まるでお母さんとお父さんのような雰囲気を出す2人。吟子ちゃんが突っ込む。

 

花帆「あ、でもセンパイ方の残してくださったスクールアイドルノートのおかげですよ! 作曲について、すごく丁寧に書いてもらってて!」

 

梢「だとしても……たくさん、努力したのね、ふたりとも」

 

淳平「吟子ちゃんは、俺の第二ボタン渡した時の約束もちゃんと守ってくれたみたいだし。先輩として本当に鼻が高いよ」

 

花帆「えへへ〜」

 

吟子「っ、はい!!」

 

 嬉しそうな2人。でも、

 

梢「でも、だからこそ、苦労させてしまって、ごめんなさい」

 

花帆「えっ?」

 

梢「卒業してからも、思っていたの。私にもまだできることが……もっともっとなにかを教えられたんじゃないか、って。花帆との二年、吟子さんとの一年は、終わってみれば、あまりにも短くて……」

 

吟子「………そうですね。でも、だったら! これからだって遅くはないですよ! ね、花帆先輩!」

 

花帆「うんっ。こうして梢センパイと淳兄ぃが帰ってきてくれたんですから! なんでも言ってください!」

 

淳平「…………そう、そうか」

 

梢「たしかに、こんな話ばっかりしていたら、慈にまた『辛気臭い女』ってからかわれてしまうものね」

 

淳平「な?」

 

吟子「あはは。『また』なんですか?」

 

淳平「うん。梢は卒業してからも、めぐや綴理、俺に花帆と吟子ちゃんの心配をよく相談していたからな」

 

花帆「ええっ、なんでそこでセンパイ方なんですか!?」

 

 花帆が机を叩いて立ち上がる。

 

梢「え?」

 

吟子「そうですよ、梢先輩! 心配してたなら、私たちに直接連絡してくださいよ!」

 

梢「そ、それは……!」

 

 焦る梢。吟子ちゃん、ホント花帆みたいになってる……。

 

梢「違うの、だってあなたたちはがんばっているでしょ……!?それはちゃんと、信じていたのよ。だからこれは、私がただ勝手に心配していただけで……!」

 

花帆「むむむ……」

 

吟子「いいんですよ、どんなことでも。『最近どう?』とか、『なにか悩んでいることはない?』とか、そのぐらいでも」

 

梢「ちょっとお母さんすぎないかしら………?」

 

吟子「DOLLCHESTRAなんて、ずっとそうですし!」

 

淳平「おお! 確かに」

 

梢「……なんだか吟子さん、変わったわね」

 

吟子「まあ、私もいろいろと、思うところがありまして。去年の今頃は、きっとまだよくわかってなかったんです。私はずっと地元に住んでて、そこには、物心ついた頃からずっと変わらない時の流れがあって。……だから、一年とか二年がこんなに早いだなんて、思ってなくて………。せっかちな先輩にそう教えてもらうまで、ちょっと、のんびりしすぎてました」

 

花帆「ふふっ」

 

吟子「わ」

 

 花帆が、吟子ちゃんに抱きつく。吟子ちゃんは驚いた声を出す。

 

梢「…………そうね。高校での3年間は、本当に目まぐるしく過ぎていってしまったわ。あの花帆が、もう卒業してしまうんだもの」

 

花帆「卒業しますよ、無事に!」

 

淳平「めぐみたいにならなくて良かった……」

 

花帆「さすがにアタシそこまでじゃないよ!?」

 

 淳平の言葉に憤慨する花帆。梢はその様子を見て優しく微笑むと、

 

梢「それじゃあ私も、曲作りをお手伝いさせてもらおうかしら」

 

花帆「わーい」

 

梢「大学に入って、どこにも披露する機会はなかったけれど、曲作りは続けていたのよ。気持ちを落ち着けたいときや、吐き出したいときなんかに」

 

 へえ?

 

淳平「そんなの初めて聞いたぞ?」

 

梢「言ってなかったもの」

 

花帆「梢センパイの新曲……!」

 

吟子「それは、聞かせてもらったりできないんですか!?」

 

梢「え、えっと……そうね、いつか機会があれば」

 

花帆&吟子「やったぁ!」

 

淳平「なんか、花帆がふたりに増えたみたいだな」

 

梢「ほんとね……」

 

 あの吟子ちゃんがな〜………。

 

花帆「あっ、でもこれからちょっと、人に会う予定が入ってて。もしよかったら、3人とも来てもらえませんか? ちょっと、荷物が多いので」

 

淳平「?」

 

梢「それは構わないけれど……」

 

吟子「どなたに会うんですか?」

 

花帆「それはね―――」

 

 

 そして――、俺たち4人は金沢駅にやって来た。

 

花帆「ごめんごめん、待った?」

 

?「別に。今来たとこ」

 

吟子「えっ!?」

 

花帆「えへへ、わざわざありがとうね、つぐみ(・・・)ちゃん!」

 

つぐみ「まあ、うちの学校はしばらくライブの予定がないから。照明と音響の機材。好きに使って」

 

吟子「なんで襟川さんが、ここに………」

 

つぐみ「あんたのとこの部長にお願いされて、学校の機材を持ってきてあげたの。てか私だって、"Bloom Garden Party"の準備は手伝ってるわけだし。なんか文句ある?」

 

吟子「別に………」

 

つぐみ「まあ、持ってきた機材はこれで半分。残りは新潟の高校から今かき集めてる最中。もしかしたら当日まで間に合わないかもだけど」

 

梢「あら、あなたは」

 

淳平「たしか、新潟の……」

 

つぐみ「乙宗梢………、日野下淳平…」

 

梢「晴里高校のスクールアイドルさんね……お久しぶりだわ」

 

つぐみ「……まあ、12月に配信をしましたからね。さすがに、覚えてくれてますか」

 

 

淳平「というか……なあ?」

 

梢「ええ。予選で私たちに負けた学校のスクールアイドルたちのことは、皆覚えているわ。勝ったものは、彼女たちの思いも背負って本戦に挑むべきだもの。――それに」

 

淳平「君の先輩方には、迷惑をかけちゃったからな……。 俺たちが、まだ一年生だった頃に」

 

つぐみ「………………あ、全国大会棄権の件、ですか」

 

梢「ええ……誰にとっても、しこりを残すような形になってしまって、申し訳なかったわ。でもね、毎年の晴里高校のパフォーマンスが素敵だと思っていたのも、本当のことよ」

 

淳平「な? 一歩間違えば、俺たちが負けていてもまったくおかしくなかったし。そんな君たちが、"Bloom Garden Party"に参加してくれているなんて、光栄だよ」

 

つぐみ「……ど、どういたしまして……」

 

つぐみ「じゃ、じゃあ私はもう帰りますから! 機材、なんとか当日までには届けられるようにがんばってあげるけど、壊さないで返してよね! ばいばい!」

 

 そして、襟川さんは帰っていった。

 

花帆「あ、ばいばーい! ありがとねー!」

 

梢「かつてライバルだった高校も手を取り合って、同じ目標に向かってがんばる……。いいイベントだわ、"Bloom Garden Party"」

 

淳平「ホントだよ。在学中にやりたかったな……」

 

吟子「…………ふっ、お二人の器の大きさの勝利ですね」

 

梢&淳平「「?」」

 

 

 そして、機材を蓮ノ空に運び…その日の晩。淳平は男子寮のゲストルームに泊まり、梢と吟子、花帆の3人は今お風呂に入っていた。

 

花帆「ふー……働いた後のお風呂は、きもちいいですねぇ……」

 

梢「いいのかしら、私まで一緒に入って」

 

吟子「いいじゃないですか、寮母さんもいいって言ってくれましたし」

 

花帆「なんだったら、今夜はあたしの部屋に泊まればよくないですか!?」

 

梢「さすがに帰るわよ。私は実家も近いんだから。……大丈夫よ、明日も来るから。すぐにまた会えるでしょう?」

 

花帆「ですね! 明日が来るのが楽しみだなあ。梢センパイと淳兄ぃには、ちゃんとあたしの淹れたお紅茶も飲んでもらわなきゃいけませんし。この一年で、さらに上達しましたからね」

 

吟子「あ、でしたら私の淹れたホットコーヒーも……!」

 

 グイグイ迫る2人。梢は、感慨深げに2人を見つめ、

 

梢「どちらも、ありがたく頂戴するわ。……ありがとう、花帆。吟子さん。こうして、私が戻る場所を作ってくれて」

 

花帆「約束しましたからね、当たり前です! ……と、言いたいところですけど、その」

 

吟子「花帆先輩は、がんばってましたよ。みんなのため、そして戻ってくる梢先輩たちのために」

 

梢「あなたもね、吟子さん」

 

吟子「あ、あの………。でしたら、梢先輩」

 

吟子「……………私のことも『吟子』って呼んでくれたり、したり………。ど、どうでしょう!」

 

花帆「わ」

 

梢「あら。……………そうね、吟子…」

 

吟子「っ!」

 

梢「……さん」

 

吟子「!?」

 

花帆「梢センパイが、意地悪を……!?」

 

梢「べ、別にそういうつもりじゃないわ」

 

吟子「では、なぜ……。私にはやはりまだ至らないところが……。調子に乗りすぎてしまいましたか……?」

 

 

 吟子の言葉に、梢は焦ったように手で「ちょっと待って」とジェスチャーする。

 

梢「そうじゃなくてね。呼び方がどうであれ、あなたは私の大切な後輩で、友人よ、吟子さん。なにかの証がなくても、ムリに目に見える形を作ろうとしなくても。そう、不安を感じなくても、大丈夫。卒業して、物理的な距離ができても、想いは変わらないから」

 

 

吟子「それは……はい」

 

梢「今度はちゃんと、私から些細なことでも連絡するわ。きっと花帆だって」

 

花帆「あたしは毎日メッセージ送るよ!」

 

吟子「それは、ちょっと多いかも……」

 

花帆「なんで!? 喜んでよー!」

 

梢「ふふ」

 

吟子「…………そうですね、ごめんなさい。なんか私、ちょっと焦ってたのかも、しれないです」

 

花帆「ほら、その分いっぱいいっぱいアルバムツリーに写真を飾ろうよ! 吟子ちゃんの映ってる写真には、全部メッセージ書いちゃうし!」

 

梢「……あまり、こういうことを言うのはよくないのかもしれないけれど。吟子さんは、アルバムツリーがあれば、寂しくない?」

 

吟子「えっ……それは………」

 

 言葉に詰まる吟子。

 

花帆「そ、それはよくないことを聞いてますよ梢センパイ! そりゃ寂しいというか、でもアルバムツリーが完成したら、その気持ちを、受け取って嬉しい気持ちで塗りつぶすことがですね!」

 

吟子「……どうやったら、完成する?」

 

花帆「へ?」

 

吟子「どうやったら、完成して、私の気持ちを嬉しいで塗りつぶせる?」

 

花帆「それ、は………」

 

梢「やっぱり、意地悪を言ったかしらね」

 

花帆「いえ。言われてみたら……どうやったら完成するのかさえ、あたしは考えていませんでした。こんなんじゃ、喜んでもらえるはずもなくて」

 

吟子「………………花帆先輩。ごめん。私もちょっと、変なこと言ったね」

 

花帆「ううん! あたし、ちゃんと考えておくから! どうやったらアルバムツリーが完成するか、考えておくからね!」

 

 

花帆「みんなが寂しくないように………。寂しくても、大丈夫なように、しなくっちゃね!!」

 

― つづく ―




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