その数日後の夜、花帆たち3人は、ラウンジで後輩たちに対する。『蓮ノ三連華とは何か?』
というテーマのインタビュー動画を見ていた。
泉『私にとっての、三連華……か』
画面のなかで、泉が顎に手を当て『ふむ』と考える。
泉『そうだね。私にとっての三連華は……蓮ノ空に来た理由そのものだね。あなたたちがどんなことをするのかが楽しみで、最初はそれだけで、この蓮ノ空に転入を決めたんだ。そのくらいには、重い名前だよ』
そして、画面の中の泉はフフと微笑み、
泉『ふふ、まだその時は三連華という名前がつく前だったけれどね』
さやか「あなたにとっての、三連華とは? ですか。わたしが言うのもなんですが、良いテーマですね」
花帆「瑠璃乃ちゃん、天才かも! あたしたちにとっての大事な思い出の動画にもなるね!!」
瑠璃乃「それにこれが、ルリたちがルリたち自身を最後に見直す時間にもなるかなってさ」
そして、3人は再び画面に目をやる。
泉『三連華を名乗るという決意もまた、強く眩しく私の瞳に映った。これまでもそうやって、ひとつひとつを全力でぶつかって乗り越えてきたのだろうと、あなたたちの歴史を見た気分にもなれたからね。私は、この一年、あなたたちとともに在れたことを、誇りに思う』
泉『三連華とは、遠い憧れを抱きつつも、自分たちは自分たちだと胸に刻んで大地に花咲く3人。応援する皆に近しくも、強い輝きを放つ。私はこう定義するかな』
泉『しかし今こうしてビデオメッセージを、となると寂しくも思うな。これも卒業前の思い出作りのように感じてしまうのだけど。それとも……またなにか、私の想像していない、新しいことでもやろうとしているのかな?』
そこで、泉のビデオメッセージは終わった。
瑠璃乃「泉ちゃんにはお見通しかあ」
さやか「次を見てみましょう…セラスさんですね」
セラス『三連華のことを、このセラス・柳田・リリエンフェルトに聞こうとは……ふっふっふ、最適中の最適な人選と言わざるを得ませんね』
セラス『天地開闢以来の歴史を持つリリエンフェルト家において、わたしほどスクールアイドルを愛した人物は他におらず、そしてまた三連華はスクールアイドルの中のスクールアイドル』
セラス『豊穣の女神、日野下花帆がひとたび花咲きたいと唱えれば、大地を割って大輪の花を芽吹かせる。大賢者、村野さやかが一言示せば、断崖絶壁も音を立てて平服するように道を開く。そして博愛の聖女、大沢瑠璃乃が荒野をひとたびそっと撫でれば、豊穣と肥沃の大地へと生まれ変わる』
セラス『わたしたちはただ、信じればよいのです。悲しみも苦しみも、三連華の前には詮無きこと。さあ祈りましょう。三連華の慈愛に恵まれんことを一』
セラス『わたしもその恩恵に授かったひとり。俯いてしまった時に足元に咲いた美しい花が、わたしの心にもう一度熱をともしてくれた。そうです、その名をこそ、蓮ノ三連華と呼ぶのです』
そこで、セラスのビデオメッセージは終わった。
花帆「あはは」
さやか&瑠璃乃「「?」」
次は吟子だ。
吟子『正直に話してほしいということなので、包み隠さずお話しますけど……』
吟子『周りを引っ張ると言えば聞こえはいいですが、振り回すことにも躊躇ない人たちですよね、三連華って。花帆先輩は言うに及ばず、さやか先輩や瑠璃乃先輩のことも、小鈴や姫芽からよく聞きますし…………』
吟子『もちろん、私ひとりではぜったいに得られなかった経験や楽しさ、スクールアイドルとして大切なことを学ばせていただいたという意味では、私の人生に大きな影響を与えてくれた人たちではあるのですが―――』
吟子『――ただ……やっぱり心配が勝ちますよね。大三角とか、私たち後輩がいなかったら今頃どうなっとったん?って』
吟子『梢先輩をはじめとした大三角とは違って、引っ張って振り回してった先で凹んだり、勝手に全部自分で背負おうとしたり、信じて着いていっても一緒に迷子になりかけることが多かったですし?』
吟子『そういうところ、もう少し自制がはたらけば私もこんなところでこんな話をせずに済んだんですけどね。ああ、そういえばこの前も花帆先輩は学校行くっていうのに鞄丸ごと部屋に忘れて私が取りに行くことになって――』
花帆「…………」
落ち込む花帆。
瑠璃乃「あ、愛されてる証拠! 愛されてる証拠!」
さやか「吟子さんはこういう言い方しかできないんですから!!」
瑠璃乃「それはそれで言いすぎだろ!」
―――次は小鈴。
小鈴『徒町です!! えっと、うまくまとまるか自信はないですけど! 三連華は大好きな先輩で、憧れで、ずっとついてきた背中で! 徒町はきっと、一生先輩がたの背中を追って頑張るんだと、思います! 誇りです!』
小鈴『えと、他には。他には……あ、花帆先輩は、親しみがあります! 徒町もつまずくところで、よく一緒につまずいてくれます! 瑠璃乃先輩は、優しくて、よく甘やかしてくれて嬉しいです! お姉ちゃんみたいです!』
小鈴『さやか先輩はもちろん一番の憧れで、自分に厳しくて、みんなにも厳しくて、その厳しさを逃れられるのは綴理先輩だけだから羨ましくて、徒町にも綴理先輩と同じくらい甘やかしてくれてもーーってこれは言ってはいけないことですねたぶん!! おわりです!!!』
優しい顔でさやかを見る花帆と瑠璃乃。
さやか「べ、別に、綴理先輩だけトクベツ扱いしているわけじゃありませんよ!? その人にはその人に合った接し方というものが――」
―――最後は姫芽。
姫芽『アタシに三連華のことを聞くとは、なかなか酷なことをしますね』
姫芽『いや〜、三連華ってアタシのことをだいぶ悩ませてくる存在なんですよ。るりめぐこそ至高、るりめぐこそ神と信奉するアタシにとって、るりちゃんを取り巻くもうひとつの巨塔……それが三連華………』
姫芽『もちろん、花帆先輩とは仲良しですし、さやか先輩は質実ともに尊敬できる先輩です。まっすぐ目標に向かって努力する姿勢とか、すごくシンパシー感じます』
姫芽『それはそうとして、ライバルとして見れば良いのか、どっちも推すことがるりちゃんを完璧に推すことに繋がるのか、いやそれはアタシが掲げてきたるりめぐ至高論に水を差す行為なのではないか………うごごごご』
姫芽『なにせこの2年間、るりめぐよりも長い期間、アタシの目の前で展開されてきたてぇてぇ展開の数々……………目を奪われなかったと言えば嘘になる……。アタシはどうすればいいんだ……!?』
姫芽『いわばるりめぐと三連華は、別の味を提供してくれる組み合わせではあるんですよ。三連華でいるときのるりちゃん先輩は、なんかこう、すごく自然体で、ああ、聖女じゃなくて、いや聖女なんですが、 ひとりの女の子なんだな……って感じで、見てて幸せになってきますし』
姫芽『しかしそれをただにこにこ応援するのはるりめぐを推すアタシへの裏切りなのか……どっちも可愛いで済ませられないめんどくさいオタクのサガ………!』
姫芽『う〜ん。すみません、ちょっと結論出ないんで来年も三連華やってくれませんかね。あ、違いますよ! これは決しててぇてぇの過剰摂取を決め込むことでアタシの理性を崩壊させて何も考えられないようになりたいとかそういうことではなくてですね!!』
瑠璃乃「最後のは見なかったことにしよう」
乾いた表情になってしまう瑠璃乃。
花帆「いやいやいやいやいや、う、嬉しいコメントだったよ!? あんなにるりめぐ大好きな姫芽ちゃんが、悩むくらいにあたしたちのことを好きでいてくれたっていうことで! 吟子ちゃんに比べたら、ね!?」
花帆「吟子ちゃんももっと、『あたしたちの好きなところトップ10♡』みたいな話をしてくれればよかったのに………!」
さやか「あれも花帆さんが愛されている証拠ですよ。わたしは逆に小鈴さんに色々言いたいことが……」
瑠璃乃「あれだってさやかちゃんに甘えられるっていう良いことだから! ね!? 意味不明なこと言い出した姫芽よりはずっと!」
花帆「よ、よくわかんないけど褒められてたし愛情表現だよきっと!」
さやか「セラスさんはセラスさんで、また神とか言い出してましたし……」
瑠璃乃「なんか最初に花帆ちゃんが作ってきた曲みたいだったね」
花帆「あそこまでじゃなかったよね!?」
さやか「しかし、まっとうに参考になりそうな意見をくださったのは、まさか最初の泉さんだけですか………」
瑠璃乃「まあまあそのほら。姫芽も含めて全員、ルリたちのこと大好きでいてくれたということでひとつ」
花帆「ふむ……そうなるとだよ、瑠璃乃ちゃん。結論としては、みーんなに愛されてるあたしたちってすごい! でいい?」
瑠璃乃「いやー……!」
さやか「わたしたちそういうのじゃないって話したばっかりじゃないですか…………?」
瑠璃乃「そ、そうだよ! みんなのインタビューだって、手放しに褒めてくれてる感じじゃなかったよ!?」
花帆「んぇー……? じゃあ、結局あたしたちって……?」
瑠璃乃「そうだなあ……」
さやか「こうなったらもう一度わたしたちで、いったん全部なかったことにして、ゼロからやり直すとか……!」
花帆「待って、だったらスクールアイドルクラブに限らない、みんなにインタビューするのはどうかな!」
さやか「みなさんお忙しいとは思いますが………背に腹は代えられませんか。今から学年全体、いえ学校全体に………!」
花帆「三連華って誰?とか言われたらちょっと傷つくけど!「」
さやか「ある程度の傷は必要経費と割り切りましょう! 行くしかありません!」
花帆「瑠璃乃ちゃん、行くよ!」
瑠璃乃「あ、ちょ、ちょっとまってね、もう送れるから」
花帆とさやかが話してる間、瑠璃乃はスマホをなにやら操作していた。
さやか「送れる?」
瑠璃乃「ちょっとデータが重くて……はい。いちおう、みんなのインタビュー動画、いつもの3人のグループに送っといたよ」
さやか「あ、きましたきました。ありがとうございます」
花帆「ありがと! そうだよね、これだって卒業前のあたしたちにとっては、宝物だもんね。みんながあたしたちのこと話してくれてるインタビュー動画」
花帆「………………」
花帆がスマホの画面を見つめて、動かなくなった。
瑠璃乃「あれ、花帆ちゃん来てない?」
花帆「…………ううん、そうじゃなくて。そうじゃなくてさ」
花帆「なんか突然わかった気がして」
瑠璃乃「ふぇ?」
花帆「グループチャットの名前の……蓮ノ三連華」
さやか「はい、……それが?」
花帆「これじゃない? あたしたちって。3年間ずっとさ。ずーっと、相談しながら、走ってきたよね。仲良く話しながら、こうやってなんでもシェアしてさ」
花帆「一日や二日じゃ遡り切れないぐらい、いろんな思い出が詰まってる。遡れば遡るほど、ほんとずっと仲良く話してるよ」
瑠璃乃「ぷっ」
さやか「え、なんで笑ったんですか今」
瑠璃乃「いやほら、誰かは言わないけど。『改めまして、何卒よろしくお願い申し上げます。至らぬ点も多々あるかと存じますが、1年生3名で力を合わせ、より一層の結束を深めてまいりましょう』」
花帆「うわ、かったあ」
さやか「わたしでしかない!! 名前伏せる意味ありました!? ねえ!?」
さやか「そ、それを言うなら誰かさんは、充電切れになってるタイミングが丸わかりですよ! 見てくださいこの、わたしと花帆さんが長々話したあとにあるよくわからないスタンプひとつ!」
花帆「あはは、ほんとだ。この時絶対ダンボールの中だ」
瑠璃乃「そ、それも伏せた意味がねえ…………!!」
花帆「それに比べてあたしの健全なこと! いつも元気で楽しそう、写真もたぶん一番送ってる!」
瑠璃乃「いや花帆ちゃんが一番わかりやすいよ」
さやか「そうですよ、もはや"誰かさん"と、からかう必要もありませんよ」
花帆「ええ!? なんで!?」
さやか「グループに現れない日はぜったいに凹んでますからね。それでいつも心配になってわたしから連絡してるんですから。花帆さんとの個別のチャットなんかいつもわたしが励ましてますよ。瑠璃乃さんも同じなのでは?」
瑠璃乃「まあそうだよね。あまりにわかりやすいから。ていうかさやかちゃんとルリの個別のチャットも、花帆ちゃん今日どうしたんだろうねみたいな話ばっかだよ」
花帆「ぐぬっ」
さやか「おかげでまったく……ふたりに連絡しない日なんてありませんでしたよ。わたし本来こんなタイプじゃなかったんですからね」
瑠璃乃「あはは。ルリもそうかも。めぐちゃんとは通話は多いけど、チャットあんまりしなかったし。なんでもかんでも遠慮なく動画とか画像送りつけるのもここだけだよ」
花帆「あたしはもとから誰でもなんでも話しちゃうけど……でも、その中でもここが一番多いかな……うん。そう思う」
瑠璃乃「3人で……ずーっと、やってきたねえ」
3年間を思い出し、感慨深くなる瑠璃乃。
さやか「ですね……大きな夢を、叶えるまで」
花帆「あたしたちは、完璧じゃないかもしれないけど」
瑠璃乃「それでも、支え合って、どうにか、目指すところまでやってきたね」
さやか「ずっと、一緒に、同じ体験をして。お互いに、大変な時は慰めたり、慰められたりしながら」
花帆「3年間ずっと一緒だった………」
瑠璃乃「そっか、それを、か」
花帆「うん。それをだよ、瑠璃乃ちゃん」
さやか「それを………歌にしましょう。特別でなくとも、たどり着けたのはみんなに誇れるすごい場所。それができたのは、わたしたち3人が、いつも一緒に、走っていたから。これが、三連華らしさ」
花帆「そう!」
瑠璃乃「わーーー、なんか曲のイメージ、すごくできてきた!!」
さやか「わたしもです」
花帆「もちろんあたしもだよ!!よーっし、それじゃあ今から作ろう!!」
さやか「ですね。ここで、3人で」
瑠璃乃「うん。ルリたちらしく、仲良く、一緒に!」
― つづく ―
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