ご了承ください。
では、始まります!
第33話:新聞記事
定期テストも終わり、今日からまた部活が再開する。放部室では、さやかと花帆が2人で話していた。
花帆「100万人だよ、さやかちゃん!!」
さやか「はい?なんですか急に、100……」
花帆「100万人だよ!!100万人でライブするの!それが、あたしたちの目標!」
さやか「そ、れは……」
花帆「凄いと思わない!?」
さやか「確かに、100万人の観客を前にライブができたらとてつもなく凄いことですけど、そもそも100万人が入れる会場がないですよ。大きなスタジアムだって、10万もいかないんですから」
花帆「えっ!そうなの……?」
さやか「はい。満員電車みたいにぎゅっと押し込めても無理です」
花帆「ええ〜っ?!」
さやか「まあ、目標を持つことはとても素晴らしいと思いますが……」
花帆「むー、だめかー」
するとさやかは咳払いし、
さやか「さて、大きな目標を持つこともいいですが、花帆さん。今日は先輩がたがいません」
花帆「え、あ、そっか!今日だった!どうして来ないんだろうって思ってたや。ひょっとしたら、たぬきに襲われてるんじゃないかって……」
さやか「それだったら淳平先輩が返り討ちにしそうな気がしますが……。とはいえ、わたしたちはわたしたちでやらなきゃいけないことがあるってことです」
花帆は首を傾げる。
花帆「えーっと……」
さやか「……まさかとは思いますが、忘れているとか?」
花帆「そ、そそそそんな事ないよ!?今日は全体部活会議で部長の梢センパイはお休み!綴理センパイは進路相談で先生とお話でお休み!淳兄ぃも進路相談で先生に呼ばれてる!」
さやか「聞いたんですけど、淳平先輩、もっとレベルの高い海外の高校に留学しないかって話が出てるらしいです。まあ、テストの度に先生が毎回言ってて、淳平先輩も断ってるらしいですけど……」
花帆「え"?!も〜っ!先生たち余計なことしないでよ!!もしも留学するなんて言ったらどう責任取ってくれるのさ!!」
さやか「それについては同感です……いちど先生がたをおど……お話ししたほうがいいかもしれませんね」
花帆「さやかちゃん?今、脅すって言いかけた?」
さやか「気のせいです。まあ話を戻すと、わたしたちはこれです」
さやかちゃんはいくつかの項目が書かれた用紙とコピー用紙を見せる。
そう今月末には蓮ノ空の3大文化祭の1つ、蓮空祭がある。蓮空祭は5年前よりも前、蓮ノ空女子校時代は撫子祭という名前だったが、共学化に伴い共学校の文化祭らしい名前に変わったのだ。
花帆「あっ、そっか。梢センパイが言ってた、新聞部からのお願い!」
さやか「はい。部活の紹介記事です。期日は特に設けられていませんが……蓮空祭で張り出すという目的がある以上、早めに越したことはないかと」
花帆「1年生が書かなきゃいけないんだったね。あ〜あ。淳兄ぃのことならいくらでも書けるのに……」
さやか「それはそれで問題ありの気もしますが……、言ってることは理解できます。絶対というわけではありませんが、蓮空祭の新聞記事は新入生が執筆するのが伝統、ということですから。だから先輩たちも、わたしたちの記事を楽しみにしてると言ってくれたんですし。」
花帆「そっか、センパイたちのためにも頑張らないとだ!」
さやか「はい。先輩がたの名に恥じないように、です。わたしたちにとっての最初の文化祭でもありますしね。特に淳平先輩の名に傷をつけるわけにはいきません!」
花帆「さやかちゃん……本当に淳兄ぃのこと好きなんだね」
さやか「……?当たり前じゃないですか。…とにかく!わたしが何を言いたいかというと、蓮空祭は、既に始まっているということです!」
花帆「えーーっ!?どこで!?どこで!?」
さやか「もちろん、ここで!」
花帆「こ、ここで……!」
さやか「わたしたちの作る記事の出来が、直接蓮空祭でのスクールアイドルクラブの評価を左右するってことです!」
花帆「た、確かに……!」
さやか「ということで、この部活紹介の記事。つまり私達から見た、このスクールアイドルクラブの魅力を書きましょう!」
花帆「まかせろー!まず、ライブが楽しいでしょ!練習は大変だけど楽しいし!あと、スクールアイドルクラブのみんなと一緒にいるのが楽しい!特に淳兄ぃ!」
さやか「わたしも淳平先輩の素晴らしさは伝えたいですけど……今回は淳平先輩のことは少なめでいきましょうか。灯りに惹かれた悪い虫が寄ってくると嫌ですので」
花帆「おお!確かに!淳兄ぃを守るためにそうしようか! あとは、応援してくれるみんなと一緒の時間を過ごせることも、そのあとに「終わったー!」って力が抜けるのも!曲も綺麗で可愛くて楽しくて――」
さやか「ちょ、ちょっと待ってください。このままだと、見出しを並べるだけで終わってしまいます!」
花帆「うぇえ!?ほんとだ!全然足りないよ!!」
さやか「わたしが大きさを決めたわけではないです。一応、そこそこ大きなサイズなんですけどね……」
花帆「それだけ蓮ノ空スクールアイドルクラブは魅力的ってことだよ!」
さやか「は、はい。それはもちろん。ただ……やっぱり小さな文字でぎっしり全部詰め込んでしまうと、皆さんに伝わりにくい記事になってしまうかと」
花帆「どうしたらいいのさやかちゃん……」
さやか「少し、内容を絞りましょうか。一応、クラスの皆さんにお話を聞いてきたのですが、やはり去年の実績を纏める方向の部活が多いみたいです。ですので、わたしたちも大倉庫に行って色々調べることを考えていました」
花帆「去年の実績かー。でもさ、さやかちゃん。他の部の子たちが、そういうことやってるんだよね?」
さやか「え?あ、はい。そうですね」
花帆「じゃあさじゃあさ、違うことやろうよ!蓮ノ空スクールアイドルクラブにしかできない紹介記事が良いと思うんだ!」
さやか「それは……確かに、そうですね」
花帆「せっかく頼んでくれたセンパイたちにも、あたしたちがこの場所を大好きなんだって伝えたいし!きっと喜ぶよ!」
さやか「分かりました。では、この蓮ノ空スクールアイドルクラブにしかないもの……それでいて誰にでも分かる魅力的な点。それを探しましょうか」
花帆「ふっふっふ」
さやか「花帆さん?」
花帆「そんなの、探すまでもないよさやかくん」
さやか「さやかくん」
花帆「ずばり……センパイだよ!ます、梢センパイは、頼れる!!」
さやか「なるほど」
花帆「一緒にいると安心できて、ステージの上では梢センパイと一緒だからってだけで、すごく自由になった気持ちになれるんだ!」
さやか「ふんふん」
花帆「練習の時はちょっと怖いし、部長としてのまじめな感じはこう、あたしもちゃんとしなきゃー、って思うけど……。でもそれも、梢センパイが居れば大丈夫って思える理由だよね!」
さやか「なるほど……うん。良い感じだと思います」
花帆「ほんと!?」
さやか「はい、花帆さんは乙宗先輩のことが大好きなんですね」
花帆「えへへー。その気持ちを、みんなにも伝えないとね。じゃあ次はさやかちゃん、綴理センパイのことをどうぞ!!」
さやか「分かりました。といっても、乙宗先輩のように頼りがいがある人ではありませんからね」
花帆「け、けっこうバッサリと言うね……」
さやか「まあでも、それを補って余りある、綴理先輩のパフォーマンス力は、どうしたって他の誰にも真似ができないものです」
花帆「なるほど……」
さやか「誰が見ても一目で魅了されるステージ上の綴理先輩の姿は、確かに綴理先輩にとっては孤独だったのかもしれません。でも、今はわたしが居ますから、それは大丈夫にします。つまり、綴理先輩は本人の想う欠点が無くなり、最強です」
花帆「……あれ、ここまでだっけさやかちゃんって」
さやか「ステージを下りれば、抜けたところも多い人ではありますけど、それもまた綴理先輩の魅力を形作る1つですから。練習のときも、いざ踊り始めればスイッチが切り替わったように、動き1つでみんなを虜にする……本当のスクールアイドル」
花帆「さやかちゃん?さやかちゃーん?」
さやか「つまり、綴理先輩が居る限り、この蓮ノ空スクールアイドルクラブに陰りが見えることはない蓮ノ空スクールアイドルクラブといえば綴理先輩の――」
花帆「じ、じゃあ淳兄ぃは?」
さやか「え?淳平先輩は神です。それに比べれば綴理先輩はただの人間レベルです」
花帆「そ、そこまで……で、でも、蓮ノ空スクールアイドルクラブは、梢センパイいてこそだと思います!アイドルだけで言えば!!」
さやか「ええと……考え方は自由です」
花帆「ええ!?こ、梢センパイは部長だし、みんなを支えてくれてるし注目の的だよ!淳兄ぃ除けば……」
さやか「確かに、綴理先輩は部長ではありませんし、むしろ支えられてる立場ですが、スクールアイドルという一点のみで言えば、綴理先輩が部活の顔です。淳平先輩除けば……」
花帆「……要は、2人共淳兄ぃには勝てないっていうのは一致してるんだね」
さやか「……そうですね」
さやか「でも、ふと思いましたが、先輩たち3人は、去年はどうされてたんでしょうね?」
花帆「確かに……そう言われると、私たちセンパイたちのことほとんど知らないよね?」
さやか「はい」
花帆・さやか「「少し調べて見ようか?」」
ー つづく ー
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