翌日、スクールアイドルクラブ部室―――、
小鈴「騙された!!! べつにさやか先輩、とても徒町に会いたいわけではなかった!」
淳平「心理テストでセラスちゃんに探りを入れる、というアイディアまでは良かったと思うけどね。なにぶん作りが甘すぎたね……」
吟子「テスト内容見せてもらいましたけど、やっぱりそうですよね……」
姫芽「これで全員失敗か〜……………」
吟子「泉も?」
泉「『リリエンフェルト家のご先祖様が夢枕に立って、お前はソロをやるべきだとお告げを下さったから』と言っていた」
吟子「また変わっとるやん! なんなん!?」
淳平「俺たち102期生はセラスちゃんと関わった時間は極少だけど、面白い子だな」
みんな「まあ、そうですね」とは言うが、やっぱりスッキリしない様子。
姫芽「……………やっぱり、本気でソロをやりたいって思ってるわけではなさそうだねえ」
泉「一応、一年生にもあれこれ聞いてみたんだけどね。ソロ活動がしたい、というようなことは誰も聞いていなかった」
姫芽「となる、と……」
吟子「淳平先輩、やっぱり教えてくれませんか?」
淳平「いや〜、意地悪とかじゃなくな〜……」
姫芽「そうですか……」
皆が頭を悩ませる中、
小鈴「ええい、最終手段だ! 言えない本音にはこれしかないよ!」
泉「ほう?」
淳平「何する気?」
小鈴「これより、ビッグボイス選手権の開催を宣言します!」
そして、セラスちゃんを八重咲ステージに連れてきた小四辺形。
淳平も見届人として来ていた。
セラス「ついに全員がかりですか! それとお兄さん、もしかして……」
セラスちゃんが怪しむように淳平を見る。
泉「セラス、先輩の名誉のために言っておくけど、先輩はセラスが言いたくないと言ってることを自分の口からは絶対に口を割ろうとしなかったよ?」
セラス「……そうなんだ。すみませんお兄さん」
淳平「いや、それは良いよ」
姫芽「でも来てくれてありがと。アタシたちもさ、無理やり聞き出すような真似をしている負い目はあるので〜。まずはアタシたちの方から歩み寄ろうと、そ〜ゆ〜わけなのだよ〜」
セラス「歩み寄る……って」
吟子「いいからほら、座ってて」
そして、吟子ちゃんと姫芽ちゃんもステージに上がる。
小鈴「ここは、かつて蓮ノ空の偉大な先輩が考えた、言いたくても言えないことを言える場所――ビッグボイス選手権!」
セラス「知ってる先輩だ!? ていうか知ってる催しだ!?」
淳平「まあ見てて?」
小鈴「まずはこの徒町小鈴、言いたくても言えないことを言います!」
最初は小鈴ちゃんだ。
小鈴「こほん。徒町は………本当は、セラスちゃんにDOLLCHESTRAに入ってほしい!」
セラス「つ」
小鈴「徒町ひとりで、本当にこれまでの大切なDOLLCHESTRAを引き継いでいける自信がないから! セラスちゃんが来てくれたら、徒町本当に安心です!」
小鈴「…………でも、そんな理由で来てほしいなんて言えるはずもないので! ここだけの話と、させていただきます!」
セラス「そんなふうに、思って」
次は、姫芽ちゃんが前に踏みだす。
姫芽「じゃあ、次はアタシ。アタシはほんとはさ、せらりんはどこのユニットに入っても可愛い後輩だから、見守るつもりでいたんだけど………。ちょっとそれは失敗だったかなって思ってるんだよね」
姫芽「せらりんが悩み始める前から声かけてれば、今頃みらくらぱーく!選んでくれてた未来もあったかなってさ。なので、せらりんにどう思われるかはさておき、ぐいぐい行ってみることにしたよ」
姫芽「せらりんとなら、バチバチに熱く盛り上げられるみらくらぱーく!ができると思うんだ! 今年とはまた色の違うみらくらぱーく!を、ともに作ろう!」
セラス「姫芽、先輩」
お次は吟子ちゃん。
吟子「次は私だね。……初めてだから、ちょっと緊張しちゃうな」
吟子「ふう……。セラスは最初から私にグイグイ来てくれたよね。ちょっと困るときもあったけど……でも、私はセラスに感謝してるよ。おかげでこんなに、仲良くなれたから」
吟子「セラスはいつだってスクールアイドルに全力で、ステージに立つ姿は綺麗だって思ってた。そんなあなたとなら、最高のユニットを作れると私は思う」
吟子「セラスに、スリーズブーケに来てほしい。私自身のスクールアイドル活動は、まだ魅力を磨いてる最中だけど。でも、スリーズブーケっていうユニットは、他のどこよりも魅力的な自信があるから」
セラス「…………吟子先輩」
みんなの気持ちを聞き、呆然とするセラスちゃん。
淳平「でも、もう一人伝えたいことがあるんだってさ?」
セラス「え?」
泉「最後に私から」
セラス「………………え、泉も?」
泉「先輩の言う通り、伝えたい気持ちが、あるからね」
泉が話し始める。
泉「ソロになるという意味を、セラスはよくわかってくれていると思う。そのあなたがソロ活動をするというのなら、私は応援するよ。別々に歩みながらも、互いに支え合おう」
泉「だが……もし。あなたが、何かしらの真意を隠して、ソロ活動という蓋で本音をしまい込んでしているのだとしたら、ここでそれを伝えてほしい。あなたの大好きな先輩たちが、あなただけのために作ったステージなのだから」
セラス「泉……。……わたしは。それでも…………ソロを、やる」
泉「………そうか」
姫芽「いや、尊重すべきだね。応援するよ、せらりん」
吟子「……セラス。それは、三連華の居なくなったユニットじゃ、やっぱりやってもしょうがないから?」
淳平(………………)
そんなふうに考えてたか……。
姫芽「吟子ちゃん」
吟子「それくらい聞かせてくれてもよくない? 少なくとも私は……結局来年はセラスが本当にやりたいことができないんじゃないかって、心配にも、不安にも、思う」
吟子「それとも、私たちがセラスのことを入れたくないって思ったってこと?」
セラス「違う!」
セラスちゃんは立ち上がり、大声で吟子ちゃんの発言を否定した。
セラス「先輩たちは、わたしが考えてたよりずっと……本当に、歓迎してくれて。どこのユニットも、本当に、わたしは、好きで……」
セラス「好きで、好きだからぁ……! だから、選びたくないんです! わたしが選ばなくて! 来年誰も入らなかったら! その人は、ひとりになっちゃうから!」
小鈴「……ひとり、に」
淳平「言ったんだね……」
吟子「淳平先輩は、これを黙ってたんですか?」
淳平「うん。セラスちゃんから相談を受けたのは、"自分が選ばなかったユニット"の来年が怖い。ってさ」
泉「どこのユニットを選ぶかではなく……選ばないことを、怖がっていたのか」
姫芽「それは、どうしようもないことではある、けど」
セラス「本当に……好きなんです。先輩の、みんなが。だからわたしが選ばなかったユニットが、どう見えるか考えただけで、わたしは……」
泉「自分がソロになれば、全員がソロになる……か。必死に考えたんだね、セラス」
吟子&姫芽「「…………」」
小鈴「……ごめんね、気づけなくて。それからまだ、諦めなくて」
セラス「………へ?」
小鈴「セラスちゃんは、ひとりになったユニットが、選ばなかったユニットが心配って言ったよね。……だったらさ、証を作ろう!」
淳平は、自分達のいないこの一年で、小鈴ちゃんはここまで成長していた事に驚いた。
泉「ほう……?」
小鈴「徒町たちは、ひとりでも! 先輩たちの大切にしてきたユニットを、引き継げるってことを!!」
吟子「小鈴が一番不安がってたくせに」
小鈴「そ、それは、これからチャレンジするものだから!!」
すると、
泉「だったらひとつ思いついたことがある。これでどうだろうか」
泉が、3人に耳打ちする。
姫芽「おっけ〜、任されたよ、いずみん。2年前のいずみんへのリベンジにもなるね」
淳平「? あの曲かな……? 音楽セットしてこようか?」
吟子「!! さすが淳平先輩! お願いします!!」
そして、席を立ち、コントロールルームに向かう淳平。
セラス「先輩たち……泉…………? なにを?」
泉「ひとりでも最高のユニットが揃っている証なら」
吟子&小鈴&姫芽「「「"Link to the FUTURE"!!」」」
そして、音楽が流れる。この曲を、小三角の3人だけでパフォーマンスし、歌い始めた。
セラス「この曲……………」
泉「ああ、そうだね。あの頃はライバル校だったから、ふたりで何度も、見返した曲だ。さすが強豪校だと、思ったよ」
セラス「でも今の"Link to the FUTURE"は、そのときの完成度に、ぜんぜん引けを取らない。たった3人、なのに」
泉「ああ。今ではもう、私がアドバイスするようなこともない」
セラス「先輩たちの卒業に、みんなすごく寂しそうにしてて……だからせめて、わたしは悩ませちゃいけないんだって……そう、思い込んでた。でも違った。ステージに立ってるのはひとりじゃない」
セラス「これまで背負ってきたユニット。来年ひとりだったとしても……先輩たちの思いを絶対に繋ぐんだ、って……。みんなそう言ってる」
セラス「わたしだけが、から回ってたんだ………」
泉「ああ、私にもわかる。彼女たちは、強い。だが、あなたも私もEdel Noteとして1年走ってきた身だ。いつか輪に入れるさ。この、未来への輪の中に」
セラス「そうだね。そうなるといいよね……」
そして、曲が終わり、
小鈴「ね、セラスちゃん。徒町たち、ひとりでも平気だよ」
吟子「3年生になるんだから、ユニットぐらい自分ひとりでなんとかできなくっちゃ」
姫芽「どのみちせらりんに責任なんてないない。気楽に、ただ好きなところを選べばいいんだよ〜」
セラス「……はい。わたしは、余計なことばかり考えて……、自分で選ばなきゃいけないことから、逃げてました」
セラス「ごめんなさい。たくさん迷惑と、ご心配をおかけして。決めます。ちゃんと。わたしが望んで選べるものを……先輩たちを、信じて」
― つづく ―
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