翌日、花帆たちは金沢駅前のスタバにいた。
花帆「え…………」
ふたば「だ〜か〜ら〜、こんな事で仲直りするわけないじゃん」
みのり「みのりもう中学生だよ。『遊んですっきりしたから、もう仲直りね』とか、ありえないし」
花帆に不貞腐れてそう言い放つ2人。花帆には完全に予想外だ。
花帆「えっと。春の新作ドリンク買ってあげようか? ほら私たちの街にはなかったでしょ?おしゃれなカフェなんて何て」
ふたば「それは買ってもらうけど、でも、そういうことじゃなくて、お姉ちゃんふたばのこと子供扱いしてる……」
みのり「みのりのことも……」
花帆「えっと」
痛い所を突かれて焦る花帆。――すると、
ふたば「昨日の夜さ、淳兄ぃがメッセージくれたんだ」
花帆「なんて?」
みのり「『もしも的外れなこと言ってたらゴメンだけど、花帆が子供扱いしてたらゴメンな?』って……」
ふたば「ほんと、分かってるよね」
花帆「うぐっ!」
心にグサッときてダメージを受ける花帆。
ふたば「ふたばは、お姉ちゃんに、ちゃんと話を聞いてもらいたかっただけ」
花帆「き、聞くよ!?」
ちゃんと話してくれれば聞くと姿勢を正す花帆。2人は話し始めた。
ふたば「……テニス部に入って頑張ってるのに、お母さんもみのりも、まるで遊んでるみたいなこと言ってくるし、こんなに頑張ってるのに……」
みのり「みのりだって、勉強、頑張ってるのに! たまに集中しすぎてお手伝い忘れちゃうけど、でも、もうちょっとでクラスで1番になれるのに、なのに、ふたばばっかり褒められて」
ふたば「嘘、みのりの方こそ」
二人とも頑張っている。だが、相手の方が評価されているとお互いに思ってしまい、すれ違っていたのだ。
花帆「2人とも…頑張ってるのはすごく偉いと思う。でもそのせいで喧嘩したり、自分だけが頑張ってるって思って、周りに迷惑をかけちゃうのは、ダメじゃないかな?」
ふたば「それは、分かってるけど。でもお姉ちゃんが言った。『花咲くためには頑張ること。そして最初の 1 歩を踏み出すこと』って」
花帆「え、あ、それって先月のトリプルフラワー大作戦の?」
ふたば「だけど頑張ってても、誰も認めてくれない。ふたば、こんなに頑張ってるのに。お姉ちゃんは、高校に入ってこんなに花咲いてるのにふたばには、まだ、何もなくて」
花帆「ふだば」
みのり「ねえ、お姉ちゃん。このまま頑張ればみのりは花咲けるの? お姉ちゃんみたいになれるの? 頑張ってるのにうまくいかない人は、どうすればいいの?」
花帆「みのり…ごめん。あたし、2人がそんな悩みを抱えていたなんて思ってもみなくて」
今更ながらすごく反省し、後悔に襲われる花帆。
ふたば「もう、帰る。ごめんね。プルパの邪魔しちゃって。こんなだから、ふたばはまだまだ子供って言われるんだよね」
みのり「みのりも、お世話になりました」
花帆「ま、待って2人とも!」
花帆が2人を呼びとめるり
花帆「新幹線まで、まだ時間あるよね。もう1回、私にチャンスをちょうだい」
みのり「え」
花帆「2人の悩みに真剣に向き合うから。今度こそ。だから待ってて。でも子供扱いしたことは、ごめん。だけどこれって、きっと大事なことだと思うから。――2人のことも、あたしがきっと笑顔にしてみせるから」
そして、花帆は一人で町を歩き、必死に考えていた。
――時刻は、もう夕方が近い。
― 金沢市街地・公園 ―
花帆「頑張っても誰も認めてくれない。頑張ってもうまくいかない。2人はただ喧嘩してるわけじゃなくて、不満とか不安とかを抱えて、自分たちでもどうすればいいかわかんなくなっちゃって。それで喧嘩しちゃってたんだ」
花帆「あたし、そうとは気づかずに2人の喧嘩、いつものことだと思い込んでた。そうだよね。あたしが知ってるふたばとみのりは、まだ小学4年生。今はもう。中学1年生なんだもんね。分かってるはずなのに、全然わかってなかった。あたし、ダメなお姉ちゃんだ」
――そこへ、
セラス「はなちゃん」
花帆「え、せっちゃん。どうしたの?」
セラス「いや、新幹線の時間が来る前に一応ふたばとみのりにお土産持ってってあげようかなって。えっと、一緒じゃないの?」
花帆「うん。実は―――」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
セラス「そうだったんだ。ふたばとみのり。そんな風に悩んで」
花帆「あたしが中学生の頃って何を考えてたかな? 病院に入院することは少なくなったけど。でもその代わりに勉強も運動も遅れちゃってて、なんか焦ってた気がする。そのぐらいの頃にね、ふたばとみのりに裏山で咲いているらラナンキュラスを見せてもらって」
過去を思い出し、ふたばとみのりに思いを巡らせる花帆。
花帆「どうすればいいのか分からなくて、その不安をお母さんとか妹たちにぶつけたりもしてた。あたしの方が、よっぽど子供だったよ」
セラス「そうだね。未来が見えなくて、不安だった。私はスクールアイドルに出会えたけど、それまでは完全にいじけてたと思う」
セラスも、過去の自分を思い出す。
セラス「世界一のバイオリン奏者になる夢がなくなっちゃって、私には何もないんだって。ふたばとみのりは、偉いね。それでも自分の今できることを頑張ってて」
花帆「うん。力になってあげたい。あたし、お姉ちゃんだから」
セラス「……ねえ、はなちゃんはどうして蓮ノ空に入って、スクールアイドルを始めたの?」
花帆「それは、お母さんから蓮ノ空の話を聞いて、『環境が変われば、あたしの人生もきっと変わる』って、思って。スクールアイドルクラブに入ったのは、ただの偶然」
そして花帆は、蓮ノ空に入学した頃。梢と、スクールアイドルと初めて会った頃のことを思い出す。
花帆「先月も話したけど、あたしは、ただ運が良かっただけ。蓮ノ空で、出会えたから。あたしが花咲けたのは、その人たちのおかげ。先輩と友達、それに後輩と応援してくれる人たちがいてくれたから」
花帆「ふたばとみのり、だけじゃない。頑張っても報われない人は、きっといっぱいいるんだ」
セラス「じゃあ、もしはなちゃんがあの頃の自分に声をかけてあげるとしたら、何て言うと思う? 私は、あるよ。入院して未来が見えなかった頃の私に言ってあげたい言葉。最近ね? またバイオリンを引くのがすごく楽しいんだ。世界一になる夢はもう叶わなくても、あの頃好きで始めた。気持ちはまだ残ってるって分かったから。スクールアイドルを始めて、1年間ずっと楽しかった。だから」
セラス「頑張ってきたこと、楽しかったことが、いつも私の道を照らしてくれるから、負けるな!って」
花帆「泉ちゃんのおかげだね」
セラス「それと、はなちゃんのおかげだよ」
花帆「あたしは、うん。言ってあげたいこと。ある。正しいかどうかわかんないけど。でも、伝えなくっちゃあの頃の私に、私の気持ちを。今度こそ、ふたばとみのりに!」
― つづく ―