蓮ノ空スクールアイドル録   作:松兄

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第36話:センパイとコウハイ

2年生の過去の手がかりを探すため、花帆とさやかは大倉庫に来ていた。

 

そして中に入ったふたりは、スクールアイドルクラブの物が収められている場所に到着した。

 

花帆「これ、去年のだ」

 

さやか「ということは、この辺りですね……」

 

さやかは去年のアルバムを手に取る。

 

さやか「アルバム作り……わたしたちもやってみたいな……。あまり、プリントすることもありませんし。……あ」

 

花帆「どうしたの?」

 

さやか「これ、見てください」

 

花帆「センパイたちだ!」

 

さやか「1年生の時の先輩方……なんだか新鮮ですね。『Dream Believers(ドリームビリーバーズ)……1年生お披露目!』……ドリーム、ビリーバーズ?」

 

花帆「曲の名前かなあ。でも、1年生お披露目ってことは」

 

さやか「はい、これは去年の蓮空祭みたいですね」

 

花帆「一緒のステージに立ってる。梢センパイも、綴理センパイも。……っと、あれ?」

 

さやか「これは……生徒会長?」

 

花帆「ほんとだ!それに――、この人、どこかで……」

 

さやか「っ!この間の中間テストの結果が張り出された時に淳平先輩と一緒に居た人!」

 

花帆「っ!思い出した!梢センパイが怪我したときもお見舞いに来てた!!こっちの写真には淳兄ぃも一緒に写ってる!」

 

さやか「じゃあ、これが去年のスクールアイドルクラブのメンバーだったんですね……」

 

花帆「この人たち、なんで今はいないのかな?」

 

さやか「それは……。いえ、確かに気になることではありますが……今は綴理先輩たちのことを優先しましょう」

 

花帆「うん。ごめん、探そう!っとと!?」

 

さやか「花帆さん!?」

 

花帆が転ぶ。すると棚にぶつかり、上から何枚か紙が落ちてきた。

 

さやか「大丈夫ですか?」

 

花帆「うん、平気……ありがと、さやかちゃん。え、えへへ」

 

さやか「……えっ?」

 

さやかは落ちてきた紙を見て絶句する。

 

花帆「さやかちゃん?あたしのせいでどこか打った!?」

 

さやか「いえ、それよりも、これ」

 

さやかは花帆に落ちてきた紙を拾い上げて見せる。

 

さやか「いえ、そんなことは。それよりも、これ」

 

花帆「蓮ノ空学院スクールアイドルクラブ……ラブライブ!地区大会突破!?え、すごい!センパイたち去年、全国大会出てるの!?」

 

さやか「花帆さん……その下です」

 

花帆「下……えっ……。全国大会出場……辞退?」

 

 

 

すると、

 

梢「……2人共、いるの?」

 

淳平「遅かったか……」

 

花帆「あっ、梢センパイ。淳兄ぃも……」

 

さやか「綴理先輩……どうして、ここに……」

 

綴理「…………」

 

梢「花帆さんも村野さんも、そんな気まずそうな顔しなくても良いわ。記事のために去年のことを調べようとしていたんでしょう?」

 

花帆「え、あっ、えっと……そうです!そうなんです!」

 

梢「そうよね。悪いことなんて何もしてないのだから、そう身構えないで」

 

さやか「ありがとう、ございます。えっと、3人はわたしたちを探しに?」

 

淳平「いや、そうじゃなかった……んだけど。……遅かったみたいだな」

 

綴理「大倉庫に残ってるかも……って気付くのが遅かったってこと?」

 

淳平「二人がここに来るんじゃないかって、そう気付くのがな。こうなる前に、手がかりになりそうなのは隠しておきたかったんだけど……」

 

綴理「捨てないの?」

 

梢「……捨てないわ。私と淳の、戒めだもの」

 

花帆「あ、あの!これ――えっと!去年、ラブライブ!の地区大会を突破してたんですね!」

 

梢「……花帆さん」

 

花帆「は、はい!」

 

梢「それ、渡してくれる?」

 

花帆「あ、はい……」

 

花帆はそれを梢に渡す。

 

梢「はあ……。これは私の失態ね。……確かに、辞退したわ。全国大会」

 

花帆「梢センパイと淳兄ぃの……?」

 

淳平「言うのか?」

 

梢「この子たちは悪くないもの。部活のために、頑張ってくれただけで。隠せなかったのは私たちの責任。だから変にしこりを残すより、きちんと話した方が良いでしょう」

 

綴理「………ん」

 

淳平「……分かった」

 

そして、梢は話し始める。

 

梢「去年の今頃は、もう少し部員がいたのよ。私と綴理、淳平を含めて、1年生が4人。そして、2年生が1人だけ」

 

花帆・さやか「「…………!」」

 

さやか「ひょっとして、生徒会長の」

 

淳平「そう。大賀美沙知先輩。もう引退したんだ」

 

梢「それで、残された4人で頑張ろうとした矢先に、1人が怪我をしてしまって……」

 

花帆「あっ……」

 

淳平「だから、ラブライブ!地区大会には、梢と綴理で出たんだ」

 

梢「でもね、足並みが合わなかったのよ。綴理と私じゃあね。だから全国大会は辞退したの。地区大会は突破できたし、突破したからには続けるべきだとも思ったけれど……」

 

淳平「これ以上続けても、お互いに不幸になるだけだったから。梢では、綴理の隣には立てなかった」

 

さやか「あ……」

 

梢「だから、もう一緒にやらないって決めた。でも、それで問題は無いの。綴理にはもう村野さんが居て、私には花帆さんが居るから」

 

話を聞いたふたりは落ち込んでしまう。

 

梢「変に勘繰らせたならごめんなさい。でも、心配なんて1つもないから。だから――この話はここまでよ」

 

花帆「梢センパイ……」

 

梢「そんな顔しないで、私たちは大丈夫だから。ねえ、綴理、淳」

 

綴理「……うん」

 

淳平「……ああ」

 

梢「じゃあ、先に戻っていて。私たちはここを片付けていくから」

 

 

 

 

その日の夜、女子寮・花帆の部屋〜

 

花帆「……あたし、余計なことした」

 

さやか「花帆さん……」

 

花帆「何も言えなかった。梢センパイ、絶対無理してた」

 

さやか「……そうですね。3人とも、です」

 

花帆「どうにかしたいなんて言って……ただセンパイたちに嫌な思いさせただけだ」

 

さやか「…………」

 

花帆「ぐすっ…」

 

さやかはそっと花帆の背を擦る。

 

花帆「あたしたちでどうにかできるかも、なんて言っておいて……。ほんとにただ、知りたいってだけのバカだったんだ」

 

さやか「っ。わたしは、そうは思いません」

 

花帆「…………」

 

さやか「知りたいというだけではないことは、大倉庫に行く前の花帆さんの気持ちを聞いたわたしは、よく分かっているつもりです。それに、わたしだって、わたしたちにできることがあるならと――」

 

花帆「さやかちゃんは。さやかちゃんは平気なの……?」

 

さやか「平気なわけないじゃないですか。私だって、3人のあんな顔は見たくありませんでしたよ」

 

花帆「だったら」

 

さやか「でも、花帆さんのそんな顔も見たくありません。わたしにとっては同じことです」

 

花帆「……。顔、見せてない」

 

さやか「じゃあ、花帆さんの笑った顔が見たいから。先輩方の笑った顔が、見たいから。その気持ちは同じだから、一緒に大倉庫に行ったんです」

 

花帆「……………」

 

さやか「楽しそうでしたよね。あの写真」

 

花帆「……うん」

 

さやか「先輩方のあんな顔が見たくないから、私たち2人で頑張ろうとしたんですよね?」

 

花帆「……うん。そうだね」

 

さやか「じゃあやっぱり、花帆さんの気持ちは間違ってませんよ。それにほら、たとえば……あのまま記事を書いても、きっと良いものにはならなかったでしょうし」

 

花帆「……記事。……そ、っか」

 

花帆は起き上がる。

 

さやか「花帆さん?」

 

花帆「そっか。そうだね、そうだよ。あたしたち、最高のセンパイをみんなに知ってほしくて頑張ったんだ。梢センパイのことも綴理センパイのことも淳兄ぃのことも、最高のセンパイだって思う気持ちは今も変わってない。ううん、いろんなことを知って、もっともっと強くなった」

 

さやか「わたしも、そう思います。花帆さんの気持ちは、間違っていません。もしかして、何か気がついたんですか?」

 

花帆「うん。聞いてさやかちゃん。さやかちゃんと二人で色々調べてさ、センパイたち3人はあんなに凄いのに、それでも暗い顔するようなことがあったって分かって……あたしはやっぱりあの時、悔しいと思ったんだ」

 

さやか「そうですね。だからこそ、わたしたちにできることがあればと思いました」

 

花帆「そう。あたしたちでできることを探した。センパイたちでできなかったことを、あたしたちだけで頑張ろうとした。そしたらあたし、さっき梢センパイになにも言えなかった。あんな風に笑って、ここまでって言われたら、ダメだった。でも、って言えなかった」

 

さやか「……その、でも、を、今なら言えますか?」

 

花帆「うん!あたし今なら"でも"って言えるよ。あたしたちとセンパイたちで作れる……暗い顔なんてさせない方法!センパイたち3人でやってできなかったことがあって、それをあたしたち2人が勝手に頑張っても、やっぱりできなかったとして。まだ、5人ではなにもしていない!!」

 

さやか「花帆さん……!そっか……。……そうですね!ステージの外であっても、上であっても、今の蓮ノ空だって、3人じゃない」

 

花帆「うん!じゃあパジャマだけど、センパイのところへ突撃だーー!!」

 

そして、さやかと花帆はそれぞれのユニットの先輩の部屋へと駆け出して行った。

 

 

花帆「梢センパイ梢センパイ!」ガンガン

 

梢「花帆さん、こんな時間に――しかも寝間着じゃない!」

 

花帆「梢センパイ!さっきのお話の続きがあります!」

 

梢「さっき?……!あれはもうおしまいって言ったでしょう?……花帆さん、あなたの優しさは嬉しいけれど、それは私にとって今必要なものではないの」

 

花帆「いいえ!必要なことです!」

 

梢「ちょっと、声も大きいわ。ああもう、じっくり話すならまた明日にしま――」

 

花帆「梢センパイ言ってたじゃないですか!!今の綴理センパイにはさやかちゃんが居て、梢センパイにはあたしが居るって!今の梢センパイには、あたしが必要なんです!」

 

梢「花帆さん、何を……」

 

花帆「あたしにとって、このスクールアイドルクラブは大切な場所です。凄く魅力的なセンパイたちが居ることを、みんなにも知ってほしくて頑張りました」

 

梢「…………」

 

花帆「頑張ったんです!センパイたちのためにも頑張る、あたしとさやかちゃんがいるんです!」

 

梢「気持ちは嬉しいわ。でも、それはさっきも言ったけれど気持ちだけ。だからといって、あなたにできることは」

 

花帆「あります」

 

梢「っ」

 

花帆「蓮ノ空学院スクールアイドルクラブは、梢センパイと綴理センパイ、淳兄ぃの3人だけじゃありません!さやかちゃんとあたしを入れて、5人です!だから!淳兄ぃは歌わないけど、蓮空祭のステージには、4人で立ちましょう!!!」

 

 

ー つづく ー




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