梢と淳平とスクールアイドルクラブの部室で話したあと、退室した花帆は、
花帆「センパイ、きれいに花咲いてて、素敵だった……。あたしは……!」
翌日の早朝、俺たちが朝練の準備をしていると、スクールアイドルクラブの部室に花帆がやってきた。
さやか「あ、花帆さん。マネージャーがんばってくださいね」
花帆「さやかちゃんこそ、練習がんば!」
さやか「はい!」
花帆「おはよーございま……ーーすー……」
花帆が部室に入ると、梢がアコースティックギターを弾いていた。
梢「あら、来ていたの?ごめんなさい、気づかなくて」
花帆「い、いえ! っていうか、梢センパイって、楽器も弾けるんですか?すごい!」
梢「人並みにはね。我が家はみんながみんな、音楽に携わってるの。それで、子供の頃から一通り」
花帆「一通りって……え、ギターの他にもピアノとか!?」
梢「あとは、バイオリンとトランペット、フルートにサックスなんかも」
花帆「か、かかかっこいいぃ〜……」
梢「ただ、作曲をする時は、基本はギターかキーボードを使っているかしらね」
花帆「作曲……作曲って! えっ、曲を作ると書いて!?」
梢「え、ええ。せっかくだから、新入生歓迎会で新しい曲を披露しようと思って。そうだ。よかったら途中までだけれど、聞いてもらえないかしら?」
花帆「聞きます!聞きたいです!聞かせてください!」
梢「それでなにか気になるところがあったら、指摘してもらいたいの。一応淳には大丈夫とは言われたのだけれど」
花帆「そうですか!えっ、むりですね!?」
梢「そんな元気いっぱいに断らないで?」
梢が冷や汗を流す。
梢「ね、いい曲を作りたいのよ。お願い、マネージャーさん」
花帆「うっ……。そんな業務があるなんて知りませんでしたけどー……」
梢「今、付け加えました。貴女のためだけに、心を込めて歌うから、ね?」
花帆「うう、ずるいですよそんな言い方……。わかりましたよぉー……」
梢「ありがとう」
そして、梢はギターを弾いて演奏しながら歌い始める。すると、一瞬で花帆は梢の奏でる世界に引き摺り込まれた。
花帆(何……?コレ! こんなの……悪いところなんか見つからないよ!!)
そして、梢の演奏が終わり、
梢「どう、だったかしら……って」
花帆「すごい、すごいです!梢センパイ、声きれい!ハリもあって、伸びやかで、もう、世界一上手でした!音楽のテストだったら満点通り越して120点です!」
梢「あ、ありがとうね。なんだか照れるわねえ……。淳にも褒められるけど、それとは違った……こう、なんていうか……」
花帆「ええー!? こんなのステージで披露したら、感動の涙で蓮ノ空が湖に沈んじゃいますよ!ほんっとにすてきでした!花帆の花丸印、あげちゃいます!」
梢「気になるところとか……」
花帆「そんな所思いあたらないですよ。パーフェクトです!少なくともあたしには……」
梢「フフ、本当の本当に、本気で思ってくれているのね。そこまで言ってもらえると、自信がわいてきちゃうわ」
花帆「はい!梢センパイの歌で、みんなの笑顔をいーっぱい花咲かせちゃいましょう!」
梢「いいわね、それ。じゃあもっとがんばったら、うちのマネージャーさんの笑顔も、花咲いてくれるかしら?」
花帆「そ、それは……それも、たぶん、はい……」
梢「うふふ。だったら……やっぱり、がんばらなくっちゃ」
そして放課後になり、花帆は梢の新入生歓迎会の実行委員会の仕事も手伝う。
花帆「梢センパイ!次はどこに行くんですかー!?」
梢「うふふ、ごめんなさい。今年から、新入生歓迎会の実行委員も拝命しちゃって、やらなきゃいけないことが多いのよねえ。本部では、淳が手伝ってくれてるから、私達は他の雑務をね?」
花帆「はい!」
梢「さぁ、焦らずじっくり急ぎましょう? 1時間以内に終わらせて、作曲の続きもしなきゃ」
花帆「ええっ!? このあとまた部室に戻るんですかぁ!?」
梢「ええ、ステージだって作っている途中なんだもの。大丈夫よ、花帆さん。上に積み重なっているものをひとつひとつ取り除いていけば、いつかは机の天板が見えてくるものよ」
花帆「積み上がっていくスピードの方が早かったら、いつまでも見えませんよねー!?」
梢「そうよ、良い所に気づいたわね。つまり、焦らずじっくりと急がなくちゃだめってこと」
花帆「1日が、1日があっという間に過ぎてゆくんですけど〜!」
校内に、花帆の悲鳴が木霊した。
そして、新入生歓迎会の委員会本部の部屋のドアが開いた。
梢「終わりました」
花帆「お、おわり…ました」ゼエゼエ
淳平「おう、お疲れ様。じゃあ梢は練習行って来い。花帆は梢の手伝いだけどな」
梢「ええ。じゃあ淳、後は頼むわね?」
淳平「おう」
そして、梢と花帆は練習の部屋に向かっていった。
そして、練習着に着替えた梢と花帆。梢は念のために花帆にも準備運動のストレッチをさせていた。
花帆「こんどは振り付けですか?」
梢「ええ。メロディができて、歌詞ができて。それで終わりじゃないの。次はパフォーマンスのお時間よ。ぴったりの振り付けを考えて、まだまだもっと素敵にしちゃうんだから」
花帆「ほえー。ほんとに、全部自分たちでやるんですね、スクールアイドルって」
梢「そうよ。それが楽しいところだわ。もちろん、悩むこともいっぱいあるけれどね。そうだ!花帆さん」
花帆「うっ、今度は何でしょーか……」
梢「ちょっと、踊ってみてもらっていいかしら?曲に合っているかどうかを、確認してみたいの」
花帆「あ、あたしがですか!?」
梢「普段は綴理にお願いするんだけど、今は彼女も村野さんの指導に夢中みたいだから。大丈夫、簡単にステップを踏むだけよ。私の真似をしてみてちょうだい。」
花帆「ううー。どうせ断っても押し切られるのが分かってるのでやりますけどぉ……」
梢「物わかりがよくって、本当に助かるわ、マネージャーさん」
花帆(なんか、梢センパイの笑顔が恐い……)
この時、花帆は梢のことだけは怒らせないようにしようと決めた。
そして花帆は梢の真似をしてステップを踏む。
花帆「えっと、ここって……」
梢「その辺りはね、もう少しピンと背筋を伸ばして、指先まで針金が通っているイメージでね。そうそう、上手よ」
花帆「え、えへへ……」
梢「なるほどね、うん、よさそうだわ。それじゃあ私のギターに合わせて、最初から踊ってみて」
花帆「わ、わかりました!でも、センパイみたいにきれいには踊れませんからね!?ヘンでも笑わないでくださいね」
梢「ふふっ、もちろんよ」
花帆「あっ、今笑いませんでした!?」
梢「こ、これは、そういうんじゃなくて。楽しくなってしまっただけよ。ほら、始めましょう!」
そして、数日後の夜……
〜 女子寮・花帆の部屋 〜
花帆「なんだかんだ、楽しく過ごしちゃってるなぁ……。お願いされて、またダンス踊ることになっちゃったり……。別の日には、衣装を作る梢センパイをお手伝いしたり……。お手伝いしてくれる人と一緒に残って、ステージ作りをしたりとか……。淳兄ぃにも色々教えてもらって……、楽しいって感じちゃってる……。なんでだろ、虫の鳴き声しか聞こえないような、そんな山奥の学校なのに。こんなの、あたしが夢見てた世界とまったく違っているのに……。」
花帆はハァと、溜息をつく。
花帆「転入手続きの締め切りまで……あとちょっとしかないや。新入生歓迎会と、ちょうど、同じ日……。それまでに、決めなくっちゃ、だよね。でも、あたしは…きっと、花咲くんだ。そのために、ずっとガマンしてきたんだもん……」
すると、花帆のスマホが鳴った。
花帆「あっ、もしもし……。うん、あたし」
花帆母『ああ、花帆ちゃん。どう?そっちはうまくやっている?まぁ花帆ちゃんの大好きな淳平くんもいるからしんぱいいらないかねえ』
花帆「全然平気だよ。なんの用?」
花帆母『ちょっと声を聞きたくなっちゃって。元気でやっているかなー?とか』
花帆「用もないのに電話してくるなんて、過保護だぁ……」
花帆母『これはそうでもないでしょう』
花帆「っていうか!そうだ!ぜんぜん違うじゃん。蓮ノ空!」
花帆母『あれ? そうだったかしら?』
花帆「駅前にあって、ピッカピカの校舎で、何だってできる自由な学び舎だって!ぜんぜん合ってないよ!なんにもできない不自由な牢獄みたいだよ!何なのさ!この寮の部屋の窓!鉄格子で塞がれた寮なんて聞いたこと無い!!刑務所じゃないんだよ!?」
花帆母『いくらなんでも、そこまでは言ってないけど……。お母さんの通っていた頃の思い出話を、したくらいで』
花帆「ええっ!?じゃあ、あたしが勝手に思い込んでただけ……!?」
すると、お母さんは優しい声で……
花帆母『ねえ、花帆ちゃん。蓮ノ空はいい学校よ。きっと、あなたがやりたいことだって、見つかるはずだわ。ねえ、淳平くんとはどうなった?他にいい出会いはあった?』
花帆「それは……。ともかく!そっちがその気なら、こっちだって考えがあるんだから!お母さんやお父さんの言うとおりになんてならない!あたしはあたしの力で、花咲いてみせるから!」
そして、花帆は電話を切った。
花帆「そうだよ、こっちにだって考えがあるんだから……でも、淳兄ぃと毎日会えなくなるのだけは…嫌かなぁ……ハァ」
そしてその日は花帆は就寝した。
ー つづく ー
名前
以下は公式プロフィール参照してください
蓮ノ空スクールアイドルクラブの1年生。夕霧綴理のパフォーマンスに感銘を受け、スクールアイドルを志す。
幼少期よりフィギュアスケートをやっていたが、表現力に伸び悩んでいた。
淳平のことは頼りになる優しい先輩と感じている。
恋心は抱いていない。……今のところは。
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