翌日の放課後、俺と梢が部室で話していると、元気がない様子で花帆が入ってきた。
花帆「……はぁ」
淳平「どうした?溜息なんかついて……何か心配ごとか?もうライブは明日だぞ?」
花帆「そーだね……。でも、あたしが出るわけじゃないし……」
梢「だったら出てみる?」
花帆「えっ?!」
梢はクスリと笑う。
花帆「じょ、冗談、ですよね?」
梢「そうね。でも冗談かどうかは、あなた次第」
花帆「それは……」
梢「これまで、たくさん手伝ってもらったわね。でもそうしてくれたのは、今までずっと、ただの親切だけ?」
花帆「そ、そうですよ!梢センパイと淳兄ぃが困ってるみたいだったから、だからあたしは少しでも役に立てたら、って!」
梢「花帆さん、…本当に、それだけだった?」
花帆「ッ! …………」
梢「私はね、あなたの胸の内に、強い気持ちが眠っているように見えたわ。今にも飛び出したくてうずうずしている、そんな気持ちが。"新しい世界を見せてあげる"。あなたにそう言ったことは、間違いじゃなかった。だけど、私にできるのは、ここまで。ここから先は、あなた自身が踏み出さなければ、始まらない物語なの」
花帆(あたしは……あたしは)
花帆の胸の中に、スクールアイドルクラブで手伝いをしてきた日々と、梢の姿、そしてそれを支える俺の姿が駆け巡る。
花帆「……あの、梢センパイ。あたしの……友達の話!なんですけど」
梢「ええ」
花帆「実は、まだ学校を辞めたいって思ってて……。あたしはそれを止めたいのか止めたくないのか、よくわからないんです。その子は、新しい世界に飛び出したくて。それは、梢センパイに言ってもらったのとはちょっと違っているんですけど……。だけど、もしかしたらその子は、ただ逃げてるだけなんじゃないかって思ったりもするんです。楽しいことがしたかっただけなのに……。梢センパイの見せてくれた景色も、本当に眩しくて。その先があるなら、あたしは……あたしは……。あたしは、どうしたら良いですか、梢センパイ……。淳兄ぃ……」
梢「前にも、言ったわよね。私の家系はみんな音楽をしているって。父も母も、祖父も祖母も。」
花帆「はい」
梢「……だからね、最初、スクールアイドルをやりたいって言ったときには、ずいぶんと反対されちゃったの」
花帆「えっ、そうなんですか?あんなにすごいのに!?」
梢「ありがとう。でも、今までたくさん習い事に通わせてもらったのに、私はその中からではなく、スクールアイドルを選んでしまった。あまつさえ、衣装作りのために指に傷を作って針仕事をしているなんて知られたら、もしかしたら卒倒しちゃうかも」
花帆「それじゃあ、どうしたんですか。やっぱりセンパイも、親の反対を押し切って!?」
梢「いいえ。ちゃんと親と話し合ってね。自分のやりたいことを、正直に伝えたの。全部を理解してもらえたとは思わないけれど、でも、好きな気持ちはきっと伝わったはずだから」
花帆「自分のやりたいことを、正直に……」
淳平「難しく考えすぎたよ、何かが始まる時は、いつだって、きっかけは些細なことだったりするだろ?」
花帆「!! センパイたちは…、スクールアイドル活動、楽しいですか?」
梢「ええ、とっても」
淳平「おう!!」
梢「ねぇ、花帆さん? あなたのお友達が花咲くために必要なことって、本当はどんなことなのかしら。他の学校に移ること?それとも」
花帆「それは……、あの!」
梢「わ!」
花帆がいきなり大きな声を出し、驚く梢。
花帆「お話聞いてもらって、ありがとうございます!ただ、あの、もうちょっとだけ、待ってもらってもいいですか!?」
梢「え、ええ。それはもちろん」
淳平「待ってるから。好きなだけ悩んでこい」
花帆「うん!ありがとう淳兄ぃ!」
そして、花帆は部屋を出ていった。
すると、入れ違いでさやかちゃんが入って来た。
さやか「あの、乙宗先輩、淳平先輩。今、すごい勢いで花帆さんが出ていったんですけど、何かあったんですか?」
さやかちゃんの言葉に、俺と梢は顔を見合わせてクスッと笑う。
淳平「何か起こるのは、これからかな?」
さやか「?」
梢「でも、良かったわ。無駄にならずに済みそうで……」
そして、梢は明日のライブで着る衣装の入ったロッカーを開ける。
さやか「先輩、これって……!」
淳平「さて、明日のライブ、どうなるかなぁ……」
そして次の日、新入生歓迎ライブ当日、ライブ直前で緊張した面持ちで準備をする梢の所に、ある子ご飛び込んできた。
それは……、
梢「花帆さん!」
花帆「梢センパイ! あたし、いっぱい考えて、それで。ほんとはどうしたかったのか、わかったんです。この学校を笑顔でいっぱいにしたい。アタシが楽しいだけじゃなくて……。この学校で同じように退屈を感じてる子たちを、楽しませたい。あたしが梢センパイにそうしてもらったみたいに!」
梢「ええ」
花帆「だから、決めたんです。あたし、スクールアイドルやります!みんなを花咲かせるスクールアイドルに、なります!」
淳平「……なんだか不思議だな」
梢「そうね……」
花帆「え?」
梢「淳と時々話してたのよ。不思議と、こうなる気がするって。あなたが私と一緒に、スクールアイドルをやってくれるような気が。ステージの上に立って、あなたを見たときから。いいえ、もしかしたら、あなたと初めて会ったときから、だったのかもしれないわ」
淳平「な? 俺も……なんとなくこうなる気がしたんだよなあ」
花帆「そっか……」
梢「花帆さん、あなたを歓迎するわ。ようこそスクールアイドルクラブへ」
淳平「自分で気持ちに気づけたなら良かったよ……」
花帆「梢センパイ!ありがとうございます! 淳兄ぃも、これから迷惑かけるかもしれないけど、よろしくね?」
淳平「お前は昔が大人しくすることを強いられてたからな。少しくらい我儘になったほうがいいさ」
花帆「! うん!!」
梢「そしてこれは、私と淳からあなたへ、最初の贈り物」
それは、この日のために作った、梢とお揃いの、花帆の衣装だった。
花帆「うわぁ~!!」
梢「じゃあ行くわよ花帆さん!振り付けは頭に入ってるわね?」
花帆「はい!!みんなの、笑顔を咲かせに!」
そして、ステージが開園し、二人は舞台に歩いていく。そして曲が流れると、2人でパフォーマンスを始める。合わせるのがまだ数回目とは思えない、息のあったパフォーマンス。梢がフォローしてくれているとは言え、練習回数の少ない花帆がここまでできることに俺は驚いた。
淳平「とんでもない怪物を目覚めさせちまったみたいだな。俺たちは……」
さやか「え?」
淳平「なんでもねぇよ……」
そして、2人のステージが終わり、2人が舞台袖に戻ってくる。
すると、花帆のクラスメイトが駆け付けてきた。
えな「ライブすごかった!花帆ちゃん!」
花帆「わ、わわわ!そ、そうかな?」
淳平「おう。自信持っていいよ」
びわこ「先輩の言う通りだよ!すっごくかっこよかったよ!ドキドキしちゃった!」
花帆「えへへ、うれしい……///」
しいな「ね、ね、サインちょうだいよ、サイン!」
花帆「ええーっ!?」
梢「早速、応援してくれる人ができたのね、花帆さん」
花帆「あはは、そうみたいです。でも、これからもっともっとがんばりますから。退屈なんて感じる暇がないくらい、夢中にしてみせるから!あたしは、願えばどこだって花咲ける。今はまだ、ひょっこり芽が出たばかりの、ちっちゃなお花でも。まずはこれが、第一歩!みんなも一緒に、ここで花咲こうね!!」
ー つづく ー
名前
以下は公式プロフィール参照してください
蓮ノ空学院スクールアイドルクラブ2年。独特の自分の世界観を持つ不思議ちゃん。
基本的に好きなこと以外はあまりできないが、その代わり好きなことに関してはその全てで天才的な才能を発揮する。
入部当初、淳平のことは別に良くも悪くもどうとも思ってなかったが、共に活動を続けるうちに徐々に認め始め今では仲が良い。
本人は隠してるつもりだが、普段の学校生活の中で淳平に好意を持っているのが周囲にバレバレだが、本人は隠せてると思っている。
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